ウィリアム・フォークナー 3

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952G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 02:12:13.48
>>950

実は、バーベナ、まだ語り残したことがいっぱいあるのです。
例えば、法と暴力の関係といった点にまだ全く触れていない。

「熊」等Go Down,Moses収録の作品は岩波文庫に加島祥三訳があるけど残念ながら
現在品切れ中。
とりあえず新潮文庫の短編をつぶしていくことになるかと。

順当にいくと「納屋は燃える」でしょう。
人間の屑みたいな奴らの多いスノープス家の登場。
村上春樹の短編「納屋を燃やす」(1983)はおそらくこのタイトルもじってるな。

でも、もうしばらくバーベナ続けていいですかね。

まずは、4章での、月の描かれ方、もっと展開させましょうか。
953G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 02:30:46.30
>>950
>きょう、The Wild Palms読み終わりました

Light in Augustに続いてかあ。
語学力半端じゃないですね。2ちゃん用語だと、ぱねえ。
954G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 04:31:22.21
>>952
>「熊」等Go Down,Moses収録の作品は岩波文庫に加島祥三訳があるけど

Go Down,Mosesにあるのはロングバージョン。
むしろ大森林Big Woodsのうち4編を訳したといった方が正確だな。


955吾輩は名無しである:2011/10/02(日) 07:03:21.01
G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 04:05:02.82
>>472
>おや?アセンションがプルーストスレでも敵をつくったようだな

いや、あそこはアリ地獄スレなんで。
誰が何書いても、ケチつけてくる。
自分からは積極的に何も書き込まずに1週間でも2週間でも獲物が通りかかるのを手ぐすねひいて
じっと待っている。

ためしにエサをやってみると面白いよ。
その正体はもちろん……
956G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 07:59:47.21
昨日、久しぶりに大きな本屋に行ってきて、海外作家の研究書の棚を見て来た。
結局買ったのはフォークナーの2冊。

池内正直「フォークナー、もう一つの楽しみ―短編名作を読む」(朝日出版社、2010)
 「赤い葉」「あの夕陽」「エミリーに薔薇を」のほかに、「納屋は燃える」「乾燥の九月」が
 とりあげられていたので。
諏訪部浩一「ウィリアム・フォークナーの詩学 1930-1936」(松柏社、2008)
 こちらは長編「死の床に横たわりて」「サンクチュアリ」「八月の光」「標識塔(パイロン)」
 「アブサロム、アブサロム!」が取り上げられている。
 ちょっと頁をめくって気鋭の学者(1970年生)による力作で読む価値ありという匂いがしたのでレジに持って行った。
 果たして、勘はあたっているか。
957G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 09:00:02.73
読書会の当初の4人、一巡したんで、次の作品は呼びかけ人の鈴木氏、あるいは
新たに読書会に書き込んでもらった >>457さん >>850さんが選ぶ番でした。

雑談スレでも鈴木氏に呼びかけたけど、あと4作のうち、どれか選んでくれれば >>851参照
「納屋は燃える」
「ワッシ(孫むすめ)」
「乾燥の九月」
あと1作は習作だけど「嫉妬」



958v(・x・)v鈴木雄介 ◆JSPf4VvHXo :2011/10/02(日) 10:58:56.14
>>647
ホントにホントにホントにホントにライオンだ〜♪
959G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 11:06:06.44
>>958
Shitting on the dog of the bay〜♪

「熊」にはライオンという名の勇敢なワンちゃんが登場する

最後は大熊の喉に食いついたまま、はらわたまで掻き毟られて、
壮絶な最期を遂げるんだけど。

960G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 11:34:19.43
>>958
そうか、俺はドリフの歌を想定していたのだが
http://www.youtube.com/watch?v=jhZ9GMrqn_0(堀北真希が振りをするバージョン)
http://www.youtube.com/watch?v=pnw_od2P3TY

富士サファリパークのCMでも「ホントに×4」って確かにあったなあ
http://www.youtube.com/watch?v=ApaTuUFbzX8
歌ってるのは、和田アキ子でなく、最近までやっていた仮面ライダーオーズの
変身音声でも話題になった串田アキラ。これ豆なw
961G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 15:55:55.61
>>958
雑談スレ見落としてた。
「嫉妬」 がいいということですね。

できれば原文を調達しておきたいけどあるかなあ。
962G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 16:07:00.43
New Orleans Sketches に収録されてるな。
ここの立ち読みコーナーで全文読めることは読める。
34頁以下
http://books.google.co.jp/books?id=E6Qt58F4cfgC&printsec=frontcover&dq=New+Orleans+Sketches&hl=ja&ei=RQ2ITtiCC4n4mAWttpDvDw&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CC0Q6AEwAA#v=onepage&q&f=false
963G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/02(日) 17:25:02.93
読んでみた。俺でも多少辞書をひけば読めるくらい構文もやさしい。

それにしても新潮文庫の解説、まだ愛欲絡みの嫉妬に苦しんだ経験のない
子ども(いや、子どもだってすでにいろいろな場面で嫉妬心の萌芽は経験し
ているはず)が書いた読書感想文のようなテイストを醸し出している
964G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/03(月) 00:26:39.12
他のメンバーにわかりにくいので鈴木氏の希望、雑談スレより転載しておきます。


521 名前: G ◆vDcOqdC/aA [sage] 投稿日: 2011/10/02(日) 08:40:12.40
>>459
>言いたい事も言えないこんな世の中じゃポイズン

おーい、フォークナーの読書会、次の作品選んでもらえるとありがたいんだが。


526 名前: v(・x・)v鈴木雄介 ◆JSPf4VvHXo [sage] 投稿日: 2011/10/02(日) 10:55:58.98
>>521
僕は「嫉妬」を読みたいのですが、どですかでん?
965G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/03(月) 01:10:40.01
>>942の引用、訳としてかなり問題のあることが明らかになってきました。

このWe rode on;で始まる長い一文がようやく終わったと思ったら、We rode on.が反復され
(weは語り手ベイヤードとリンゴーです)、やはり語り手の内的独白である長い一文が来て、
1章が終わります。横たわる父、葬式の準備をするドルーシラの姿。
1章の続きは、3章に持ちこされ、2章は過去の回想シーンになります。

Drusilla said that he had a dream.I was twenty then ……

1章の最後の一文を受けているのでこのheが語り手の父のことを言っていることは自然に理解される。
4年前の回想だなと思っていると、時間はさらに4年前、南北戦争が終わって間もない時期に遡り、
ドルーシラと私との会話もいったいいつの時点のそれなのか非常に掴みにくくなってきます。

フォークナー全集の「征服されざる人びと」の巻の解説は、佐伯彰一ですが、「ベイヤード少年一二歳の夏
から始まって、二十一歳の大学生の彼が、父親の変死で実家に呼び戻される所まで及んでいる」と父の変死
を21歳時にしてしまっています。
21歳は大学に入学した年(9月の誕生日後)であって、父の変死は最終学年(4年生)の10月です。
966G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/03(月) 01:32:01.64
ドルーシラが語り手に、語り手の父は夢を持っているといったのは4年前の夏の日暮れ時、鉄道
事業の仕事から帰る父を待ちながら2人散歩しているときの会話です。

ではドルーシラが語り手に"Kiss me,Bayard"と迫り、長い接吻をかわすシーン
(語り手が"No."と答えると、再度"Kiss me,Bayard"と迫り、語り手が意を決して、顔を近づけ
ると今度は彼女が"No."とは言うもののすぐ抵抗をやめ、身をすり寄せてくる)
これはいつのことなのか。

直前の記述で父の死の2カ月前であることが明示されており、すなわち1874年8月である
ことは明らかです。
全集の訳者はこれを「ベイヤードがまだ23歳のある日」としている。
父の死が24歳のときであるとすれば、9月生まれであるベイヤードは8月の時点ではまだ
その年の誕生日を迎えておらず、だから23歳ということでしょう。
967G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/03(月) 01:57:49.99
しかし、フォークナーはそのとき語り手は24歳であると明示しています。
次の記述です。2章冒頭のI was twenty thenを反復することによって、それから4年後、9月から
はじまる大学4年生としての学生生活を控えた、24歳の8月(大学4年にあがる2週間前)である
ことを強調しています。
先を読めば、4年前と同じく、夏の夕暮れにやはり2人が散歩し、会話を交わし、キスする際の
出来ごとを指しているのは明らかです。
4年前と違うのは、父親がすでに鉄道を完成させたため、会社ではなく、すでに家にいることです。

I was twenty then. But the next time I was twenty-four;I had been three years at the
University and in another two weeks I would ride back to Oxford for the final year
and my degree. It was just last summer, last August, and Father had just beat Redmond
for the State legislature.The railroad was finished now and the partnership between
Father and Redmond had been dissolved so long ago that most people would have forgotten
they were ever partners if it hadn't been for the enmity between them.
>私はその当時二十歳だった。ところが、つぎのときには私も二十四歳になっていた。大学の
三年生の課程をおえ、あと二週間もしたら、最終学年の課程を修め、学位をとるために、オッ
クスフォードへ帰ろうとしているときだった。それはちょうど、この前の夏、この前の八月の
ことだった。父が州議会議員選挙でレッドモンドに勝ったところだった。鉄道はすでに完成し
ており、父とレッドモンドの提携は、ずっと以前に解消していた。

実は1章で語り手は10月の父死亡の時点で、リンゴーと同じ24歳であることを明示しています。
訳者は、語り手らが9月生まれであることを考慮して、23歳説を唱えたのですが、おそらくフォークナー
は「征服されざる人びと」の他の箇所での彼らの誕生日設定を忘れてしまったというのが正解だ
と思います(その意味で佐伯の解説の紹介で大学入学が21歳とした点も撤回です)
968G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/04(火) 03:55:33.61
2日ほど仕事の調べ物に没頭するのでとりあえず、「嫉妬」のセリフで印象に残った箇所
(バーベナの続きはメモをまとめるのにかなりエネルギーを要するのでまた)

嫉妬する男のセリフ(妻に対して吐いている)

"Listen. I will kill you, as I love God."

"Bah! Be warned. That is all I say."

*Bahって言うと、ディケンズ「クリスマス・lキャロル」のスクルージのセリフを思い出す。
  `Bah!' said Scrooge, `Humbug!'
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AD%E3%83%AB_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)


殺される男のセリフ(嫉妬する男に対して)

"There is nothing between us save the knowledge that you are crazy."

"Dog, and son of dogs!"
969G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/04(火) 04:29:30.89
新潮文庫の「嫉妬」の訳者解説、作品の成立経緯以外は10行足らずなのに突っ込みどころが3か所もある。

>嫉妬は漢字ではどちらも女偏になっていることでおわかりのように女性によく見られる現象であり

??  「偏」見では?


>しかし男にも嫉妬心がないわけではないのに、これを主題にした文学作品が少ないのはどういうわけか

??? プルーストの「失われた時を求めて」ことに「スワンの恋」はどうなったなんだ。カルメンは。
外国作品のみならず、日本の古典、近現代文学でも枚挙に暇がないような気がするのだが。
確かに、男の嫉妬を描くと、女のファム・ファタル性の方がクローズアップされる傾向はあるかもしれないが。


>この作品では、すでに嫉妬の原因が解消しているのに、なおかつ相手を殺してしまう。

????
男の考え出した解決策
To go away,that was the answer-to take her to a new city……

果たして、相手の男のいない町に2人で去るからといって原因が解消するのか?
That is the question.

970G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/04(火) 05:06:46.18
年代及び語り手の年齢特定の続き

2章の冒頭、もうちょっと先をみるとI was twenty then が反復されている。

I was just twenty then: that summer before I entered the Universty to take the
law degree which Father decided I should have and four years after the one, the
day, the evening when Father and Drusilla had kept old Cash Benbow from
becoming United States Marshal and returned home still unmarried……
>私はそのとき、ちょうど20歳だった。それは、父が私にぜひもたせようときめて
かかっていた法律の学位を取るために、私が大学へ入る前の夏だった。その年から
4年ほど前の、ある夏の日の夕方、父とドルーシラは、キャッシュ・ベンボー老人が
連邦裁判所の事務官になろうとするのをやめさせ、あいかわらず正式な夫婦とは
ならずに家に帰ってきたのであった。

大学の入った年に20歳だとすると、24歳の時点は5年後、大学5年になるはず。
おそらく、フォークナーは24−20=4、だから20歳の4年後は24歳だという計算
ミスを犯したのではないかと思う。
9月生まれという誕生日設定を失念しただけでなく、このミスからも混乱が生じている
のではないか。
作品の鑑賞自体にはあまり影響はないのですが。

息子に法律の学位をとらせるのが父ジョン・サートリス大佐のたっての希望であった
ことは、2章最後の父親のセリフと読み合わせると大きな意味があると思います。

また、弁護士・法律家一家のベンボー家がちらっと出てきてますね。
971G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/04(火) 05:07:55.31
>>970は「バーベナの匂い」についてです。念のため。
972G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/04(火) 05:34:45.01
>>970
変な書き方をしてしまった。

20歳の4年後に24歳になっていること自体は合っているな。
おかしいのは大学の学年との関係なのか。
大学3年から4年にあがる夏休みは3年後でないとおかしい。
この点のミスといった方が正しそうだ。

これくらいで。
973アセンション ◆ZCAcNhb9dZs7 :2011/10/04(火) 23:10:32.52
>>969
女偏云々は外国じゃ通用しないよねw
男の嫉妬といえば、ズバリ『嫉妬』という題名の小説を書いたロブ=グリエもw

そろそろ次スレが必要だなあ。どなたか優しい人ヨロシク〜
974吾輩は名無しである:2011/10/05(水) 12:06:43.16
キャディはGの自演だったわけだ
975吾輩は名無しである:2011/10/05(水) 19:16:53.14
残念ながらGは自演はやらんよ。ワシが保証する。
976吾輩は名無しである:2011/10/05(水) 21:42:55.49
鈴木は下手な自演をしまくっているよな。
977G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 08:14:51.30
「嫉妬」さらに読んでみると、不思議なテイストだ。
言外に隠されていることがありそうなのだが、なんだかわからない。
若いボーイは妙に挑発的だな。男を馬鹿に仕切って、平手打ちまで食らわせている。
なんで自分と妻が引っ越すにあたっての妻への餞別の品を、若いボーイが買うのに
2人で行くのか。男ははじめてボーイと2人同じ部屋にいることにひらめいたとでているが、
ボーイは商品を値切ったりしているのだから店の者はいるではないか。


*男アントーニオ(トーノ)はシシリー島から来たイタリア系移民。
*30年前にピストルをつかったことがある
(ニューオーリンズのマフィアはシチリア出身らしい)
*料理店を長いこと経営している。
*年の離れた妻は新妻。父親の家から連れて来たとある。
*妻に半年ほど店の会計係をやらせている。会計をする以外の時間は編み物をしている。
 (わざわざ若いボーイと自分、妻の3人を同じ建物に押し込めているようなもの)
*妻と他の町に出て行くにあたって、妻の両親ほか里の人たちの同意が必要であり、
 反対する彼らを2人で説得した。
*男が心の病を持ち、それが進行していることは妻、その両親にとって了解済みだった。
*若いボーイは、有能であり、男から店の営業権を買い取り、なおかつ、男の妻に装飾
 品を餞別に送ろうとしていたことから、かなり長くこの店に勤め、金も貯めていたことが
 窺われる。
*新妻も若いボーイも浅黒い顔を持っている。
978G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 08:54:09.84
若いボーイ自体が男の妄想の産物という可能性は?
979v(・x・)v鈴木雄介 ◆JSPf4VvHXo :2011/10/06(木) 12:58:03.28
>>877
馬鹿野郎対談ですね。何度も立ち読みしました。七千円とか高すぎて買えません。
980吾輩は名無しである:2011/10/06(木) 13:14:18.85
鈴木死ね
981G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 17:17:58.18
なぜか、「嫉妬」読んでると、ポーの「ウィリアム・ウィルソン」を思い出すんだよね。
ドッペル・ゲンガー
http://www.aozora.gr.jp/cards/000094/files/2523_20139.html(佐々木直次郎訳)
http://books.eserver.org/fiction/poe/william_wilson.html(原文)
982G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 18:12:20.82
立ち読みコーナーでは全文読めないみたいだな。
若い背の高い美男のウェイターと男が連れだって、セニョーラ(妻)への餞別の品を買い
に行くところから先がない。

And so at last,one day at noon, the two men set out to choose the gift.

このような関係にある男2人が連れだって一方の妻のため装飾品を買いに骨董品屋には
いるというのはおかしい。ガラス玉の首飾りなど手にとっているのはウェイターだけで、男
は手持無沙汰でそばにたっているだけであり、一緒に行った意味がない。
若いウェイターが店の権利を買い取る財力があるのもおかしい。
雇われている癖に無遠慮で男に暴言を吐き、暴力まで振るう態度もおかしい。
やはり、ウェイターは、男がこのような者こそ、妻にふさわしいと考える、男のコンプレックス
の生みだした妄想の産物、ウェイターの暴言は男自身の低い自己評価の反映、幻聴と考え
てよいように思う。

男の妄想の産物である、現実に存在しないウェイターが男にこう言っているのは当然である。

I have said no word to her that you have not seen,nor she to me. If she
be attracted to someone, it is not I.
ぼくはこれまで、あなたの知らなかったことはただの一言もあの人にいったためしが
ないし、あの人のほうでも、ぼくにいったことはありません。たとえあの人がだれかに
心をひかれているとしても、それはぼくにたいしてではありません。
983G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 18:26:23.24
>>979
7000円もするんだ。

「交通」を濫発していたのは柄谷・中上の対談本「小林秀雄をこえて」ですね。
http://www17.plala.or.jp/orion-n/NIKKI/33.html
984G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/06(木) 18:44:05.62
次スレ

ウィリアム・フォークナー 4
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/book/1317893836/
985アセンション ◆ZCAcNhb9dZs7 :2011/10/06(木) 21:11:44.35
残り少ないので流し気味に〜

>>979
中上の話題を出したのは鈴木へのスルーパスのつもりだったw

>>981
>ポーの「ウィリアム・ウィルソン」
ポオからナボコフへの距離はそんなに離れていないのに、
ナボコフはフォークナー嫌いだったとは。
986G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 03:00:15.67
2人の男(本当に2人なのか)がどこに何を、餞別の品(a parting gift)として買いに行ったかというと

A string of glass beads, or a medallion, the young man wanted. And they entered a curio
shop where such things were sold―an orderless jumble of pictures, vases, bric-a-brac,
jewelry,firearms and brass. While the waiter examined and haggled over his prospective
purshase the older man stood idly near by. The purchaser stood near a window, a string
of beads looping from his raised hand, oblivious and defenseless.

OEDでは、ガラス玉の首飾りも、円形の浮き彫りブローチ(a peace of jeweliery the shape
of a large flat coin worn on a chain around the neck)もjewelry(装身具類 objects such
as rings and nevklaces that peple wear as decoration)として、英絵事典様の解説が出て
いる。
首からかける点で共通している。あとjewelryの中では高価な宝石を使うわけでもなく、載って
いるなかでは、いずれも安物の類に属しそうだ。
はいった骨董品店(curio shop)は、がらくたbric-a-broc(oranaments and other small decorative
objects of little value)など雑多な物がごちゃごちゃと乱雑に置かれた店のようで、それほど高価
なものはなさそうだ。 jumble=an untidy or confused mixture of thing
大体、餞別の品を買うのに宝石店でなく、骨董品店で、しかも、値切るhaggle(to argue with sb in
order to reach an arguement, especially about theprice of sth)とは随分しけた話ではないか。
これも妙なのだ。
987G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 03:14:27.77
And it occurred to the other that, for the first time the two of them had been together
in the same room,his enemy was completely at his mercy.

the two of themとある。2人きりといっても、男(アントーニオ)、その若妻、若い美男のウェイ
ターの3人のうちの2人ということだろう。
値切り交渉の相手として存在するはずの骨董品店の主人ないし店員は眼中にない。

ウェイターを指す言葉はクライマックスで目まぐるしく変わる。
the young man, the waiter, the purchaser, his enemy, the young waiter
男の方はthe other, the other manともう一方扱いで、突然、Just to pretend that this old
pistol fitting snugly in my palm were a modern, deadly machine_like thisと一人称のmy
の登場する内的独白が入り、読者に男の側に感情移入させるような書き方がなされている。
988G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 04:02:21.08
And while his hand groped behind him among a litter of ancient weapons his caution
rebuked him for the thought. This had all been settled; he was going away tomorrow,
perhaps never to see the man again. But it would be so easy! was the reply. Just
to pretend that this old pistol fitting snugly in my palm were a modern, deadly
machine_like this: and he slowly raised the rusted weapon while his thumb broke
loose the hammer, and the spring which had slept for thirty years gathered itself.
Like this! he whispered, aiming at the unconscious man he had once wanted to kill;
and pulled the trigger.

ピストルは、>>977ではトーノが30年前にピストルをつかったことがあると書いたが、勘違い
で、骨董品店の品物のひとつのようだ。
以下、男(トーノ)の内的独白が各文の冒頭に来る。This had all been settled. But it would 
be so easy! >>987のmyの入る比較的長い独白。最後は実際に呟く(whisper)。Like this!

spring(バネ)とは、ピストルの撃鉄hammerで雷管を強打するためのバネだろう。
30年間眠っていたとはどうしてわかるのか。てっきり男が30年前に使ったと勘違いしていた。
それがgather itselfするって、sleepといい、ピストルのバネ自身が生きているかのようだ。
he had once wanted to killと過去完了がonceという副詞を伴って使われている。
かつては殺したいと思ったが、the unconscious man(>>987で落としたがこれもウェイターを指す
目まぐるしく変わる言葉のひとつ)に狙いをさだめている時点では、すでにそう思っていないのか。
でも引き金triggerをひく。
989G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 04:25:01.62
でも、そもそも骨董品屋に商品として置かれたピストルに弾など入っているのか。
男自身、掌にぴたりと収まった古いピストルで、よもや、本当に人を射ち殺せる
とは思ってもいなかった。あくまでもa modern, deadly machineであるかのように
見せかけてやろう(pretend)と思っただけだ。
「かのように」like this
梶井基次郎が檸檬を爆弾に見立て、丸善の美術書の書棚に乱雑に積み上げた画本のうえに
置いてくるように。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/424_19826.html

like thisは2回繰り返されている。2回目は引き金をひく瞬間の呟きとして。
ところが……


ピストルの部品
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%83%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%93%81
990G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 05:02:04.30
The tiny room roared with sound and a lance of red flame leaped out like a sword.
The young waiter crashed forward into a table of glassware, then to the floor; and
the other man stood screaming with the burst pistol in his hand until a policeman
plunged through the door.
>ちっぽけなその部屋じゅうに轟音がとどろきわたり、赤い炎の一閃が剣のように銃口から
飛び出した。若いボーイはガラス器をならべたテーブルに前のめりにぶつかり、それから
床の上に倒れた。年上の男は爆音を発したピストルを片手に握って絶叫をつづけていたが、
やがて1人の巡査が戸口から飛びこんできた。

部屋じゅうにとどろきわたる轟音を体感し、赤い炎の一閃を見たのは男だけだったのではないか。
テーブルにぶつかり、それから床の上に倒れた相手を見たのも。
テーブルの上にはグラスウェアが置かれていたのに、それが落ちて割れた形跡もなさそうだ。

the other manを「年上の男」としているが、文章の流れから、「年上の」でどちらの男かを区別する
必要もなく、訳は、単に「男」としてもよかったのではないか。
三角関係の一端をなす若い美男の背の高いウェイター(次期店主)を指す言葉が多彩に変化する
のに対し、男はotherとしか呼ばれない対比を生かすべきだったのでは。
991G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 05:12:58.30
新潮文庫が三角関係の二角の2人の男をラストシーンで「年上の」と年齢で区別しようとしたように、
男はウェイターとことごとく反対だ。
若く、美男ですらっと背の高いウェイター。
そろそろ中年の太った醜い男。ウェイターが「ヌーッと彼の頭上にそびえ立っているように思われた」
とあるから、背も低い。

「見知らぬ客には卑屈な外面を装った尊大な態度で応対したり、古いおとくいさんの挨拶に対して
も「ハイ」とか「イイエ」とか、そっけないことばで返答したりしていた」とある。いくら妻や両親からみて
「勤勉」で、「現在のような固定観念obsessionにとりつかれるまでは、親切な男でもあった」としても、
妻を迎えてobsessionにとりつかれてからのからの半年間、店は新しい客もつかず、古いなじみ客は
さっていったのではないか。男は、経営不振で店を身売りしただけではないか。

一方、ウェイターの方は、「すばやく、手ぎわよく動きまわり、親切に、能率的にたち働いていた」
とある。迎えた妻にふさわしい、こうありたかった自分の姿なのではないか。
店の買い手がウェイターというのも男のobsessionに基づく妄想であろう。

骨董品屋で安物をためつすがめつ品定めし、値切り交渉しているのは、経済的にひっ迫した男の
妻へのねぎらい、せめてもの罪滅ぼしのささやかなプレゼントとしてではなかったか

巡査が駆け付けたのは、銃声のためではなく、狂人の絶叫を聞きつけてか、骨董品店の店主
の「突然、客が狂乱して手に負えない」との通報を受けてではなかったか。
992G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 05:18:57.53
男が嫉妬していたのは、妻の若さに対してではなかったか。
(新潮訳が、最後の一文のthe other manを「年上の男」と訳したのもわからないではない)
といっても、1925年にこの作品を書いたフォークナーも27歳の若者だったのだが。

フォークナーはどうやら小男だったらしい。
993G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 06:27:35.80
>>956で言及した

諏訪部浩一「ウィリアム・フォークナーの詩学 1930-1936」(松柏社、2008)
 長編「死の床に横たわりて」「サンクチュアリ」「八月の光」「標識塔(パイロン)」
 「アブサロム、アブサロム!」が取り上げられている。

とてもおもしろい。最近の研究動向を紹介した力作というに留まらず、名著の域に
達しているかも。

ウェブ英語青年の「マルタの鷹」の講義(2011年3月終了)もおもしろそう。
http://yonemaru-blog.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-d798.html

諏訪部准教授の授業を受けて、哲学から米文学研究者へ志望を変えた
学生の手記が出ているのでこれも紹介しておきます。
カーヴァーの「大聖堂」という作品も読んでみたいな(ケン・フォレットの長編
なら読んだことがあるけど)
http://tsuwamono.kenshinkan.net/now/03so.php
994G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 06:38:15.32
「嫉妬」Jealousy 若いウェイターの存在自体が男の妄想ではないかと昨日思い至り、
おととい届いたNew Orleans Sketchesでラストシーンを参照しながら、カタストロフ
catastropheに至るシーンを分析してみました。
ほかの人の違った視点から、この作品について書き込みがあるとうれしいです。

「ベーべナの匂い」の残りは次スレで。
995G ◆vDcOqdC/aA :2011/10/07(金) 07:30:51.89
>>985
ナボコフ、文学講義ものが読みたくて(ヨーロッパ、ロシア、ドンキホーテ。ヨーロッパは
プルーストを取り上げている)、小説も含めて原書買ったのだけれど、手つかずです。

ナボコフのフォークナー嫌い(自分はまだ確認していませが)は、もともとロシア語が
ネイティブであり、英語は一種借り物の言語というこの作家の特性と関連しているような
予感がします。
大学の頃の英語の授業の先生が、自分は英語がネイティブじゃない作家の英語で書かれた
作品が好きだと言っていたのが未だに印象に残っているのです。

フォークナーはネイティブばりばりで、しかもそれが一部クレオール語(一種の方言)化している
ところがあり好みからいうと真反対になるのかな、と。

私は、実は日本の作家で一番すごいのは宮澤賢治だと思っているので(もっぱら言葉の使い手
としての面。批評家・思想家としての面は全くといっていいほど評価していないので小林秀雄等で
埋め合わせをしていた感じ。プルーストは両面ですぐれていて本当に読みがいがある)、フォーク
ナーは体質的に合うのかもしれない。

この辺、フォークナーもまだたいして読んでいないし、ナボコフに至っては、「ロリータ」すらいちおう
若島訳で最後まで目を通したという程度に過ぎず、原文に至っては全く見ていないに等しいので
これからの課題になりますが。


ということで、あと5

996吾輩は名無しである:2011/10/07(金) 12:09:21.94
Gがやりたいようにやるとこのスレのように専有スレとなる
997吾輩は名無しである:2011/10/07(金) 22:08:48.35
Gはこのスレを埋めないで、新スレへ、専有スレなんだから
しっかり埋めろ
998吾輩は名無しである:2011/10/07(金) 22:13:53.16
Gがコテで登場した300番台から、鈴木他の書き込みが日を追って減少。
Gはまったく眼中に無く、ますます専有度を高める。
999吾輩は名無しである:2011/10/07(金) 22:16:55.17
前スレは残すところ、あと6にしときました。
あとは、他の方よろしくお願いします。

散々、いいように書いてきて勝手なもんだ
1000アセンション ◆ZCAcNhb9dZs7 :2011/10/07(金) 22:18:26.45
千の風!
10011001
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。