寺山修司について語ろう!

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236吾輩は名無しである
「剽窃」って言うか。普通。
寺山については、ちゃんと
「手くせが悪い」って言ってやってほしい。
悪い手癖と
危なげな汚れた存在感で
体制の大元の正当性を揺さ振り
危うくして見せることが
寺山の方法論であり「真骨頂」であったのだから。

寺山は「あなた」から必ず何かを盗み
そして「あなた」の居る世界を必ず摺り替えていったはずだ。

あなたは今まで世間からあてがわれてきた「書を捨て」て
不安な面持ちで全く新しい「街へ出」なくてはならなかったはずだから。
そのとき「あなた」は
祖国を蜃気楼のようにゆらゆらと煙った霞と見るだろう。
「あなた」には、それが「霧」によるのか「煙草の煙」によるものなのか
もはや判然とはしないのだ。

そうだ。
ペテン師が行く。泥棒が行く。人さらいが行く。寺山が行く。

「あなた」は寺山の足取りに惑わされることなく
彼の翻すマントを見送らなくてはならない。
叫ぶがいい。
「詐欺!」 「盗っ人!」 「子取り!」

指差すがいい。
その口笛の音色にさらわれないために。
その踊るような足取りについて行かないように。

騙されてはいけない。
その純朴な訛りの残り香の匂う言葉が
「あなた」をサーカスに売りとばすのだ。
幻の見世物小屋へと。

耳をふさぎなさい。指差しなさい。口汚なくののしりなさい。
そうすれば「寺山」は通り過ぎるから。

ほら見えるだろう。
寺山が歩いてゆく。
あんな軽はずみな足取りで。あんな怪しげなコートをなびかせながら。
しゃべる言葉はすべて他人の言葉さ。
あれが、「人さらい」の寺山さ。

ついていっちゃあいけないよ
さあ、指差して見送りなさい。