35 :
庄司薫:
朝、目を覚ましたらナンだか、体の調子が相当猛烈に変だった。
ひょっとしたら、それまで見ていたヘンテコな夢のせいかもしれない。
(どんな夢か書きたいんだけどキット300枚にはなっちゃうんだ、あ〜あ)
何とか頭を起こして見ると、何時もとはまったく違った自分の体が
目に飛び込んできた。
つまり、ベッドに寝ていたのは、いつもの「とっても元気な薫君」じゃなくて
褐色の弓形の固い節のある物体だったんだ。とってもイカス模様付きの。
つまり猛烈相当にはしょって言ってしまうと、僕は毒虫になってたんだ。
普通の若者なら、こういう時、とっても驚いたり嘆いたりするんだろうけど
僕はこの時、そんなに驚かずに、この体でテニスができるかどうかを悩んでいた。
つまり、今日はあの由美のヤツとテニスの約束があったんだ。
アイツときたら、相当気難し屋で、でも猛烈にステキな所がある女の子なんだ。
(これは内緒だよ)
でも、すぐに何だかどうでもよくなってしまった。
それはある事に気づいてしまったからだ。
つまり「毒虫になってしまう」という正に人生の一大事という時に
テニスの事を心配する僕は、「お行儀が良くて」「日和見主義で」「反革命的で」
「騒いだり嘆いたりしない」つまり相当に厭味ったらしい人間ではなかろうか。
僕っていう人間は(今は毒虫だけど、ね)
どこまでも「若者らしくない」人間ではなかろうか。(あ〜あ)