ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』
とあるブログの書評より
『本書は、赤色の書(キリスト教)、緑色の書(イスラーム教)、黄色の書(ユダヤ教)の3部から成り、ハザールにまつわる事物、人物、伝説が事典形式で並べられている。
もちろん、どの宗教も「ハザール論争の結果、かの国はわれわれの宗教に改宗した」と主張してやまず、同じ出来事についての見解も時には大きく違い、時には裏側から重なる(しおりヒモはちゃんと3本ついている)。
さらにこの本には「男性版」と「女性版」があり、全篇中17行だけ記述が違っているという。自分が読んだのは男性版。
すごいのは、これだけ凝った形式の中に詰め込まれているエピソードの数々が、どれもこれも、形式なんかどうでもよくなるほど奇想天外な展開とオチを見せてくれることだろう。
朝起きると口の中から一千年前の鍵が出てきた考古学者。失われたハザール語で歌う鸚鵡。「死」という名前をもった人造人間の娘が恋に落ちる。他人の夢の中に現れる夢の狩人とは。そして、この『事典』刊行にまつわる不可解な殺人──』