村瀬千文ホテルジャンキーズクラブ無断転載【29】

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398Gli UP
皆さん。準備ができましたよ。
今週金曜日発売の「Gli」です。
P182-183 ほとんど最後のほうです。
今月もアンケート用紙がついていますので、良い子のみなさんは
”感想”を書いて送ってくださいね。
できれば立ち読みも必。だって今月も写真がボロボロで面白いんですよ。

では本文を。
ひとりで、のんびり、のんきにぐだぐだダラダラと…・・
アレグレ・ビーチ・リゾート/セブ島

 何がある、というのではない。何かが他に比べて跳び抜けている、というのでもない。何かが起きそう、
という感じも、ない。けれど、残業続きの毎日、
「仕事が一段落したら週末にでもぶらりと出かけてみようかな。」
と思い浮かぶホテルのひとつである。
 アマンリゾーツのようにパッキングの際にどの洋服をいれようかと思い悩むこともない。機内持ちこみが
できるボストンバッグに着慣れたTシャツと白いコットンパンツ、ショートパンツにちょっと派手目のキャミソ
ールを何枚か放り込み、あとは水着とディナー用にタイで買った絣模様風の巻きスカートだけ。
 そんな風に早めにパッキングだけ済ませておいて、無理矢理仕事を片付け、オフィスを飛び出したのは
金曜日の昼のことだった。成田から直行便に乗って四時間あまりのフライトは完璧に夢の中。半分まだ
眠った状態でマクタン空港のロビーを通り抜け、迎えの車に乗り込み、再び二時間ぐっすり。
「マダーム…マダーム、着きましたよ」
 遠慮がちに少しずつ大きくなるドライアバーの声に目を開けると、暗闇の中にエントランスのトーチの灯り
がぼんやりと浮かび上がった。
 どこもほとんど真っ暗で、いったいどこをどう歩いているのかわからぬまま、スタッフの後についてしばらく
行くと、
「ここがあなたのヴィラです。」
 開いたドアの奥に、ブーゲンビリアの花びらを浮かべたバスタブがライトアップされて浮かび上がった。
 その後どうやってお風呂に入り、パジャヤマに着替えてベッドに入ったかの記憶は定かではない。が、き
れいな花に囲まれた桃源郷の夢を見た。
 翌朝、久しぶりに目覚ましなしでぱっちりと目が醒めた。ドアを開けると、今度は二十四色のクレパスの水
色、そのままの海が目の前に広がっていた。ホワイトサンドビーチの砂の白さは目を開けていられないほど。
 ザザァーッ、ザザァーッという波の音を聞きながら、温かいミストサウナに入っているようなしっとりとした風
を全身に浴びていると、疲れが体の奥からどんどん溶けだしてくる。
 テラスのデッキチェアでしばらくぐだぐだダラダラしてから、朝食にでかけることにした。
 左手に海を眺めながら、階段を下りたり、上がったり。あちこちのヴィラのテラスには、さっきと同じようにと
ろけきった顔をしたお客たちの姿が見える。途中、本を読むのによさそうな小さな入り江のプライベートビーチ
を見つけた。