第4:集団自決命令は架空だった
今日では、座間味島と渡嘉敷島のいずれにおいても、以下のとおり、日本軍による集団自決命令がなかったことが明らかになっている。
1原告梅澤少佐による座間味島の集団自決命令について
(1)事実
昭和20年3月25日に米軍の攻撃があった際、座間味村の幹部5人が原告梅澤少佐を訪ね、「集団自決させて欲しい、駄目なら手榴弾が欲しい。小銃があるから実弾を下さい。」
と懇願したが、原告梅澤少佐に「生き延びてくれ、弾薬は渡せない」と拒絶された。
しかし、村民らは、原告梅澤少佐の説諭にもかかわらず、次々と集団自決を決行し、凄惨な最期を遂げた。
これが事実である。
(2)証言者ら
原告梅澤少佐に弾薬供与を懇願に行った5人のうちで生き残った女子青年団長は、一時期部隊長の集団自決命令があったと証言し、その後、原告梅澤に対し、部隊長の自決命令はなかったと謝罪している。
また、自決した助役の弟は、座間味島の戦没者、自決者の補償交渉に当たる座間味村の担当者となり、原告梅澤少佐による自決命令があったと証言していたが、
昭和62年3月28日、座間味島を訪ねた原告梅澤に「勝手に隊長命令による自決とした事はすみませんでした」と謝罪している。
(3)新聞報道
原告梅澤少佐の集団自決命令については、神戸新聞が昭和60年7月30日、同61年6月6日付紙面で、それが架空のものであったことを報道し、
同62年4月18日では「遺族補償を得るために『隊長命令に』」とその真相を報道し、さらに東京新聞は昭和62年4月23日「大戦通史勇気ある訂正」「弟が証言補償得やすくするため」と報じた。
2:赤松大尉の集団自決命令と曽野綾子著「ある神話の背景」について
渡嘉敷島における赤松大尉による集団自決命令があったという世間に流布された風聞に疑問をもった作家・曽野綾子は、現地に足を運び、
関係当事者に直接取材するなどの徹底した調査を行い、昭和48年に文芸春秋社から出版された「ある神話の背景」を著述し、
赤松大尉による集団自決命令があったことを支持する証拠がないことを明らかにした。
その後、今日に至るまで、赤松大尉による集団自決命令に関わる前記風聞を裏付ける何らの証拠も現れていない。
第5原告らの蒙った損害とその回復
本件書籍一「太平洋戦史」、同三「沖縄ノート」の原告梅澤少佐に関する前記記述は、虚偽の事実を摘示して原告梅澤の社会的評価を著しく低下させ、
その名誉を甚だしく毀損し、もって原告梅澤の人格権を侵害し、筆舌に尽くしがたい精神的苦痛を与えた。
本件書籍二「沖縄問題二十年」、同三「沖縄ノート」の赤松大尉に関する記述は、虚偽の事実を摘示して原告赤松の社会的評価を著しく低下させ、
その名誉を甚だしく毀損してその人格権を侵害したうえ、原告赤松が実兄・赤松大尉に対して抱いていた人間らしい敬愛追慕の情を内容とする人格的利益を回復不能なまでに侵害した。
被告岩波書店は本件書籍一、同二、同三の発行者であり、被告大江は本件書籍三「沖縄ノート」の著者であり、共に原告らに対する名誉等の人格権侵害について不法行為責任を負うべきものである。
原告らの名誉回復と精神的苦痛を慰謝するためには、被告同岩波書店は本件各書籍の記述に対して訂正、謝罪広告を掲載し、
原告らに慰謝料の支払いをする必要があり、被告大江は本件書籍三「沖縄ノート」の記述に対して訂正、謝罪広告を掲載し、原告らに慰謝料の支払いをする必要がある。
よって、原告らは、人格権(名誉権)に基づき、被告岩波書店に対し請求の趣旨第1項記載の本件書籍一、同二、同三の各出版、販売、頒布の差止めを求めるとともに、
民法709条、同719条及び同723条に基づき、原告らの名誉回復の適当な措置として、被告岩波書店と被告大江に対し、請求の趣旨第2項記載の各謝罪広告の掲載を求め、
民法709条、同719条及び同710条に基づき、被告岩波書店及び被告大江に対し、
請求の趣旨第3項記載の慰謝料の支払い(原告らに対する各金500万円の限度で被告らは共同不法行為に基づく連帯責任)を求めて本訴に及ぶ。