【ラノベ】自作を晒して感想をもらうスレvol.35

このエントリーをはてなブックマークに追加
176 [―{}@{}@{}-] この名無しがすごい!
>>170
>第一章〜猫御殿〜

 雨がやんだばかりの空にはいまだ分厚い雲が立ち込めている。三月下旬だというのに空気は冷たく、重い。
 総上広彦を乗せた軽トラックは暴れ馬よろしく音を立てて、川沿いに立つアパートの前に停まった。
「よっしゃー! 今日も絶好調、オレ!」
 運転席から飛び降りた勝呂猛が両腕を伸ばし、天へ届けとばかりの大声を上げる。
 逆立てた金髪に、唇や眉や鼻にはピアスを通し、擦り切れたジーンズと破れかけのシャツに鋲のついたジャケットという格好。今年、成人式を迎えたばかりだが、新成人としての落ち着きはまるでない。
 広彦は遅れて助手席を出ると、かろうじて血の繋がりが証明されている義兄を絶不調な青い顔で振り向いた。ダウンジャケットにジーンズという普通の格好も、猛といると対照的な地味さがある。整ってはいるもののパッとしない顔つきのせいかもしれない。
「あんまり大きな声出さないでよ。ただでさえ目立つんだから」
 古くからある工業団地だ。建物はおろか公園や商店などもどことなく古臭い。トタン造りのアパートを背景に、猛の姿は妙に目立っていた。というか浮いている。
「おらおら、さっさと荷物運ぶぞヒコ助」
 まるで聞いていないが、いつものことなので広彦も気にしない。トラックごとアパートに突っ込まなかっただけましだ。
「鍵もらって来る」

ここは普通