> いやいや上記二冊はあんまり生活向上のための労働って感じじゃ
>なかったなあ。ごめんなさい。
あはは。私は黒井千次の『時間』が好きで、三回読んだ。
『働くということ』
明治書院の『現代日本文学』には【人と文学】という評の〈概括〉に、
以下のように書いてある。
「企業内の、あるいは職業(労働)をとおしての、機構と組織における
人間の生のメカニズム、現代社会の様相をとらえる」
この評が最終的な解答であるわけはないですが、
黒井千次には労働に対する問題意識があります。それを普遍化して、
文芸にして、職業作家として作品の面白みもトッピングしてる。
生活の向上ということも考えているかもしれませんが、
それも、「現代における」「生活の向上」とは、と捉え直しているはず。
失礼。
『働くということ』も手元にある。
> 問題意識も労働も普通に自分のまわりに寄り添っているから、別に
>とくに意識して書く必要もないと実作者の側からすると思うんです。
これは私のスタンスと違います。
といって、違うから存在を許せないわけではないし、
同じように考えてほしいわけでもない。
個人的な視座って、聖書の文脈とは違い神聖なもんじゃない。
偏執と差はないと思います。それを毎回前置きするのが自虐的なうえ
話が混乱するからしないだけで、そのぐらいの認識は私にもある。
以下、スレの流れをぶった切る青木真也ツイッター(@waoki)のRT四連発。
--------------------------------------
俺がいつ甘やかされた? RT @constantinople2: 青木選手を皆して、甘やかすから(失礼な言い方で申し訳ございません)、北米MMAで負けた
たしかに顔は似てるね(笑)年末は処分されましたよ。厳重注意処分 RT @constantinople2: 大変失礼な言い方になりますが、僕は青木選手が亀田選手と
剥奪される意味がわからん。というか日本MMAをくさしてなんになるのかな RT @constantinople2: 厳重注意処分って実際は痛くも痒くもないでしょ。DREAM王者も剥奪されていない
だな RT @yamato_baku: @waoki 荒らしの相手はしない方がいいですよ。さらに酷くなるだけですよ。
> というかあの仕事については小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様のレビ
>ューも聞きとうございます。いやレビューって言うか批判とか罵倒でも
>うれしいんですが。すでに読んでらっしゃったらすみませんが。
五月尽く 杞憂寛解 営業マン
よく考えてみます。
>>668小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> 五月尽く 杞憂寛解 営業マン
そういう風に言われるのがいやだからわたくしの仕事について
話ふられても作品名とかふせながら回答してんのに。
宣伝しちゃいけないってルールも守ってるのに。
自分で話ふっといてその俳句つうか言い方はひどいと思います。
そういうひとだとは思ってなかったからよけい傷ついた。
>自分で話ふっといてその俳句つうか言い方はひどいと思います。
申し訳ございません。白石氏がそういう点で清廉だとは知らなかった。
白石さんが宣伝しても誰も怒りませんよ。
そうそう〜!
おいらにも本を教えてくださ〜い(*^^*)♪
泥の川 並び青葦 風にわかれる
とはいえちょっと繊細すぎではないですか。冗談のひとつも言えない。
最近日々のすごし方について楽しみを再確認し始めたので、
まだまだ付き合ってもらいたいと思います。
>>663小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
じゃお言葉に甘えてまたちょくちょくきます。基本的におっしゃるところ
の営業はツイッターやミクシイやFacebookそのほかがあるんでここで
やるつもりありませんし、ここのガイドラインも破るつもりはないのでその
あたりをご理解いただけて対応していただければいいです。
> 『働くということ』
> 明治書院の『現代日本文学』には【人と文学】という評の〈概括〉に、
> 以下のように書いてある。
> 「企業内の、あるいは職業(労働)をとおしての、機構と組織における
> 人間の生のメカニズム、現代社会の様相をとらえる」
> この評が最終的な解答であるわけはないですが、
> 黒井千次には労働に対する問題意識があります。それを普遍化して、
> 文芸にして、職業作家として作品の面白みもトッピングしてる。
> 生活の向上ということも考えているかもしれませんが、
> それも、「現代における」「生活の向上」とは、と捉え直しているはず。
うーん。さっきのブログの書評引用のときもそうなんですけど、小山内
劇場 ◆CCwdSZxWJo様の評とか〈概括〉以外は堂でもいいんですよ。
それが得られるからここでコミュニケーションしてるわけですから。
675 :
小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo :2010/06/07(月) 09:35:26
> じゃお言葉に甘えてまたちょくちょくきます。
それはよかった。
> うーん。さっきのブログの書評引用のときもそうなんですけど、小山内
>劇場 ◆CCwdSZxWJo様の評とか〈概括〉以外はどうでもいいんですよ。
わたしには意味のあることですね。
成り立っているかはともかくとして、文学という学問があり、
そこで小説を体系的に捉えようという試みがなされているわけですから
各作家、各作品の位置づけ(比較的客観的なもの)については
知っておきたいし、共通認識の足がかりとして
前置きもしておきたいと思います。
2chの各スレッドを見ていても、そうした叩き台がないと
堂々巡りするだけです。まぁ長期的にはけっきょく堂々巡りですが。
677 :
吾輩は名無しである:2010/06/12(土) 07:59:20
test
貴兄の作品は論じてないよ。
ところで、文学フリマの例を見ても読者って貴重なものになった。
四百以上のサークルまたは個人が参加して一般来場者は
千八百人、両者合わせて三千人が参加したとある。
これはつまり、半数近くが売り手側だったということだ。
誰かの表現したものに触れて知見を広めることよりも、
理解されたい、知らしめたいという欲求こそが問題になっているのは
言語表現の場における他者主体から自己主体への回帰といえる。
宮部みゆきなども「セルフパブリッシング」について立場を言明しましたが
逆説的に言えば職業作家にとってセルフパブリッシングが問題化している、
読むよりも書く、受けるより与える、
構造的個人化がすすんでいるということか。
>>678小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> 貴兄の作品は論じてないよ。
----
>>660 「白石さんの姿が見えない(声が聞こえないだったか?)」という
書き込みがありましたが、災害と人や、災害と都市なんてことに関する、
白石さんの問題意識とあなたなりの答え、
取っ掛かりを読みたかったんじゃないですか?
----
↑これこれ。
著者としては作品の姿勢を二次的に論じられてることになるわけですよ。
言った方は論じた自覚がなくても。
>>675小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> それはよかった。
いえいえよろしくー。
> わたしには意味のあることですね。
> 成り立っているかはともかくとして、文学という学問があり、
> そこで小説を体系的に捉えようという試みがなされているわけですから
> 各作家、各作品の位置づけ(比較的客観的なもの)については
> 知っておきたいし、共通認識の足がかりとして
> 前置きもしておきたいと思います。
ひとの引用でなく小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様の前置きが読みたくて
ここにきているわけですわたくしは。
でもそういう方針ならまあいいけど。
> 2chの各スレッドを見ていても、そうした叩き台がないと
> 堂々巡りするだけです。まぁ長期的にはけっきょく堂々巡りですが。
でもわたくしの作品に関してはなんであの方の書評を共通認識の足がか
りにされたのかよく規準がわからないのです。
まあわからなくてもいいけど。
おはよう。
>↑これこれ。
>著者としては作品の姿勢を二次的に論じられてることになるわけですよ。
>言った方は論じた自覚がなくても。
確かにその通りですね。
ぜひ教えてほしいのですが、著者として件の作品に、
『叫び」や「もどかしさ」や「執念」や
「慚愧(ざんき)」など、もっと読みたかった気がする。
そこに作家・白石昇の何かを見たかった。』や
>>660 の内容について、応えている部分があるとお考えですか?
について、
>>681小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> 確かにその通りですね。
> ぜひ教えてほしいのですが、著者として件の作品に、
> 『叫び」や「もどかしさ」や「執念」や
> 「慚愧(ざんき)」など、もっと読みたかった気がする。
> そこに作家・白石昇の何かを見たかった。』や
>
>>660 の内容について、応えている部分があるとお考えですか?
> について、
ぶっちゃけ、応える必要があったのかさえわかりません。
連載終了時に他の方からも最後があっさりしすぎていると
いう同様のお言葉をいただいたのですがそんなに加筆して
ないですし。
いや、あっさりしないような最後にしたとしても、叫びやもど
かしさや執念や慙愧を加筆するとは限らないわけですが。
まあ、一人称でバリバリの私小説なわけですから書いても
おかしくないんでしょうけどね。
このレビューを書いた方がそういったわたくしの作文をを読
みたいと思う気持ちはわかります。
でも、ほかの人のレビュー読んでるとああそういった叫びや
もどかしさや執念や慙愧を書いてるのかなあと思うこともあり
ます。
まあとにかくこの仕事で書けることはすべて書きましたし、そ
の中から削りまくったのであとは読んだお客様に判断をお任せ
するしかないのです。
683 :
吾輩は名無しである:2010/06/13(日) 12:28:51
test
>ぶっちゃけ、応える必要があったのかさえわかりません。
ここが私と白石氏との違いなんでしょうね。
> でも、ほかの人のレビュー読んでるとああそういった叫びや
>もどかしさや執念や慙愧を書いてるのかなあと思うこともあり
>ます。
そうなんだ。でもそれに無自覚ってどう捉えればいいのか。
いまさらですが考え方の違いはあれど、
本を出版しているってすごいことだ。
めこんって東南アジア系の雄ですよね。我が家の本棚にも一冊ある。
意図がどのあたりにあったのか聞きだすことができないでいますが、
手ごたえのようなものはありましたか?
>>684小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> ぶっちゃけ、応える必要があったのかさえわかりません。
>
> ここが私と白石氏との違いなんでしょうね。
あんまり書きたいことこれひとつ、って感じのお仕事はやんな
いんですよね。
> > でも、ほかの人のレビュー読んでるとああそういった叫びや
> >もどかしさや執念や慙愧を書いてるのかなあと思うこともあり
> >ます。
>
> そうなんだ。でもそれに無自覚ってどう捉えればいいのか。
いろんなことを同時進行で私小説のフォーマットにのせて書く
ので胸張ってこれ書いた、って感じでもないのです。
あれもこれもそれもどれもたくさん書いたのでさじ加減の問題
なのです。
> いまさらですが考え方の違いはあれど、
> 本を出版しているってすごいことだ。
基本自分で作っちゃう気があればけっこう誰にでもできます。そ
れこそ文フリにたくさんいらっしゃるじゃないですか。
> めこんって東南アジア系の雄ですよね。我が家の本棚にも一冊ある。
> 意図がどのあたりにあったのか聞きだすことができないでいますが、
> 手ごたえのようなものはありましたか?
それは何に対する手ごたえですか?
686 :
小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo :2010/06/13(日) 19:40:10
言語芸人として作品を世に出して、我が意を得たりという手ごたえが
あったのかということです。
今までは作品の内容ことを教えてもらっていましたが、
現代の作家(言語芸人ですが)として、本を書くことにどんな意味を
かんじているのかなと。
>>686小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo 様
> 言語芸人として作品を世に出して、我が意を得たりという手ごたえが
> あったのかということです。
いや別に作品を世に出す作業はこの本に限ったことではなく、ずっと
前からやってますので特にこの仕事に関してどうこうとかはないです。
あ、でもようやく出せたか、って感じはすごくあります。この仕事は出す
先が決まらないまま何年も編集の方と進めてきましたので。
ttp://d.hatena.ne.jp/ogwata/20090316/p1 > 今までは作品の内容ことを教えてもらっていましたが、
> 現代の作家(言語芸人ですが)として、本を書くことにどんな意味を
> かんじているのかなと。
いや意味は感じたことないですし、考えてもいません。
こんな本ぼく読みたいから自分で作っちゃったああああ、いいと思う
んだけどんだけみんなもどうだーい? えーい、リリースしちゃえー。
みんな良かったら読んでねー。とそのような感じで仕事しております。
>いや意味は感じたことないですし、考えてもいません。
いいね。めずらしく酒を飲みたくなった。
つうかリリースしたことで我が意を得たりってのはないで
すね。
リリースしたあとでお客様に面白がっていただいてからで
すね我が意含めていろんなもの得るのは。
たとえばストリートで歌うときは、ただ路上で歌っただけじ
ゃ意味がないんです。
前を通るひとの反応が見えないとカラオケボックスで歌っ
てんのと変わんないですから。
それは読者に何か与えたと言うところにあるのでしょうか。
それともその場の喜怒哀楽、エンターテイメントとして
消費されることにあるのでしょうか?
>>690小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> それは読者に何か与えたと言うところにあるのでしょうか。
> それともその場の喜怒哀楽、エンターテイメントとして
> 消費されることにあるのでしょうか?
面白いと思っていただければいいと思ってます。
もちろん、いろんなものも含めて講義の面白さです。
それに娯楽として消費されることが悪いとは思いません。
できれば消費され続けたいと思ってますけど。
いやまてよ消費され続けるってことはその場限りじゃなく
て消えないんだから消費じゃないのか?
いや、消費でいいような気もする。
まあされる消費が持続するかしないかは自分含めお客
様が作品を残したいと思うかどうかだと思いますです。
自分が死んでからも読まれ続けたいと思います?
>それに娯楽として消費されることが悪いとは思いません。
そうか。うん。私だったらちくりと刺したくなるんだろうな。
それから、読者を自分の問題意識に引き込んで、
結果的に私が生き易くなる場をつくりたいと思うかもしれない。
かも、の話。
失礼ながら言語芸人と称するのは建前だと思っていましたが、
首尾一貫していますね。私はあなたに謝罪しないといけない。
>>694小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> それに娯楽として消費されることが悪いとは思いません。
> そうか。うん。私だったらちくりと刺したくなるんだろうな。
> それから、読者を自分の問題意識に引き込んで、
> 結果的に私が生き易くなる場をつくりたいと思うかもしれない。
> かも、の話。
自分が好きなように、ってのもひとの土俵で仕事与えられたら
限界ありますからねつうか無理です。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm7899912 オファー受けてやる仕事の場合、与えられた縛りの中でしっか
りやるしかないですから。
翻訳なんか基本的に原文って縛りがありますし。
> 失礼ながら言語芸人と称するのは建前だと思っていましたが、
> 首尾一貫していますね。私はあなたに謝罪しないといけない。
謝罪? なんで?
表現者としての姿勢を理解していただけないのだとしたら、
それはこっち側の問題だと思うんですが。
ちなみに言語藝人の藝は旧字です。古風なのです。
>謝罪? なんで?
正直言って私は白石氏を軽視していました。
何か書きたいのではなくただ作家になりたい売文家だと思っていました。
けれどこうして応答してみると、白石氏には現代性に合致したスタイルがある。
だから私は謝罪したいと思う。貴兄は意外に手ごわい。
わたしはちょっと嬉しく思います。
小山内は偉そうだなあ〜
>>696小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo様
> 謝罪? なんで?
> 正直言って私は白石氏を軽視していました。
> 何か書きたいのではなくただ作家になりたい売文家だと思っていました。
売文屋です確かに。
あ、でも作家とかはよくわかんない。
なりたいとかも理解できない。
すべての表現者はかってにプロになっていいし、なりたい
とかいう意思自体がおかしいと思ってるし。
> けれどこうして応答してみると、白石氏には現代性に合致したスタイルがある。
> だから私は謝罪したいと思う。貴兄は意外に手ごわい。
> わたしはちょっと嬉しく思います。
けっこう古風だと自分では思ってますが、現代性に合致
してるんですかね。
まあでも仕事をご賞味いただいての軽視ならいくらでも
甘受いたします。
ここへの書き込みだけでスタイルをほめられるってのは
どう反応していいのかわかりませんが。
699 :
吾輩は名無しである:2010/06/14(月) 15:10:50
口蹄疫を思い出すじゃんか
700 :
吾輩は名無しである:2010/07/17(土) 08:20:11
test
701 :
吾輩は名無しである:2010/07/17(土) 09:03:41
test
702 :
小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo :2010/07/17(土) 09:05:27
長い規制だったな。
白石昇は重複スレたてたり、固定と馴れ合ったりする前に、
まず
>>515の俺の質問に答えるべき。
>>703様
東京で引越し準備。
つうかここ以外ではいくらでもどこでなにしてるか公開してるのに
なぜいちいちここで個人の質問に個別に答えないといけないんだろ
う。
検索してくださいよ。
どうして報告義務を要求するんですか?
あなたはわたしの配偶者ですか?
705 :
吾輩は名無しである:2010/07/18(日) 08:29:41
話の流れブッた斬ってスマンが、「ゾーリンゲンのナイフ(ハサミかも)」「寿司屋の
のれんで指を拭く」という文言が使われている小説は何?
オレが小学6年の時(33年前)、国語の教科書に載ってたのだが、どうしても
思い出せません。
誰か教えてください。
>>705様
志賀直哉の『小僧の神様』かもしれません。
707 :
吾輩は名無しである:2010/07/18(日) 08:57:01
ゾーリンゲンのナイフなら大薮の小説にはしょっちゅう出てくるし、
『汚れた英雄』ってぐらいだから、寿司やの暖簾で手もふくだろうが、
あいにくと小学校の教科書向きじゃないw
708 :
吾輩は名無しである:2010/07/18(日) 09:11:30
>>704サン。
ありがとうございます。
早速読んでみます。
>>708様
確認しようと青空文庫に行ってみたのですがなかったっす。
調べてみたら志賀直哉って昭和46年没。
長生きしたんですねえ。
710 :
小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo :2010/07/20(火) 23:11:42
>>709 お気をつけていってらっしゃい。
朝倉祐弥氏の『白の咆哮』を読むことにしました。
冒頭はいいね。風呂敷をどれだけ回収しているか楽しみです。
視座がいくらか私のに近いから、じっくり読むつもりです。
本人、来ないかな。
711 :
小山内劇場 ◆CCwdSZxWJo :2010/07/29(木) 09:49:10
『白の咆哮』ですが、経済的・科学的停滞と共同体の解体に目をつけたのは、
作家の問題意識としてすくなくとも私の気に入るものだったけれど、
そんな冒頭の私性の発散は、その後の話しの展開が虚構に終始して
ついに実存に回収されることはなかった。
文芸作品であるから現実を逸して想像力を飛躍させる、という点は確かに
評論にはできないことだろうし、それこそ重要であると認める人も多いと思う。
しかし、その虚構を展開させた部分(つまりこの本の主な内容)は
ドラマチックなわけでもなく、予言的な説得力もなく、現代的な人間性に
まつわる何がしかを言い当てているわけでもない。
ラストのシーンは場面だけ見たならば力のあるものですが、
もはや受け止めようのない無味乾燥なものだった。
『働くということ』ロナルド・ドーア
『働くということ』黒井千次
前者は初版2005年。グローバリゼーションを視野に、
変質していく資本主義における労働と周辺の諸相を捉えている。
後者は初版1982。著者の実体験をもとに、主に学生へ向けて
人にとって労働とは何かを説明している(エッセー風)。
続けて読んでみると、労働について何か書こうと思うとき、それにまつわる
問題や予備知識的な周縁の広がりがいかに拡大したかがよくわかる。