http://www.chikumashobo.co.jp/web/taguchi/t011028.html 「根をもつこと、翼をもつこと」というエッセイ集の見本が届いていたので、それに
パラパラと目を通すと、最後のエッセイがあまりにも乱暴なので、自分で驚いてしま
った。自分の文章とは思えない。なんだか読むとひどく気分の悪くなるようなエッセイ
だ。行間から私の恨みが見える。こんなものをなぜ書いてしかも掲載してしまったの
だろうとがく然としてしまうが、もう、後の祭りだ。それにしてもこれはひどすぎる
し、しかもこのエッセいを最後にしたのは確か自分だったはずだ。そもそも、掲載する
エッセイはすべて自分が選んだものだ。最後のエッセイは、書き下ろしで8月に書いた
ものだ。なぜ、こんな悪意のあるエッセイを私はこの本の最後にもってきたのだろうか。
どうにも、暗たんとした気持になってしまった。事前に読み返していたはずなのに、私
はこのエッセイの悪意に自分が気がつけなかったようだ。加藤先生に会い、九州を旅行
し、気持が少し清められたので、やっと気がついたようだ。ということは、旅行以前に
私はどういう精神状態で生きていたのだろうか。
まいったなあ、と思う。でも、もうこの本は出版されて書店に並ぶのだな。怖いなあと
思う。本を作るというのはなんという怖いことだろうか。怖いけど、しょうがない。こ
のような悪意もまた自分なのだ。自分のもってしまった悪意には自分で落とし前をつけ
るしかないのだろう。悪意には悪意が帰るのだ。それを知っていても、悪意のない自分
になることは難しい。悪意はあるのだ。私にも。