【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part59【変な女】

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76この名無しがすごい!
このバカ本気でサンタクロースがいると信じてやがる。もう高校生なのに。
もはやかけるべき言葉もない。お前がベッドの枕元に吊るした靴下にプレゼントを入れているのは、サンタさんじゃなくて親御さんなんだよ。
「それは知ってるわよ!だけど靴下にプレゼントを入れるのが親だとしても、サンタクロースがいないって証拠にはならないじゃない!」
「聡明で賢いお嬢さんだな。そこの愚図な少年とは人間の出来からして根本から違う。誰をも愛し、誰からも愛される素晴らしいお嬢さんだ。世界中の人間が君のような人物であるならば、今頃この世は愛と平和に満ち溢れているだろうに」
不法侵入者がハルヒの肩を持ちやがった。黙れよジジイ。さもなくば四千ケロで買ったチェーンソーで今すぐバラバラにしてやる。
「お年寄りに何て暴言を吐くのこのアホキョンがぁ!!」
頸椎に強い衝撃が加わった。衝撃で前のめりに倒れ、顔を床にしたたかに打ちつける。打ち付けた反動で宙に舞い、背中から無様に着地する。
そのまま馬乗りの姿勢で俺にまたがったハルヒはたった一言、
「これ以上サンタさんに無礼な口を利いたら、あんた解ってるんでしょうねキョン?」
こめかみに青筋を浮かべたまま、この上なく魅惑的な微笑みを浮かべて俺を見下ろした。

ハルヒ特製鍋の歓待を受ける自称サンタクロースと、突然の訪問客に色めきたったハルヒや妹やその他大勢を尻目に、
俺はソリに占拠された座敷の片隅で普段の面々から説明を受けた。
古泉いわく、あのサンタクロースはハルヒが生み出した存在ではないかと。だったら蒼い銃って発想がどこから出てきたのか教えてくれ。
朝比奈さんいわく、あれは聖ニコラウスが現代にワープしてきた存在かもしれないと。聖ニコラウスはあんな格好してましたっけ。
長門いわく、この宇宙には物理法則を超えてソリを飛ばす存在がいても不思議ではないと。そうだなお前と朝倉と喜緑さんなら可能だよな。
皆の言い分を簡潔にまとめよう。
さっぱり解らん、という訳だ。そんな正体不明の存在を相手に鍋を振舞い酒を飲ませているハルヒの気がしれない。
「まあ、涼宮さんらしいと言いましょうか」
確かにな古泉。あいつは普段から宇宙人とか未来人とか不思議を探して街中を走り回っているが、いざ本物に遭遇しても普段通りに振舞うんだろうな。
「お母さん」
その通りだ長門。ハルヒのメンタリティはオカンのそれに近い、と俺は勝手に思っている。気に入った人間に対しては、やたら面倒見が良い。
それは今年春ごろ長門の看病に押しかけた時、団員の皆が思い知らされた事だった。そしてオカンは、特定の人間に対してやたら冷たく当たるものだ。
「ふええ。やっぱりキョンくん、いずれ禁則事項を……」
はいストップです朝比奈さん。未来人のあなたが言うとマジでシャレになりません。未来なんてわからないから二人は今を生きてるんです。
それにしてもジジイに鍋を喰わせつつ、ジジイが垂れ流す愚痴を適当にあしらい、うちの妹を鶴屋さんの下へ使いに走らせているハルヒを見ていると、
あれが未知と遭遇した時の正しい対処法であるような気もしないではない。
鶴屋さんは鶴屋さんで、破れた障子の事など気にしてもいなかった。余所様の家の事で腹を立てていた自分が馬鹿馬鹿しく思える。
確かに未知なる存在が、人間に敵対するものとは限らない。むしろ最初から敵対の意思をもって接してくる奴の方が少数派だ。
それが宇宙の真理である、と不意に気付いた。長門の親玉に対して、朝倉の親玉が決して優位には立てない理由がそこにはある。
そう、ハルヒの対応は宇宙の常識から考えれば極めてまともだった。とても洗脳されているようには――