あんぱん 豊田和司
げんばくがおちたつぎのひ
あてもなくまちをあるきつづけた
きがつくといつのまにか
しらないおんなのこがついてくる
あっちへいけ!
おいはらっても
おいはらっても
おんなのこはついてくる
ていぼうにこしをおろして
ひとつだけもっていたあんぱんをたべた
おんなのこもとなりにすわって
あしをぶらぶらさせていた
くすのきのねもとで
よるはのじゅくした
おんなのこもすこしはなれて
ごろりとよこになった
よくあさめがさめると
おんなのこはつめたくなっていて
なにごともなかったかのように
ぼくはまたあるきはじめた…
いまでもときどきおんなのこは
ゆめのなかであしをぶらぶらさせていて
あんぱんをわけてやるのは
いまこのときだとおもって…
いつも
なきながら
めがさめる