ラスコーリニコフ的論理の破綻と新生
―近代精神の帰結とその克服
高 坂 邦 彦
http://www2.plala.or.jp/kohsaka/page021.html ドストエフスキーは、人道主義、博愛主義、理想主義を純粋培養して、その究極の正体を暴
露し、その自己破綻を顕示してこれを自滅させたのである。彼にとって、その主人公たちの思
索過程は、ヒューマニズムという近代精神に潜む悪魔的正体を明らかにするための巧みな帰
謬法的論理の展開にほかならない。彼らの深化発展する思索過程は、ラディカルな否定主義
が、一見高尚なヒューマニズムから導かれる究極的な結論であることを、論駁の余地なき徹底
さをもって証明しているのである。