後藤明生!

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1大江健三郎
 なんという奇妙な男だろう、この作家は! 登場人物を奇妙な男とするのは難しくないし、奇妙な味のする小説というのも少なくない。しかしこの作家は、小説にとりこむ日常生活の細部をゆがめることはせず、登場人物に甲高い叫び声を発せしめもしない。しかしつねに、追いつめられる登場人物によりそって、苦渋のまじりあった救済たる、あわれなユーモアの油汗をうかべた顔を、われわれに向けているのである。
 しかもその間、微妙に艶消しされて、単なる饒舌体をこえたこの作家の散文は、威嚇しはしないが不思議に気にかかる、穏やかな尾行者のように、しだいに確実にわれわれを追いつめるようではないか!
2吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 01:59
別スレで「壁の中」をめぐって盛り上がってますよ。
3吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 02:08
現代日本文学の誇るマイナーポエット

4吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 03:03
「挟み撃ち」はすごいね。あの時間のなんとか
5吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 12:50
小説家を目指してる人は、この人の真似するのっていいかもね。
6名無しさんの主張:2001/01/29(月) 14:24
ようやく立ち上がった! おれも後藤先生が大好きなんだよな。だからバカダ大学の文芸科に逝ったのに・・・。先生は近畿大に逝かれてしまわれて
愚痴はともかく、『挟み撃ち』の緊張感はすごいよね。もちろん、時代状況もあったのかもしれないけど。
これほど実験的意欲的野心的な作家って、ほとんど見当たらないよね。
7名無しさんの主張:2001/01/29(月) 14:39
付け加えると、この人の評価があまり高くないことに不満。
内向の世代とかのレッテルを貼った連中はまぁどうしようもないバカぞろいだからどうでもいいけど、中堅・若手の評価があまり高いとはいえない。
蓮実や柄谷は評価しているけど、それ以降で高く評価している批評家ってあんまり見当たらないし。

まぁ、おれは後藤先生と中上が日本の近代文学を終わらせたという説を唱えているような人間だから、特に上に書いたような思いが強いのかもしれないけど、もっと評価されるべきだと思う。
8名無しさんの主張:2001/01/29(月) 14:42
>>5
80年代以降に明らかに先生を真似てると思われる新人が何人も出てきているよ。
つーか、島田や高橋源一郎なんて、後藤先生のエピゴーネンだとおれは思っている。
9ixion:2001/01/29(月) 14:42
この作家の本をことごとく絶版・品切れにしている出版状況に
ムカツク。キーっ!!

『首塚の上のアドバルーン』くらくらしながら読んだ。同じ時期に
古井由吉も読み始めたんで、なんかこの2人にはすごく思い入れが
ある。

>これほど実験的意欲的野心的な作家って、ほとんど見当たらないよね
まさにその通りだと思う。
10名無しさんの主張:2001/01/29(月) 14:49
そうそう、バカが後藤先生や古井由吉あたりをまとめて「内向の世代」と呼んだけど、その土俵にあえて乗るならば、中上あたりもおれ的には含めたいね。
さらにいえば、大江はこの世代に緊張感を持っていたはず。
11名無しさんの主張:2001/01/29(月) 15:00
>>9
そうなんだよね。今の状況だと全集はむつかしいだろうね。
読むだけなら図書館でもいいけど、先生のは持っていたいしね。
今から10年以上も前の高校のとき、たまたま『ドストエフスキーのペテルブルグ』を買っていたんだけど、あの時買っておいてよかったなとしみじみ思う今日このごろ。
12吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 15:51
近畿大学の本屋に行くと後藤明生の本が山積みになっているという噂が…
とゆうか全集でないの?
生前に出版社から全集を出したい、とかいう話があったとき
「私はまだ死んでいません」と断ったそうだが。
13偽金子光晴:2001/01/29(月) 16:44
全集どころか遺作も出版されていないでしょう?
「この人を見よ」つって、たしか「群像」で未完な筈。
「壁の中」(だっけ)は凄すぎます。どっかの文芸誌に11年間わけのわからんことを
連載しつづけて、1頁二段組で800頁くらいびっしり。読むと狂う。真の前衛です。
14名無しさんの主張:2001/01/29(月) 18:11
>>12
>「私はまだ死んでいません」と断ったそうだが
後藤先生らしいエピソードですね。生前から選集を出しているどこぞのバカ作家に少しでも、先生の姿勢を見習ってほしいものだな。
15吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 18:48
>これほど実験的意欲的野心的な作家って、ほとんど見当たらないよね
>まさにその通りだと思う。

いえ、ひとり居ります。
「小島信夫」です。
「島田・高橋が後藤明生のエピゴーネン」である以前に、
後藤氏が小島信夫のエピゴーネンなのです。
16名無しさんの主張:2001/01/29(月) 20:00
小島信夫はいい作家だとおれも思うし、好きだけど(ただし、「別れる理由」以前に限定)、
>後藤氏が小島信夫のエピゴーネンなのです
これはねえだろ。
理由は?

もしかしたら、おまえ、どこかのスレに書き込んでいた安部公房と高橋源一郎の違いすらわからん厨房?
17JPB:2001/01/29(月) 20:38
後藤大先生!
そうですな〜講談社文芸文庫に二冊入っただけでもよしとすべき
作家ではない、と。あのアンケートはがきに色んな作品書きまくって
送れば、何か入るかもしれない。版権が切れたあとですが。

否定されるかもしれませんが、武田泰淳先生との系譜で、戦後文学
の一つの尾根を形作っていると・・・。
18吾輩は名無しである:2001/01/29(月) 21:09
>13
「海燕」です。
私小説についての議論が続く、高杉晋作→トカトントン→志賀の「お殺し」
なんて具合、カラスと一緒で楽しみは後とっておくってことで、
連載中は我慢して読まなかったのだが、
「海燕」休刊、福武(なつかしなあ)の出版撤退で宙に浮きっぱなし、
残念至極、でもこういった「宙吊り状態」も
後藤的だなあ。
19名無しさんの主張:2001/01/30(火) 09:41
>>17
いやいや、おれも武田泰淳→小島信夫→後藤明生という系譜は否定しないが、後藤先生は前二者を端的に超えているような気がするのだが。
20吾輩は名無しである:2001/01/30(火) 10:25
ゴーゴリ的ユーモアとゆうか、宇野浩二的饒舌というか
まあそのへんがあることは間違いない。
21JPB:2001/01/30(火) 22:51
>19さん
むむ・・・超えるという表現は、武田先生の書くダメ男に無条件に
共感する私としては、それがアリはアリだと納得はしても、感情的な
ところで承服しえないものを感じる・・・
22吾輩は名無しである:2001/02/06(火) 02:38
金井美恵子がどっかでいってたけど、逝くタイミングも絶妙だったね。
23吾輩は名無しである2:2001/02/06(火) 19:19
近畿大学で、ゲリラ聴講しとけばよかったね。
24吾輩は名無しである:2001/02/06(火) 19:50
後藤先生といえば、フォルマニズムの導入なんかがスゴイ視点だ、とうちの大学の先生も話していましたよ。島田雅彦はエピゴーネンだ、というような話も同時にしていました。
25吾輩は名無しである:2001/02/27(火) 21:18
つい先ごろ出た「ユリイカ」のカフカ特集号に後藤明生とからめた小論あり。
「蜂アカデミーへの報告」がどうのこうの…。
26ixion:2001/02/27(火) 23:17
蜂アカデミーについて、やたらとエッセイで繰り返してたな。
カフカと絡めるなら、『壁の中』での「死刑宣告」の使い方と、
顕わな言葉/命令、そして地下室で書くことなんて視点でも
論じて欲しい…かな。いや、別にいいや^^;
しかし、後藤明生はエッセイはつまらないのに、『壁の中』
(再読中)みたいに作品の中でいろいろな日常の些事と文学作品
を繋げていくと、めちゃくちゃ面白いんだなァ。
天丼の話から荷風とダザイにつながっていくところなんか、最高!!
27吾輩は名無しである:2001/02/27(火) 23:42
>1大江健三郎さん
後藤はどうでも、あんたに訊きたいことがある。
「取り替え子」の中のあの肖像写真は、何だ? 文学の
放棄か、全く新たな手法の実験のつもりか? 己の魂の
裸形を呈示して、永遠に変わらぬものの存在を信じようと
したわけか? 小説は破綻し、とってつけられた「救済」
は救済どころではない、作者自身にも信じられていない
ただの「形」じゃないか? どうよ。(スレ違いはわかって
るけどな、大江本人に問いたいわけよ)
28吾輩は名無しである:2001/02/27(火) 23:52
>27
大江など
相手にするな
俺は逝く
29吾輩は名無しである:2001/02/28(水) 00:43
このスレ見て読んでみようと思ってとりあえず「挟み撃ち」読んだ。

30吾輩は名無しである:2001/02/28(水) 00:56
>29
で、どうよ?
31吾輩は名無しである:2001/02/28(水) 01:17
作品に対する感じ方って人それぞれだからね。みんなはどんなところに
感動したんだろう。俺は主人公が心の中で兄に語りかける部分が良かった。
陸軍幼年学校に入るつもりだった。それがあるとき(敗戦)から間違った
ことだということになったとかいう部分(もう図書館に返しちゃって
分からないけど)。最後の蓮實重彦の解説のような読み方(後藤は語ろうと
しているのではなく、まさしく書こうとしているとかいうやつ)もありだと
思ったけど、それだけで片付けるのは惜しいと思った。
32ixion:2001/03/12(月) 02:05
今『メメント・モリ―私の食道手術体験』読んでるんだけど、病気って
陳腐に「生と死」とか「老い」とかだけじゃない、何かしらの「不安」を
文学をする者に感じ取らせる機会なんだろうな…。古井由吉や日野啓三
なんかの「病後の生命観」みたいな作品もそうだし。

病後、といえば、大庭みな子なんかはどうなんだろう…と呟きつつあげ。
33AGE:2001/03/13(火) 00:57
この人の本、本当に古本で見かけないな。
誰か、売っているところどこか知らないか。
34:2001/03/13(火) 01:07
このスレ見てから後藤明生が気になってて、
今日ついに、古本屋でみつけたその名も「めぐり逢い」!!
読むぞ読むぞ。

「壁の中」読んだのは8年も前のことで、ガキでわかんなかったんだなあ。
今も進歩してなかったりして。とにかく読みます。
35吾輩は名無しである:2001/03/13(火) 01:17
>ixionさん
後藤の場合はそんな「大問題」には無縁だったようなきがしますが…。

>AGEさん
馬場の明治通りそばの古本屋にはいつも何冊かあったと思います。
だだし値段高いですけど。
36ixion:2001/03/13(火) 01:34
うん、俺も結構そう思ってたんだ。けど、やっぱり「昭和1ケタの」
死が連続し(磯田光一、前田愛、澁澤龍彦、色川武大、篠田一士、
阿部昭ら)、また「婦人公論」副編集長だったT氏の死などに触れ、
「私は決心した。果して、生きてこの連載を完結させることができるか
どうか。自信はなかった。とにかく書けるところまで書いてみよう」
なんて後書きにあるのを見ると、やっぱり病気の不安と書くことの
間の関係、なんて方に目が向いちまうもので…。
ただし、後藤明生は楕円、つまり2つの中心をもつことを重視した
作家だから、そこから「死を見つめる自己」なんて溺れかけの
ナルキッソス的な主題へは向かなかったのでしょう。それが彼の
「笑いの距離」のとりかた、というか、「ニニンガシ」的マジメ
な問題からのズラしかただったんでしょう。
37ixion:2001/03/13(火) 01:37
文がとてつもなくヘンだな、思いつくまま「やっぱり」「でしょう」
を連発^^;

しかし、後藤明生のエッセイはあまり面白くないんだけど、この
『メメント・モリ』は、自分が入院して手術を受けた時のことを
思い出して読んでいるので、楽しめる。

38モー娘。らぶ。。。:2001/03/13(火) 12:04
久しぶりにのぞいてみたら盛りあがってるな。
ちょっと話がそれるかもしれないけど、『挟み撃ち』って緊張感が漲っているよね。たしか72、73年ごろの作品だよな。あれはなんでかな?
>>9
おれにとっても後藤先生と古い由吉と中上って特別な存在なんだよな。それまで現代文学ってほとんど読んだことなかったんだけど、高校の頃、この人たちの小説を読んだことがきっかけになって、そのあとはズブズブ・・・なんだよな。

あ、ちなみに最初の方にずらずらと書き込んでいる「名無しさんの主張」はおれです。最近コテハンにしました。
39ixion:2001/03/19(月) 04:28
ちょっと挙げてみたい。
つーか、読んでる人少ないのか?もったいない。
40吾輩は名無しである:2001/03/19(月) 12:45
阿部和重の「ABC戦争」って「挟み撃ち」の影響を受けていますよね。
41吾輩は名無しである:2001/03/28(水) 16:18
>>40
おれは阿部和重を読んでないからなんともいえないけど、80年代以降に出てきた人で影響を受けている作家はたくさんいるよね。
上のほうにもあるけど、島田雅彦はかなり影響を受けていると思うよ。

しかし、読んでる人少ないんだな…。これでは全集は無理かな?
42吾輩は名無しである:2001/03/28(水) 22:33
「壁の中」をもう何年も探しているけど、未だに手に入らない。
誰かいらなかったら譲って。
43吾輩は名無しである:2001/04/19(木) 17:08
>阿部和重の「ABC戦争」って「挟み撃ち」の影響を受けていますよね。

阿部和重の「アメリカの夜」を群像新人賞で押したのは後藤明生ですね。
44吾輩は名無しである:2001/04/19(木) 18:48
>>42
そういや俺も持ってないや。出版社どこだっけ?中央公論新社?
福武?どちらにせよ…う〜む…。
講談社が出してくれるといいんだけどね。「挟み撃ち」とか
「首塚の上のアドバルーン」みたいに…。
45吾輩は名無しである:2001/04/19(木) 20:31
>43 そうなの?柄谷じゃないの?

しかし確かに不思議な作家だよね。元代理店勤務だよね?
なのに何故マーケティングの匂いがしないのだろう。
46吾輩は名無しである:2001/04/19(木) 20:49
代理店というのは広告代理店のことでしょうか。
広告代理店出身者の作品はもう、一つのジャンルになっているのかもしれません。
新聞社や通信社の記者兼業作家に比べて出版社としてのコストパフォーマンスはたかいようです。
もちろん、後藤さんは、代理店勤務とは無関係に作品を仕上げられておられる方ですが。


4742:2001/04/19(木) 21:33
>>44
先日、本屋さんから入手したと連絡があり、
やっと手に入れることができました。
どうも、ありがとう。
4843:2001/04/20(金) 22:34
1994年・第37回群像新人賞選評
阿部和重の『アメリカの夜』は、まず書き出しに魅力を感じた。カフカのある
作品の気分=論理である。途中、「アート系」学生たちの三角関係に少々退屈
したが、やがて<語る私=語られる私>のテーマが出て来た。また<模倣>の
テーマが出て来た。すなわち、これは<自己言及>のテーマを<模倣>の方法
によって書こうという試みである。ただ、結末の墓誌の誘惑は、いささか「文
学」的である。しかし<読むこと=書くこと>というテキストの原理を、その
まま小説のテーマ=方法にしようと試みた作者には、たぶんそのこともすでに
わかっているのだと思う。その可能性に一票を投じた。
49JPB:2001/04/20(金) 22:49
>45さん
なんかで読んだ記憶だと、『平凡パンチ?』の編集長だったことが
あるでしょう、後藤さん。まあ、割と名編集長だったらしいけど。
あんまり、仕事に熱意が湧かなかったとか、言ってた記憶が。

彼の学生小説コンクールの『赤と黒の記憶』(?)も読んでみたい。
全集出ないかなあ・・・
50最大の謎:2001/04/21(土) 14:24
かれは晩年なにゆえに近大なんぞというドキュソ大学での
職を得たのか?
51吾輩は名無しである:2001/04/21(土) 14:27
変な政治家の応援演説やったりもしてた
52吾輩は名無しである:2001/04/21(土) 20:01
後藤明生、うちは田舎なのに図書館にはやたらこいつの蔵書がありやがる。
 ようやくまとめて読めるぜ。やったね!
53吾輩は名無しである:2001/04/21(土) 22:32
>49 編集長?初耳です。学生時代の作品にも食指が動きますが、
小学校の作文でストーブの注意書きを丸写ししたというすさまじい
エピソードも残っていますね。言葉そのものにあまりオリジナリティを
求めない、彼らしいエピソードと思います。
54吾輩は名無しである:2001/04/21(土) 22:37
>52
うちは一応市なのに後藤明生関係の本は一冊もありません。
どうなってんだ〜、N市!
55JPB:2001/04/21(土) 23:11
>53さん
この記憶は確かだったような気がするんですが、後藤さんはあまり
その辺については語らない(というか、知らない)ですからね。
ちなみに、大学卒業して、実家に帰って毎日図書館に通って
ドストエフスキー全集読んでたっていうのも、っぽいですよね。
56禿(-h)改めキトリ・オム:2001/04/22(日) 03:58
「とつぜん」「根拠もなく」文学を擁護してしまったひと
57禿(-h)改めキトリ・オム:2001/04/22(日) 04:01
「挟み撃ち」のピンク映画館妄想シーンとか、実は普通に笑えるよね。「脇毛!」とか言ってさ。
うわやべ、高レベルのスレなのに品位落としちゃってスマソ sageとくね
58吾輩は名無しである:2001/04/23(月) 12:34
>>55 「平凡出版」勤務確認しました。
ところで、この人の楕円の思想ってちょっとわかりにくくないですか?
花田清輝とは又違うし。。
59吾輩は名無しである:2001/04/23(月) 15:36
>59
そうね。花田の楕円の思想は確かに魅力的だけど、後藤のものとは異なるよね。
後藤は2つの中心の一方を外部に置いていた気がするよ。
60ixion:2001/04/23(月) 15:56
ふと。藤枝静男をさらに軽やかにしたような、って印象は外れ?
まぁいいや。
楕円の思想は、ありゃ59さんの言うとおり、円に対するアンチと
して一方の中心を外に設定したような感じですな。円として安定せず、
ころころ転がってその軌跡が楕円となる、みたいな。『汝の隣人』で
デリダやらも意識していたし。ぴたっとキメたくなかったんでしょう。

ところで、『スケープゴート』の綴じ込み付録、蓮実との対談もってる
人、内容教えてください。マジでお願いします。
61吾輩は名無しである:2001/04/23(月) 18:26
藤枝静男。。後藤明生は空気頭は書かないだろうなぁ。
どっちが優れてるって話じゃなくって、藤枝は本気で変ですが、
後藤さんは何かおかしい気はするんだけど、変という括りには
入らない気がします。
62JPB:2001/04/23(月) 18:59
>ixionさん
その対談、『魂の唯物論的擁護のために』蓮実重彦 日本文芸社 1993
に入ってます。内容については別途、少し読まないと・・・スマソ。
63JPB:2001/04/23(月) 20:51
tu-ka対談まとめるの難しいっす。出来れば、その本で読んでみてください。
ガイドラインだけ。
題名:小説のディスクール
最初に近況・・・現在の近大教授の仕事について・・・後藤の書物に対する
蓮実の賞賛・・・そして、散文論
「僕の散文論というんですか・・・(中略)・・・何でもない、ただの言葉
を集めてエラボレートするというんですか、縒り合わせるというんです
か・・・(中略)・・・僕はそれを文体論のベースに置きたいというふうに
思っているわけです」
「その原則に則る後藤さんの則り方は、これが真実だからという確信
(ではなく)しょうがねえなあという感じ・・・」
「確かに自分が論として持っているものはあるんだけれども、それを
正論としては、これはどうもだせないんじゃないかなという二重の感情
があるわけなんです。・・・それが崩れていく形が文体にまた出てきている
ように思うのですね」
・・・そして、団地小説を具体例にして雑談・・・
「ですから、即物的に書こうとすることが、グロテスクみたいになって
くる・・・(中略)・・・すると、文章と物との関係が壊されてくると思うの
ですね。文章というのは壊れっぱなしじゃ駄目なんで・・・一回対象物から
破壊され解体された言葉みたいなものを、もう一回それこそエラボレート
するというか・・・そういうある種の「異化」の方法だろうと思うのですね、
僕の場合は」
・・・そして、雑談(むしろここが・・・)・・・
続く。
64JPB:2001/04/23(月) 21:11
・・・「とつぜん」という言葉をネタに、作品中の小説原理の話へ・・・
G「それに対して必然性じゃない、偶然性みたいな突然性の連続みたいな
ものを何か僕は世界の原理みたいな形で、一つ考えてるわけで・・・今、お
っしゃった探し物、整理が反整理になってしまう、しかしなんとなく偶然
みたいにでてきちゃうという、それは偶然性に対する僕の信仰であり戯れ
であるのかなあという気もしますけれども」
H「・・・「とつぜん」はある程度仕組まれた突然ですね・・・」
G「リアリズム的な因果関係を超えた「原因不明の世界」ということに
通じますね。そしてそれは、僕の小説世界のファンタジー、幻想という
というものの原理でもあります・・・」
・・・そして、『スケープゴート』そのものに関する雑談から「ニセ書簡」
的小説の話へ・・・
H「たとえば「黄色い箱」の終わり方はすばらしいと思うのです・・・」
G「これは自分でも好きな終わり方ですね。ただ漠然と意識にあったのは
太宰の「彼は昔の彼ならず」という小説です。いるんだかいないんだか
分からない相手に向かって、物干し場みたいな、屋上みたいなところから
どこかを眺めながら、ああだこうだと架空の、ニセのおしゃべりをしている
ような、そういう小説だったように思うんです。あのイメージがあったん
ですね・・・」
H「先ほどおっしゃった後藤さんの散文の論理からすると、「黄色い箱」的
な終わり方が、その散文的論理にいちばん合っているのじゃないか・・・それ
から「子供地蔵」の最後・・・クエスチョンマークじゃなくてエクスクラメー
ションマークなんで僕は好きなんです・・・」
G「やけくそでくっつけちゃったのかも知れませんね、ぽーんと・・・」
H「そんなはずないだろう、お前!って感じで」

65JPB:2001/04/23(月) 21:43
・・・論点U、「アミダクジ的遍歴」について・・・
H「これだけじゃなく・・・テクストからテクストが出てくるという話で
色々な作品が出てきますけれども・・・後藤さんの場合は、知的アクロ
バットという感じがしない。あれはなんでしょうか。」
G「・・・小説のレベルでの読み直しということも当然あっていいと思い
ます・・・僕の場合も確かに今までパセティックだと言われたものを、いや
これは喜劇なんだということは、読みによる解体だと思うのですね・・・
物語というものは・・(封鎖され、閉じ込められているものではなくて)・・
反対にテクストAからテクストBに遍歴していく、その遍歴そのものの
中に僕は物語というものの中に僕は物語というのが出てくるのじゃないか
というふうに思うのです・・・僕流にいうとアミダクジ的に遍歴していく、
その遍歴の形そのものが・・・新しい、別の物語をつくってゆくことになる
のではないか・・・解体=構築ですよね・・・」
・・・そして、雑談は続き、「類似」と「模倣」について・・・
G「実際、僕の小説の原理は「模倣と批評」ですからね・・・「模倣と批評」
は、その混血的ジャンルの歴史的特権でもあり、テクストのテクストとい
う「超ジャンル性」もそこにあると思います・・・ですから、類似ということ
が好きだということは、特殊性=創造性の文学論に対する僕の反文学論でも
あるだろうと思うのです・・・」
H「後藤さんの類似は、たとえば「単身赴任」という言葉から、韓国語の
「タンシン」までいっちゃう」
G「あれは遊びですな」
H「でも、その遊び、これも類似なわけです」
G「その通りです、「意味」の類似と「音」の類似があるわけで、まさに
あれはそうでした」
・・・そして、文壇との関係について・・・
H「・・・「XYZへの手紙」というのは・・・それ自体われわれが読むと、
大変な文学に対する・・・・・・・。」
G「茶化しと言いますかね(笑)」
・・・そして、「文体」(雑誌)の話題・・・『メメント・モリ』以降の作品に
対する、蓮実のコメントと雑談・・・そして、最近の創作状況・・・
H「『スペードの女王』時間(笑)」
G「・・・どうしてもその人のゴールデンアワーというか、ゴールデンタイム
というのがあるんですよね。蓮実さんもあの時間はゴールデンアワーですか。」
H「ええ、そのくらいになりますね。」
G「あんな時間に浮き立っちゃいけないんだろうけれども(笑)」
H「遠くで犬かなんか吠えている(笑)」
G「ペテルブルク派の小説というのは、あの時間を描いています。あの
時間の世界なんですよね。」
・・・・そして、散文的に終了・・・・

つーか、ふたりの会話の脱線にまた妙味と面白さ?がある、ということ
で、拙い抽象的なまとめになりました。本を見つけて、自身で読まれること
を期待。

長文レス、上げ続けで、申し訳ない。ホント。
66ixion:2001/04/23(月) 22:17
ありがとう、JPBさん!!
ああ、唯物論的擁護の中の対談がそうだったのかぁ。もう内容
覚えてないけど^^; お陰でおぼろげに思い出しましたわ。
『スケープゴート』自体は、『おもちゃの知、知、知』に入ってる
時の方が構成と相俟って面白かった。あの構成はすごい。

確かに、後藤明生は『悲しいだけ』も書かないでしょうねぇ…
>61さん
6761:2001/04/24(火) 19:44
>ixionさん あっ、そこ僕も言おうと思っていたところ(笑)
藤枝静男は戦略的なのか、それとも武者小路実篤的なのか。。
時々判断に苦しみます。
68吾輩は名無しである:2001/04/25(水) 12:53
十朱幸代のことが好きだっていうエッセイは面白かった。
69吾輩は名無しである:2001/04/27(金) 13:30
はじめて芥川賞候補作になった「人間の病気」って凄いですね。
70吾輩は名無しである:2001/05/19(土) 19:53
あげ
71JPB:2001/05/20(日) 02:47
『挟み撃ち』・・・いいよね。なぜか、新刊本と河出文庫と文芸文庫それぞれもって
るんだけど、河出のあのチープな表紙がまたいいですよね。
72吾輩は名無しである:2001/05/20(日) 23:52
後藤明生さんって「吉野太夫」書いた人?
(ちがったらスマソ)
73吾輩は名無しである:2001/05/21(月) 00:32
>72
そうだけど。
74名無しさん@1周年:2001/05/30(水) 21:41
後藤明生の著作の大半は、出身校の福岡県立朝倉高校に行ったら読める。同級生たちが
資金を出し合って「後藤明生文庫」を設立している。後藤も自著を提供していたので、
単著だけでなく、共著もそこそこ揃っているそうだ。
古書だと、確かにあまり出回っていないな。
75JPB:2001/05/30(水) 21:47
>>74さん
なんとっ。普通の人でも入れてくれるのでしょうか?

ついでに「針目城」にも行ってみたい・・・
76Fishman:2001/05/30(水) 21:50
えぇー、昔、福岡に住んでいたのに。。
朝倉高校ってどの辺でしょうか?
77吾輩は名無しである:2001/05/30(水) 21:52
いっそ、みんなで逝こうか。
「アドバルーン」しか読んでないけどいい?
78JPB:2001/05/30(水) 22:27
自称巡礼馬鹿です。
蕨、松原団地、幕張、信濃追分・・・ほとんどストーカーの域ですな。
軽井沢には後藤明生の本がきっとあると思っていったら、無くて鬱・・・
79名無しさん@1周年:2001/05/31(木) 03:11
>75
朝倉高校は、福岡県の甘木市。いまでは、福岡県内有数の名門校。
敗戦後、甘木の母方の家に越してきた(逃げて来た?)後藤氏は、朝倉高校の
裏手に住んでいたそうな。
甘木市特産の「川茸本舗」の社長と同級生。
学生時代、生徒会長をやっていたらしい。
朝倉高校の校門右手側に、学生時代に作詞した「学生歌」の歌碑まで建ってる。
80Fishman:2001/05/31(木) 22:59
>79
わぁ、ありがとう!甘木だったんですね。
仕事で何度か訪れたことがありました。その時に知っていれば。。
無念です。
81吾輩は名無しである:2001/06/07(木) 02:37
あのさ、

後藤明生の小説って面白いのか?


挟み撃ちなんてのは文芸文庫で読んだ
面白くないよアレ
蓮見あたりが誉めてるのは知ってる
批評的に優れてる作家なんだろう<後藤
でもそれだけじゃないのか?

後藤単品じゃとてもじゃないけど喰えない代物だね。
後藤のテクストを誰かが踏襲してって意味合いでのみ
後藤ってのは意味があるだけなのではない?
だって、つまんえーもんよやっぱ。

いま、手元に「吉野太夫」がある
これについて、意見頂戴、読むから
82吾輩は名無しである:2001/06/12(火) 20:36
>>81
初期から入ったらいいのでは。
「人間の病気」「思い川」とか。見つけるの時間かかりそうだけど。
父親や満州について書いてた時代のほうが私は好きです。
藤枝よりもむしろ小島信夫に近いのでは?
後期の短編なんか、「平安」のあたりの小島にとても似てるように思います。
83吾輩は名無しである:2001/06/13(水) 06:05
>>81
ちゃんと読んで書いてんのかよ。
テクストの間を行き来する小説だけ書いてたわけじゃないぞ、後藤は。
「めぐり逢い」とか読んだかよ。
一作読んだだけで、そんな不快な文章書くな。
84吾輩は名無しである:2001/06/13(水) 06:09
>>81
吉野葛は、普通に面白いですよ。
紀行文的に始まった文章が、テクストの間を行ったり来たり
するように徐々になっていくのがスリリングです。
後藤は批評的なものばかり書いてたわけじゃないですよ。
8584:2001/06/13(水) 13:15
訂正 葛じゃない。太夫です。すいません。
86吾輩は名無しである:2001/06/13(水) 14:11
あんまり関係ないけど東京千駄木郁文館高校で明生の息子と同級生でした。明生さんが朝日カルチャーで講師をやっているとき口の悪い友達から「出稼ぎ作家」とからかわれた時、息子が本当に怒っていたのを思い出します。
87吾輩は名無しである:2001/06/13(水) 14:34
男は本気で怒らねばならぬときがある。
時を逸してへらへらしているのは本物の愚物だ。
88吾輩は名無しである:2001/06/14(木) 06:47
>>82
満州ではなく朝鮮では?
89名無しさん@1周年:2001/06/14(木) 21:30
後藤明生作詞「あさくら讃歌」演奏会のお知らせだよ。
ぴあのMYイベント欄にも載っている。
 (↓↓↓↓↓↓)
http://www.pia.co.jp/myevent/kokuchi/id00001065.html

あさくら讃歌−ふるさと公演
(東京文化会館「舞台芸術創造フェスティバル2001」参加)

開催日:6月17日(日)午後1時半開場/午後2時開演
料金:前売り券2000円/当日券2500円
会場:ピーポート甘木(大ホール/福岡県甘木市甘木)
会場への行き方:西鉄甘木駅/甘木鉄道甘木駅より徒歩約10分

主催:あさくら讃歌合唱団
後援:甘木・朝倉広域市町村圏事務組合/甘木連合文化会
コメント:「あさくら讃歌」は、甘木市出身の文学者・故後藤明生氏が、甘木・朝倉
     の風物、歴史、自然、風土などをもとに作られた八編の詩に、作曲家・
     三善晃氏が音楽をつけられたもので、太鼓・笛・謡曲・語りを伴い、混声
     合唱が壮大に歌いあげます。
     1992年5月10日に夜須町で開かれた全国植樹際の折り、甘木文化会
     館に於いて天皇皇后両陛下ご臨席のもとに初演された。以来、地元での
     アンコール演奏会はもとより、千葉大学混声合唱団をはじめとして全国
     各地で演奏され、好評を得ています。

以上、イベント欄より。
90名無しさん@1周年:2001/06/15(金) 16:43
あさくら讃歌とは、何ですか?
91名無しさん@1周年:2001/06/16(土) 01:27
>90さん
あさくら讃歌は、後藤明生が作詞し、作曲家の三善晃が作った混声合唱組曲。
カワイ出版から『あさくら讃歌』というタイトルで、楽譜も出ています。
巻末に後藤の歌詞も書かれてあるけど、実に変な歌詞。後藤の小説と同じく、
過去の先行テキストからの引用がやたらと多い。後藤ファンなら、一読の価値ありです。
ちなみに、曲も聴いたことがあります。変な曲で、実に後藤らしい。
92吾輩は名無しである:2001/06/17(日) 04:23
なんとなくage
93吾輩は名無しである:2001/06/22(金) 23:30
age
94吾輩は名無しである:2001/07/02(月) 14:43
もうちょっと話し聞きたいからage
95吾輩は名無しである:2001/07/18(水) 00:13
あげ
96吾輩は名無しである:2001/07/19(木) 20:25
吉野太夫は傑作だ
97S.K.:2001/07/19(木) 21:53
すばらしいスレですね! 後藤全集の編纂、やりたいです。
個人的にはやはり『挟み撃ち』、『壁の中』、『吉野太夫』が好きです。
若い頃の作品については評価を保留していたのですが、小島信夫などとの
関係で読み直してみたい気になりました。『40歳のオブローモフ』とか。
98fishman:2001/07/20(金) 13:13
ふと、今気付いたのですが、朝倉高校って
大西巨人『神聖喜劇』の主人公東堂の出身校じゃなかったか?
いや、東堂じゃなく他の誰かだったか?。。失念。

どうも好きな作家の多くは九州に関わりがあるなぁ。。
99吾輩は名無しである:2001/08/02(木) 21:40
age
100吾輩は名無しである:2001/08/26(5) 54:00
age
101吾輩は名無しである
mentaiの板の過去ログ倉庫に行こうとすると、

2ch(mentai.2ch.net)に対するユーザ名を入力してください:

ってのがでるんすけど、何故?

それはさておき、今頃、群像6月号の渡辺直巳氏の、“後藤明生による
「健康」の企て”を読む。あー、勉強になりますです。んでも、蓮實が
かった文章がちょっと気持ち悪い。いっそのこと、後藤先生に倣って、
手紙形式とか日記体とか講演会風とかでって、それでは批評でなくなっ
てしまうのか。