小林秀雄 その三

このエントリーをはてなブックマークに追加
109107
もいっちょ、文庫や全集でしか小林秀雄を知らない人のため
 小林秀雄 ”我が闘争” 
(『朝日新聞』 1940(昭和15)年9月12日)

 「ヒツトラーの「我が闘争」といふ有名な本を、
最近僕ははじめて室伏高信氏の訳で読んだ。(略)
 彼は、彼の所謂主観的に考へる能力のどん底まで行く。
そして其処に、具体的な問題に関しては決して誤たぬ本能とも
言ふべき直覚をしつかり掴んでゐる。彼の感傷性の全くない政治
の技術はみな其処から発してゐる様に思はれる。
 これは天才の方法である。僕はこの驚くべき独断の書を
二十頁ほど読んで、もう天才のペンを感じた。
 僕には、ナチズムといふものが、はつきり解つた気がした」
 ※1〜6次全集のいずれも、「彼は〜思はれる」の一節を削除し、
  「天才のペン」の前に、「一種邪悪なる」を加筆。
 1〜6次全集および第5次全集補巻(註解 追補)のいずれにも、
  上記の事実についての言及なし。