437 :
吾輩は名無しである:
多元決定の現象をもっとも明快に証明しているのは、夢の研究である。
実際、分析が示すところによると、
「夢の顕在内容の要素はそれぞれ多元決定されており、潜在思想のなかでは幾重にも表現されている」
多元決定は圧縮の作業の結果である。
以上はラプランシュ・ポンタリス著・村上仁訳「精神分析用語辞典」・みすず書房・「多元決定」の項目からの引用)
@ ある文字列が別の文字列よりも複雑であると言うためにはどうすればよいかという問題を考えよう。
例えば、同じ 60 文字の長さの 0, 1 からなる以下の 2 種類の文字列が与えられたとする。
010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101
110010000110000111011110111011001111101001000010010101111001
これらを見比べると、直観的に前者の文字列はより簡単であって、後者の方はより複雑であると感じる。
この直観を明確にするひとつの方法として、文字列を言語で説明することを考えよう。
このとき前者は「01 の 30 回の繰り返し」と 11 文字で説明できる。 それに対して、
後者はそのような簡単な説明が与えられそうもなく、説明するには文字列そのものを含めて
60 文字以上で記す他はないように思える。
この例のように言語による記述によって短くできる文字列がある一方で、
圧縮できないような文字列も存在しており、文字列の説明の長さは
文字列そのものの複雑さと関係していると考えられる。
このことをより形式的に取り扱うためにアルゴリズムという概念を用いて定式化されたものが
コルモゴロフ複雑性である。