394 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/05/05(金) 12:24:17 ID:780XsChB
>疾走。停止。一撃。
>キャスターの神言を全て弾き返し、誰にも対抗する隙を
>与えず、セイバーは勝負を決した。
>踏み込む速度、大地に落とした足捌き、横一文字に振り抜いた剣に是非はない。
>彼女の視えない剣は敵マスターを一閃した。
>最高の機を窺っての奇襲である。
>斬撃は大木を断つほどの会心さで、仕損じる事なく葛木宗一郎を二つに分ける。
>いや―――分ける、筈だった。
>「な―――――――」
>当惑で息が漏れる。
>一体どうなっているのか、と。
>剣を振るった姿勢のまま、彼女(セイバー)は呆然と目の前の敵を見た。
>「―――――――ばか、な」
>彼女でさえ事態が掴めていない。
>横一線になぎ払った必殺の一撃。
>それが止まっている。
>敵の胴体を薙ぎ払う直前に、何かに刀身を挟まれて停止している。
>「――――足と、腕?」
>そんな奇跡が起こりえるのか。
>彼女の剣は、敵である葛木宗一郎によって止められていた。
>膝と肘。
>高速で切り払われるソレを、男は片方の膝と肘で、挟み
>込むように止めていたのだ。
404 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/05/05(金) 12:38:44 ID:780XsChB
>「――――――――」
>無論、彼女は知らない。
>素手で相手の武器――――刃を受け止める武術がある事も、それを実現する達人のことも。
>それでも、これが通常の戦いなら放心する事などなかっただろう。
>だが事はサーヴァント戦。
>敵はあくまでただの人間だ。
>それが必殺の一撃、視えない刀身を捉え、かつ素手で押し止めたなど、もはや正気の沙汰ではない・・・・・・!
>「―――侮ったな、セイバー」
> それは、地の底から響いてくるような声だった。
>「・・・・・・・・・・・・・・っっっ!!!!」
> セイバーの体が流れる。
>止められていた剣を全力で引き戻そうとする。
> その瞬間。
>「がっ――――!?」
> 彼女の後頭部に、正体不明の衝撃が炸裂した。
>「は、っ――――!?」
>訳が判らない。
>素手で剣を止める、などという相手は初めてだ。
>いや、となると今のは素手による攻撃か。
>つまりは殴られた。この間合い、お互い肌を合わせる距離で、後頭部を殴られた・・・・・・?
>「っ――――!」
>正体が掴めないまま回避する。
>「は――――!」
>こめかみを掠っていく“何か”。
>それが何らかの魔術によって“強化”された拳であると看破し、セイバーは跳んだ。
>長柄の武器を持つ以上、素手の相手に対して接近戦(クロスレンジ)では不利だ。
>セイバーは自身の間合い、剣を生かす一足一刀の間合い(ショートレンジ)まで後退する。
>無論、体は敵を見据えたまま。
408 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/05/05(金) 12:42:34 ID:780XsChB
>無論、体は敵を見据えたまま。
>敵にとって有利な間合いを離そうというのだ。
>当然逃がすまいと追ってくる敵を迎え撃つのが定石である。
>が、敵は追ってこなかった。
>キャスターのマスター、狙われれば倒されるしかないその男は、その場に踏み留まったまま、
> 彼女の鳩尾(みぞおち)を貫いていた。
>「っ――――!?」
>吐息が漏れる。
>貫いたのは衝撃だけだ。
>攻撃は鎧に阻まれ、その衝撃だけを伝えてくる。
>「は、あ――――!」
>続く衝撃。
>的確に急所だけをねらってくるソレは、紛れのなく、人の拳そのものだった。
>「――――――――」
>息を呑む暇が彼女にあったか。
>巌(いわお)じみたあの指が衝撃の正体だと理解した時、勝敗は決していた。
> 繰り返される拳の雨。
>神鉄で作られたかのような強度と重さをもって、男の拳はセイバーをつるべ撃つ。
>それを、どう表現すればいいのか。
>鞭のようにしなる腕は、しかしあくまで直角に変動する。
>放たれる速度が閃光ならば、そこから更に変化する二の腕は鬼神の業か。
>「は――――っ――――!?」
>視認する事さえ困難な一撃は、悉く急所のみを標的とする。
>反撃など許されない。
>剣を振るう腕さえ狙われ、その一撃(いたみ)は鎧を通して心髄にまで届いていた。
>攻撃は常に外から内に。
>大きく周りこむ腕は肘を支点に軌道を変え、あらぬ方向からセイバーを打ちのめす。
111 :
吾輩は名無しである :2006/08/27(日) 10:45:06
410 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2006/05/05(金) 12:46:49 ID:780XsChB
>「は――――、くっ――――!」
>鈍重で鋭利。
>即死性はなく、だが死に至る毒を帯びた突起物。
>それがこの攻撃の全てだった。
>拳は躱せないものの、威力はそう大きくない。
>だが―――受ける度に、痛みで意識が停止する。
>その僅かな隙をつき、根こそぎ意識を刈り取ろうと後頭部に食いつく一撃は、死の鎌を連想させた。
>「っ・・・・・・・・・・・・!」
>それを直感だけで回避する。
>―――腕や胸を狙う一撃はいい。
>だが頭――――後頭部を打たれては倒される。
>それ故、セイバーはその一撃にだけ神経を集中する。
>剣を素手で止める怪人。
>初体験とも言える奇怪な攻撃方法を前にして、彼女が頼りにするものは己が直感だけだった。
>「―――よく躱す。未だ混乱しているというのにな」
>敵の腕が止まる。
>その構えは、拳と同じく岩のように不動。
>「―――なるほど。眼がいいのではなく、勘がいいという事か」
>「――――!」
>男の体が動く。
>繰り出される一撃は何が違ったのか。
>確実に致命傷を避けていたセイバーは、その一撃を躱せなかった。
>「あ――――」
>意識が落ちる。
>後頭部に落ちた衝撃が脳を犯す。
>「く――――!」
>それでも両腕を上げた。
>男の攻撃では彼女の鎧を突破できない。
>ならば―――男が狙うのは、剥き出しである彼女の顔だ。
>セイバーは両腕をあげ、自らの顔を守る。