●●●ふたたまちんぷっぷ●●●

このエントリーをはてなブックマークに追加
私は保母をしている若い女性だ。
幼い頃、父から頻繁に暴力を受けたトラウマを背負っている。
母は父が暴力を振るうのを見て見ぬ振りをしていた。今はもう父は亡き人だ。
私が同棲している彼は、どこかそうした父の面影がある。
機嫌の良いときは饒舌なのだが、話がちょっと合わなくなるとぶすっとする。
そして二人でテレビを見ていたとき、些細なことで意見が分かれ、彼は私を殴り蹴飛ばした。
私の体には痣が残ったが、その件はうやむやにして同棲生活は続いた。
私は体調がすぐれないので病院に行った。すると妊娠していることがわかった。果たしてあの彼とやっていけるのか、私は悩み苦しんだ。
彼にそれとなく打ち明けると、彼は部屋に引きこもってしまった。私は彼と相談したかったのに、彼は断絶を選んだ。
私が外出から帰ってくると、部屋は物が粉々に割れたりして、めちゃくちゃな様子だった。
私は彼のもとに行き、昔の父との思い出話をした。学校をさぼったときのことや。
夜遅くまで本を読んで起きていると、大きな熊が来るから早く寝ろと父から脅された。
私は毎晩布団の中で願った。大きな熊がやってきて、父を殺してくれればいいと。
私は今なら父の不器用さが理解できる気がしたし、彼は私や彼自身にもそんなところがあるし、俺は子供が好きなんだと告げた。
私はなんだか彼に騙されて丸め込まれている気がしないでもなかったが、子供を産んで二人で育てていく期待に包まれて眠った。(了)