トルストイ 8

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780吾輩は名無しである
彼女は客間へはいってきたときとそのままの、完全な麗人の変らぬ微笑をたたえたまま立ち上がった。
そして、常春藤と苔の模様をあしらった純白の夜会服の軽い快い衣ずれをのこしながら、
まぶしいような肩の白さと、髪のつやと、ダイヤモンドの輝きであたりの目をうばいながら、
わきへよけて道をあけた男たちのあいだを通って、
だれにも目をやらないが、みんなに一様に微笑をふりまき、
その容姿と、豊かな肩と、当時の流行で広くあけた胸と背の美しさを嘆賞する権利をみんなに平等にめぐみながら、
舞踏会の光輝をそのまま身につけて持ちこんできたかとぱかりに、
しずしずとアンナ・パーヴロヴナのほうへ歩みよっていった。

この文章の巧さは悪魔的ですらあるな
ここだけじゃなくて、こういう箇所が百出するからなぁ