「塩狩峠」読書感想文を書いて下さい    

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しかし、そのことに私は作者の一種のずるさを感じる。
あの鉄道死事故から、自己犠牲の精神を感じ、その精神を尊いものと感じる
のは、あくまでも作者個人の主観的見方である。
その主観的な見方を、「事実に基づく」小説として構成することにより、
まるで客観的なことのように読者に思わせてしまう。
あの鉄道死事故の真相は、事故死した本人にしかわからないのである。
それを犠牲の死と解釈しようと、単なる事故死と解釈しようと、
それは個人の主観的な解釈にすぎない。
それを作者は小説という手法を用いて巧みに、
「あの事故には尊い自己犠牲があった」ことを客観的な事実であるかのように
思わせてしまうのだ。