【ピースの依頼により】綿矢りさ38【スレたて】

このエントリーをはてなブックマークに追加
442吾輩は名無しである
「ひらいて」
かさついた指先。
そのごつごつとした四角い掌。
丸い肩から伸びた二の腕の、少しだけ残った半袖の日焼け跡。
その腕に抱かれてまどろむ午後を、私はこんなにも求め続けていた。
「ひらいて」
たとえは灰色のソファーベッドに三角に座った私に跪いて、私の膝小僧に手をそっと置く。
理科室みたいな真っ黒なカーテンの間から洩れ差してくる梅雨空の薄暗さの中で、
私はたとえの硬くまっすぐ伸びた黒髪を優しく抱え込んだ。
私のからだの一番熱くなっている部分に、唇が近づき触れると、
彼のくぐもった興奮が鼻息となって私を撫でる。
くすぐったさと気恥ずかしさで、黒々とした頭を押し戻そうとすると、
たとえは不器用に舌を伸ばし、なぞった。