文体模写 スレッド 2

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◇第1章
長い間、私は夜早くに床に就いていたのだった。ときにはた
ちまち目がふさがり、「ああ、眠るんだな」と考える暇さえな
いこともあった。しかも三十分ほどすると、もうそろそろ眠ら
なければという思いで目が覚める。するとどうしたことだろう。
私は自分の身体がとてつもなく大きな毒虫に変わってしまっ
ているのに気づいてすっかり驚くのだった。背中は固い甲殻
に覆われ、丸くふくらんだ褐色の腹部は弓形の固い節で分
け目がついている。
◇第2章
この夢とも現ともわからぬ半睡半醒の中で、私はやはり目を
覚ましているに違いないという感覚が与えられたのは、どこ
からか投げ込まれたリンゴが背中にのめり込んだからだった。
こうした偶然でも起こらなければ、あの記憶が蘇ることはな
かっただろう。私は痛みに耐えながら長く伸びた触覚を動か
していた。
◇第3章
その時だった。触角が無意識につぶれたリンゴの汁に触れた
途端、私は自分の内部で何か異常なことが起こりつつあるの
に気づきびくっとしたのである。痛みさえも吹き飛ぶような
素晴らしい快感に私は包まれていた。私が小さい頃、スワン
家だったかゲルマント家だったかでプチ・マドレーヌ菓子を
ご馳走になったときの記憶が何の予告もなしに突然蘇ってき
たのだった。私はそのマドレーヌ菓子をアップルティーに浸
して食べたのだった。
◇第4章
なぜこれまで一度も思い出したこともない記憶が蘇ってきたの
か。この力強い歓びは一体どこからやってきたのか。それには
何の意味があるのか。私はもう一度触覚を動かしてリンゴの甘
い汁をすすってみた。しかし、そこには最初の時以上のものは
何もなかった。
◇第5章
そうだ。あれはコンブレーでスワン家のお茶会におよばれした時
のことだった。しかしどうしてだろうか。触覚に触れたリンゴの汁
の味が、アップルティーに浸されたプチ・マドレーヌの味を蘇らせ
ただけで、どうしてあんなにも甘美な感情が呼び起こされたのか。
いや、それは味覚だけの記憶ではないのだ。
857吾輩は名無しである:03/08/08 02:06
◇第6章
蘇ったのは、ママンと共に散歩したコンブレーでの楽しい日々で
あり、あの幼い頃の記憶の総体なのだ。教会、村人達、スワン家
の庭園、全コンブレーとその周辺、これらすべてが何滴かのリン
ゴの汁から飛び出してきたのである。
858吾輩は名無しである:03/08/08 02:07
◇第7章
しかし私の命はもう長くはない。甲殻に覆われた背中が痛む。
この死の観念はまるで愛のように私の中に腰を下ろした。し
かし死の前に私は長い作品を書かなければならない。私にそ
の力が残されていれば、とたえそれが人間を毒虫のような怪
物的存在に変えようとも、それに全力を注ぐだろう。毒虫に割
り当てられた空間は限られたものだ。しかし、それでも様々な
時間に私は触れていて、多くの日々が入り込んでいるのだ。
だから場所もまた際限なく伸びている――《時》の中に。
859吾輩は名無しである:03/08/08 02:12
>858の訂正 
◇第7章
「とたえ」じゃなく「たとえ」
ソーリー
860吾輩は名無しである:03/08/08 11:36
>847
1のネームが赤字のスレは
管理者によって落ちないよう
保護されているみたいだね
まとめサイトどうもです(´∀`)
>851
やっぱネイティブでないとね(´∀`)
861<font color= ◆aKknksOQsI :03/08/08 11:45
 
862吾輩は名無しである:03/08/08 11:45
入んねーや
863名演奏のクラシック:03/08/08 20:43
交響詩『変身』op.51


最近のCDにはいいものがない。レヴァイン・ウィーンフィル(DG)は、
やたらぶよぶよした感じに仕上がっていてテンポが悪いし、アーノンクール・
ロイヤルアムステルダム・コンセルトヘボウ(ワーナー)は騒がしいだけ。
もっともこれとてもハイティンク(フィリップス)時代の愚鈍な演奏に比べ
ればまだましといえよう。
一部で評判の高いサヴァリッシュ・チェコフィル(デノン)など、原作者の母
国のオケというだけで、僕はどこがいいのかさっぱりわからない。どうしても、
LP時代の名演から選ぶことになる。
864名演奏のクラシック:03/08/08 20:47
◎ヨッフム・ベルリンフィルの旧盤(DG)は、チェコ情緒にはやや欠けるが、引き締まった造形美だ。
晩年のバンベルグ交響楽団(BMG)と同じくインテンポで進めていくが、
冒頭の「プラハ市街のテーマ」から最後の「家族の団らん」にいたるまで旧盤はかなりテンポが動いていて、かえって活気に満ち
ている。「悪夢」は低音部の充実がすばらしいし、「六本の足」での弦のグリッサンドや「触覚」のピチカートもなんとも不気味だ。「甲殻」のテーマは禍々しい輝きに満ちており、カフカはこうでなくてはならない。
リンゴの一撃でのホルンで始まる金管と打楽器の強奏は阿修羅の如く、
ザムザの生命を奪う衝撃そのものだ。
だがしかしなんといってもこのCDのうまさは、偽善的な家族の描き方だろう。
たとえば、第二ヴァイオリンとフルートでの妹の主題を例に取ると、
ヨッフムは音色による描きわけを極力抑えており、一見、作曲家の意図に反するようだが、実はこれが効果を奏している。たと
え変身前と同じように挨拶してもそれがかえってうつろなのだ。
同じベルリンフィルでも、カラヤン盤(DG)ではこうはいかない。
妹の立ち居振る舞いが、だんだんよそよそしくなっていく描き分け方
こうまいものの、繰り返して聴くと鼻についてくる。
なお、ヨッフムにはロンドン交響楽団との盤(EMI)もあるが、
演奏の充実はベルリン盤バンベルグ盤に比べるとはるかに劣る。
                        (宇野功芳)
カフカ『変身』ヨッフム・ベルリンフィル(1964)
MG−646464(廃盤)



865吾輩は名無しである:03/08/08 20:55
>863-864
シブイとこきましたね!
敬意を表して今度わたしも絵画でやってみようかな?
(やっぱムリかも・・・どなたかぜひ)
8662C茶髪:03/08/08 21:05
乙>>一
867山田洋次:03/08/08 23:59
とらやの茶の間
寅=渥美清
タコ=太宰久雄
おいちゃん=下條正巳
おばちゃん=三崎智恵子
博=前田吟

タコ ザムザさんて外人さん、どこだい。
寅 そこだよ。
(タコ、振り向く、ザムザ、しゅーしゅーと挨拶)
タコ ひぇっ! 毒虫じゃないか。あっはははは。こりゃいいや。
   寅さんが一肌脱いだって感心してりゃあこりゃ外人でなくて害虫だよ。ははははは。
寅 (激して)何だと。(殴りかかる)
タコ だってそうじゃねえか。大体、足がこんなに生えた外人さんなんて
   いるかい。え、触覚生えてて、腹は段々になってて、甲羅までしょってて。
   毒虫だよ。毒持ってんだよ。俺、こういうのにションベンしてえらい目に
   あったんだからな。
868山田洋次:03/08/09 00:00
寅 そりゃ、みみずだろうが、てめえ。大体、グレゴールはなあ。俺と同じように見本を持って
  旅から旅の人生よ。そのあげくくたくたになって久しぶりにうちに帰って、
  ベッドで寝ていたら、なんかや〜な夢見て、そっからが苦労の始まりよ。
  挙句の果ては親爺とお袋に半死半生の目に遭わされて、可愛がっていた
  妹にはリンゴまでを投げつけられて。それをお前はかわいそうとは
  思わないのか、え、このタコ。君には人間の血というものがないのかね。
  (ふたたび殴りかかる真似)。
さくら お兄ちゃん!
博 まあまあ兄さん、社長も、少し言いすぎですよ。
おいちゃん まあ、当分うちにとまってもらうよ。
寅 そうよ。タコみたいな奴は、毒入りの汁でもかけてやれ。
おばちゃん しかし、一階に住んでもらうのかい。
   マイケルさんのときみたいに寅ちゃんの部屋ってわけにはいかないだろ、
   上り下りが苦しそうだし。……い、いえね。あたしたちは何とも思っていないんだけど。ね、
   お客さんがくるからね。
寅 あー、ちょうどいいところがあるじゃないか。な、博。おまえんとこの職工、
  やめたんだってな。
博 田中君ですか、ええ、青森に帰っちゃったんですがね。
タコ 筋はいいと思ってたんだがねぇ。……おい、おい、まさか変なことを
   言わないでくれよ。
寅 (得意満面で)な。ちょうど、寮もあいていると。こんばんはこれで
  お開きにしよう。な、そうしようそうしよう。博、グレゴールを案内
  してくれよ。
869吾輩は名無しである:03/08/09 00:45
>967-968
『変身』を読み込んでるのがナイス!
870吾輩は名無しである:03/08/09 01:32
>>869
さて、この予言の真贋が判明するのはいつだろうか?
871幸田文:03/08/09 09:30
朝は目が覚めてぼやっと起きかえる。
なにか不安な夢を見ていたような。
ふと布団の中で自分の姿が変わってしまっているのに気付く。
以前にも覚えがある。
この有様を知人に、ええと、お腹がね、節で分かれていて
それで褐色でまるくふくれているの、これはどういうこと。
などと言うからすぐ揚足を取られた。
「ばかいってらぁ。そんな腹で背中が甲殻じゃ虫だろう。
そこへ無数の脚が生えたとあれば、毒虫へ変身としゃれたか」
癪に障っても言い返しができないのだった。
そんなやりとりの間にもかぼそい無数の脚がぴらぴらと動いている。
こんなことになったのは丁寧でない暮らしをしているせいだと思う。
ちゃらっぽこな気持ち、やり方で布地のセールスをしているからだ。
部屋を見回しても雑然としていて、布地の見本も机に放り出してある。
とにかく万事にとぱすぱしているのだ。
もうひと眠りすれば、こんな姿はきれいさっぱり忘れられる。
明日は測量士に姿を変えよう。
家人が寝静まっている夜ふけ、あけがたに様々に変身することは
ふだんが「眠り上手」といわれるくらいよく眠る私にとっては
なかなか興のあるものだった。


焦って詰め込んで意味がわからん。sageじゃ。
「『変身』の著者、ピエール・メナール」(原註1)

 私は以前にピエール・メナールの著書のほとんどを挙げたことがある(原註2)。ここでは以前に述べたことを繰り返して読者の顰蹙をかうような真似はするまい。
 ただし、以下の一文――「ある特定の作家との〈完全な〉同一化のテーマについて書いたノヴァーリスの、あの文献学的断章」――を再度ここに披露することは、決して読者諸賢にとって無益なことではあるまい。
 しかし、その後判明したことであるが、ピエール・メナールにはもうひとつの隠された著書が存在していたのである。私は『変身』という名のその本のことを最近知ったのだが、それは、あたかもフランツ・カフカの同名の作品と瓜二つである。
 だが、メナールはカフカのそれを現在風にアレンジしたのでも2ちゃんねる風に焼きなおしたのでもない。別の『変身』を書くこと、これは誰にでもできる(このスレをご覧になればおわかりだろう)。
 メナールの野心はもっとユニークなものである。彼が書いたのはカフカの作品と一言一句まったく同じページを生み出すことにあるのである。
 その芸術的行為は一見どんなにそう見えようとも、書き写すこととは似て非なるものであることは確かだ。
 メナールの『変身』とカフカのそれとを比較してみれば一目瞭然であるが、前者の文章には往時のプラハの陰鬱な雰囲気を伝えようとする洗練された技法が窺われる。
 それに対し、後者の文章にはそうした努力が感じられず、当時の雰囲気をそのまま伝えるだけである。

*原註1
上記作品は書肆ミメシスより刊行予定の『不完全な真空』第8章の抄訳である。
掲載にあたり同社の好意ある了解を得たことをここに記し感謝の意を表する。

*原註2
『伝奇集』(岩波文庫)所収
873書肆ミメシス:03/08/11 01:03
書肆ミメシスより、近刊予告!
ボルヘス+レム、あの伝説の共著が遂に刊行なる!
待望の本邦初訳! 十篇の架空の本の書評集成!

『不完全な真空』
ホルへ・ルイス・ボルヘス+スタニスワフ・レム共著
種村季宏訳
書肆ミメシス
2003年9月刊行予定 B5判 448P 函入
コード: ISBN4-S8G2-0075Z3-X
価格: 8,800円(税別) 500部限定

【目次】
序文 スタニスワ・レム
@章 『冬の夜一匹の毒虫が』 イタロ・カルヴィーノ (レム)
A章 『ザムザ百二十日』 マルキ・ド・サド (ボルヘス)
B章 『千のプラハー』 ジル・ドゥルーズ=フェリックス・ガタリ (レム)
C章 『変身現象学』 G・W・H・ヘーゲル (ボルヘス)
D章 『グレゴール・ザムザはこう語った』 フリードリッヒ・ニーチェ (ボルヘス)
E章 『痴愚虫礼讃』 デシデリウス・エラスムス (レム)
F章 『グレゴール・ザムザの真実の生涯』 ウラジミール・ナボコフ (レム)
G章 『変身』 ピエール・メナール (ボルヘス) 
H章 『虫に至る病』 セーレン・キルケゴール (ボルヘス)
I章 『カフカのパルマコン』 ジャック・デリダ (レム)
後書 ホルへ・ルイス・ボルヘス

希望者には内容見本進呈。予約特価: 7,800円(税別)。
限定部数出版のため、お近くの書店でお早めにご予約ください。
874ボーボワール:03/08/11 07:23
ザムザは毒虫に生まれるのではない。毒虫になるのだ。
875吾輩は名無しである:03/08/12 10:36
>872-873
乙ー!!!
『不完全な真空』、う〜ん、ぜひ読んでみたい!
876吾輩は名無しである:03/08/12 21:13
噂の真相匿名座談会
人気ユニット・D★O★K★U★M★U★S★H★Iの事務所は超同族企業
A 音楽雑誌編集者
B テレビ局編成部員
C CM作曲家
D テレビ雑誌編集者

A この春から人気の、ヴィジュアル系ユニット
D★O★K★U★M★U★S★H★Iだけど、事務所についてはいい噂を聞かない
ね。
B うん。オフィスKUREってすごい同族企業だよ。リーダーの呉五郎の
両親が社長・副社長、五郎も取締役に名を連ねてはいるが、妹の照代が実権を握ってるらしい。
C 五郎は、リストラされるまでダメ社員の筆頭だったんだっていうしね。ア
パレル関係のセールスの成績は毎月ビリかブービー賞。
D それがいまはフロムエーのキャラクターだからな(笑)。腰も低いしね。
B 照代は、以前アイドルデビューして失敗しているね。最初の頃は、結構露出し
てたし。でもあの顔で性格は相当きついらしい。
A きついって?
B ギターの角田も、原田も、蹴りを入れられているっていうしな。ドラム
スの甲野だってあれだけのいかつい顔でしかもアメフトの選手だったのに、「照代ちゃんのことは……」
っていうしな。
D 甲野って、マック雑誌に出てるだろ。ガタイが立派だから、兄貴より目
だつし、照代としてはそれもがまんできないらしい。
B あ、ノートパソコン投げたって話だろ。
C 俺の聞いたのは少し違うぞ。キューブだって。
A ま、マックユーザーでなくともどちらもかなわんな(爆笑)。でも、五
郎には当たらないんだろう?
D いや、そうでもないらしい。五郎が詞にこって、なかなか、録音に
出て行かないと「はやく行けよ、バカ」っていうのが毎日らしいよ。
A ひどいね。
877吾輩は名無しである:03/08/13 09:51
>877
↑って模写だったのか(w
人気ユニットの名前を見落したら
わかんねえなあ
878荘子:03/08/13 10:10
ザムザは夢から醒めて毒虫になったと思い込んでいたのだが、
それは夢だった。長い夢だった。
人は夢から醒めたと思いながらもまだ夢を見続けていることがある。
さて、ザムザは今度は本当に目を醒ました。
目覚めたとき、自分が虫になった夢を見た人間なのか、
それとも今人間になった夢を見ている虫なのか
ザムザにはわからなかった。
879877です:03/08/13 14:27
>878さんの言うとおりなんですな。
作者としても忸怩たるものあり。
角田とか原(=腹)田、っていう風に容れてみたのだが、シパーイ。

あたりまえのことだが、カフカの持っている不条理性というのは、
これはほとんど、とらえにくいのですね。
880吾輩は名無しである:03/08/14 02:45
平野の新作でさ、
平野がカフカを模倣ってるわけだが、
平野は絶対、2ちゃんのこのスレを意識してると思ったんだが、どうよ?
と同時に、このスレを知っていたら、
あんなこっぱずかしい、中途半端な同人誌文体を
垂れ流すわけないだろうとも思ったんだが、どうよ?
881吾輩は名無しである:03/08/15 00:45
>>867-868
……すごくイイです。

あったかい。・゚・(ノД`)・゚・。
882山崎 渉:03/08/15 09:11
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
883吾輩は名無しである:03/08/15 14:10
↑すごく上手い模写だが、
残念ながらカフカにはなってないよ、山崎クン。
ぼくはウォルト・ホイットマン、じゃなくてグレゴール・ザムザ、
ぼくは一個の宇宙、じゃなくて一匹の毒虫、
ぼくはマンハッタンの、じゃなくてプラハの子、
肉づきよく、背中は固い甲殻で、好色で、食い、飲み、仰向けになっていて、
腹部は、丸くふくらみ、褐色で、弓形の固い節がついている。
清潔ではないが汚れているわけでもない。

ぼくを通して長いあいだ沈黙していた多くの声が、
無数のこおろぎやすず虫やくつわ虫の声が、
不具で、取るに足らず、平凡で、愚かで、軽蔑されている虫の声が、
糞のだんごを転がしているこがね虫の声が、
ぼくを通して禁じられた声が語る。

ぼくは神聖だ、ぼくの内も外も。
そして触覚で触れるものすべてを何もかも神聖にする。
この丸くふくらんだ褐色の腹部の匂いは祈りよりもかぐわしく、
頼りなくぴくぴく動くたくさんの脚は教会、聖書、すべての教義にまさる。

ぼくはぼく自信をたたえ、ぼく自信をうたう、
ぼくが身につける固い甲殻を、君も身につけるがよい、
ぼくに属するいっさいの原子は同じく君にも属するのだから。
885吾輩は名無しである:03/08/30 21:55
万全の体勢でふかふかの椅子に体を埋め込む。
その瞬間、肛門から放射状に噴霧される放屁が革張りの椅子に反射して
衣服を通じて全身に広がる。その匂いを全身で受取ると、
「まだだった。まだ十分じゃなかった。」
便所問題を解決しないままに全身を快楽に委ねた事。
昨日彼女に、生まれてから今まで母親に、言われつづけてきたある種の
だらしなさ。詰の甘さ。
私は未練を残して立ち上がる。携帯の電源も切った。意を決して便所へ向かう。
階段を降りる。うんこよ、待っていろ。あと少しだ。

■第T章
 この世の中には2ちゃんなどすこしも見ない善男善女も大勢
いらっしゃると同時に、2ちゃんずきのお方もたくさんおいでに
なる――そしてそういう中には、コテハンの身の上に関するこ
となら、初めから終りまで細大もらさず、どんな秘密でも打ち明
けてもらわないとどうにも落ちつかない、という名無しの方もい
るものです……。
 ここでは、そうした方々の期待に応えることはできません。で
すから、興味がないといわれる方々には、私の差し上げうる最
上の忠告は、どうぞこれから先の部分はお読みにならないよう
にということです。あらかじめ宣言しておきますが、これから先
は文学に造詣の深いお方、ロレンス・スターンの『トリストラム・
シャンディ』をお読みになられたことがあるというお方のために
のみに書くのですから。どうか今すぐ、

―――――――ウィンドウを閉じて下さい――――――――

■第U章
 さて、グレゴール・ザムザのお話を始めましょう。その前にこ
のお話を始めるにあたって、まず私の胸に去来した思いを打ち
明けておくことにいたします。私めの切なる願いは、今さらかな
わぬことながら、グレゴールの父か母かどちらかが、と申すより
も、この場合は両方とも等しくその責任があったはずですから、
なろうことなら父と母の双方が、グレゴールというものを仕込む
ときに、もっと自分たちのしていることに気を配ってくれたら、と
いうことなのです‥‥。なぜこんな話をするかといえば、グレゴ
ールについて話すとなれば、当然その発端から話さなければ
ならないからでして、理想としてはアダムとイヴにまで遡ってみ
たいところではありますが‥‥(後略)。
■第V章
 ――どうしてまああなたはすぐエクスプロウラアを終了しなかっ
 たのですか? 第T章をそんなにうわの空で読んでいらしたと
 いうのですか?
 ――それじゃ私、最初の章を抜かして読んだのか知ら?
 ――いいえ奥さま、一章だって抜かしてなんかいらっしゃいま
 せん。
 ――じゃ眠っていたんだわ、きっと。
 ――奥さま、そんな逃げ口上はゆるしませんよ。
 ――そんなことは、一言だって記憶がなくってよ、本当に。
 ――だからそれは奥さまの責任だと申すのです。そこでその
 罰として、今すぐ第T章にまでもどって、いえ、ついでにこのス
 レの最初まで戻ってから、ゆっくりこのスレ全体を読み返してい
 ただきます。その前に『トリストラム・シャンディ』を、その前の
 前にカフカ『変身』を読了していただくことは勿論ですが。

■第W章
 ……現在私がはからずも迷いこんでしまったこの長い脱線で
すが、ここには私の脱線術の妙技が秘められているのです。が
そういう秘術を残念ながら読者諸賢は終始見落としておいでら
しい。つまりこういうことです。たしかに私の脱線ぶりは、自分の
従事している仕事そっちのけで、遠いかなたまで逸脱してしまっ
ているにはちがいありませんが、それでいて私は私の本来の仕
事の布石だけは忘れていないのです。永遠に辿り着けないこの
私の歩みっぷりは、カフカの『城』を充分に意識しているのです
から。脱線話の途中でも、いわばメタフィクション的に本題に間
接的に触れているのであって、いわば語らずして語っていたわ
けなのです。
■第X章
 文体模写は、争う余地もなく、日光です。――たとえばこの板
のスレッドから文体模写スレをとり去って御覧なさい――それくら
いならいっそ、ついでに文学板ごとどこかに持ち去られるほうが
よろしい――後に残るのは各スレを支配するコテハンと名無しの
一連の煽りと叩き、そして山崎荒らしの永遠の冷たい冬です。
 レスとは、適切にこれをあやつれば(私のレスがその好例とい
えることはいうまでもありません)、ネチケットを心得た者が品の
ある人たちと同席した場合なら、何もかも自己中でカキコしよう
とするような差出がましいことは致しません。読者の悟性に呈し
うる最も真実な敬意とは、考えるべき問題を仲よく折半して、カ
キコ者のみならずロム者のほうにも、想像力を働かす余地を残
しておくということなのです……。
 ところで、今は読者の持ち場です。――今度は読者の想像力
にこの先を考えていただくことにしましょう。

■第Y章
●○ff●○●○●○●○●○●age○●○●○●○●○●ff
○●○●○●○●○sage●○●○●○●○●○●○●○●
○●○●○●○●○ffff●○●○●○●○●○●○●●○●
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
age●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
○●○●○●○●○ff●○●○●○●○●○●○●○●○
●○●○●○●age○●○●○●○●○●○●○●○●○
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●sage○●○●
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

(本当はここで極彩色の墨流し模様を挿入)
■第Z章
 さてこのあたりからいよいよグレゴール・ザムザのお話に本格
的にはいってゆくわけですが、……これによりこのスレはかなり
直線に近い形で進められることを私は信じて疑いません。ふり
かえって見ますと、このスレでの歩みっぷりは

 〜━━WWWWWWWWWWW(^^)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 (これがこのスレの1-100が辿ってきた線でした)

  。。。( ̄ー ̄)━━━ニヤリッ ~ ̄ ̄ ̄ ̄(´・ω・`)ショボーン━━
 (これが101-300)

 ━━━(^^)< (^^)(^^)(^^)= ◎――◎ あぼ〜ん(^^)
 (そして301-500まではこうでした)

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜━━━(゜∀゜)━━━〜〜〜〜〜〜
 (そして500-800まではこのようにまずまず)

 ~~`~~'`'`''''"`'`'`'~`'(l|l・ω・)`''~~'`'`''''"`'`'''`'`'`~'~'''"`
 (800台ではたいへんうまく行って、このようなものでした)

 (この調子でレスしてゆくならば、今後はつぎのような模範的な
  進み方に到達することさえ決して不可能ではありません)

 -------------------------------------------------

■第[章
 さてグレゴール・ザムザのお話です。ザムザがある朝にどうなった
かといえば‥、おや、もうお暇する時間がきてしまいました。残念な
がら私には、もう執筆する時間も紙数も残されておりません。(了)
890書肆ミメシス:03/09/01 22:05
書肆ミメシスより、異色文学全集遂に配本開始!
全作品本邦初訳! 2003年8月第1〜4回配本、全15巻完結。

『世界毒虫文学全集』
種村季宏監修
書肆ミメシス
B5判 250P-330P 予価2,300円-3,000円(税別)

【全15巻内容】
第1巻 『西蟲記』 呉承恩
第2巻 『真夏の夜の虫』 シェイクスピア
第3巻 『グレゴール・ザムザ氏の生活と意見』 ロレンス・スターン *既刊
第4巻 『白蟲』 ハーマン・メルヴィル
第5巻 『不思議の国のザムザ』 ルイス・キャロル
第6巻 『グレゴール・ザムザの肖像』 オスカー・ワイルド
第7巻 『ザムザ氏との一夜』 ポール・ヴァレリー
第8巻 『むしの回転』 ヘンリー・ジェイムズ
第9巻 『木曜の虫』 G・K・チェスタトン
第10巻 『失われた虫を求めて』 マルセル・プルースト *既刊
第11巻 『老人と虫』 アーネスト・ヘミングウェイ
第12巻 『ザムザを待ちながら』 サミュエル・ベケット *既刊 
第13巻 『フランドルの虫』 クロード・シモン *既刊
第14巻 『去年プラハで』 アラン・ロブ=グリエ
第15巻 『蒼老たる毒虫』 残雪

全巻セット予約いただいた方にはもれなく2ch特製ブックカバー進呈。
限定部数出版のため、お近くの書店でお早めにご予約ください。
891吾輩は名無しである:03/09/01 22:52
>>書肆ミメシス

(・∀・)イイ!


892吾輩は名無しである:03/09/12 20:55
どっこいしょ。
893中上健次:03/09/13 14:31
明け方になって急に窓から夏芙蓉の甘いにおいが入り込んで来たので息苦しく、まるで花
のにおいに息を止められるように思ってグレゴール・ザムザは眼をさまし、自分の姿が一
匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついて、自分がはじめて
中本の澱んだ血を引いたのを納得した。

朝の日の光に照らし出されたグレゴール・ザムザの姿を見て、オリュウノオバは乳房の辺
りから鳥肌立ち、一瞬に仏の化身のような赤ん坊をうやまい畏れたのは醜さ極まりない者
の化身に変るからだと思い、そんなグレゴール・ザムザそのものがこの世の者ではないの
ではないかと疑いもした。中本の一統の男は口あたりがよいが確実にどこかを麻痺させる
毒があるとオリュウノオバも思っていたが、固い甲殻の背中を下にして仰向けに寝たグレ
ゴール・ザムザの虫の体からは毒が吹き出るように思え、オリュウノオバは不安になるの
だった。ザムザの腹は弓形の固い節で分け目をいれられていた。まるくふくらんだ褐色の
腹が上下するたびに、一つ一つの節が軋みを発てて愉悦を味わっているようで、ザムザが
路地にもありこの山にも濃密にある人の意を越えた力のようなものに狙われ、もみくちゃ
にされなぐさみ物にされるのではないかと怖れた。
894吾輩は名無しである:03/09/13 21:10
ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと目覚めてみると、
ベッドの中で自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に
変わってしまっているのに気がついた。・・・さて、朝となれば朝食です。
イギリスでは、ミルクティーが朝食には欠かせない。まず、目が覚めたら
一杯、朝食前に一杯。食後に一杯。食後の一服のために一杯。
なんでもないから一杯、というように非常によくミルクティーが飲まれます。
イギリスではミルクティーなしに、朝は始まらないのです。さて、この
ミルクティーにはちゃんと作り方があるのです。この作り方でないと
どうしても、イギリスのミルクティーの味にはならない。その作り方とは
まず、コップに”冷えた”ミルクを注いでおく。そして、その後にポットの
熱いお茶を注ぐのです。こうすれば、イギリスと同じ味を出せるのです。
895吾輩は名無しである:03/09/13 21:12
>>894
ごめん、名前を忘れてた
伊丹十三でした
896高野文子:03/09/17 12:05
にいさん夢にうなされる
目がさめたのは真昼だった
おかあさん
にいさん毒虫になっちゃった
かたいせなかを下にして
ふしの一つ一つ数えられるおなかが
ふくらんでいるのはなぜですか
毒虫よ毒虫
毒吐け 五色の毒を吐け
おとうさんはきのうプラハへ行った
おかあさんは台所
お天道さま とても赤いから
わたしリンゴぶつけてくれます
わたしリンゴぶつけてくれます
くすん
かわいそうなの けがしているの
てあてしてあげなくちゃ
わたしのベッドにしばらく寝かせていいでしょ
「グレゴールはどうしたの?にげたの?」
しらない
897尾辻克彦:03/09/17 12:13
そうしたらまたもらってしまったのである。チェコのカフカ社のザムザ。これは大変なも
のなのである。いままでのトロの刺身とか、鯛の押し鮨とかいう小さなものではなくて、
何というか、これはとてつもなく大きな毒虫だ。ボディは黒い甲殻である。レンズの部分
は褐色でまるくふくらんでいて、弓形の固い節で分け目がはいっている。
898山村暮鳥:03/10/09 19:56
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
くろくてかたいこうら
もぞもぞとうごくあし
くろくてかたいこうら
899吾輩は名無しである:03/11/17 03:22
>>898
なつかしい。。。
900和郎:03/11/27 20:38
   n                n
 (ヨ )  a u 最 強 !  ( E)
 / |    _、_     _、_    | ヽゴミスレで900get!
 \ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ /
   \(uu     /     uu)/
    |      ∧     /
901TeX
\documentclass[bunkosize,jtranslation]{Kafka}
\title{変身}
\author{フランツ・カフカ}
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\begin{document}
\maketitle
\section{文体模写}
\begin{samsa}
\inbed
\begin{nightmare}
\transmorphism{poisonousbug}
\end{nightmare}
\recognize{\huge{甲殻類}}
\begin{characteristics}{|r|lll|}
\hline
背面 & 甲殻 & 仰向け & 多足\\
腹部 & 節 & 褐色 & 弓形\\
\hline
\end{characteristics}
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$\cdots$
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\hatred{family}
\[
\shoot{apple}, \hit{apple}{samsa} \to \death{samsa}
\]
\end{samsa}
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