●●●ふたたまちんぷっぷ●●●

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敦はトラックを運転し、自動販売機の缶ジュースを補充して回る仕事をしている。
一緒のトラックに乗って一日中仕事を共にする相方は、子持ちの×イチ独身女性だ。今日でもってその相方女性は現場仕事を引退する。
最後のコンビ仕事として、新宿・大久保界隈の自動販売機を二人で回りながら、身の上話に花を咲かせた。
四年前、敦は大学時代のクラスメイト智恵子と結婚した。
敦は映画の脚本家志望だったので、卒業後就職せず、智恵子が働いて同棲生活を支えていた。
ところが智恵子が心の風邪にかかり、働けずに異常な振る舞いをするようになり、敦はついに仕事を始めた。
敦は家に戻るのが嫌になり、近所の美容師と浮気をしてラヴホテルに通う。
智恵子に離婚を願うと、あっさり受け入れられたが、美容師との関係も破滅した。
そんな敦の話を、トラックを運転しながら相方女性は自らの結婚や離婚と比べ、意見する。
歌舞伎町のラヴホテルの補充に敦達はやってきた。ここの住み込み婆さんは二人を歓迎し、寂しいのかなかなか帰してくれないのだ。
相方女性がシャワーを借りている間に、敦は婆さんから内緒の話を聞いた。
相方女性が現場を引退するのは、新しい夫ができたからで、それで実家に近い千葉の総務に移るのだ。
仕事を終えて営業所に戻ると、相方女性は机やトラックから自分のものを集め、ダンボールに入れ始めた。
敦は離婚届の保証人になってくれと、相方女性に頼み、しぶしぶ書いてもらう。
相方女性は仕事中はとても気が強かったのに、営業所を出て帰宅路につくや、弱弱しい振る舞いに変わった。
それを見送りながら、敦は石を地面から掘り出して蹴飛ばした。(了)