西尾のエロ描写↓
気が付けば──知らず知らずのうちに、僕は火燐をベッドに押し倒していた。
左手は後頭部に添えたまま。
身体を乗せて、火燐を押し倒した。
僕よりもサイズのある彼女の身体は、しかし体重を少しかけるだけで──抵抗なくすんなりと、押し倒された。
火燐を見る。
火燐を見詰める。
うっとりしているかのような。
とろけているような。
そんな火燐の表情だった。
ヘヴン状態である。
「火燐ちゃん。火燐ちゃん。火燐ちゃん──」
妹の名前を連呼する。
そうするたびごとに、身体が奥の芯から熱くなるようだった。
火燐の身体も、強い熱を帯びている。
「に、兄ひゃん──」
焦点の定まらない瞳で。
火燐は言った。
口の中に歯ブラシを挿入されていることもあって、
いやきっとそれがなくとも、呂律が回らないようだったが。
それでも言った。
それでも健気に、火燐は言った。
「にいひゃん……いいよ」
何が!?
何がいいの!?
と、普段の僕なら突っ込みをいれていただろうけれど、しかしもう僕のテンションもぐちゃぐちゃに融けていた。
ぐちゃぐちゃで。 ぐちょぐちょで。じるじるして。 じゅくじゅくして。(改行省略)
「……じゃあ、そのなんだろう、万が一裁判になったときのために、『阿良々木くん、どうか私のノーブラおっぱいをモミモミしてください、
お願いします』と言っておいてくれるかな?」
ぶちい!
と、そんな音が聞こえた気がした。
羽川の血管が切れた音だろうか。それとも切れたのは引きつった顔面の筋肉か。
「あ……あ、阿良々木くん、ど、どうかっ、わ、私のノーブラおっぱいをモミモミしてくださいっ、お願い……、お願いしますっ」
「いや、そんな小さな声で言われても困るよ。それじゃあまるで、嫌がる羽川に僕が無理矢理言わせてるみたいじゃないか。もっと大きな声で、
自分のどこをどうして欲しいのか、羽川自身の意思で、ちゃんと言ってくれないと」
「阿良々木くん! ど、どうか私のノーブラおっぱいをモミモミしてください、お願いしますっ!」
「……『阿良々木くんにおっぱいを揉んでもらえるなんてとても光栄です』」
「阿良々木、くんに……おっぱいを揉んでもらえるなんて、と、とても光栄ですっ……」
「えっと……『阿良々木くんに揉んでもらうためだけに、頑張ってこんないやらしいおっぱいに育てました』」
「阿良々木くんに揉んで……揉んでもらうためだけにっ、がっ、頑張って、こんないやらしいおっぱいに、育てましたっ」
「へえ。そんな風には見えなかったけど、羽川って結構エッチなんだな」
「……っ、はいっ、私はとてもエッチですっ、ごめんなさいっ」
「別に謝る必要はないさ。羽川がたとえどんなにエッチでも、誰かが迷惑するわけじゃないんだから」
「そ、そうですねっ、えヘへっ」
「それで、エッチで真面目な委員長さんのおっぱいは、具体的にはどういう風にいやらしいんだ?」
「お……、大きさとっ、柔らかさ……が、これ以上ないいやらしさだとっ……、自負していますっ!」
ああ。
そうか、そうだったのか。
どうして自分がこの世に生を受けたのか、そんな思春期にありがちな悩みを、こんな僕でも抱いたことがあったけれど……、今、齢十七歳にしてその問いの答が判明した。
悟った。
僕の人生はこの日のためにあったんだ。
僕の命はこのときのためにあったんだ。
今日という日を体験するためだけに、阿良々木暦という人間はこの世に生まれてきたんだ……いや、これはそれどころの話じゃない。
最早僕個人のレベルで語っていいような話じゃない。
きっとこの世界は、今日という日を僕に体験させるためだけに、これまで存続してきたんだ。
ここから先の歴史はただの消化試合だ!
「て言うか、友達の乳を揉むとか普通に無理ですから!」
逃げた。
西尾の会話劇↓
「……センジョーガハラサマ」
「片仮名の発音はいただけないわ。ちゃんと言いなさい」
「戦場ヶ原ちゃん」
目を突かれた。
「失明するだろうが!」
「失言するからよ」
「何だその等価交換は!?」
「銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラムに悪意九十七キロで、私の暴言は錬成されているわ」
「ほとんど悪意じゃねえかよ!」
「ちなみに照れ隠しというのは嘘よ」
「一番抜けちゃいけない要素が抜けちゃった!」
「うるさいわねえ。いい加減にしないとあなたのニックネームを生理痛にするわよ」
「投身モンのイジメだ!」
「何よ。文字通り生理現象なのだから、恥ずかしいことではないわ」
「悪意がある場合は別だろう!」
その辺で満足したらしく、戦場ヶ原は、ようやく、忍野に向き直った。
「それから、何よりもまず、私としては一番最初に訊いておきたいのだけれど」
忍野にというより、それは僕と忍野、両方に問う口調で、戦場ヶ原はそう言って、教室の片隅を指さした。
そこでは、膝を抱えるようにして、小さな女の子、学習塾というこの場においてさえ
不似合いなくらいの小さな、八歳くらいに見える、ヘルメットにゴーグルの、肌の白い金髪の女の子が、
膝を抱えて、体育座りをしていた。
「あの子は一体、何?」
何、というその訊き方からして、少女が何かであることを、戦場ヶ原も察しているのだろう。
それに、この戦場ヶ原ですらそこのけの、剣呑な目つきで、少女がただ一点、忍野を鋭く睨み続けて
いることからも、感じる者は、何かを感じるはずだ。
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「ったく、ずけずけと言いたいこといいやがって。お前は本当に生意気なガキだな、お仕置きしてやりたくなってくるよ」
「お前は本当に生意気なおっぱいだな、お仕置きしてやりたくなってくるよ? 阿良々木さんは時たまとんでもなくいやらしいことを仰いますね」
「言ってねえよ!」
「ガキをおっぱいと置き換えるだけでここまでいやらしい台詞になるとは驚きです」
「メインの単語をおっぱいと置き換えていやらしくならない台詞なんかねえよ!」
何の会話だ。
この辺は勢いだけで喋っている気がする。
「でもまあ、確かにお前の言う通りだ。ちゃんと腹をくくらないとな」
「ええ。ついでに首もくくってください」
「やだよ! まあ、そうは言っても、その辺は僕の優秀な家庭教師陣に任せておけば心配ないだろ。あいつらは、
僕にサボることなんて許さないぜ。嫌でも毎日、勉強することになるさ。はは、学年一位と学年七位がついているからな、
はっきり言って無敵だぜ」
「プラスチックな考え方ですねえ」
「…………」
プラスチックに『前向き』的な意味はない。
「しかし阿良々木さん、いかにその名だたるお二方と言えど、学年最下位を相手取るとなると、一筋縄では……」
「さすがに最下位なんか取ったことねえよ! それに今回はかなりいい順位だったんだって! 僕の話を聞いてろよお前は!」
「自慢話を聞けと言われても困りますね。阿良々木さんの話で面白いのは、不幸自慢だけです。その辺りをもっと掘り下げてください」
「なんで僕がそんな自分苛めみたいなことをしなくちゃならないんだよ!」
「では、不肖ながらこのわたし、八九寺真宵が代弁しましょう。阿良々木さんの不幸自慢シリーズ。『鴨が葱を背負ってやってきた! でも阿良々木さんは葱が嫌いでした!』」
「僕の不幸をでっちあげるな! 葱は好きだよ、栄養があるもん! 風邪引いたとき喉《のど》に巻いたりするもん!」
「一見幸せなようだけれど、よく考えてみれば実は不幸というのが、阿良々木さんの売りです」
「ねえよそんな設定! 今後行動しづらくなるような、中途半端に変な設定を付け加えるな!」
「阿良々木さんの不幸自慢シリーズパート2」
「パート2まであるのか!? パート1が全米ナンバーワンヒットでも記録したのか!?」
「『阿良々木さんは夜中に小腹が空いたので、カップラーメンを食べることにしました。けれどそのカップラーメン、インスタント食品の癖に作り方が意外と難しい!』」
「ち……畜生! 否定したいところだが、残念ながら何回かあるな、そういう経験! パート2の方が名作とは、これは稀有《けう》な例だ!」
「阿良々木暦は永久に仏滅です」
「何もかもが嫌になるフレーズだ!」
西尾の哲学()↓
「他人を自覚的に意識的に踏み台にできる人間ってのは、なかなかどうして怖いものがあるよな」
そうだろうか。
ぼくには、無自覚で無意識で他人を踏みつけていく人間の方が、善意で正義で他人を踏み砕いていく人間の方が、ずっと怖いように思えるけれど。
「へえ。はは、さてはお前、いい奴だな?」
軽く笑われてしまった。
ぼくがいい奴なのかどうかは、しかし幸いなことにこの場合あまり関係ない。多分これは、考え方の違いではなくて、生き方そのものの違いだろう。
他人を踏みつける必要もなく存在している人間と、踏み台としてすら存在していない人間との、絶対的で絶大的な差異。結局、そういうことだろうと思う。
たとえばスタイルを持たない画家。
たとえば辿り着き切った学者。
たとえば味をしめた料理人。
たとえば超越し過ぎた占い師。
あの島にいた彼女達はあまりにも違い過ぎた。
招かれる側も、招く側も、どちらもどちらにどうしようもなく異端で、どうにもならないくらいに異端で、どうする気にもなれないほどに異端で、そして異端だった彼女達。
手を伸ばしたその遥か先に存在し、脚を踏み出す気にすらならない距離を置いて、そこにいた彼女達。
そして。
「つまりだな。これは天才ってのは何であり、何でないのかって問題なんだよ。無能だったらそれはそっちの方がいいんだ。とんでもなく鈍感だったなら。
生きている理由をそもそも考えないほどに、生きている意味をそもそも考えないほどに、生きている価値をそもそも考えないほどに鈍感だったなら、この世は楽園でしかない。
平穏で、平和で、平静で。些細なことが大事件で、大事件は些細なことで、最高の一生を終えることができるんだろうよ」
それはきっと、その通りなのだろう。
世界は優秀に厳しい。世界は有能に厳しい。
世界は綺麗に厳しい。世界は機敏に厳しい。
世界は劣悪に優しい。世界は無能に優しい。
世界は汚濁に優しい。世界は愚鈍に優しい。
けれどそれは、それはそうと理解してしまえば、そうと知ってしまえば、その時点で既に終わってしまっている、解決も解釈もない種類の問題だ。始まる前に終っていて、終わる頃には完成してる、そんな種類の物語なのだろうと思う。
たとえば。
「人の生き方ってのは、要するに二種類しかない。自分の価値の低さを認識しながら生きていくか、世界の価値の低さを認識しながら生きていくのか。その二種類だ。自分の価値を世界に吸収されるか、世界の価値を殺ぎとって自分のものへと変えるのか」
自分の価値と世界の価値は、
どちらを優先させるべきなのか。
世の中がつまらないのと自身がつまらないのと。
果たしてどちらの方がマシなのか。
その間に曖昧や有耶無耶はないのだろうか。
そこに明確な基準はあるのだろうか。
二者択一の取捨選択だけなのだろうか。
選ばなくてはならないのだろうか。
「どこからが天才でどこからが天才でないのか」
どこからが本当で誰からが嘘なのか。
誰からが本当でどこからが嘘なのか。
質問しては、いけない。
にやり、とシニカルに笑われて。
「──で、お前はどうなんだ?」
それは。
「お前には、世界がどう見える?」
既にあの島を経験しているぼくには。そして今、この人を目前にしているぼくには──それは本当に答を考えるまでもない、他愛もない戯言だった。
だからぼくは何も言わなかった。
かわりに、目を逸らして、別のことを考える。
果たして、この人の瞳には、世界はどう映っているのだろうか。果たして、あいつの目に、このぼくは一体どういう風に見えているのだろうか、と。
西尾維新の文学()↓
映画を見に行くことになったのは妹が死んでしまったからだ。
私は平素より視覚情報に関しては淡白を貫く主義なので、映画を見るのは実に五年振りのこととなり、妹が死んだのも、矢張り五年振りだった。
回数を勘定すれば、共にこれが四回目である。映画を見るのは妹が死んだときだけと決めているのではなく、逆であり、妹が死んだからこそ、映画を見るのだ。
そうはいってもしかしこうしょっちゅう死なれては私としても敵わない。日頃大きな口を叩いている友人達に合わせる顔がないというものだ。
私には合計で二十三人の妹があるけれど、死ぬのはいつも、十七番目の妹だった。
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西尾維新の残酷描写↓
姫ちゃんは中庭で死んでいた。
両腕が――肘の先で、千切れている。
そして、首が有りえない方向に捻じれ。
血だまりの中で、死んでいた、
そこに笑顔はなく。
そこに希望はなかった。
「…………」
肉の破片。
血の匂い。血だまり。
あの矮躯のどこにどこにこれだけの血が。
たっぷりと。
たゆたゆと。
その中に浮かんでいるような矮躯。
骨。髄液? 骨が覗く。腕。
腕はどこだ? 千切れた腕は。
こまぎれて、血だまりの、あちこちに。
肉塊。
肉片。
捩れた首。
生気のない瞳。清輝のない瞳。
邪悪そのものを見たかのように瞳孔は開ききって、されど表情は恐怖に歪むもでもなく悲壮に凍るでもなく虚ろそのもの。
リボンが解けて。
伸びた髪が乱れて。
無残、無残、無残。
制服。
まだ新しい制服があちこち破れていて。
なんだか、獣にでも襲われたような。
神話の獣にでも蹂躙されたかのような。
蹂躙。
征服。冒涜。
生贄、餌食、暴食。
凌辱。破壊、破壊、破壊。
殺人。殺戮。血、肉、骨、血、肉、肉。
肉の破片。血の匂い。血だまり。(中略)
征服。冒涜。生贄、餌食、暴食。陵辱。破壊、破壊、破壊、破壊。殺人。殺戮。
血、肉、骨、血、肉、肉。肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉。肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉肉肉肉肉肉肉!
西尾の格闘描写↓
「ていっ! 喰らえっ!」
言ったと思うと、八九寺は僕の身体に向けて、全体重を乗せたハイキックを喰らわせてきた。
とても小学生とは思えない、背筋に一本棒が通っているかのような、綺麗な姿勢での蹴りだった。
だがしかし、悲しいかな、小学生と高校生とでは、身長差というものが、歴然としてある。この差だけは埋めようがない。
顔面に決まっていればあるいはということもあったかもしれないが、八九寺のハイキックは、精々、僕の脇腹辺りにヒットするのがやっとだった。
無論脇腹にだってつま先が入ればダメージはある、しかし、それは我慢できないほどの質量ではない。
僕はすかさず、八九寺の足がヒットした直後に、両腕でかかって、その足首、ふくらはぎの辺りを、抱え込んだ。
「しまりました!」
八九寺が叫ぶが、既に遅い。
……『しまりました』というのが果たして文法的に正しいのかどうかは、あとで戦場ヶ原に訊くとして、僕は、片足立ちで不安定な姿勢になったところの八九寺を、容赦せず、畑で大根でも引き抜くかのような形で、思い切り引き上げた。
柔道で言う一本背負いのフォームだ。
柔道ならばこのように足をつかむのは反則だが、残念ながら、これは試合ではなく実戦だ。
八九寺の身体が地面から浮いた際、スカートの中身が思い切り、それもかなり大胆な角度から見えてしまったが、ロリコンではない僕はそんなことには微塵も気をとられない。
そのまま一気に背負いあげる。が、身長差がここで、逆ベクトルに作用した。
身体が小さい八九寺は、地面に叩きつけられるまでの滞空時間が、同じ体格の人間を相手にするときょりもほんのわずかに長かった――ほんのわずかに。
しかし、そのほんのわずかに、わずかの間に、八九寺は思考を切り替え、自由になる手で、僕の髪の毛をつかんだのだった。
理由あって伸ばしている最中の髪――八九寺の短い指でも、さぞかし、つかみやすいことだろう。
頭皮に痛みが走る。反射的に、八九寺のふくらはぎから、僕は手を離してしまった。
そこを逃すほど、八九寺は甘い少女ではなかった。僕の背に乗ったまま、地面への着地を待たず、くるりと、僕の肩甲骨を軸に回転し、そのまま頭部への打撃を繰り出した。肘鉄だった。ヒットする。
だがしかし――浅い。両足が地面についていないから、力の伝導が平生通りにいかなかったのだ。年齢の差、実戦経験の差が、もろに露呈したのだった。
決着を焦らず、落ち着いて一撃を繰り出せば、今ので決まり、今ので終わりだったろうに。そしてこうなれば、僕の反撃のシーンだった。必勝のパターンだ。
頭に肘鉄を入れられた、そちら側の腕を――感覚的に、左――いや、裏返っているから、右腕か、右腕をつかんで、その位置から、再度、やり直しの一本背負い――!
今度は――決まった。
八九寺は背中から地面に、叩きつけられた。
反撃に備《えて距離を取るが――
起き上がってくる様子はない。
僕の勝ちだった。
「全く、馬鹿な奴め――小学生が高校生に勝てるとでも思ったか! ふははははははははは!」
小学生女子を相手に本気で喧嘩をして、本気の一本背負いを決めた末に、本気で勝ち誇っている男子高校生の姿が、そこにはあった。
ていうか僕だった。
阿良々木暦は、小学生女子をいじめて高笑いをするようなキャラだったのか……自分に自分でドン引きだった。
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西尾のノベライズ(デスノート)↓
竜崎は本棚の、下から二段目の右端の方を指差した。
そこには、日本の人気コミックスが十一冊セットで、納められていた――タイトルは、『赤ずきんチャチャ』。
「……それが、どうかしたんですか?」
「大好きな漫画です」
「誰が」
「私が」
「………………」
相槌を打つのも難しい振りだ。表情が、南空の意志とは関係なく勝手に、優しい形を作ってしまいそうになる――そんな南空の複雑な心中を察しようともせず、竜崎は続ける。
「南空さんは日系ですよね?」
「日系と言うか……父も母も日本人です。今の国籍は合衆国ですけれど、私も高校生までは、日本で育ちました」
「では、この漫画のことは知っているでしょう。彩花みん先生の歴史的な名作です。
私は全話、連載で追っていました。しいねちゃんが可愛くってたまりませんでした。ただまあ、漫画版同様アニメ版も好きでしたね。愛と勇気と希望でホーリーアップ――」
「竜崎さん。その話、長くなりますか? 長くなるようでしたら、私は席を外しますが」
「南空さんに話しているのにどうして南空さんが席を外すんです」
「えー、あのー……、いえ、私も『赤ずきんチャチャ』は、大好きでしたけれど。アニメも見てましたけれど。愛と勇気と希望でホーリーアップしてましたけれど」
ましたけれど、竜崎さんの趣味嗜好については全く興味がないということを言いたかったのだが、この私立探偵にそんな常識的観点からの意見を述べたところで、意味が通じるかどうかは怪しい。
竜崎と同じくらい怪しい。
いや、それは言い過ぎか。
「そうですか。まあ、アニメ版の魅力については今度本格的な席を設けてゆっくり語ることにするとして、今はこれです。見てください」
「はあ……」
言われるがままに、本棚に並んだ『赤ずきんチャチャ』を見る南空。
「何か気付きませんか?」
「そんなことを言われても……」
ただ、コミックが並んでいるだけにしか見えない。だから精々、ビリーヴ・ブライズメイドが日本語に堪能で、日本のコミックを愛読していたことくらいしかわからないが……そんな人間は、このアメリカ合衆国にいくらでもいる。
訳されたバージョンではなく原本で接するというのは、マニアというほどの読者でなくとも、よくあることだった。インターネットが全盛の現代、原本を手に入れるなど、容易いことだ。
竜崎はそのパンダ目で、じっと南空を見ている。居心地の悪い視線――それから逃れるように、南空は、考えもないまま、一冊ずつ、『赤ずきんチャチャ』をチェックする。
しかし、十一冊すべてチェックし終えたところで、新事実らしいもの、あるいは真実らしいものは、一つとして発見することはできなかった。
「わかりません……何かあるんですか? この十一冊のコミックの、どこかに」
「いえ、ありません」
「……はあ?」
さすがに声に険が籠る。
からかわれるのは好きではない。
「ありませんって、それは、どういう――」
「ありません」
竜崎は、自分の言葉を、復唱した。
「あるはずなのにないもの――ですよ、南空さん。犯人がメッセージを込めたものがあるとすれば、それはないものではないだろうか――と、あなたは看破しました。
そしてそれが、ビリーヴ・ブライズメイド本人であることも、あなたは看破しました。そんなあなたになら、きっと説明するまでもないと思ったんですが――見てください、南空さん。これ――足りないんですよ。四巻と九巻が、抜けているんです」
「え?」
「『赤ずきんチャチャ』は全十三巻です。十一冊では、二冊足りません」
そう言われて、改めて確認してみると、確かに、背表紙に振られた巻数のナンバーが、『1』『2』『3』ときて『5』、『6』『7』『8』ときて『10』に飛んでいる。全十三巻という竜崎の言が本当なら、四巻と九巻、その二冊が足りないということになる。
「その――よう、ですね。でも、竜崎さん、それがどうかしたんですか? 犯人が、四巻と九巻だけ持っていったとでも? 確かにその線は考えられなくもありませんが、そんなの、元々不揃いなだけかもしれないでしょう?
これから買う予定だったのかもしれませんし。本を順番通りに読む人ばかりではありませんよ。現に、それを言うなら、こちらのディークウッド・シリーズは、中途で終わっているようですから……」
「ありえません」
竜崎は断定的に言った。
「『赤ずきんチャチャ』を、四巻と九巻だけ飛ばして読む人間なんてこの世にはいません。恐らくこれは裁判でも十分証拠として通じる事実でしょう」
「…………」
この男はアメリカの司法制度を何だと思っているんだ。
「少なくとも、陪審員が、日本のコミック事情に明るい者達で構成されていれば、必ずそうなるでしょう」
「そんな偏った裁判は嫌です」
「犯人が持ち去ったと考えるのが妥当ですね」
突っ込みを無視するという暴挙に出る竜崎。
それでも、常識的観点に則り、南空は食い下がった。
「だとしても、竜崎さん、犯人が持ち去ったと決め付ける根拠はないでしょう。たとえば、友達に貸したということは、考えられないんですか?」
「『赤ずきんチャチャ』ですよ? 親が相手だって、貸すなんてことはありません。買えと言うはずです。つまり、これは犯人が持ち去ったと考えるしかないんです」
強い断定口調で言い切る竜崎だった。
西尾の考えた最強の吸血鬼↓ ※西尾維新ファンが作成
【名前】 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
【属性】吸血鬼
【攻撃力】手刀 キスショットの眷属になった主人公(人間よりはるかに頑丈)を破壊可能。頭に当たると爆散する威力。
眼力 コンクリートの天井を粉々に砕いて半径2-3m以上の穴を開ける。体育倉庫の扉と周囲の地面をまとめて破壊(半径3-4m程度?)
意識して睨むだけでOK。タイムラグほぼ無し。かなり細かいコントロールが効く模様。(特定の人間を避けたり) 射程は最低10m程度はある模様
心渡 別名怪異殺し キスショットの物質創造能力で作った刀
吸血鬼の身体能力に耐える
切れ味は切られた後しばらく動かないと元通りくっつくレベル
なので物を切るには向かず「怪異」を切るのに特化した刀。詳細不明
【防御力】体の強度はそこまで高くない(人間よりははるかに高い)。最低でも後述のジャンプで着地時に地面に足首までめりむ衝撃に耐える
本人曰く「攻撃力が100なら防御は10か20」代わりに不死力が高くなる
再生力はどんなに粉々にされても体の破片が地面に落ちる前に全て元通り再生するレベル
最低でも数時間は消滅と再生を続けられる
再生力が落ちた状態の主人公(1瞬で回復してたのが2-3秒かかる状態)でもコンクリ床を粉砕するパンチを500発程食らって
肉じゅうたん状態になっても問題なく再生
体の血を余す所なく吸血されると死ぬ
【素早さ】数kmを助走無しのジャンプで跳んでこれる
【特殊能力】 エナジードレイン(吸血)。齧り付いて血を吸う事で存在自体を吸い取れる。ある程度吸われると力が抜ける。吸い尽くされると消滅?する模様
翼を生やして飛行可能。物質具現化可能(剣とドレス。あとDS)。影潜り(出入りは一瞬。長期間入ったままでok)。
霧になれる(霧そのものになる。移動可)
変身可能。闇になれる。姿を消す事も出来る。(いずれも詳細不明)
【長所】 再生能力が高い。眼力が結構性能高い。吸血を攻撃手段として普通に使う
【短所】 太陽には弱く陽に当たると蒸発。再生と蒸発を繰り返す。その状態でも多少は動ける
十字架で触れると蒸発する。これも再生はするが速度は遅くなる(吸血鬼化した主人公の話なので完全な状態のキスショットは問題ない可能性も)
基本的に吸血鬼が弱いとされてるものには大抵弱い模様
死にたがっている。日本に来たのも死に場所を探して
心臓を奪われ弱った状態でバンパイアハンター3人組と対戦
再生を封じる特殊な技法を使われ両手両脚を奪われ出血多量で死に掛けた