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もいっちょ、文庫や全集でしか小林秀雄を知らない人のため
小林秀雄 ”我が闘争”
(『朝日新聞』 1940(昭和15)年9月12日)
「ヒツトラーの「我が闘争」といふ有名な本を、
最近僕ははじめて室伏高信氏の訳で読んだ。(略)
彼は、彼の所謂主観的に考へる能力のどん底まで行く。
そして其処に、具体的な問題に関しては決して誤たぬ本能とも
言ふべき直覚をしつかり掴んでゐる。彼の感傷性の全くない政治
の技術はみな其処から発してゐる様に思はれる。
これは天才の方法である。僕はこの驚くべき独断の書を
二十頁ほど読んで、もう天才のペンを感じた。
僕には、ナチズムといふものが、はつきり解つた気がした」
※1〜6次全集のいずれも、「彼は〜思はれる」の一節を削除し、
「天才のペン」の前に、「一種邪悪なる」を加筆。
1〜6次全集および第5次全集補巻(註解 追補)のいずれにも、
上記の事実についての言及なし。