…あるとき趙高はこれら宦官と女官を試しておかねばならない
と思い、二世肯定胡亥の前へ鹿を一頭曳いて来させた。
「なんだ」
胡亥は、趙高の意図をはかりかねた。
「これは馬でございます」
と、趙高が二世皇帝に言上したときから、かれの実験が
はじまった。二世皇帝は苦笑して、趙高、なにを言う、
これは鹿ではないか、といったが、左右は沈黙している。
なかには「上よ」と声をあげて、
「あれが馬であることがおわかりになりませぬか」
と、言い、趙高にむかってそっと微笑を送る者もいた。
愚直な何人かは、不審な顔つきで、上のおおせのとおり、
たしかに鹿でございます、といった。……
『項羽と劉邦』「秦の章邯将軍」より
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