147 :
記憶喪失した男:
おれは思う。笑いとは、してはいけないこ
とをすることから引き出されることが多い。
ただの迷惑行為には、反吐が出るが、笑いを
かもしだす迷惑行為には、賞賛を感じてしま
う。ここに、人類の先天的な罪があるのでは
ないだろうか。いわば、河辺の毒殺という発
想こそ、不条理な罪を背負いし良心だといえ
るのだ。
あえて、罪をかぶることにより、笑いをと
る。それは英雄にも似た道化士の技で、この
世を幸せにするために必要なものだ。許され
る笑いと、許されない笑いの境界線はどこに
あるのか。それは理想郷を模索する我々を深
く悩ませる。笑いのない理想郷など必要ない。
ただの効率のよい社会は、理想とはいえない。
笑いを許容する社会こそが、理想である。で
は、じいさんを毒殺すると思いついた河辺の
罪はどう裁かれるべきなのか。
もし、山下が毒殺に成功していれば、河辺
のセリフは笑えるだろうか。書いていた感覚