西尾維新の本って何が面白いの?16

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7この名無しがすごい!
西尾の会話劇↓
「……センジョーガハラサマ」
「片仮名の発音はいただけないわ。ちゃんと言いなさい」
「戦場ヶ原ちゃん」
 目を突かれた。
「失明するだろうが!」
「失言するからよ」
「何だその等価交換は!?」
「銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラムに悪意九十七キロで、私の暴言は錬成されているわ」
「ほとんど悪意じゃねえかよ!」
「ちなみに照れ隠しというのは嘘よ」
「一番抜けちゃいけない要素が抜けちゃった!」
「うるさいわねえ。いい加減にしないとあなたのニックネームを生理痛にするわよ」
「投身モンのイジメだ!」
「何よ。文字通り生理現象なのだから、恥ずかしいことではないわ」
「悪意がある場合は別だろう!」
 その辺で満足したらしく、戦場ヶ原は、ようやく、忍野に向き直った。
「それから、何よりもまず、私としては一番最初に訊いておきたいのだけれど」
 忍野にというより、それは僕と忍野、両方に問う口調で、戦場ヶ原はそう言って、教室の片隅を指さした。
 そこでは、膝を抱えるようにして、小さな女の子、学習塾というこの場においてさえ
不似合いなくらいの小さな、八歳くらいに見える、ヘルメットにゴーグルの、肌の白い金髪の女の子が、
膝を抱えて、体育座りをしていた。
「あの子は一体、何?」
 何、というその訊き方からして、少女が何かであることを、戦場ヶ原も察しているのだろう。
それに、この戦場ヶ原ですらそこのけの、剣呑な目つきで、少女がただ一点、忍野を鋭く睨み続けて
いることからも、感じる者は、何かを感じるはずだ。

「ったく、ずけずけと言いたいこといいやがって。お前は本当に生意気なガキだな、お仕置きしてやりたくなってくるよ」
「お前は本当に生意気なおっぱいだな、お仕置きしてやりたくなってくるよ? 阿良々木さんは時たまとんでもなくいやらしいことを仰いますね」
「言ってねえよ!」
「ガキをおっぱいと置き換えるだけでここまでいやらしい台詞になるとは驚きです」
「メインの単語をおっぱいと置き換えていやらしくならない台詞なんかねえよ!」
何の会話だ。
 この辺は勢いだけで喋っている気がする。
「でもまあ、確かにお前の言う通りだ。ちゃんと腹をくくらないとな」
「ええ。ついでに首もくくってください」
「やだよ! まあ、そうは言っても、その辺は僕の優秀な家庭教師陣に任せておけば心配ないだろ。あいつらは、
僕にサボることなんて許さないぜ。嫌でも毎日、勉強することになるさ。はは、学年一位と学年七位がついているからな、
はっきり言って無敵だぜ」
「プラスチックな考え方ですねえ」
「…………」
 プラスチックに『前向き』的な意味はない。
「しかし阿良々木さん、いかにその名だたるお二方と言えど、学年最下位を相手取るとなると、一筋縄では……」
「さすがに最下位なんか取ったことねえよ! それに今回はかなりいい順位だったんだって! 僕の話を聞いてろよお前は!」
「自慢話を聞けと言われても困りますね。阿良々木さんの話で面白いのは、不幸自慢だけです。その辺りをもっと掘り下げてください」
「なんで僕がそんな自分苛めみたいなことをしなくちゃならないんだよ!」
「では、不肖ながらこのわたし、八九寺真宵が代弁しましょう。阿良々木さんの不幸自慢シリーズ。『鴨が葱を背負ってやってきた! でも阿良々木さんは葱が嫌いでした!』」
「僕の不幸をでっちあげるな! 葱は好きだよ、栄養があるもん! 風邪引いたとき喉《のど》に巻いたりするもん!」
「一見幸せなようだけれど、よく考えてみれば実は不幸というのが、阿良々木さんの売りです」
「ねえよそんな設定! 今後行動しづらくなるような、中途半端に変な設定を付け加えるな!」
「阿良々木さんの不幸自慢シリーズパート2」
「パート2まであるのか!? パート1が全米ナンバーワンヒットでも記録したのか!?」
「『阿良々木さんは夜中に小腹が空いたので、カップラーメンを食べることにしました。けれどそのカップラーメン、インスタント食品の癖に作り方が意外と難しい!』」
「ち……畜生! 否定したいところだが、残念ながら何回かあるな、そういう経験! パート2の方が名作とは、これは稀有《けう》な例だ!」
「阿良々木暦は永久に仏滅です」
「何もかもが嫌になるフレーズだ!」