三島由紀夫Part34

このエントリーをはてなブックマークに追加
194吾輩は名無しである
筒井康隆と三島由紀夫
http://book.asahi.com/hyoryu/TKY201001120288.html
「三島由紀夫もまた、少し前に文壇に登場した新進作家だった。その新作である『禁色』
が評判だった。青猫座以来つきあいのあった女優たちがしきりに噂(うわさ)
していたので、ぼくはその小説を読んだ。そして打ちのめされた。こんな凄(すご)
い文章が書けなければ作家にはなれないのかと思い、絶望した。
この作家は、ぼくの「作家にでも」といういかにも軽い考えを根本から打ち
消してくれ、作家になるならそれなりの修業が必要であることを教えてくれたのである。
そのお蔭(かげ)でぼくは、マスコミによって便利に消費されてしまうような
作家には、ならずにすんだのかもしれない。

その文章はたしかに美文ではあるが、論理性を持った美文で、警句や箴言(しんげん)
が散りばめられていた。その才能は驚くべきものだった。描写力、
表現力もさることながら、実社会や裏社会の知識もまた作家の年齢からは
考えられぬほどの豊かさに満ちていた。」