私は学生の頃から、身近な男性を見ると、「この人と結婚するかも」と時めくことが多かった。
だがその予感は相手の男性と付き合いもせずに、理想が壊れてしまうばかりだ。
美大を出た私は美術館の就職に落ちまくり、人気漫画家が税金対策でやっている美術館に就職した。
二十代最後で焦りもある。仲の良い女友達は一人が結婚し、一人が彼氏がいて、彼氏無しは私だけだ。
私の父は病気のため食事制限があり、幼い私は良質な素材しか食べずに育った。
そのせいか外食が極端に苦手だ。メニューの写真と実際の料理の落差にがっかりする。
美術館が休みの月曜日、私は英会話教室に通っている。
そこでまたしても「この人と結婚するかも」と時めく男性を発見した。
英会話教室で出会った彼と一緒に蕎麦を食べに行ったが、相手の嫌なところばかり目について一気に醒めた。
職場の食事会。大勢で卓を囲んでとりわけすると、気苦労ばかりで、本当に辛くて御飯が不味い。
美術館で大事な絵を紛失してしまい、大慌てで探し落胆する私。
絵はゴミ捨てにあり、一件落着。美術館のオーナーである漫画家は、失くした妻について語る。
上手く行っていたはずの友人カップルも破綻する。
私は外食が苦手だが、好きな人と好きな時間を共有すれば、おいしく食べられると、女友達二人を招いて自宅で食事をしているとき思う。
私は時めきに左右されず、もう一度、英会話教室の彼と仲良くしてみようと前向きに暮らし始めた。(了)