詩を脈絡なく終りなく引用しつづけるスレ

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1吾輩は名無しである
こころをばなににたとへん
こころはあぢさゐの花
ももいろに咲く日はあれど
2吾輩は名無しである:04/07/26 22:43

無の誰でもないものの薔薇
3吾輩は名無しである:04/07/26 22:47
呼雛籬外鶏 籬外草満地 雛飛欲越籬 籬高堕三四
春艸路三叉中に捷径あり我を迎ふ
たんぽゝ花咲り三々五々五々は黄に
三々は白し記得す去年此路よりす
4吾輩は名無しである:04/07/26 22:51
La chair est triste , helas! et j'ai lu tous les livres.
Fuir! la-bas fuir ! Je sens que des oiseaux sont ivres.
5吾輩は名無しである:04/07/26 22:53
>>4

なにやら「ひけらかし君」がきていますね。
6吾輩は名無しである:04/07/26 22:55
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
7吾輩は名無しである:04/07/26 23:02
ああ、大和にしあらましかば、
今神無月、
うは葉散り透く神無備の森の小路を、
あかつき露に髪ぬれて、往きこそかよへ、
斑鳩へ。平群のおほ野高草の
黄金の海とゆらゆる日、
塵居の窓のうは白み日ざしの淡に、
いにし代の珍の御経の黄金文字、
百済緒琴に、斎ひ瓮に、彩画の壁に
8吾輩は名無しである:04/07/26 23:06
しずかに積んで
石板のようにしずかに積んで
石板のようにしずかに時間の荷を積んで
石板のようにしずかに暗澹たる時間の荷を積んで
たちまちまた崩れ落ちてしまう
不可能な水の
階段
9吾輩は名無しである:04/07/26 23:07
誰かヘルダーリンの一番良い一節おねがいします!
10吾輩は名無しである:04/07/26 23:57
>>9
おれはヘルダーリン読んでないんであしからず。


ああ、いかにわたしが叫んだとて、いかなる天使が
はるかの高みからそれを聞こう? 天使の列序につらなるひとりが
不意にわたしを抱きしめることがあろうとも、わたしはその
より烈しい存在に焼かれてほろびるであろう。なぜなら美は
怖るべきものの始めにほかならぬのだから。
11吾輩は名無しである:04/07/27 01:02
やつめさす
出雲
よせあつめ 縫い合わされた国
出雲
つくられた神がたり
出雲
借りものの まがいものの
出雲よ
さみなしにあわれ
12吾輩は名無しである:04/07/27 07:51
ふり灑ぐあまつ光に目の見えぬ黒き蟋蟀を追ひつめにけり
13吾輩は名無しである:04/07/27 08:03
海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。

約束はみんな壊れたね。
海には雲が、ね、雲には地球が、映つてゐるね。
空には階段があるね。

今日記憶の旗が落ちて、大きな川のやうに、私は人と訣れよう。床に私の足跡が、足跡に微かな塵が……、ああ哀れな私よ。
僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。
14吾輩は名無しである:04/07/27 08:07
さくそはな
15吾輩は名無しである:04/07/27 08:13
人の世の
幸不幸は
人と人とが
出逢うことから
はじまる

よき
出逢いを
16吾輩は名無しである:04/07/27 19:46
墓のうらに廻る
17吾輩は名無しである:04/07/27 20:27
林檎の木に 赤い実の
熟れてゐるのを 私は見た
高い高い空に 鳶が飛び
雲がながれるのを 私は見た
太陽が 樹木のあひだをてらしてゐた

そして 林の中で 一日中
私は うたをうたつてゐた
《ああ 私は生きられる
私は生きられる……
私は よい時をえらんだ》
18吾輩は名無しである:04/07/28 00:04
うすむらさきの思い出ばかりはせんなくて
19吾輩は名無しである:04/07/28 03:35
暗闇に浮かぶお前の裸体
月の光が窓からお前を照らし しなやかなラインがオレを惑わせる
Hey ギャランドゥー!
20吾輩は名無しである:04/07/28 04:52
出でていかば、誰が別れの難からむ。ありしにまさる、今日は悲しも。
            古今和歌集〜詠み人知らず〜

21吾輩は名無しである:04/07/28 19:49
Ein Nichts
waren wir, sind wir, werden
wir bleiben, bluehend :
die Nichts-, die
Niemandsrose.

ひとつの無
であった、私たちは、
無である、私たちは、無であり続けるだろう
私たちは、 花さきながら
何でもないものの、
誰でもないものの薔薇。
22吾輩は名無しである:04/07/28 22:29
レモンの木は花咲きくらき林の中に
こがね色したる柑子は枝もたわわに実り
 晴れて青き空よりしづやかに風吹き
ミルテの木はしづかにラウレルの木は高く 
雲にそびえて立てる国を知るや彼方へ
君とともにゆかまし
23吾輩は名無しである:04/07/28 22:32
>>21

既出だ。
24吾輩は名無しである:04/07/28 22:36
来た、来た。
言葉が来た、来た、
夜の間を縫って来た、
輝こうとした、輝こうとした。

灰。
灰、灰。
夜。
夜ーまたー夜。−目へ
行け、濡れた目へ。
25吾輩は名無しである:04/07/28 22:41
>>24

さきほどから・・・・ツェランマニアですか?

俺も好きですが
26吾輩は名無しである:04/07/28 22:43
>>25
いや、別人。ツェランが書き込まれてたから、俺も書いてみただけ。
27吾輩は名無しである:04/07/28 22:44
Herzzeit, es stehn
die Getraumten fur
die Mitternachtsziffer.

Einiges sprach in die Stille, einiges schwieg,
einiges ging seiner Wege.
Verbannt und Verloren
waren daheim.

Ihr Dome.

Ihr Dome ungesehn,
ihr Strome unbelauscht,
ihr Uhren tief in uns.
28吾輩は名無しである:04/07/28 22:45
ヘルダーリンマニアはいないのかな?
ハイデガーの遺言とかの
29吾輩は名無しである:04/07/28 22:54
まずは2チャン用語の源となった詩に敬意を表するべきだ。

1.ここ 曙の湧きでる丘 清陵 目をあげて
  きみとぼく きみとぼく 光と光 涙のなかからも
  きらめかねばならない 若い稲妻 ゆんゆん
  ああ 何のために人間はいるのか
  発信しよう 激しい愛を
  青さのむこう 昼の空の星にまで
  発信 ゆんゆん 発信 ゆんゆん 発信 ゆんゆん 光と光

30吾輩は名無しである:04/07/28 22:55
>>29

はいよ
31吾輩は名無しである:04/07/28 23:01
こころの時、
真夜中の数字のために
夢見られたものたちが立つ

幾つかは静寂の中に語り、幾つかは沈黙し
幾つかはそれぞれの道を行った。
故郷では
禁じられ、忘れられたものたち。

ドームよ。

目に見えないドームよ、
聞かれることのない流れよ、
私たちに深くある時計よ。
32吾輩は名無しである:04/07/28 23:07
誰家玉笛暗飛声 散入春風満落城
此夜曲中聞折柳 何人不起故園情
33吾輩は名無しである:04/07/28 23:10
落城→洛城
34吾輩は名無しである:04/07/28 23:25
みな良い詩だのぉ
35吾輩は名無しである:04/07/28 23:30
最近ツェランも飽きてきたな。
変な奴が信奉してるし。
36吾輩は名無しである:04/07/28 23:34
>>35
変な奴って??


籠もよ み籠持ち
堀串もよ み堀串持ち
この丘に 菜摘ます子
家聞かな 名のらさね
そらみつ 大和の国は
おしなべて 吾こそ居れ
しきなべて 吾こそ座せ
吾をこそ 夫とは告らめ
家をも名をも
37吾輩は名無しである:04/07/28 23:43
こころはまた夕闇の園生のふきあげ
音なき音のあゆむひびきに
こころはひとつによりて悲しめども
かなしめどもあるかひなしや
ああこのこころをばなににたとへん。
38吾輩は名無しである:04/07/28 23:51
おかんはたったひとり 峠田のてっぺんでくわにもたれ
空いっぱいに鳴くひばりの声を じーっと聞いているやろで
里のほうで牛が(うろ覚え)

おおきい美しい春がまわってくるたんびに
おかんの年がよるのが目にみえるようでかなしい
おかんがみたい

春ってタイトルで昔小学校の教科書にのってて、好きだった詩。
ほとんどわすれてしまた
39吾輩は名無しである:04/07/28 23:53
おかんはたった一人
峠田のてっぺんで鍬にもたれ
大きな空に
小ちゃなからだを
ぴょっくり浮かして
空いっぱいになく雲雀の声を
ぢっと聞いてゐるやろで

里の方で牛がないたら
ぢっと余韻に耳をかたむけてゐるやろで

大きい 美しい
春がまはつてくるたんびに
おかんの年がよるのが
目に見へるやうで かなしい
おかんがみたい
40吾輩は名無しである:04/07/28 23:56
オトウサンヲキリコロセ
オカアサンヲキリコロセ
ミンナキリコロセ
41吾輩は名無しである:04/07/28 23:57
>>39
誰の詩だ??
4238:04/07/28 23:57
>>39
まりがとう!そうそうそれだ!なつかすぃ…
43吾輩は名無しである:04/07/29 00:00
『春』坂本遼だよ。
44吾輩は名無しである:04/07/29 00:02
こころは二人の旅びと
されど道づれのたえて物言ふことなければ
わがこころはいつもかくさびしきなり。
45吾輩は名無しである:04/07/29 00:03
終わらすなよ…
46吾輩は名無しである:04/07/29 00:06
>>45
すまん、じゃあまた再開


ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
47吾輩は名無しである:04/07/29 00:08
子供は笛が欲しかった
48吾輩は名無しである:04/07/29 00:50
白い波が頭へとびかかってくる七月
南方の綺麗な町をすぎる
静かな庭が旅人のために眠っている
薔薇に砂に水
薔薇に霞む心
石に刻まれた髪
石に刻まれた音
石に刻まれた眼は永遠に開く
49吾輩は名無しである:04/07/29 00:58
漢皇重色思傾国 御宇多年求不得
楊家有女初長成 養在深閨人未識
天生麗質難自棄 一朝選在君王側
回眸一笑百媚生 六宮粉黛無顔色
春寒賜浴華清池 温泉水滑洗凝脂
侍児扶起嬌無力 始是新承恩沢時
雲鬢花顔金歩揺 芙蓉帳暖度春宵
春宵苦短日高起 従此君王不早朝
承歓侍宴無閑暇 春従春遊夜専夜
50吾輩は名無しである:04/07/29 01:03
ほんとうのことをいうのは
いつもはずかしい。

伊豆の海辺に私の母はねむるが。
少女の日
村人の目を盗んで
母の墓を抱いた。

物心ついたとき
母はうごくことなくそこにいたから
母性というものが何であるか
おぼろげに感じとった。

墓地は村の賑わいより
もっとあやしく賑わっていたから
寺の庭の盆踊りにあやうく背を向けて
ガイコツの踊りを見るところだった。

叔母がきて
すしが出来ている、というから
この世のつきあいに
私はさびしい人数の
さびしい家によばれて行った。

母はどこにもいなかった。
51吾輩は名無しである:04/07/29 01:04
ふいに
ひらく
蓮華
いもうと

血。
52吾輩は名無しである:04/07/29 01:08
やさしくきしみあう
頭蓋骨たち。


水面まで届くまえにもう切手ははがれおちくさぐさの
物影にまぎれてしまう。


ながれてゆくうすい葉

うえの


すけてみえる
真昼。
53吾輩は名無しである:04/07/29 01:10
葡萄の美酒 夜光の杯
飲まんと欲して 琵琶馬上に催す(うながす)
酔つて砂場に伏す 君笑ふことなかれ
古来征戦幾人か帰る
54吾輩は名無しである:04/07/29 01:17
せめてはあたらしき背広を着て
きままなる旅にいでてみん
55吾輩は名無しである:04/07/29 01:42
天井に 朱きいろいで
戸の隙を 洩れ入る光
ひなびたる 軍楽の憶ひ
手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
空は今日 はなだ色らし、
うんじてし 人のこころを
諫めする なにものもなし。

樹脂の香に 朝は悩まし
うしなひし さまざまのゆめ、
56福田和也:04/07/29 17:25
おまえらツェラン好きならもちろんヘルダリイイイインも読んでるよな?
57吾輩は名無しである:04/07/29 21:29
永劫の根に触れ
心の鶉の鳴く
野ばらの乱れ咲く野末
砧の音する村
樵路の横ぎる里
白壁のくづるる町を過ぎ
路傍の寺に立寄り
曼陀羅の織物を拝み
枯れ枝の山のくづれを越え
水茎の長く映る渡しをわたり
草の実のさがる藪を通り
幻影の人は去る
永劫の旅人は帰らず
58吾輩は名無しである:04/07/30 01:31
ある日、ホセが会社から家に電話をかけました。

リーン リーン リーン ガチャ

ホセ「もしもし」

ペロ「わん!」

ホセ「おー!ペロ元気か?」

ぺろ「わん!」

ホセ「マリアはいるかい?」

ペロ「わん!」

ホセ「今マリアは一人で居るのかな?」

ペロ「うぅー」

ホセ「ほー誰か友達が来ているのかい?」

ペロ「わん!」

ホセ「女の友達かい?」

ペロ「うぅー」

ホセ「男の友達が来てるんだな。で、マリアは友達と何やってるんだ?」

ペロ「ハァハァハァハァハァ」
59吾輩は名無しである:04/07/30 19:41
汽車が山道をゆくとき
60吾輩は名無しである:04/07/31 01:12
旅人は待てよ
このかすかな泉に
舌を濡らす前に
考へよ人生の旅人
汝もまた岩間からしみ出た
水霊にすぎない
この考へる水も永劫には流れない
永劫の或時にひからびる
ああかけすが鳴いてやかましい
時々この水の中から
花をかざした幻影の人が出る
61吾輩は名無しである:04/07/31 04:14
父上様、三日とろろ美味しゅうございました。干し柿、もちも美味しゅうございました。
敏雄兄、姉上様、おすし美味しゅうございました。
克美兄、姉上様、ブドウ酒、リンゴ美味しゅうございました。
巌兄、姉上様、しそめし、南蛮づけ、美味しゅうございました。
喜久造兄、姉上様、ブドウ液、養命酒、美味しゅうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。
62吾輩は名無しである:04/07/31 11:19
海のおと
聞えぬ隅に、官立てり。
ひたに明るき
蔀のおもて
6362:04/07/31 11:20
官立てりじゃなくて、「宮」立てりだな、たぶん
手持ちに原文がないんでググってみたんだが。

あと句読点はいい加減に入れた(w
誰か正確なのを教えてくれ
64吾輩は名無しである:04/07/31 11:22
風立ちぬ、いざ生きめやも。
65吾輩は名無しである:04/08/01 21:32
絶対的に現代的
66吾輩は名無しである:04/08/01 22:23
旅に病んで夢は枯野を
67吾輩は名無しである:04/08/02 20:52
おお季節よ、おお城よ!
どのような魂に傷がないだろうか。

誰も避けて通ることのない、
幸福の魔法の研究、それを僕は続けてきた。

幸福に敬礼を、
ゴールの雄鶏が歌うその度に。
68吾輩は名無しである:04/08/03 21:12
駆けめぐる
69吾輩は名無しである:04/08/06 22:23
みづいろの窓によりかかりて
70吾輩は名無しである:04/08/07 01:46
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
71吾輩は名無しである:04/08/10 11:39
暑い日が毎日つづいた。
隣りのお嫁入前のお嬢さんの、
ピアノは毎日聞こえてゐた。
友達はみんな避暑地に出かけ、
僕だけが町に残ってゐた。
72吾輩は名無しである:04/08/10 22:17
ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日
73吾輩は名無しである:04/08/14 01:07
Oui, je viens dans son temple adorer l'Eternel.
Je viens, selon l'usage antique et solennel,
Cerebrer avec vous la fameuse journee
Ou sur le mont Sina la loi nous fut donnee.
74吾輩は名無しである:04/08/14 02:00
鐘は理由もなく鳴りわれわれもまた
鐘よ理由もなく鳴れわれわれもまた
75吾輩は名無しである:04/08/14 16:55
鐘つながりで。

夜よ来い 鐘よ鳴れ
月日は流れ 僕はとどまる
76吾輩は名無しである:04/08/16 20:01
いまははや しんにさびしいぞ
77吾輩は名無しである:04/08/16 23:27
ああ、ああ、ああ、ああ。
ああ、ああ、ああ、ああ。
78吾輩は名無しである:04/08/16 23:40
地球自轉に沿ひ     苟保地球自公轉
いろはも廻り止まぬ     伊呂波不倦自顯    
あえかの聲おほふ      靈峰齊帶有情聲       
我等を搖する峰居      搖籃育民知情鮮
とよむ瀬情け傳へ      化爲億流濺大洋

ちきうしてんにそひいろはもめくりやまぬあえかのこ
ゑおほふわれらをゆするみねゐとよむせなさけつたへ

Ode to Iroha

As long as the earth keeps its rotation and revolution,
Iroha verse never cease His poetical movement.
Islands` mountains is covered with this heartful recitation
Which,as a cradle,have been cultivate our sentiment.
Now we become numberless stream to pour into oceans`circulation
79吾輩は名無しである:04/08/17 13:12
誠実の海―
かつては潮満ち、大地の岸をめぐり、
折り目なす帯の煌きを見せし海。
いまは聞く、暗きとどろき、
荒涼たるこの世の果てに、
裸なる小石の浜に、
夜風とともに
遠ざかりゆく陰鬱な唸り。



だれかホイットマンを頼む。
80吾輩は名無しである:04/08/22 15:43
坂の上から見た町は かげろう
81吾輩は名無しである:04/08/23 21:24
雲に吸はれし十五の心
82ハモン:04/08/25 21:59
「彼女の小さな部屋は花のような赤に染まる」

スウィンバ-ンの詩
83吾輩は名無しである:04/08/27 23:25
てふてふが一匹韃靼海峡を
84吾輩は名無しである:04/08/28 01:41
いいえ犬は餓ゑているのです子供
 
太陽も海も信ずるに足りない
85吾輩は名無しである:04/08/28 21:59
われひとりうれしきことをおもはむ
86吾輩は名無しである:04/08/28 22:50
言葉なんかおぼえるんじゃなかった

・・・ちっガイシュツだったか…?
87吾輩は名無しである:04/08/30 00:30
「犬のようだ!」と彼はいった。恥辱だけが生き残るように思われた。
88吾輩は名無しである:04/08/30 00:42
たたかひは上海に起こり居たりけり鳳仙花紅く散りゐたりけり
89吾輩は名無しである:04/08/30 21:01
 その町の、とある本屋の店先で−−私は、やさしい土耳古娘の声を
聞いた。私は、そのひとから赤いきれいな表紙の本をうけとつた。幼い
人たちのうたふやうな。

 また幾たびか私は傘を傾けて、空を見た。一面の灰空ではあつたが、
はかり知れない程高かつた。しづかな雨の日であつた。

誰かれが若い旅人にささやいてゐた。おまへはここで何を見たか。
さう、私は土耳古娘を見た、あれから公園で、あれからうすやみの町の
はづれで。

−−いつの日も、さうしてノヴアリスをひさぎ、リルケを売るのであらう。
さうして一日がをはると、あの夕焼の娘は・・・・・・私の空想はかたい酸い
果実のやうだ。

 私はあの娘にただ燃えつきなかつた蝋燭を用意しよう。旅の思ひ出の
失はれないために。−−夏の終り、古い城のある町で、私は、そのひと
から、この歌の本をうけとつたと、私はまた旅をつづけたと。
90吾輩は名無しである:04/08/30 21:07
>>89
誰の詩?
91吾輩は名無しである:04/08/30 21:30
  静かな肩には
  声だけがならぶのでない
  声よりも近く
  敵がならぶのだ
  勇敢な男たちが目指す位置は
  その右でも おそらく
  そのひだりでもない
  無防備の空がついに撓み
  正午の弓となる位置で
  君は呼吸し
  かつ挨拶せよ
  君の位置からの それが
  最もすぐれた姿勢である

9289:04/08/30 22:20
>>90
旧仮名遣い(=戦前)、この甘ったるさ、
リルケ、ノヴァーリス、、、、と来たら、
東大建築科卒の軽井沢好きの早逝の、あの人でしょう。
93吾輩はななしである:04/08/30 22:21
道っちゃん?
9489:04/08/30 22:30
道ちゃんのをもう一つ。


 身動きの出来ない程の花のなかで、少年は死んでゐた。その形
のまま柩は町を運ばれて行つた。寒い朝であつた。

<天に行つて よそ見ばかりしてゐる
 天の先生に叱られてばかりゐる

何度もくりかへし葬列はうたつてゐた。
そのはてを、花びらが幾すぢのあたらしい道を引いた。

<かなしみはしづかであれ
 うたのとほくをゆけ

95吾輩は名無しである:04/08/30 22:45
意味不明の詩をのっけるな!
ノヴァーリスという単語にたよるな!
96吾輩はななしである:04/08/30 22:47
まあ、道っちゃんだから
97吾輩は名無しである:04/08/31 01:03
道っちゃんて誰?
98吾輩は名無しである:04/09/01 00:22
さ庭べに夏の西日のさしきつつ「忘却」のごと鞦韆は垂る
99吾輩は名無しである:04/09/01 21:38
道っちゃんて誰よ?
100吾輩は名無しである:04/09/01 23:09
>>99 このお方。
http://www.tachihara.jp/image/ginza.jpg


それは一つの花の名であつた
それは黄いろの淡いあはい花だつた
101吾輩は名無しである:04/09/01 23:34
雲がゆく
おれもゆく
アジアのうちにどこか
さびしくてにぎやかで
馬車も食堂も
景色も泥くさいが
ゆったりとしたところはないか
どっしりした男が
五六人
おおきな手をひろげて
話しをする
そんなところはないか
雲よ
むろんおれは貧乏だが
いいじゃないか つれてゆけよ
102吾輩は名無しである:04/09/02 01:33
>>100
ありがたう。
103吾輩は名無しである:04/09/02 01:47
若ければその瞳も悲しげに
ひとりはなれて砂丘を降りてゆく
傾斜をすべるわが足の指に
くづれし砂はしんしんと落ちきたる。
なにゆゑの若さぞや
この身の影に咲きいづる時無草もうちふるへ
若き日の嘆きは貝殻もてすくふよしもなし。
ひるすぎて空はさあをにすみわたり
海はなみだにしめりたり
しめりたる浪のうちかへす
かの遠き渚に光るはなにの魚ならむ。
若ければひとり浜辺にうち出でて
音もたてず洋紙を切りてもてあそぶ
このやるせなき日のたはむれに
かもめどり涯なき地平をすぎ行けり。
104吾輩は名無しである:04/09/03 13:50
秋が来た。
また公園の並木道は、
すっかり落ち葉で蔽はれて、
その上に、わびしい黄色い夕陽は落ちる。

それは泣きやめた女の顔、
ワットマンに描かれた淡彩、
裏ツ側は湿っているのに
表面はサラッと乾いて、

細かな砂粒をうっすらと附け
まるであえかな心でも持っているもののように、
遥かの空に、瞳を送る、

僕はしゃがんで石ころを拾ってみたり、
遠くをみたり、その石ころをちょっと放ったり、
思い出したみたいにまた口笛を吹いたりします
105吾輩は名無しである:04/09/05 00:26
>>103
終わらせるもの終わらせてからにしろや。


五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。
106吾輩は名無しである:04/09/05 22:25
ぼくの学習ノートに
ぼくの机や木々に
砂に 雪に
ぼくはきみの名を書く

読みおえた全てのページに
空白の全てのページに
石に 血に 紙に 灰に
ぼくはきみの名を書く

金塗りの肖像に
戦士たちの武器に
王たちの冠に
ぼくはきみの名を書く
107吾輩は名無しである:04/09/06 20:51
しげる草むらをたづねつつ
なにをほしさに呼ばへるわれぞ
108吾輩は名無しである:04/09/07 22:29
自分は一個の人間でありたい。
誰にも利用されない
誰にも頭を下げない
一個の人間でありたい。
他人を利用したり
他人を歪にしたりしない
そのかわり自分も歪にされない
一個の人間でありたい。
自分の最も深い泉から
最も新鮮な
生命の泉を汲み取る
一個の人間でありたい。
誰もが見て
これでこそ人間だと思ふ
一個の人間でありたい。
一個の人間は
一個の人間でいいのではないか。
一個の人間。
独立人同志が
愛しあい、尊敬しあい、力をあわせる。
それは実に美しいことだ。
だが他人を利用して得をしようとするものは、
いかに醜いか。
その醜さを本当に知るものが一個の人間。
109吾輩は名無しである:04/09/07 22:42
三好達治は、愛子に惚れる馬鹿男の割りにはいい詩を読むな。
倫理と文学ってどういう関係にあるんだろうな。
110吾輩は名無しである:04/09/07 23:00
愛子タン美人だもん
111吾輩は名無しである:04/09/07 23:15
萩原葉子タンの本を読めば、いかに愛子タンがくだらない人間であったかは
だいたい想像がつく。美人っつーのは、精神的な破綻が大きいもんだとね(w
112吾輩は名無しである:04/09/07 23:22
朔タンも詩人じゃなければ(ry
113吾輩は名無しである:04/09/07 23:29
来客があると後退りするような人ですよ(w
朔タンは。
114吾輩は名無しである:04/09/07 23:31
お知り合いですか?w
スレ違いになってきた?
115吾輩は名無しである:04/09/07 23:35
萩原葉子さんの本にはそう書いてありましたね。
文学的な偉業と、人格的な成熟とは必ずしも一致しないのでしょう。
116吾輩は名無しである:04/09/07 23:39
結論出ちゃった
117吾輩は名無しである:04/09/11 19:12:50
太陽日より三百六十五倍もくだらない護符
118吾輩は名無しである:04/09/13 21:09:23
ゆくゆく葉うらにささくれて
指も真紅にぬれぬれぬ。
119吾輩は名無しである:04/09/13 21:14:40
裏を見せ表を見せて散る紅葉
120吾輩は名無しである:04/09/13 22:42:02
ようやく十字軍のときが近づく
121吾輩は名無しである:04/09/15 00:46:11
仰臥人如唖 黙然見大空
大空雲不動 終日杳相同
122吾輩は名無しである:04/09/15 01:07:21
天つ神を地ニ呼ばはり
すさまじく嵐ハ哮る
暗き雲重くたれ罩め
ポセイドーンの月ハ迫る
123吾輩は名無しである:04/09/15 13:27:54
向日葵の蘂を見るとき海きえし
124吾輩は名無しである:04/09/15 15:02:45
上州は桑原十里桑の實を食うべて口を朱に染めばや
125茂吉:04/09/15 22:31:25
くろく散る通草の花のかなしさを稚くてこそおもひそめしか
126吾輩は名無しである:04/09/15 22:32:30
それぞれが誰の詩かぐらいは書きなさい。
127吾輩は名無しである:04/09/15 22:36:26
なほもひねもすはしりゆく
草むらふかく忘れつる
洋銀の皿をたづねゆ行く。
128吾輩は名無しである:04/09/15 22:45:01
太郎の屋根に雪降り積む
129茂吉:04/09/15 23:14:36
冬至より幾日過ぎたるころほひか孤独のねむり窗の薄明
130吾輩は名無しである:04/09/15 23:20:42
ひさかたの ひかりのどけき春の日にしづこころなく花の散るらむ
131吾輩は名無しである:04/09/16 00:30:49
法師蝉しみじみ耳のうしろかな
132吾輩は名無しである:04/09/16 00:53:06
それぞれが誰のそれぞれが誰の詩かぐらいは書きなさい。
詩かぐらいは書きなさい。
133吾輩は名無しである:04/09/16 00:58:07
ふりむきし顔のひらたく秋の暮
134吾輩は名無しである:04/09/16 01:05:48
まつすぐの道に出でけり秋の暮 高野素十
135吾輩は名無しである:04/09/16 01:07:04
欲が凝って固まる。
でも僕は笑い続けるよ、死ぬかぎりね。
この世は欲の塊。二人が産まれた時から。
でも僕は笑い続けるよ、死ぬかぎりね。
136吾輩は名無しである:04/09/16 01:10:17
ただ遊びたかっただけですよ(w 
泣きたければ泣けば良いし、笑いたければ笑えない良いのでは?
137吾輩は名無しである:04/09/16 01:11:49
訂正
笑いたければ笑えば良いのでは? ですね。
138吾輩は名無しである:04/09/16 01:15:43
人と関われば澱のようなものが必ず出てきます。
それを見ない振りをしているようで一言言いたくなったのですよ。
139吾輩は名無しである:04/09/16 02:57:59
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。
140吾輩は名無しである:04/09/16 02:58:08
ルチンデほど敬虔に、美しく
祈っている娘を見たことがない
どのしぐさにも罪への悔いがこもっていて
誰もが犯したい思いに駆られた
141吾輩は名無しである:04/09/16 02:59:30
ぼくはたちまち平日の地図を塗りつぶした
142東京市に神はゐまさん:04/09/16 03:14:13
雨ふれば沼となり、風吹けば砂漠となる
この都さへ樂園と人は思ふよ。
ペンキ塗の會堂より讃美歌ひびき、
ここになほ神はゐますと告げしらす。
さなり、さなり、かくも悲しきところゆゑ
神はゐまさん。神は悲哀を餌となせば。
143茂吉:04/09/16 08:28:57
地下鉄の終点に来てひとりごつまぼろしは死せりこのまぼろし
144まさかり:04/09/16 08:47:44

夏の正午
キハダの大木の下を通つて
左へ曲つて
マツバボタンの咲く石垣について
寺の前を過ぎて
小さな坂を右へ下りていつた
苦しむ人々の村を通り
一軒の家から
ディラン・トマスに似ている
若い男が出て来た
私の前を歩いていつた
ランニングを着て下駄をはいて
右へ横切つた
近所の知り合いの家に
立ち寄つた
「ここの衆
まさかりを貸してくんねえか」
永遠
145吾輩は名無しである:04/09/16 12:53:09
薔薇よ、おお、きよらかな矛盾よ、
あまたの瞼のしたで、だれの眠りでもないというよろこびよ。
146吾輩は名無しである:04/09/16 13:23:05
喫茶店のあの娘も
    まえほどきれいではなくなった
この八月が良くなかった
まえほどいそいそと階段をのぼってこない
そう彼女もやがて中年になる
そしてマフィンを運んできてくれるとき
    振り撒いていった青春の輝きも
もう振り撒かれることはないだろう
    彼女もやがて中年になる
147吾輩は名無しである:04/09/16 14:14:08
おとなは死んで行く、
おじさんも、おじいさんも。
でも、ぼくは、ぼくは
いつも、いつも、ここにいる。
148吾輩は名無しである:04/09/16 14:33:23
人生はエウリポスの流れのように変わりやすい
149茂吉:04/09/17 00:17:15
ふり灑ぐあまつひかりに目の見えぬ黒き?を追ひつめにけり

灑ぐ(そそぐ) ?(いとど)
150吾輩は名無しである:04/09/17 00:38:42

燈を紅き街の家より、       いつはりの電話來れば、

(うみべより賣られしその子)   あはただし白木のひのき。



雪の面に低く霧して、        桑の群影ひくなかを、

ああ鈍びし二重のマント、     銅版の紙片を思ふ。
151吾輩は名無しである:04/09/17 00:40:46
>150
一聯一行 街 ハ 町 ノ誤リ。
152吾輩は名無しである:04/09/17 00:55:50
来むといふも来ぬ時あるを来じといふを来むとは待たじ来じといふものを

来めやとは思ふものからひぐらしの鳴く夕暮は立ち待たれつつ

月夜よし夜よしと人に告げやらばこてふに似たり待たずしもあらず
153吾輩は名無しである:04/09/17 01:05:35

天使は這いつくばる風に言う、「汝、沈殿せよ」
そして挿話入りウィスキーの変節の証人たちが
そして良心的天使の愛好家が作曲家に言う、
「そうだそうだ」
154吾輩は名無しである:04/09/17 05:06:37
わたしはあさりあさりちゃん
きょうもげんきだ おやつがうまい
くいしんぼうでべんきょうだいすき
おきてるときはごはんごはん
ママもっとほんとのこといって
パパもっといっしょにあそんでよ
せんせいよろしくおねがいします
それでもあさりはおんなのこ
それでもあさりはおんなのこ
155吾輩は名無しである:04/09/17 12:21:23

それでも誠之助は死にました、
おお、死にました。

日本人で無かつた誠之助、
立派な氣ちがひの誠之助、
有ることか、無いことか、
神様を最初に無視した誠之助、
大逆無道の誠之助。

ほんにまあ、皆さん、いい氣味な、
その誠之助は死にました。

誠之助と誠之助の一味が死んだので、
忠良な日本人は之から氣樂に寢られます。
おめでたう。
156吾輩は名無しである:04/09/17 17:34:58
主なき 弥陀の御名にぞ 生れける となへすてたる 跡の一声
157吾輩は名無しである:04/09/17 17:43:36
赤い根のところ南無妙菠薐草(ほうれんそう)
158吾輩は名無しである:04/09/17 18:17:23

感情はすでに鑛物質となつた
またならねばならなかつた
氷結した湖水で
するどく絶叫するスケーターの歌
それが呻きであらうとも
それをきけ――
森の死木の下には自殺行爲もあつた
彼は笑つてゐるかのやうだつた
彼は彼自身の神だといふ
笑ふべき象徴を示した
この怖るべきエゴイスト
雨にうたれろ霜に濡れろ
地はかくして不拔のものとなつたのだ
掠奪されたばかりの小さな村に
白痴になつた十二の少女が
美しいほどの神聖な目をしてゐた
まるで太陽のやうだつた
まるで太陽のやうだつた
159茂吉:04/09/17 20:38:53
まかがよふ真夏なぎさに寄る波の遠白波の走るたまゆら

まかがよふ昼のなぎさに燃ゆる火の澄み透るまのいろの寂しさ
160吾輩は名無しである:04/09/17 21:02:53
夜になると、私はいつも君を待ってイエメンの方を見る
君はスーヘイルの星、スーヘイルはイエメンにのぼる
161茂吉:04/09/17 22:35:27
ゴオガンの自画像みればみちのくに山蚕殺ししその日おもほゆ

山蚕(やまこ)
162茂吉:04/09/17 22:37:06
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片
163吾輩は名無しである:04/09/17 22:55:17
青麦は微風に揺れて居る。
おお青麦はベニスの街を立てる。
164吾輩は名無しである:04/09/18 01:12:18





凧きのふの空のありどころ




愁ひつつ丘をのぼれば花茨
165吾輩は名無しである:04/09/18 01:41:39
一行の雁や端山に月を印す



秋ひとり琴柱はずれて寝ぬ夜かな
166茂吉:04/09/18 08:56:12
光もて囚人の瞳てらしたりこの囚人を観ざるべからず

めん鶏ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人は過ぎ行きにけり

剃刀研人(かみそりとぎ)


>>164
陽炎や名もしらぬ虫の白き飛ぶ
167茂吉:04/09/18 09:01:35
>>164 ×丘を ○丘に


われ等にありては「写生」彼にありては「意志の放出」「写生」の語は善し
168吾輩は名無しである:04/09/18 09:08:23



戀さまざま願の糸も白きより
169吾輩は名無しである:04/09/18 09:10:04
>>167 thx.
170吾輩は名無しである:04/09/18 09:14:24



愁ひつつ岡にのぼれば花いばら


.
171茂吉:04/09/18 09:21:41
暁の薄明に死をおもふことあり除外例なき死といへるもの

茫々としたるこころの中にゐてゆくへも知らぬ遠のこがらし

おぼろなるわれの意識を悲しみぬあかつきがたの地震ふるふころ

遠(とほ) 地震(なゐ)


>>170
花茨故郷の道に似たるかな
172吾輩は名無しである:04/09/18 09:38:32
ぼくはきみに石の言葉で話す
(緑色の音節で答えてくれ給え)
ぼくはきみに雪の言葉で話す
(蜜蜂の扇で答えてくれ給え)
ぼくはきみに水の言葉で話す
(稲妻のカヌーで答えてくれ給え)
ぼくはきみに血の言葉で話す
(鳥たちの塔で答えてくれ給え)
173吾輩は名無しである:04/09/18 09:53:39
>>171


たんぽぽのわすれ花あり路の霜



.
174吾輩は名無しである:04/09/18 14:44:03
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
175吾輩は名無しである:04/09/18 17:25:47
風渡る浅茅が末の露にだに宿りも果てぬ宵の稲妻

          有家



金剛の露ひとつぶや石の上
          茅舎
176吾輩は名無しである:04/09/18 23:13:07

神神は石であると言われるだろう
落とされた石が地面で音を立てるのだろうか
ほうり投げられた砂利がなるのだろうか
すべての言葉を語る石に言葉で語らせよ

                       1933
177茂吉:04/09/19 09:10:42
南方を恋ひておもへばイタリアのCampagnaの野に罌粟の花ちる

Campagna(カムパニヤ) 罌粟(けし)
178記憶の海:04/09/19 09:51:14

髪の毛をふりみだし、胸をひろげて狂女が漂つてゐる。
白い言葉の群が薄暗い海の上でくだける。
破れた手風琴、
白い馬と、黒い馬が泡だてながら荒々しくそのうへを駈けてわたる。
179吾輩は名無しである:04/09/19 10:01:23
からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ

からたちのとげはいたいよ
青い青い針のとげだよ

からたちは畑(はた)の垣根よ
いつもいつもとおる道だよ

からたちも秋はみのるよ
まろいまろい金のたまだよ

からたちのそばで泣いたよ
みんなみんなやさしかったよ

からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ
180有明:04/09/19 10:15:45

わがむねのをぐらさいとひ、
はなやげる君がそのふへ、
あくがれてましぐらに來つ、――
そも、たれと賭けて、きそへる。

さないひそ、あはれ人々。
さていかに、目ざしし園は、
色も香もきえてあとなし。

われはわが手をばこまぬき、
きその夢たづねわびつつ、
ひとしれず、ひとりたたずみ、
かげもなき魂をしよばふ。

夢なれば夢を生きむよ、
しかあれどこころより欲る。
よみがへれ、昨のあだゆめ。

.
181吾輩は名無しである:04/09/19 21:45:45
及ばざりき、たぐいなき麗日も。
さらば、われには許せ、
佳人の忘れ難きを。
野に出ずれば重い更に切なり。
一日園の中にて情け厚きを
示さんとて、われに寄りしが。
今日なお感あらたにして
わが心変わらず佳人のもとにあり。
182吾輩は名無しである:04/09/19 22:21:31

我のゆく路、
菊を捧げてあゆむ路、
いつしん供養、
にくしんに血をしたたらすの路、
肉さかな、きやべつの路、
邪淫の路、
電車軌道のみちもせに、
犬、畜生をして純銀たらしむる、
疾患せんちめんたる夕ぐれの路、
ああ、素つぱだかの聖者の路。


.
183吾輩は名無しである:04/09/20 03:53:01
大通りを横切ろうとして、馬車を避けるために少し足を早めたはずみに、私の後光がとれて砕石を敷いた舗道の泥の中に落ちた。


幸い私にはそれを拾い上げる時間があった。しかし、これは悪い前兆だという不吉な考えが一瞬後に私の心に滑り込んできた。その時以来、この考えは私に付きまとって離れず、終日少しの休息をも私に与えなかった。
184吾輩は名無しである:04/09/20 04:10:18
雷雨のあとの大気がもつ、すばらしい説得力!
185吾輩は名無しである:04/09/20 12:07:37


妻も子も寺で物くふ野分かな


.
186吾輩は名無しである:04/09/20 14:12:33
ものみなの饐ゆるがごとき空恋ひて鳴かねばならぬ蝉のこゑ聞こゆ

赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり

饐ゆ(すゆ) 赤茄子(あかなす)
187吾輩は名無しである:04/09/20 14:32:39

わたしはうやうやしく
いつものやうに感謝をささげて
すうぷの椀をとりあげました
みると
その中におちて
蠅が一ぴき死んでゐるではありませんか
おお神様
じやうだんではありません


.
188茂吉:04/09/20 14:39:44
わが母を焼かねばならぬ火を持てり天つ空には見るものもなし

>>186
189吾輩は名無しである:04/09/20 15:08:07
いつかそこで彼は一人のふとったお人好しを紹介してね
その男が言ったのだ
それが実にすてきでしてな
スミルナでも ナポリでも チュニジアでも
だがちくしょう そいつはどこなのだ
おれがシナにいた最後の時
八 九年まえのことなんだが
柱時計が鳴るたびにツキがきて
カードが五枚揃ったものだ
190吾輩は名無しである:04/09/20 15:17:52
朝顔や百たび訪はば母死なむ
         耕衣


父母の亡き裏口開いて枯木山
         龍太
191吾輩は名無しである:04/09/20 15:45:58

もう少し待っていてくれ ぼくが行って
ぼくらをおさえている寒さを叩き割るのを。

雲よ おまえの生もまたぼくのそれと同じく危ういものだ。

(ぼくらの家の中にはひとつの断崖があった。
だからこそぼくらは出発し、そしてここに居を定めたのだ。)

.
192吾輩は名無しである:04/09/21 03:30:10
月澄めば四面の浮き雲空に消えてみ山がくれに行く嵐かな
         秀能


愛蔵す東籬の詩あり菊枕

         久女
193吾輩は名無しである:04/09/21 12:49:10

青光を斫取して楚辭を寫す
膩香  春粉  Kく離離たり
無情も恨あり  何人か見む
露に壓せられ煙に啼く千万枝


.
194茂吉:04/09/21 14:08:28
吹く風は断えざるものかたまゆらも形常なき沙漠の上の雪

冬ふけて真澄の果てのなかりける空にひたりて馬の行く見ゆ

まどかなる天をかぎりて蒙古野のきらへる涯に陽はおちむとす
195吾輩は名無しである:04/09/21 14:32:11

昨夜、嚢ノ螢ヲ放ツ。

一半ハ墻ヲ踰エテ去ル。

愛シク見ル二、三ノ星。

未ダ幽竹ノ處ヲ離レズ。


.
196吾輩は名無しである:04/09/22 15:04:47
秋風にあへず散りぬるもみぢ葉の行くヘ定めぬ我ぞ悲しき
     よみ人しらず



水底の岩に落つく木の葉かな
         丈草
197吾輩は名無しである:04/09/22 18:42:50

「真夜中すこし前、船着場の近くで。
乱れた髪の女が君を追ってきても気にするな。
それは蒼空だ。君は蒼空を怖れることはない。
樹の中に大きなブロンドの壷があるだろう。
色の溶け合った村の鐘楼が
君の目印になるだろう。機会をとらえろ、
忘れるな。羊歯の若芽を空に噴き上げている褐色の間歇泉が
君に挨拶する。」


.
198茂吉:04/09/23 02:21:50
あが母の吾を生ましけむうらわかきかなしき力おもはざらめや

吾(あ)
199吾輩は名無しである:04/09/23 03:28:42

父 母 の こ と の み お も ふ 秋 の く れ

.
200吾輩は名無しである:04/09/23 11:34:13

黒い七面鳥が 東の方で尾をひろげる
するとその美しい尖端が 白い夜明けになる

.
201:04/09/23 22:02:34

薔薇の冠の春。窓飾の秋。

暗い土が、疎な星を一つづつ感動させる冬。
おお、
北欧の曠土を行き來る灰色雲。
これからは、永遠界の風や波の記録。

.
202吾輩は名無しである:04/09/24 23:01:55

イギリスの嬢さん達が長い行列をして町を通る。
二人づつ並んで、引っこ抜いた編笠苔のやうに、
黒い外套を着て通る。尤夏になると、
其上に紫の帯を締めてゐる。
夜は一人づつ床に寝るのだ。
中には一度一しよに寝たいやうな、
美しいのが交つてゐる。だが皆ひどく小さい。
黒い頭巾を被つた姿がひどく小さい。
一ダアス位一しよに可哀がらなくては駄目らしい。

.
203茂吉:04/09/25 00:45:37
隣室に人は死ねどもひたぶるに帚ぐさの実食ひたかりけり

帚ぐさ(ははきぐさ)
204吾輩は名無しである:04/09/25 00:52:13
鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉

客僧の二階下り來る野分哉
205茂吉:04/09/25 15:44:04
ひろき葉は樹にひるがへり光りつつかくろひにつつしづ心なけれ

みちのくの母のいのちを一目見んん一目みんとぞただにいそげる

母が目を一目をみんと急ぎたるわが額のへに汗いでにけり

うちひさす都の夜にともる灯のあかきを見つつこころ落ちゐず

灯あかき都をいでてゆくすがた姿かりそめの旅と人見るらんか
206茂吉:04/09/25 15:47:30
はるばると薬をもちて来しわれを目守りたまへりわれは子なれば

寄り添へる吾を目守りて言ひたまふ何かいひたまふわれは子なれば

山いづる太陽光を拝みたりをだまきの花咲きつづきたり

死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる

死に近き母が目に寄りをだまきの花咲きたりといひにけるかな

目守り(まもり)
207茂吉:04/09/25 15:53:11
春なればひかり流れてうらがなし今は野のべに蟆子も生れしか

死に近き母が額をさすりつつ涙ながれて居たりけるかな

母が目をしまし離れ来て目守りたりあな悲しもよ蚕のねむり

我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ

のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり

蟆子(ぶと) 生れし(あれし) 離れ(かれ)
208茂吉:04/09/25 15:56:16
いのちある人あつまりて我が母のいのち死行くを見たり死ゆくを

ひとり来て蚕のへやに立ちたれば我が寂しさは極まりにけり

楢若葉てりひるがへるうつつなに山蚕は青く生れぬ山蚕は

葬り道すかんぽの華ほほけつつ葬り道べに散りにけらずや

我が母を焼かねばならぬ火を持てり天つ空には見るものもなし

山蚕(やまこ)
209茂吉:04/09/25 16:00:41
星のゐる夜ぞらのもとに赤赤とははそはの母は燃えゆきにけり

はふり火を守りこよひは更けにけり今夜の天のいつくしきかも

灰のなかに母をひろへり朝日子ののぼるがなかに母をひろへり

うらうらと天に雲雀は啼きのほぼり雪斑らなる山に雲ゐず

かぎろひの春なりければ木の芽みな吹き出づる山べ行きゆくわれよ

山ゆゑに笹竹の子を食ひにけりははそはの母よははそはの母よ
210:04/09/25 16:38:42
                       尾形龜之助

私は菊を一株買つて庭に植ゑた               sic

人が來て
「つまらない……」と言ひさうなので
いそいで植ゑた                         sic

今日もしみじみ十一月が晴れてゐる

.
211吾輩は名無しである:04/09/25 16:59:52
みんなへたくそねーー。読む気がおきないわね。
212吾輩は名無しである:04/09/25 20:51:50
閉じこめた高原がどんな風景だったかを
思い出そうとして
霧は
ときどき自分自身を取りはらってみる
213吾輩は名無しである:04/09/25 21:51:23

この世の快さをわたしは味わった、
青春の時は、ああ、なんと早く! なんと早く! 過ぎ去ったことか、
四月と五月と七月は遠い、
わたしはもはや無に等しく、もはや生きたくはない!


                        Fr. Chr. Hoelderlin

.
214吾輩は名無しである:04/09/25 23:16:02
緑が平坦な遠方から見えはじめるとき、
ひろやかな昼は人間にさまざまな形象で明るい、
夕べの光が薄明へとかたむき、
微光が昼のひびきをやさしく和らげるまでは。



しばしば世界の内面は雲につつまれ、閉ざされる、
人間の思いは疑念に充ち、とどこおる、
壮麗な自然はかれの日々を明るくし、
遥かには疑念の黒い問いがたたずんでいる。

     スカルダネリ
215吾輩は名無しである:04/09/26 00:49:57

「誰が聖人であるか」
と、私は、その古ぼけた骨董店の軒先に立つて訊ねた。
すると、奥の方の塵まみれの戸棚の上に載つてゐた青い木の竜が答へた――
「まづ三皇、五帝、堯舜である。武王や周公や伯夷や、伊尹太公望孔子なんかはこの部には入らない」

.
216吾輩は名無しである:04/09/27 01:19:11

 博物の先生が私に云つた。「君、あのKといふ奴は
變なことを云ふ奴だよ。蠅は何處に居るつてきいたら、
菓子箱の中の菓子と一緒にまぢつて居るつて答へた
よ」
217:04/09/28 02:11:44

落葉は驚易く又惚惚と沈思してゐる。
落葉は傷いた紅鶸のごとくいぢらしく呼吸してゐる。

落葉は今一度青空へかへらうと思つてゐる。
落葉は今一度青空へかへらうと思つてゐる。

.
218茂吉:04/09/28 20:37:00
しづかなる亡ぶるものの心にてひぐらし一つみじかく鳴けり
219茂吉:04/09/28 20:38:07
近よりてわれは目守らむ白玉の牡丹の花のその自在心
220吾輩は名無しである:04/09/28 20:51:05

いとたかき人とならまし、
うつくしき人とならまし、
のちの世に慕はるる人とならまし。
人によきことをなさまし、
世のために血も流さまし、
くるしみをおのれ一人にとりておかまし。

.
221吾輩は名無しである:04/09/30 01:49:48

船 頭 の 棹 取 ら れ た る 野 分 哉

.
222吾輩は名無しである:04/09/30 15:04:11
白雲 幽石を抱き

緑篠 清漣に媚ぶ
223やよひのうた:04/09/30 20:37:43

あはれいかに、かくおもしろき、
あはれいかに、かくおもしろき、
名にしおふ、春のやよひは、
いろいろの、小草もえ出て、
さまさまの、花も咲きそひ、
木々は皆、若葉さしつつ、
のとかなる、風吹きわたり、
あけまきの、うたふ末野の、
ひつじさへ、たかくなくなり、
あはれいかに、かくおもしろき、
あはれいかに、かくおもしろき、
春のやよひは、

                     文政六年 中島広足譯

.
224吾輩は名無しである:04/10/01 09:36:31

限 り あ る 命 の ひ ま や 秋 の 暮


.
225茂吉:04/10/02 19:07:19
道のべに蓖麻の花咲きたりしこと何か罪ふかき感じのごとく

蓖麻(ひま)
226波郷:04/10/02 23:14:16

い つ ま で も 父 母 遠 し 新 小 豆

.
227吾輩は名無しである:04/10/02 23:17:55
ふるさとは とおくにありて おもうもの
228吾輩は名無しである:04/10/02 23:51:03

美しい葉つぱが垂れかさなり
私のこはい顏を紫の陰影で深める
秋だな
と私はうなづいて寒さに顫へた

樹々は私を囲んで居た
秋さ
と彼等はこたへた
金色の葉つぱをざわざわさせて

それはお前たちばかりが知つた事かと
私は樹々の下をくぐり拔けて
明るい空の真下まで行つた

翡翠の樣な空がまた
秋さと言つた。

.
229茂吉:04/10/04 00:28:21
かりがねも既にわたらずあまの原かぎりも知らに雪ふりみだる

最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも
230吾輩は名無しである:04/10/04 00:49:39

こぎやめたぼくの櫂から滴が落ちる、
滴はゆるゆると深い水におちる。

・・・・・・・・・・・・・・

水底の青の中から「昨日」が呼ぶ、
「光の中にはまだ私の妹たちが殘つてゐるのでせうか。」
.
231吾輩は名無しである:04/10/04 23:40:12
潤ほひあれよ真珠玉
幽かに煙れわがいのち
232吾輩は名無しである:04/10/05 01:27:04

風はすべての鳥を燃した
砂礫のあひだに錆びた草花は悶え
石炭は跳ねた
風それは發狂せる無數の手であつた

溺死者は廣場を通過した
そして屋根の上で生が猿轡を嵌められたとき
夜は最後の咳をした

.
233折口 学:04/10/05 22:03:05

ごっくん ごっくん 水を飲む
234吾輩は名無しである:04/10/05 23:49:55

こころにひまなく詠嘆は流れいづ、
その流れいづる日のせきがたく、
やよひも櫻の芽をふくみ、
土によめなはさけびたり。
235波郷:04/10/07 00:15:46
人を恋ふ野分の彼方此方かな
236茂吉:04/10/07 08:23:21
五月はじめの夜はみじかく夢二つばかり見てしまへばはやもあかとき

水すまし流にむかひさかのぼる汝がいきほひよ微かなれども
237吾輩は名無しである:04/10/07 09:03:34

まひる利根川のほとりを歩めば、
二人歩めばしばなくつぐみ、
つぐみの鳴くに感じたるわが友のしんじつは尚深けれども、
いまもわが身の身うちよりもえいづる、
永日の嘆きはいやさらにときがたし、
まことに故郷の春はさびしく、
ここらへて山際の雪消ゆるを見ず。

.
238折口 学:04/10/07 20:31:51

ミンナ ゲンキカ

と、書いたのです。
239吾輩は名無しである:04/10/07 20:53:27
恋魚の身こそ哀しけれ、

いちにちいすにもたれつゝ、

ひくゝかなづるまんどりん、

夕ぐれどきにかみいづる、

柴草の根はうす甘く、

せんなや出窓の菫さへ、

光り光りてたえがたし。
240吾輩は名無しである:04/10/07 21:06:13

我等利根川の岸邊に立てば、
さらさらと洋紙は水にすべり落ち、
いろあかき魚のひとむれ、
しねりつつ友が手に泳ぐを見たり。

           *魚 : いさな

.
241吾輩は名無しである:04/10/08 14:48:01
鉄鉢の中へも霰
242吾輩は名無しである:04/10/08 17:58:22

雨あられのやうに深淵に見舞はれる
内面の天國に僕たちを誕生させてください
おお ひとつの眩暈が白熱した指で
僕たちを貫くのです

.
243吾輩は名無しである:04/10/08 21:57:26
神よこの国の詩人を頼み給ふ勿れ
彼等はすべて戯作者の子なり
狭斜を為して文筆となすに
藝術の高きを望むべきや
われ彼等の為めに祝はん
柔和なる詩人
女子の如き詩人
幸なる哉わが父祖の国は
卿等によつて平和なり
244吾輩は名無しである:04/10/08 22:13:09

鐘は上野か淺草か
  白きを見れば夜ぞ更くる
「姑蘇城外寒山寺」
  數ふる指も寐つ起きつ
首縊らんか鳰の海
  ぶら下がらぬぞうらみなる
身をば投げんか鷲の峰
  もぐり込まぬぞ恨なる
小楊枝むづと手に執て
  喉笛美事に掻切れば
ちよいと痛めど血は出でず  
  死するも命別儀なし
天地玄黄千字文
  無理心中は止むべきぞ

.
245吾輩は名無しである:04/10/09 11:04:39
神さま わたしの妻となります女性が
どうか つつましく おとなしく
心やさしい わたしの友となってくれる人でありますように
わたしたちは 手をとりあって ねむることができますように
そのくびにかかった メダイユのついた 銀いろのくさりは
乳房のあいだに ちょっとかくれて見えますように
そのからだは 夏のおわりごろ ねむっているすももの実よりも
もっとすべっこく もっとあたたかく 金いろでありますように
心の中には いつも やさしい純真さを もちつづけていて
抱きあっているあいだも そっと笑ったり なにも言わずにいられる人でありますように
花がねむっているとき 蜜蜂が見はりをするように
つよい人となって わたしのたましいの見はりをしてくれますように
わたしが死ぬ日には わたしの目をとじてくれ
あの 息のつまるような苦しみが こみあげてくるときには
わたしの枕べで 手をくみあわせ ひざまづいて 祈ってくれますように
ただ ただ そのように 祈ってくれるばかりでありますように
246吾輩は名無しである:04/10/09 19:44:32

銀と銅の二輪車が――
鋼と銀の舳先が――
泡を打ち、――
茨の株を根こそぎにする。
荒野の海流と、
引潮の広大な轍が、
円を描いて流れてゆく、東の方へ、
森の列柱の方へ、――
突堤の幹の方へ、
その角に光の渦巻きが衝突する。

.
247吾輩は名無しである:04/10/11 23:47:35

讀みさしの舶來の本の
手ざわりあらき紙の上に、
あやまちて零したる葡萄酒の
なかなかに浸みてゆかぬかなしみ。

.
248吾輩は名無しである:04/10/12 00:36:38
・・・・・
・・・・・・・
(十二個の)赤い実だ
249吾輩は名無しである:04/10/12 00:55:49


地蜂
おやじ
の怒りにもかかわらず
梅の実をぬすんでたべたこともあつたわ。

.
250吾輩は名無しである:04/10/13 07:10:05

浅間山空の左手に眠りけり
251茂吉:04/10/14 08:17:16
長崎の昼しづかなる唐寺やおもひいづれば白きさるすべりのはな
252吾輩は名無しである:04/10/14 10:16:44

ぼくらは諸君の敵ではない
ぼくらは諸君に広大で異様な領域をあげたいのだ
そこでは花開く神秘が摘もうとする誰にでもあたえられるのだ
そこにはかつて見られた色彩の更に新しい火の数々がある
レアリテをあたえてやらねばならぬ
量ることのできない千の幻影がある
ぼくらは善を ものみなが沈黙する広大な領域を開発したい
そこにはまた追いたてることもひき戻すことも可能な時間がある
ぼくらに同情してほしい 無限と未来の国境で
たえず闘っているぼくらに
同情してほしい ぼくらの誤謬にぼくらの罪に

.
253吾輩は名無しである:04/10/14 11:43:52
土くれは動かないが
血は放浪者
息は長持ちする器だ
起て!若者よ
旅が終われば眠る時間はたっぷりとある
254吾輩は名無しである:04/10/14 23:22:21

山 は 暮 て 野 は 黄 昏 の 薄 哉

.
255吾輩は名無しである:04/10/15 11:29:11

ほら激しい季節 夏がやって来た
春のようにぼくの青春も死んだ
おお太陽よ 今こそ燃える理性の時だ
   ぼくは待っている
いつでもそれを追うために ただそれだけを愛せるように
理性が高貴で優しいかたちを帯びるのを
それはやってきてぼくをひきつける 磁石が鉄をひくように
   それは魅惑的な姿をしている
   すてきな赤毛の女のように

.
256吾輩は名無しである:04/10/15 12:49:26
猫投げるくらいがなによ本気だして怒りゃハミガキしぼりきるわよ
257吾輩は名無しである:04/10/16 14:53:13

彼女の髪は金色で
消えない美しい稲妻さながら
それも凋れるティーローズのうちに
孔雀のように華やぐ炎のよう

.
258吾輩は名無しである:04/10/19 09:10:20

鴻 の 巣 の 網 代 に か か る 野 分 か な

.
259吾輩は名無しである:04/10/22 20:16:27

地平のない王国へ向けて
リズミカルに這って行く。

.
260吾輩は名無しである:04/10/22 22:49:16

きっぱりと冬が来た
261吾輩は名無しである:04/10/23 06:54:28

だが 笑ってくれ 笑ってくれ このぼくを
至る所の人々 とりわけここの人々よ
なぜなら諸君に言い難い多くのことがあるのだから
諸君がぼくに言わせない多くのことがあるのだから
ぼくを憫れんでくれたまえ

.
262吾輩は名無しである:04/10/27 01:38:12
舌の裏では小銭の味がするようだ
263吾輩は名無しである:04/10/27 04:14:48
金のない奴ぁ俺んとこに来い
俺もないけど心配すんな
見ろよ
青い空
白い雲
そのうちなんとかなるだろう

保育園のときに、この歌をドラマのエンディング曲で聴いて感動した
家から遠い保育園に通っていたので、友達は一人もいなくて、絵本ばかり読んでいた
そんな時期にこの歌を聴いて、本当に元気付けられた
264カルナック:04/10/27 11:11:15

涯しない虚無のほとりにある海、
それは虚無と溶け合っている、

空をもっとよく知ろうとして、
砂浜を、岩たちをよく知ろうとして、

それらのものたちをもっとよく抱きとろうとして。

.
265イギ− ◆od0qY8Ss/. :04/10/27 15:23:21
256 :吾輩は名無しである :04/10/15 12:49:26
猫投げるくらいがなによ本気だして怒りゃハミガキしぼりきるわよ

これすごいな。
266吾輩は名無しである:04/10/30 21:48:32

ぼくはきみを待っている スペクトルの塩とともに
移り気な水の反照のなかで
アカシアの不幸の中で
亀裂の沈黙の中で
亀裂はなによりも気どり屋だ それはきみにほほえんだ
雲が奇蹟にほほえむように
液体が子供たちにほほえむように
線が点にほほえむように

.
267吾輩は名無しである:04/11/03 02:00:42
コノサカヅキヲ受ケテクレ

ドウゾナミナミツガシテオクレ

ハナニアラシノタトヘモアルゾ

「サヨナラ」ダケガ人生ダ

.
268吾輩は名無しである:04/11/09 14:42:20
みじかびの きゃぷりてとれば すぎちょびれ
すぎかきすらの はっぱふみふみ
269吾輩は名無しである:04/11/10 23:12:23
>>269
イースタンユース?
270吾輩は名無しである:04/11/10 23:13:58
>>267
イースタンユース?
上のは間違え。
271吾輩は名無しである:04/11/10 23:45:30

舌の裏では小銭の味がするようだ

.
272弧高の鬼才 ◆auSqARo302 :04/11/10 23:57:55
この明るさの中へ

 ひとつの素朴な琴を置けば

  秋の美しさに耐えかね

  
   琴はしずかに鳴りいだすだろう


               (改行は俺オリジナル 
273弧高の鬼才 ◆auSqARo302 :04/11/11 00:14:28


三十
段二十
目段一十
さ目段段九
まで目目段八
人翼でで目段七
生の訪哲で目段六
さよれ学ぼで目段五
まうるしくみで目段四
みに秋自はず神で目段三
ん両を省淋えさ何で目段二
な手むししがまを初に目段一
さひか感く立がし恋腰に目段
よろえ傷な上見ただかみに目
なげよしっるてのっけずぼに
らてうてたとたかたてえく夏
                    


             写すのたいへんだったΣ(゚Д゚)
274弧高の鬼才 ◆auSqARo302 :04/11/11 00:16:14
しかも、階段みたいになってないじゃん!!!!






      (予想通り計画通り警告どおり)
275吾輩は名無しである:04/11/11 00:29:36
おしっこを飲むとかそういうのじゃないのまみが貴方を好きな気持は
276吾輩は名無しである:04/11/11 00:31:01
桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから
277吾輩は名無しである:04/11/11 00:32:12
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
278吾輩は名無しである:04/11/12 22:44:34
リュベッカー・シュワイツ横断競争の報告
「走者たちは毎日十時間ずつ練習している
彼らは100メートルに約マイナス十四時間を要する
先頭の一群は今朝すでに
1919年に消え去った!」
279吾輩は名無しである:04/11/12 22:46:55
コラージュ批判ができないために、
コラージュを道化的に揶揄するスレッドね。
そういえば、たんなる情報としての知の集積を
コラージュしているだけで文が書けてしまうというのは、
掲示板の特性だったかも。
280吾輩は名無しである:04/11/13 12:09:17
わが色欲いまだ微かに残るころ渋谷の駅にさしかかりけり

地下鉄の終点に来てひとりごつまぼろしは死せりこのまぼろし
281茂吉:04/11/13 12:15:13
くろく散る通草の花のかなしさを稚くてこそ思ひそめしか

通草(あけび)

>>280
282Johannes Baader:04/11/13 19:25:49

フィフィ、どうして君はヘアトニックに赤のプリンではなく緑のプリンを入れるのか。

.
283吾輩は名無しである:04/11/18 14:25:26
鶏頭の十四五本もありぬべし
284吾輩は名無しである:04/11/18 16:49:15
芯まで赤い林檎が食べたいとか
285吾輩は名無しである:04/11/18 17:42:36
キングギドラは弱音を吐かん 光線を吐く
286吾輩は名無しである:04/11/19 22:11:44
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな

痰一斗糸瓜の水もまにあはず

おととひの糸瓜の水も取らざりき
287Richard Huelsenbeck:04/11/19 22:44:30

にこやかな顔をして郵便受けを通って上がって行った紳士を見たか
ウムバ ウムバ 両手を組んだワラジムシを見たか
行列はもう三日も続く まだ心は羽ばたかない
そう そう 先生 これが彼等の祖母がインディアンの仲間になった日なのだ

.
288Ph. Soupault:04/11/19 22:53:54

太陽は鳥のように
あらゆる記念碑の上にとまる

.
289吾輩は名無しである:04/11/20 21:32:33
>>256
今後一ヶ月は思い出し笑いが続きそうだ
290茂吉:04/11/23 21:31:14
死なねばならぬ命まもりて看護婦はしろき火かかぐ狂院のよるに

赤光の中に浮びて棺ひとつ行き遥けかり野は涯ならん

自殺せる狂者をあかき火に葬りにんげんの世に戦きにけり
291R.Huelsenbeck :04/11/24 07:13:16

昔、苦労の四十余年の歳月が来る前に、船長は家の庭で遊んでいた。そこで母親が
「ははあ」と言った。船長も「ははあ」と言った。こうして夜があり、朝があり、最初の日
ができた。

.
292吾輩は名無しである:04/11/30 00:32:02
萩原の今ゐる二階家から本郷動坂あたりの町家の屋根が見え、
木立を透いて赤い色の三角形の支那風の傍が、いつも行くご
とに閃めいて見えた。このごろ木立の若葉が茂り合つたので
風でも吹いて樹や茎が動かないとその赤色の旗が見られなか
つた。
「惜しいことをしたね。」
しかし萩原はわたしのこの言葉にも例によつて無関心な顔貌
をした。
293Ed. Jabes:04/11/30 01:54:36

 あんなにも多くの書物、死産した傑作が、
一冊の未完の本のなかに横たわっている。

.
294Hans Arp:04/11/30 01:58:28

きらめく天使たちは軸を回った

.
295吾輩は名無しである:04/12/01 11:46:21
誰もいない 誰もいないのに
木々たちは揺れて かぶりを振る
296吾輩は名無しである:04/12/01 12:04:03

夢もなく到達された空もない。
ひび割れのいくつか。

.
297吾輩は名無しである:04/12/01 15:04:05
298吾輩は名無しである:04/12/02 07:17:10
十二月また来れり。
299吾輩は名無しである:04/12/02 21:06:52

ココには高原の植物が生育し
日向に快適の思想はあたたまる。
.
300吾輩は名無しである:04/12/02 21:12:21

 ネ申 は 死 ん だ
301吾輩は名無しである:04/12/02 21:22:50
誰かが わたしのなかで 咳をしている
冬の木のようにさびしくて まっすぐな人が ひとり 立っている
302吾輩は名無しである:04/12/02 21:32:34

蝙蝠と霜と物の種子とはわたしの自由。
.
303吾輩は名無しである:04/12/03 20:38:47
わたしは どなたかが零した血の一滴
タルレ タルレ チンダルレ すべての山河に満ち溢れるチンダルレ
304吾輩は名無しである:04/12/03 21:08:28

浴罷檀郎捫弄處
露華凉沁紫葡萄

.
305吾輩は名無しである:04/12/03 22:40:13
哀しみも ぐっと押さえ込んだら 蒸発もするだろう
縮小される すべてのものが 
306吾輩は名無しである:04/12/04 00:57:50

銀座の裏に赤い花を置き忘れて来た
緑のトランクはわたしの歓びを入れたまま
ステエシヨンに置いてある。

.
307吾輩は名無しである:04/12/05 16:47:04
若き程は(´∀`),諸事につけて,身をたて,
大きなる道をも成じ,能をもつき,學問をもせんと,
行末久しくあらます事ども心にはかけながら,

世を長閑に思ひて打ちおこたりつゝ,
まづさしあたりたる目の前の事にのみまぎれて,月日を送れば,
ことごとなす事なくして身は老いぬ(´Д`).

終に物の上手にもならず.思ひしやうに身をももたず,
悔ゆれども取返さるゝ齡ならねば,

走りて坂を下る輪の如くに衰へゆく...
308吾輩は名無しである:04/12/05 21:33:02
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合対)
309吾輩は名無しである:04/12/06 14:20:17

誰れにも告げないで夜空に放つた赤い風船は
今何處に流れてゐるだらうか
(あれが一番私を知つてゐたのに)

.
310吾輩は名無しである:04/12/06 14:21:18

誰れにも告げないで夜空に放つた赤い風船は
今何處に流れてゐるだらうか
(あれが一番私を知つてゐたのに)

.
311吾輩は名無しである:04/12/06 14:22:25

誰れにも告げないで夜空に放つた赤い風船は
今何處に流れてゐるだらうか
(あれが一番私を知つてゐたのに)

.
312吾輩は名無しである:04/12/06 14:54:22
鯖不調?
313吾輩は名無しである:04/12/08 01:53:17
(これは壊れますか?)
(壊れます)
(これは壊れますか?)
(壊れます)
(これはどうですか?)
(壊れません)
314吾輩は名無しである:04/12/08 15:15:13
すみません。知識のある方にお尋ねしたいのですが、
リルケの
「芸術作品に、人を助けることができよう
などと、期待することはむしろ思いあがりというも
のでしょう。しかし一つの芸術作品が自らの中に持
ち、それを外へ用いようとしない人間的なものの緊
張、つまり芸術作品の内面的な強度が、外延的にな
ろうとしないで、ただ単にそこに存在することによ
って、あたかもそれが努力であり、要求であり、求
愛であり、求愛−魂を奪い去るような求愛であり、
激動であり、招請であるかのような錯覚を起こさせ
るのは、これこそ芸術というものの良心(その職分
ではなく)であります。」
というのは何の本に書か
れているのでしょうか?教えてくださる親切な方い
ませんか。
315吾輩は名無しである:04/12/08 18:55:15
スレタイも読めないボケは死すべし。
316吾輩は名無しである:04/12/11 16:34:58

門 を 出 て 故 人 に 逢 ぬ 秋 の く れ

.
317吾輩は名無しである:04/12/11 17:43:10
君あしたに去りぬ
ゆうべの心千々に何ぞ遥かなる。

君を思うて岡の辺に行きつ遊ぶ。
岡の辺なんぞかく悲しき。

蕪村
318吾輩は名無しである:04/12/11 17:45:08
私は侘しくて、紅い林檎を買つた。
319李箱 :04/12/11 18:07:47

芯まで赤い林檎が食べたいとか
.
320吾輩は名無しである:04/12/11 18:14:02
そして私はいつかどこかから来てこの芝生の上に立っていた。

なすべき事はすべて私の細胞が記憶していた。

だから私は人間の形をし、幸せについて語りさえしたのだ。
321吾輩は名無しである:04/12/11 18:27:41

精神病院の鉄格子の窓から
私は片方の黒い靴下を棄てた
乳を出した狂女が向ひの窓でそれを見てゐたが、
乳をもいで私に投げつけた。
.
322吾輩は名無しである:04/12/11 18:36:54
留年だ

あ〜留年だ

留年だ
323吾輩は名無しである:04/12/11 18:41:06
金欠だ

あ〜金欠だ

金欠だ
324吾輩は名無しである:04/12/11 18:44:19
だめでせう
とまりませんな
325吾輩は名無しである:04/12/11 18:49:16
やめられない

とまらない

カルビー、カッパエビセン♪
326吾輩は名無しである:04/12/11 22:05:37
思えば遠くに着たもんだ
327吾輩は名無しである:04/12/12 04:33:30
言の葉をもてあそびたる罰なりや 夢見る頃をすぎてまた夢


328吾輩は名無しである:04/12/12 05:48:50
なんで、詩は売れないの?
329吾輩は名無しである:04/12/12 08:37:48
>>328
いいものがないから
330吾輩は名無しである:04/12/12 20:15:34
>329
違う。日本における詩の時代的な役割が終わったから。
331吾輩は名無しである:04/12/12 22:40:15
>>330
詩そのものに何で役割があるんだろう。

労働してるわけか。詩的だね
332吾輩は名無しである:04/12/13 23:49:59
かくまでも黒くかなしき色やあるわが思ふひとの春のまなざし

病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出
333吾輩は名無しである:04/12/13 23:51:35
>>330
かつて時代の日本において、「詩」に一体どのような役割があったのか
マジレス烈しくきぼんぬ
334吾輩は名無しである:04/12/14 00:01:01
月の出にはまだ間があるらしかつた
335吾輩は名無しである:04/12/14 12:58:27

そうだとも。精神病院にはまさしく将来性があった。そこで過ごすひと冬が丸損になる
なんて、とても考えられないことだった。

.
336吾輩は名無しである:04/12/16 20:54:40
UN COUP DE DES

JAMAIS

N'ABOLIRA


LE HAZARD


337吾輩は名無しである:04/12/18 07:39:08
おたがいがおたがいをしらない
深い山里の谷間に はるかな はるかな昔から
音もなく 雪がふりしきり ふりつもる
338吾輩は名無しである:04/12/19 02:43:23

遠い国には沢山の人が死に…
また政庁に推寄せる女壮士のさけび声…
海には信天翁の疫病…
あ、大工の家では洋燈が落ち、
大工の妻が跳び上る。
.
339吾輩は名無しである:04/12/28 00:09:44
我が背子がい立たせりけむ
340吾輩は名無しである:04/12/28 23:01:06

大空いちめん蒼の森
森はいちめん緑の空。

.
341吾輩は名無しである:05/01/03 02:40:44


 あなたの白い腕が私の地平線のすべてだった
342吾輩は名無しである:05/01/03 12:16:29

新年來り
門松は白く光れり。
道路みな霜に凍りて
冬の凛烈たる寒気の中
地球はその週暦を新たにするか。

.
343吾輩は名無しである:05/01/03 13:21:29
エリーゼのために

弱いリフレイン
流れるように緩やかに
強いリフレイン
冷たいひとしずく
暖かい変調
終わる

それは紅い唇
344弧高の鬼才 ◆auSqARo302 :05/01/03 14:01:01
「蛸」

天へ向かって墨汁を吐きながら
愛するものの生血をを啜り
そうしてデリシャスに感じている
この不人情な怪物は僕だ



345弧高の鬼才 ◆auSqARo302 :05/01/03 14:08:19
愛する女と一緒に日を送るよりは、愛する女のために死ぬ方がたやすい。
346吾輩は名無しである:05/01/03 18:36:05
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/K/kanba_m.html
樺 美智子 墓誌

「最後に」

誰かが私を笑っている
向うでも こっちでも
私をあざ笑っている
でもかまわないさ
私は自分の道を行く
笑っている連中もやはり
各々の道を行くだろう
よく云うじゃないか
「最後に笑うものが
最もよく笑うものだ」と
でも私は
いつまでも笑わないだろう
いつまでも笑えないだろう
それでいいのだ
ただ許されるものなら
最後に
人知れずほほえみたいものだ

1956年 美智子作
347吾輩は名無しである:05/01/04 15:32:36
枯葉が、ソプラノの響きのように、宇宙へ飛んでゆく。
348吾輩は名無しである:05/01/09 12:12:28
...
ひさしびさしにふうたくのすがたしずかなれば
ひとりなるわがみのかげをあゆまするいしのうへ
あかざのつえになるひまで
ゆめとしりせばさめざらましを
むかしのひとのそでのかぞする
よわにやきみがひとりこえなむ
そのきさらぎのもちづきのころ
ゆうべをあきとなにおもひけむ
さびしさのはてなむくにぞけふもたびゆく
ふるさとのやまはありがたきかな
とほくきこゆるはるのしほのね
からまつにからまつのかぜ
けぶれるごとくにみえ
しののめきたるまへ
349吾輩は名無しである:05/03/04 16:46:31
目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき
350吾輩は名無しである:05/03/05 00:49:24
明け方に雪そっくりな虫が降り誰にも区別がつかないのです
351吾輩は名無しである:05/03/06 19:28:25
ぼく じき じいさんになる!
352吾輩は名無しである:05/03/18 00:36:52
一片の土塊もケイコバードやジャムだよ。
353吾輩は名無しである:2005/05/07(土) 15:20:42
愛する者よ死に候え
354吾輩は名無しである:2005/06/13(月) 02:13:33
けふふるゆきのいやしけよごと
355吾輩は名無しである:2005/07/12(火) 04:36:45
夢の中では、光ることと喋ることは同じこと。お会いしましょう
356G.B.:2005/07/14(木) 02:29:12
アダムは夢からさめたときイヴに出会った。
女性がかくも美しいのは、そのためである。
357吾輩は名無しである:2005/08/01(月) 05:58:47
慌しく夢から醒めたときに、緑色の軌跡と雨露があり
あの蝦蟇蛙の踏んだ葉に、飛び乗りたゐのである
358吾輩は名無しである:2005/08/10(水) 23:38:21
Love・ジャウジ通信http://www5a.biglobe.ne.jp/~ge999/「俺のはだかは美しい」より


なぜ、君は見つめるの?
俺のはだかを見たいから?
そんなにはだかを見たいなら、見せてあげるよ君のため。
あー美しい、あー美しい、俺のはだかは美しい。

なぜ、君は震えてる?
俺のはだかが見えるから?
そんなにはだかを望むなら、包んであげるよ君だけを。
あー美しい、あー美しい、俺のはだかは美しい。

なぜ、君は笑顔なの?
俺のはだかに触れたから?
そんなに俺と居たいなら、俺は踊るよ君のため。
あー美しい、あー美しい、俺のはだかは美しい。
359吾輩は名無しである:2005/09/02(金) 22:44:32
むかしおぼえはなかりけむ人の親
こいに容赦はなきことや
360吾輩は名無しである:2005/09/02(金) 23:09:22
我等恋と怠惰を歌わん
これより他行うべきこと無し
あまたの国を知らざりしにはあらねども
暮らすべきところ他に無し
青春の薔薇(そうび)、葉は悲しみに枯れるとも
ままよ愛すべき女我にあり
----エズラ パウンドより
361利根川のほとり:2005/09/03(土) 07:08:54
きのうまた身を投げんと思ひて
利根川のほとりをさまよいしが
水の流れはやくして
わがなげきせきとむるすべもなければ
おめおめと生きながらえて
今日もまた河原に来り石投げてあそびくらしつ。
きのふけふ
ある甲斐もなきわが身をばかくばかりいとしと思ふうれしさ
たれかわ殺すとするものぞ
抱きしめて抱きしめてこそ泣くべかりけれ。
362吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 07:54:49
一の谷の 軍(いくさ)破れ
討たれし平家の 公達(きんだち)あわれ
暁(あかつき)寒き 須磨の嵐に
聞こえしはこれか 青葉の笛

更くる夜半(よわ)に 門(かど)を敲(たた)き
わが師に託せし 言の葉(ことのは)あわれ
今わの際(きわ)まで 持ちし箙(えびら)に
残れるは「花や 今宵(こよい)」の歌
363吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 07:58:41
1.
ここはお国を何百里(なんびゃくり)
離れて遠き満洲(まんしゅう)の
赤い夕日に照らされて
友は野末(のずえ)の石の下

2.
思えばかなし昨日(きのう)まで
真先(まっさき)かけて突進し
敵を散々(さんざん)懲(こ)らしたる
勇士はここに眠れるか

3.
ああ戦(たたかい)の最中(さいちゅう)に
隣りに居(お)ったこの友の
俄(にわ)かにはたと倒れしを
我はおもわず駈け寄って
364吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 07:59:31
4.
軍律きびしい中なれど
これが見捨てて置かりょうか
「しっかりせよ」と抱き起し
仮繃帯(かりほうたい)も弾丸(たま)の中

5.
折から起る突貫(とっかん)に
友はようよう顔あげて
「お国の為だかまわずに
後(おく)れてくれな」と目に涙

6.
あとに心は残れども
残しちゃならぬこの体(からだ)
「それじゃ行くよ」と別れたが
永(なが)の別れとなったのか
365吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 08:00:16
7.
戦(たたかい)すんで日が暮れて
さがしにもどる心では
どうぞ生きて居てくれよ
ものなと言えと願(ねご)うたに

8.
空(むな)しく冷えて魂(たましい)は
故郷(くに)へ帰ったポケットに
時計ばかりがコチコチと
動いて居るのも情(なさけ)なや

9.
思えば去年船出して
お国が見えずなった時
玄海灘(げんかいなだ)で手を握り
名を名乗ったが始めにて
366吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 08:01:01
10.
それより後(のち)は一本の
煙草(たばこ)も二人わけてのみ
ついた手紙も見せ合(お)うて
身の上ばなしくりかえし

11.
肩を抱いては口ぐせに
どうせ命(いのち)はないものよ
死んだら骨(こつ)を頼むぞと
言いかわしたる二人仲(ふたりなか)

12.
思いもよらず我一人
不思議に命ながらえて
赤い夕日の満洲に
友の塚穴(つかあな)掘ろうとは
367吾輩は名無しである:2005/09/03(土) 08:48:18
>>366

おお、「戦友」だ。スゲぇ。
368吾輩は名無しである:2005/09/22(木) 23:52:30
その生活の数々の矛盾を融和し
感謝して それを象徴のうちに捉えるものならば
騒々しい人たちを邸宅から追いやって
別の祝宴を開くだろう そして穏やかな宵
彼が迎え入れる あなたはその賓人だ

あなたは彼の孤独の相手
彼の独白の静かな中心だ
そしてあなたを巡って引かれた全ての円が
彼のために時の外に圏を描いている
369吾輩は名無しである:2005/09/23(金) 11:56:16
戦友の続ききぼんぬ。14番まであるんだけど。
370吾輩は名無しである:2005/10/07(金) 08:01:18
13.
くまなく晴れた月今宵
心しみじみ筆とって
友の最期(さいご)をこまごまと
親御(おやご)へ送るこの手紙

14.
筆の運びはつたないが
行燈(あんど)のかげで親達の
読まるる心おもいやり
思わずおとす一雫(ひとしずく)
371吾輩は名無しである:2005/10/07(金) 08:08:27
372吾輩は名無しである:2005/10/08(土) 14:32:11
>>370
さんくす。
373吾輩は名無しである:2005/10/10(月) 16:24:50
がちょうのおばはん
歩いてみとうなって
空をとびよってん
粋なおっさんの背中に乗って
374吾輩は名無しである:2005/10/11(火) 11:06:00
思ひ川絶えず流るる水の泡の
うたかた人に逢はで消えめや
375吾輩は名無しである:2005/10/12(水) 11:31:36
>>333
丸谷才一の説だが、明治維新以前は詩歌に限らず全ての芸術は「共同体」としての
日本社会に共有されている「暗黙のルール」に支配されていたわけで、芸術の革新っていうのは
あくまでもその範囲内から生まれてきたわけ。
例えば、芭蕉の俳諧は古今・新古今以来受け継がれてきた美学を町人階級の独特の「諧謔」による
新視点から再構築していることに意味があるわけ。
つまり、詩歌っていうのは文字通り日本社会の「共有財産」だったわけで、知識人階級はそれを
知っていて「当たり前」だったわけだよ。それが明治維新以降の個人主義の導入で「共同体の芸術」は
古臭いということになって古典が忘れ去られていったわけ。
376吾輩は名無しである:2005/10/12(水) 11:37:45
>>374の伊勢(という女流歌人)の歌も、「水の泡」「思ひ川」「うたかた」に
ついて詠むなら「必ず」踏まえておかなければいけなかったわけで、それができない奴は
共同体に対する「はぐれ者」としてみなされたわけだよ。


つまり、詩歌の性格が「共同体のもの」から「個人のもの」に変質したことが大きいんだよ。
実際のところ、個人の力なんて限界がありまくりな訳だし、「個人」の本場のヨーロッパ文学でも
実は数々の「共同体ルール」としての「伝統」が生きているわけなのに。
(だからフランスの詩をはじめとする現代文学はあんなに元気なわけで)
377吾輩は名無しである:2005/10/14(金) 11:52:04
「昭和平成の言文一致文体の成立は谷川俊太郎の存在が大きい」って
谷川スレであったけど、そうなのかな?
378吾輩は名無しである:2005/10/14(金) 13:43:52
竹、竹、竹が生え。
379吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 15:17:02
あげ
380吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 16:57:07
姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉を吐く。
ひとり地獄に落ちゆくトミノ、地獄くらやみ花も無き。
鞭で叩くはトミノの姉か、鞭の朱総が気にかかる。
叩けや叩けやれ叩かずとても、無間地獄はひとつみち。
暗い地獄へ案内をたのむ、金の羊に、鶯に。
皮の嚢にゃいくらほど入れよ、無間地獄の旅支度。
春が来て候 林に谿に、くらい地獄谷七曲り。
籠にや鶯、車にゃ羊、可愛いトミノの眼にや涙。
啼けよ、鶯、林の雨に妹恋しと声かぎり。
啼けば反響が地獄にひびき、狐牡丹の花がさく。
地獄七山七谿めぐる、可愛いトミノのひとり旅。
地獄ござらばもて来てたもれ、針の御山の留針を。
赤い留針だてにはささぬ、可愛いトミノのめじるしに。
381吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 19:25:52
寺山修司みたいだな。
(元ネタがわからないで失礼)
382吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 19:52:26
>>381
鋭いね。
>>380は西條八十の詩なんだけど、それを寺山修司が改作して「田園に死す」の
劇中歌に使ってる。
383吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 19:52:57
>>380
ネット上を飛び交ってる不幸の手紙
音読すると災いが起こると噂の…orz
384381:2005/11/17(木) 20:27:24
>>382
『青春歌集』読んだからね。
ああいう鮮烈なイメージといえば寺山、って気がするよ。
385吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:46:06
>384
383だけど、ネットでコピペされてるってホントだよ。
声に出さなきゃいいらしい。ケドきもい
386吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:47:29
感性は個人個人のものだろうが、
文学板であの詩が「きもい」じゃ困る(忠告だよ)。
387吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:51:22
は〜い。でも、不幸の手紙だよ、コピペしろとか書いてるの見た。ちょっときもくない?
388吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:53:02
まあ冗談はその辺で。
原始仏教的な世界観と地獄絵図の極彩色が混ざった独特の世界は
寺山が気に入るのもむべなるかな、と思うけど。
389吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:53:59
>>380の詩「トミノの地獄」だけど…
>>383を見て何のことかと思って検索したら、たしかに呪いの詩扱いされてた。
でも、デマだと思うなぁ。
自分はもう何年も前に音読したことあるけど死んでないしねw
390吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 20:59:24
>>389
でしょでしょ、良かった証明してくれて。死んでなくて良かったね!
391吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 21:00:25
「雲の幅に暮れ行く土地よ誰のためわれに不毛の詩は生まるるや」
                            寺山修司

この歌にわざわざ「」が付いてる件
392吾輩は名無しである:2005/11/17(木) 21:44:12
その歌が生まれた「瞬間」を強調したかったんじゃないの。
短歌も俳句も「思い出」で作るところはあるし。
393吾輩は名無しである:2005/11/18(金) 08:30:27
或いは逆に、括弧に入れることで距離感を置いているか。
394吾輩は名無しである:2005/11/18(金) 08:57:03
台詞だってことを強調して肉声の響きを持たせたかったとか。
395吾輩は名無しである:2005/12/08(木) 19:22:10
葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり 釈迢空
396吾輩は名無しである:2005/12/25(日) 20:45:47
照りもせず曇りも果てぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなし 大江千里
アメリカ
おれはのぞきこむ、おまえの眼だ
おれはのぞきこむ、おまえの死角だ
アメリカ
398名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/18(水) 16:15:46
詩作を理解せんとほっするものは
詩の国に行かざるべからず
詩人を理解せんと欲するものは
詩人の国に行かざるべからず

ゲーテ 高橋健二訳 新潮文庫
399名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/18(水) 16:18:47
ざるべからずってことは二重否定?
いかないようにしないといけない。
行かねばならない
行かずにはいられない
403名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/18(水) 20:53:09
先生、佐藤君がイッてます。
ーーーーーーーーーー糸冬 了ーーーーーーーーーーー
春の夜の夢の浮橋とだえして峰に分かるる横雲の空 藤原定家
矢野目源一訳、ヴィヨン『兜屋小町長恨歌』

あだなりと名にこそ立てれ 具足屋の小町と人に呼ばれしを
あはれうつろふ花の色 昔を今になすよしも
泣く泣くかこつ繰言に いとど思ひぞ出ださるる
うつれば替る飛鳥川 寄る年波に見る影も
なき生恥をさらしつつ 明日をば誰も頼まぬに
存うる(ながらうる)こそ悲しけれ(以下省略)

賛否両論が巻き起こりそうだが、オレは好きだな。
407名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/02/09(木) 02:26:32
万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である
408吾輩は名無しである:2006/03/10(金) 14:40:33
生きていることは
よく聞こえないものを聞くことだ
よく見えないものを見ることだ
よく食べられないものを食うことだ
最大なエックスに向って走るだけだ
存在は宿命だ
シンボルは悲劇だ
「あらどうしましょう」
409吾輩は名無しである:2006/03/17(金) 00:08:05
街にトカゲが出てくる
青い背中光らせて
どこかへ行くわけじゃなく
うごめきたまっている

どうしてこんなにトカゲばかりなんだ?
ライ麦もようのシャツで怒りながら歩いてる

きみが空を指させば突然イナホの雨
ハリボテのビルがくしゃくしゃとくずれて落ちる
落ちる
落ちる!
410吾輩は名無しである:2006/04/02(日) 00:05:54
冬の日雲がそれそもののように垂れ下がって
地面すれすれに流れている街がいい
いしやすながかわいていて
電柱のタアルの根もとだけ浮かんでいる街がいい
見えないそらで旗がパタパタ鳴るのがいい
十字路でそっぽ向いた犬に出偶う街
あるいて行くと門がみんな喪章のように閉じていて
うしろへうしろへ瞬きもせず旋ってゆく街がいい
町かどを曲がったすぐ向こうにときどき
神さまがいそうな気がすることがあって
行ってみると少し雲が高くなっていたりする街がいい
ひとつだけ聞こえる音がふたつもみっつも聞えている街
ぼくをみているけれどその眼のみえない街がいい
にんげんどもは家の中で死んだようになって祈りを捧げ
電柱だの建物だの塀だの樹だのがまるでにんげんのような街がいい
411曽禰好忠:2006/05/13(土) 22:53:17

由良の門を渡る舟人かぢを絶えゆくへもしらぬ恋のみちかな
412René Char:2006/05/29(月) 22:32:41
Le temps vu à travers l'image est un temps perdu de vue.
L'être et le temps sont bien différents.
L'image scintille éternelle,quand elle a dépassé l'être et le temps.
413AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/05/29(月) 22:55:04
富永太カ「大腦は厨房である」(後半)

彼女は大腦の棚の下をそゝくさとゆきゝして
幾品かの食品をとりおろす。
さて 片隅の大鍋をとつて
もの倦げに黄いろな焰の上にかける……

彼女はこの退屈な文火の上で
誰のためにあやしげな煮込みをつくらうといふのか。
彼女は知らない。
けれども、それが彼女の退屈な
しかし唯一の仕事である。

大腦はうす暗い。
頭蓋は燻つてゐる。
彼女は――眼球は愚かなのである。
414AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/05/29(月) 23:15:58

あかあかや あかあかあかや あかあかや  あかあかあかあかや あかあかや月

(高信(編)『明惠上人歌集』所収)
415吾輩は名無しである:2006/05/30(火) 02:11:16
サキノハカ
416吾輩は名無しである:2006/05/30(火) 02:36:56
『からだの中に』谷川俊太郎

からだの中に
深いさけびがあり
口はそれ故に噤まれる

からだの中に
明けることのない夜があり
眼はそれ故にみはられる

からだの中に
ころがってゆく石があり
足はそれ故に立ちどまる

からだの中に
閉じられた回路があり
心はそれ故にひらかれる

からだの中に
いかなる比喩も語れぬものがあり
言葉はそれ故に記される

からだの中に
ああからだの中に
私をあなたにむすぶ地と肉があり

人はそれ故にこんなにも
ひとりひと
417 :2006/07/12(水) 02:46:04
418吾輩は名無しである:2006/07/28(金) 02:00:50
To see a world in a grain of sand,
And heaven in a wild flower.
Hold infinity in the palm of your hand,
And eternity in an hour.

一粒沙子 一個世界
一朶野花 一個天堂
在你掌裡 就是無限
永恒消融 一個時辰
419AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/08/05(土) 07:47:18
Catullus, Gaius Valerius. Carmina. XLVIII. 1c BCE.

Mellitos oculos tuos, Iuuenti,
si quis me sinat usque basiare,
usque ad milia basiem trecenta
nec numquam uidear satur futurus,
non si densior aridis aristis
sit nostrae seges osculationis.
  —————————————————————————————
カトゥルス『カルミナ』第48歌.呉茂一訳.1973年.

蜜みたやうな 可愛い君の眼に、 / ユウェンティウスよ、
もし誰かがわたしに いつまでも / 接吻(くちづけ)さしてくれるなら、
万を三十たびまでもくちづけ、
そいでもけつして私には 心ゆくとは / いへなからうもの、
このわたしらの 接吻の / 畑(はた)の穫り入れが、
乾きみのつた 麦の穂の / 数より多くなかつたならば。
420AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/08/06(日) 07:33:01
Louÿs, Pierre. « Conseils à un Amant. » Les Chansons de Bilitis. 1894.

Si tu veux être aimé d'une femme, ô jeune ami, quelle qu'elle soit, ne lui dis pas que tu la veux,
mais fais qu'elle te voie tous les jours, puis disparais, pour revenir.

Si elle t'adresse la parole, sois amoureux sans empressement. Elle viendra d'elle-même à toi.
Sache alors la prendre de force, le jour où elle entend se donner.

Quand tu la recevras dans ton lit, néglige ton propre plaisir.
Les mains d'une femme amoureuse sont tremblantes et sans caresses. Dispense-les d'être zélées.

Mais toi, ne prends pas de repos. Prolonge les baisers à perte d'haleine.
Ne la laisse pas dormir, même si elle t'en prie.
Baise toujours la partie de son corps vers laquelle elle tourne les yeux.
  —————————————————————————————
ピエール・ルイス「戀人への助言」『ビリティスの歌』鈴木信太カ訳.1954年.

若人(わかうど)よ、女の愛が得たければ、相手が誰であらうとも、お前の方から言ひ寄るな。
毎日毎日、その女(ひと)と顏を合せて、それから暫く身を隱し、もう一度還って來て御覽。

その時言葉をかけられたなら、急がず慌てず 戀をおし。女の方からのぼせて來る。
さうなつたなら 力づく、女が肉体(からだ)を任さうと思つたその日に、奪ひとるのよ。

女を臥床(ふしど)に迎へる時は、あんた自身の快樂は、犠牲にしなさい。
戀する女は 手が震へ、愛撫も出來ない。だから、勤めに勵むのは、免しておやり。

けれどあんたは、一刻も 休んではならぬ。ながながと息の切れるまで接吻し、
女が眠いと訴へても、眠らせぬやうにしなさい。
女が肉体(からだ)に眼をやつたなら、必ず其處に 接吻しなさい。
421吾輩は名無しである:2006/08/06(日) 13:08:37
眠らうとして目をば閉ぢると
真ッ暗なグランドの上に
その日昼みた野球のナインの
ユニホームばかりほのかに白く――

ナインは各々守備位置にあり
狡(ずる)さうなピッチャは相も変らず
お調子者のセカンドは
相も変らぬお調子ぶりの

扨(さて)、待つてゐるヒットは出なく
やれやれと思つてゐると
ナインも打者も悉(ことごと)く消え
人ッ子一人ゐはしないグランドは

忽(たちま)ち暑い真昼(ひる)のグランド
グランド繞(めぐ)るポプラ竝木(なみき)は
蒼々として葉をひるがへし
ひときはつづく蝉しぐれ
やれやれと思つてゐるうち……眠(ね)た
422吾輩は名無しである:2006/08/08(火) 20:35:58
青じろい骸骨星座のよあけがた
凍えた泥の亂反射をわたり
店さきにひとつ置かれた
提婆のかめをぬすんだもの
にはかにもその長く黒い脚をやめ
二つの耳に二つの手をあて
電線のオルゴールを聴く
423吾輩は名無しである:2006/09/04(月) 13:51:38
黒く巨きな松倉山のこつちに
一点のダアリア複合体
その電燈の企画なら
じつに九月の宝石である
その電燈の献策者に
わたくしは青い蕃茄を贈る
どんなにこれらのぬれたみちや
クレオソートを塗つたばかりのらんかんや
電線も二本にせものの虚無のなかから光つてゐるし
風景が深く透明にされたかわからない
424ヴェルレーヌ:2006/09/06(水) 12:31:51
常によく見る夢ながら あやし懐かし身にぞ染む
かつても知らぬひとなれど 思われ思うかのひとよ
夢見るたびのいついつも 同じと見れば異なりて
また異ならぬ思いびと わが心根や悟りてし

わが心根を悟りてし かのひとの眼に胸のうち
ああ かのひとにのみ内証の 秘めたる事ぞなかりける
蒼ざめ顔のわが額 しとどの汗を拭い去り
涼しくなさむ術あるは 玉の涙のかのひとよ

栗色髪のひとなるか 赤毛のひとか 金髪か
名をだに知らね ただ思う 朗ら細音のうまし名は
うつせみの世をとく去りし 昔の人の呼び名かと

つくづく見入る眼差しは 匠が彫りし像の眼か
澄みて離れて落ちいたる その音声のすずしさに
無言の声の懐かしき 恋しき節の鳴り響く
425ボードレール:2006/09/06(水) 13:06:23
時こそ今は水枝さす こぬれに花のふるう頃
花は薫じて追い風に 不断の香の炉に似たり
匂いも音も夕空に とうとうたらり とうたらり
ワルツの舞の哀れさよ 疲れ倦みたる くるめきよ

花は薫じて追い風に 不断の香の炉に似たり
傷に悩める胸もどき ヴィオロン楽の清掻きや
ワルツの舞の哀れさよ 疲れ倦みたる くるめきよ
神輿の台をさながらの 雲悲しみて艶だちぬ

傷に悩める胸もどき ヴィオロン楽の清掻きや
闇の涅槃に痛ましく 悩まされたる優ごころ
神輿の台をさながらの 雲悲しみて艶だちぬ
日や落ち入りて溺るるは こごる昨夜の血潮雲

闇の涅槃に痛ましく 悩まされたる優ごころ
光の過去のあとかたを とめて集むる憐れさよ
日や落ち入りて溺るるは こごる昨夜の血潮雲
君が名残りのただ在るは 光り輝く聖体盒
426シェークスピア:2006/09/06(水) 13:21:38
つばめも来ぬに水仙花
大寒小寒 三月の
風にもめげぬ凜々しさよ

またはジュノーのまぶたより
ヴィーナス神の息よりも
なお臈たくもありながら
すみれの色のおぼつかな

照る日の神も仰ぎえで
嫁ぎもせぬに散りはつる
色蒼ざめし桜草
これも乙女の習いかや

それにひきかえ九輪草
編笠さゆり気がつよい
百合もいろいろあるなかに
いちはつ草のよけれども
ああ 今は無し しょんがいな
427吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 17:39:44
にくいあん畜生は紺屋のおろく
猫をかかえて夕日の浜を
知らぬ顔して、しゃなしゃなと

にくいあん畜生は筑前しぼり
華奢な指さき濃青に染めて
金の指輪も、ちらちらと

にくいあん畜生は薄情な眼つき
黒い前掛け毛繻子かセルか
博多帯しめ、からころと

にくいあん畜生とかかえた猫と
赤い入日にふとつまされて
潟に陥って死ねばよい

ホンニ、ホンニ……
428吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 17:55:40
スロージン

           S.ヒーニィ                

ネズ実のなる澄みきった季節が
くすんで冬になった
彼女はスローの実にジンを注いで
ガラス瓶を封印した

その瓶の蓋を回して開けると
静かな草叢を掻き乱したような香りが
貯蔵室に立ち込めて
獏の鼻を刺激した

それを注ぐと
香りは鋭い刃となり
ベテルギウス星のように
燃え立った

斑にくすんで
青黒く艶々した
スローの実を浮かべた君に乾杯
ぴりっとして頼もしい


        Away from it All
429吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 18:01:01
>獏の鼻を刺激した
訂正
僕の鼻を刺激した

わりーわりー^^
430吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 18:24:28
獏の鼻の方が詩的かも
431吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 19:48:45
  声 曲 (モノノネ)    
        
                  ガブリエレ・ダンスンチオ

われはきく、よもすがら、わが胸の上に、君眠る時、

吾は聴く、夜の静寂(シヅケサ)に、滴(シタタリ)の落つるを将(ハタ)、落つるを。

常にかつ近み、かつ澄み、絶間なく落つるをきく、

夜もすがら、君眠る時、君眠る時、われひとりして。
ー上田敏訳ーーー
432吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 20:59:18
>>430
きみぃ〜っ
笑わせないでくれ給え
433吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 21:14:42
>>431ん〜素敵!
434吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 21:22:51
    黒海より

              イヴォ・アンドリッチ

おーい。おーい。風よ、わが三月の希望よ。
神が忘却によって魂を癒し、春をもって大地を再生させたまうかぎり、生きている人間は、春
にも取り戻せないほどたくさんのものを失うことはないし、いつまでも不幸でありつづけること
もない。
435吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 21:36:30
フォークナー全集1
に収められている彼の詩を引用できる人はいないか?
本屋で立ち読みした僕は
これは強烈なルクスに満たされていて
驚いたものだよ
プリーズ
436吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 22:03:59
はねる髪の毛
     きんぽうげの針
            すみれ
たんぽぽ
そしてひどいいじめっこの雛菊
すばらしい、野原を通り抜ける
すこしだけ悲しそうな目をして
またやってくる
花をつみながら
437吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 22:16:59
るるるるるるる
438吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 22:26:50
蝶のやうな私の郷愁!
蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る…。
私は壁に海を聴く…。私は本を閉ぢる。
私は壁に凭れる。隣の部屋で二時が打つ。
「海、遠い海よ!と私は紙にしたためる。
僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。
そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。」
439吾輩は名無しである:2006/09/22(金) 14:53:47
ありし日の君のその頬は菫いろで
くちびるの色は白
君のおへその蜘蛛の巣から
はるばるきこえてくる
それはむかしの子守唄
君のなげだした両もものおくに
なにがあってもどうでもいい
440AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/09/26(火) 08:14:15
Eluard, Paul. Les Fleurs. 1921.

J'ai quinze ans, je me prends par la main. Conviction d'être jeune avec les avantages d'être très caressant.
Je n'ai pas quinze ans. Du temps passé, un incomparable silence est né. Je rêve de ce beau, de ce joli monde de perles et d'herbes volées.
Je suis dans tous mes états. Ne me prenez pas, laissez-moi.

Mes yeux et la fatigue doivent avoir la couleur de mes mains. Quelle grimace au soleil, mère Confiance, pour n'obtenir que la pluie.
Je t'assure qu'il y a aussi clair que cette histoire d'amour: si je meurs, je ne te connais plus.
  —————————————————————————————
エリュアール「花」窪田般彌訳。

ぼくは十五才、ぼくは自分の手をにぎる。大変可愛(かわい)がられていることの、優越感をともなった若さの確信。
ぼくは十五才でない。過ぎた年月から、無比の静けさが生れてくる。ぼくは夢みる、あの美しさを、盗まれた真珠(しんじゅ)と小草の、あの快(こころ)よい世界を。
いまぼくは、いろんな状態のなかにいる。ぼくにかまってくれるな。放っておいてくれ。

ぼくの眼と疲労とは、ぼくの手の色をしているに違いない。何という顰(しか)めっ面(つら)をするのだろう、信頼の母、太陽に向って。そうしてみても、ただ雨を呼ぶだけなのに。
ぼくはお前に断言できる、この愛の物語と同じほど、はっきりしたことがある、もし、ぼくが死んでしまえば、もうお前を知ることもなかろうと。
441AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/09/26(火) 09:53:11
Vergilius Maro, Publius. Ecloga (Bucolica). II. 37 BCE. 66–73.

Aspice, aratra iugo referunt suspensa iuvenci
et sol crescentis decedens duplicat umbras.
me tamen urit amor; quis enim modus adsit amori?
a, Corydon, Corydon, quae te dementia cepit!
semiputata tibi frondosa vitis in ulmo.
quin tu aliquid saltem potius, quorum indiget usus,
viminibus mollique paras detexere iunco?
invenies alium, si te hic fastidit, Alexin.
  —————————————————————————————
ウェルギリウス『牧歌』第二歌、河津千代訳、66–73行。

ごらん、牡牛が軛に犂を掛けて、家へ帰ってゆくのが見える。
西に傾いた太陽は、影の長さを倍にのばした。それなのに、
愛はぼくの胸を焦がしている。愛に分別はないからだ。
ああ、コリュドン、コリュドン、何という狂気に取りつかれたのだ?
おまえの葡萄は刈りかけのまま、葉の繁った楡に巻きついている。
いや、それよりも、なぜ必要な何かを作ろうとはしないのか?
少くとも、しなやかな柳と藺草(いぐさ)で、籠を編むことはできるだろうに。
おまえは別のアレクシスに出会うだろう、もしこのアレクシスがお前を嫌うなら。
442吾輩は名無しである:2006/09/28(木) 00:26:43
マギーとミリーとモリーとメイは砂浜に行きました
マギーは歌う貝殻を見つけました
それは甘く、嫌なことを忘れさせてくれました
ミリーは打ち寄せられたヒトデを助けてやりました
それは五本の指のようでした
モリーはおそろしいものに追いかけられていました
それは泡をふきながらななめに走っていました
メイはなめらかな丸い石を家に持ち帰りました
それは世界のように小さく孤独のように巨大でした
なぜならばわたしたちはいつも失う(あなたやわたしのように)
そしてわたしたちが海で見つけるのはいつも自分自身なのだ
443AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/10/19(木) 06:05:34
Jammes, Francis. « Élégie Quatorzième. » Le Deuil des Primevères. 1901.
—Mon amour, disais–tu. —Mon amour, répondais–je.
—Il neige, disais–tu. Je répondais: Il neige.

—Encore, disais-tu. —Encore, répondais–je.
—Comme ça, disais–tu. —Comme ça, te disais–je.

Plus tard, tu dis: Je t'aime. Et moi: Moi, plus encore...
—Le bel Été finit, me dis–tu. —C'est l'Automne,

répondis–je. Et nos mots n'étaient plus si pareils.
Un jour enfin tu dis: O ami, que je t'aime...

(C'était par un déclin pompeux du vaste Automne.)
Et je te répondis: Répète–moi... encore...
  —————————————————————————————
ジャム「哀歌 第十四」『桜草の喪』堀口大學訳。

――戀人よ。」とお前が云つた、/――戀人よ。」と僕が答へた。
――雪がふつてゐる。」とお前が云つた、/――雪がふつてゐる。」と僕が答へた。

――もつと、もつと。」とお前が云つた、/――もつと、もつと。」と僕が答へた。
――こんなに、こんなに。」とお前が云つた、/――こんなに、こんなに。」と僕が答へた。

その後、お前が云つた/――あんたが好きだわ。」//すると僕が答へた/――僕はもつとお前が好きだ。」と。
――夏ももう終りね。」とお前が云つた、/もう秋だ。」と僕が答へた。

ここまで來ると僕等の言葉は、/たいして似てはゐなかつた。
最後にお前が云つた/――戀人よ、あんたが好きだわ……」と、

いかめしい秋の/大袈裟な夕日をあびて。
すると僕が答へた/――も一度言つてごらん……。」と。
444AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/10/19(木) 06:06:28
Barbey d'Aurevilly, Jules–Amédée. Le Cid Campeador.

Un soir, dans la Sierra, passait Campeador.
Sur sa cuirasse d'or le soleil mirait l'or
Des derniers flamboiements d'une soirée ardente,
Et doublait du héros la splendeur flamboyante !
Il n'était qu'or partout, du cimier aux talons,
L'or des cuissards froissait l'or des caparaçons,
Des rubis grenadins faisaient feu sur son casque,
Mais ses yeux en faisaient plus encore sous son masque...
Superbe, et de loisir, il allait sans pareil,
Et n'ayant rien à battre, il battait le soleil !

...
  —————————————————————————————
バルベー・ドールヴィイ「シッド・カンペアドル」齋藤磯雄訳。

シエラの里(さと)を、さるゆふべ、カムペアドオル通りけり。
その黄金(わうごん)の甲冑(かつちう)に、暑きひと日の夕映(ゆふばえ)の
きららに燃ゆる金色(こんじき)を、沈みゆく陽(ひ)は照り添へて、
いや耀(かがよ)へる英雄の燃ゆるがごとき壯麗や。
兜(かぶと)よりして踵(くびす)まで、全身ただこれ、黄金(わうごん)なり。
黄金(きん)の錣(しころ)は鏗錚(かうさう)と觸るるや黄金(きん)の馬飾(うまかざり)。
兜の上にグラナダの紅玉(こうぎよく)あまた火と燃ゆれ、
假面のかげに雙(さう)の眼(まみ)、なほ炯炯(けいけい)と煌(きら)めけり。
昂然(かふぜん)として、また、悠悠、たぐひもあらぬ、騎馬の人、
打破るものなきままに、「太陽」をこそ打破れ。

……
445吾輩は名無しである:2006/11/03(金) 02:03:58
>>442
>>マギーとミリーとモリーとメイ
これって誰の詩ですか?
446AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/11/15(水) 04:34:07
Yeats, William Butler. "Aedh tells of a Valley full of Lovers." The Wind Among the Reeds. 1899.

I DREAMED that I stood in a valley, and amid sighs,
For happy lovers passed two by two where I stood;
And I dreamed my lost love came stealthily out of the wood
With her cloud–pale eyelids falling on dream–dimmed eyes:
I cried in my dream ‘O women bid the young men lay
‘Their heads on your knees, and drown their eyes with your hair,
‘Or remembering hers they will find no other face fair
‘Till all the valleys of the world have been withered away.’
  —————————————————————————————
W・B・イェイツ「恋人のあまた居る谿を語る」『葦間の風』尾島庄太郎訳。

わたしは夢みた、谿あいにたたずまい、嘆息(ためいき)に囲まれたのを、――
わたしの立つところを、二人ずつ、幸多き恋人同志がゆきすぎたので。
わたしはまた夢みた、亡(うしな)われたるわたしの恋人が、密(ひそ)かに森蔭をぬけ
夢かすむ眼(まなこ)に垂れる、天雲(あまぐも)に似て蒼白(ほのじろ)き目蓋(まぶた)して現われたのを。
ゆめみの中に、わたしは呼ばわった、「おお、貴女(きみ)たちよ、
若人たちの頭を、貴女(おんみ)らの柔膝(やわひざ)に置かせ、/貴女(おんみ)たちの髪をもて、若人の眼(まなこ)を蔽いたまえ。
さもなくば、若人たちは、妖精の女(おみな)の面(おも)をゆめみつつ/ほかにうるわしの面(おもて)を見ないであろう、
うつし世の谿々なべて消えはてるまで。」
447AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/11/15(水) 04:35:59
Supervielle, Jules. « La Mer Secrète. » La Fable du Monde. 1938.

Quand nul ne la regarde,
La mer n'est plus la mer,
Elle est ce que nous sommes
Lorsque nul ne nous voit.
Elle a d'autres poissons,
D'autres vagues aussi.
C'est la mer pour la mer
Et pour ceux qui en rêvent,
Comme je fais ici.
  —————————————————————————————
シュペルヴィエル「秘められた海」『世界の寓話』三野博司訳。

だれにも見られていないとき、
海はもう海ではなくなる、
海は、だれにも見られていないときの
ぼくらのようになる。
その海には別の魚たちが泳ぎ回り、
別の波もまたうちよせる。
それは海のための海
そして、ここでぼくがしているように
海を夢見る者たちの海だ。
448吾輩は名無しである:2006/11/18(土) 16:26:39
宮沢賢治「屈折率」

七つ森のこつちのひとつが
水の中よりもつと明るく
またたいへん巨きひのに
わたくしはでこぼこ凍ったみちをふみ
このでこぼこの雪をふみ
向こうの縮れた亜鉛の雲へ
陰気な郵便脚夫のやうに
(またアラツデイン 洋燈とり)
急がなければならないのか
449吾輩は名無しである:2006/12/03(日) 13:09:33
おまへこそ髪を刈れ
そんな髪をしてゐるから
そんなことも考へるのだ
450吾輩は名無しである:2006/12/03(日) 13:10:32
これは変はりますか
変はります
これは変はりますか
変はります
これは変はりますか
変はりません
451吾輩は名無しである:2006/12/04(月) 02:28:59
ぷぷ 思いっきりばからしいロマンチックな詩がみたいな!!
452吾輩は名無しである:2006/12/04(月) 04:38:53
堕落とは何か。
仮にそれが、一元が二元になったことだとするならば、
堕落したのは、神だということになる。
言いかえれば、創造とは神の堕落ではあるまいか。
                  ――ボードレール
453吾輩は名無しである:2006/12/05(火) 03:40:17
Par l'espace sans fin des soltitudes nues, Ce gouffre inerte,sourd, vide, au neant pareil,Sahil,temoin supreme, et lugubre soleil Qui fait la mer plus morne et plus noires les nues, Couve d'un oeil sanglant l'universel sommeil 不条理主義は高路派
454吾輩は名無しである:2006/12/07(木) 23:20:07
諸国の天女は漁夫や猟人を夫として
いつも忘れ得ず想つてゐる、
底なき天を翔けた日を。

人の世のたつきのあはれないとなみ
やすむひまなきあした夕べに
わが忘れぬ喜びを人は知らない。
井の水を汲めばその中に
天の光がしたたつてゐる
花咲けば花の中に
かの日の天の着物がそよぐ。
雨と風とがささやくあこがれ
我が子に唄へばそらんじて
何を意味するとか思ふのだらう。

せめてぬるめる春の波間に
或る日はかづきつ嘆かへば
涙はからき潮にまじり
空ははるかに金のひかり

あゝ遠い山々を過ぎゆく雲に
わが分身の乗りゆく姿
さあれかの水蒸気みどりの方へ
いつの日か去る日もあらば
いかに嘆かんわが人々は

きづなは地にあこがれは空に
うつくしい樹木にみちた岸辺や谷間で
いつか年月のまにまに
冬過ぎ春来て諸国の天女も老いる。
455吾輩は名無しである:2006/12/08(金) 00:10:15
河また河と 渡り行くに 我手の覚え失せたり
456吾輩は名無しである:2006/12/08(金) 20:41:49
『A Red, Red Rose 』 Robert Burns

My love is like a red, red rose
That's newly sprung in June:
My love is like the melody
That's sweetly played in tune.

As fair art thou, my bonnie lass,
So deep in love am I:
And I will love thee still, my dear,
Till all the seas gang dry.

Till all the seas gang dry my dear,
And the rocks melt with the sun:
And I will love thee still, my dear,
While the sands of life shall run.

And fare thee well, my only love,
And fare thee well a while!
And I will come again, my love,
Though it were ten thousand mile.
457AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/12/23(土) 02:06:46
Swinburne, Algernon Charles. "Dolores (Notre–Dame des Sept Douleurs)." vs. 137–144. Poems and Ballads. 1866.

All thine the new wine of desire,
The fruit of four lips as they clung
Till the hair and the eyelids took fire,
The foam of a serpentine tongue,
The froth of the serpents of pleasure,
More salt than the foam of the sea,
Now felt as a flame, now at leisure
As wine shed for me.
  —————————————————————————————
スウィンバーン「ドロレス」第137–144行、『詩とバラッド』江藤潔訳。

これなべて君が情欲の新酒
リプス四枚相摩し接し
ヘアとまつ毛の燃え立ち醸(かも)せしもの。
蛇の舌先ちょろりと出でて
快楽(けらく)の唾液(つば)は塩からく
海の水泡(みなわ)にまさりけり。
炎と思えば、今はまた
ワインの如くこぼれ出ず!
458AmiLaLa :) ◆V0C09R5Pg. :2006/12/23(土) 02:14:10
Michaux, Henri. « La Paresse. » La Nuit Remue. 1934.

L'âme adore nager.

Pour nager on s'étend sur le ventre.
L'âme se déboîte et s'en va. Elle s'en va en nageant.
(Si votre äme s'en va quand vous êtes debout, ou assis,
ou les genoux ployés, ou les coudes, pour chaque position corporelle différente
l'âme partira dans une démarche et une forme différentes,
c'est ce que j'établirai plus tard.)

On parle souvent de voler. Ce n'est pas le cas. C'est nager qu'elle fait.
Et elle nage comme les serpents et les anguilles, jamais autrement.

Quantité de personnes ont ainsi une âme qui adore nager. [...]
  —————————————————————————————
ミショー「怠惰」『夜は動く』窪田般彌訳。

魂は泳ぐのが大好きだ。

泳ぐために、人はうつ伏せになって体をのばす。
魂は脱れて逃げ出す。泳ぎながら逃げ出す。
(もし君たちが立っていたり、坐っていたり、
膝か肱を曲げているときに魂が逃げ出すなら、あれこれ異なる姿勢に応じて、
魂は異なった物腰と様子をしながら出ていくだろう。
このことは、また後に明らかにしよう。)

人はしばしば、魂が飛ぶ話をする。が、そうではないのだ。魂がするのは泳ぎだ。
それは蛇や鰻のように泳ぐ。決して別な泳ぎ方はしない。

このように、多くの人たちは泳ぎの大好きな魂を持っている。[……]
459吾輩は名無しである:2007/02/08(木) 22:11:48
散りぬべき時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ

浮世をば今こそ渡れ武士の 名を高松の苔に残して
460吾輩は名無しである:2007/02/24(土) 23:53:29
この ひとわたりすぎさつた時のにほひは
うらさびれた奥庭のなかにちらばふ影
そのあしあともなく うしなはれる
まどろみの ねむりの花
461吾輩は名無しである:2007/02/26(月) 11:14:31
おまえは誰ちいさなわたし
(5歳か、6歳)
高い窓から顔をのぞかせている
11月の日暮れの金色
(そしてこう感じている
もし一日に夜がこなくてはいけないのだとしたら
それは美しいものだろう)
462かまきりりゅうじ:2007/02/26(月) 12:37:21
おう 夏だぜ
おれは元気だぜ
(みたいな詩あったよね?)
463吾輩は名無しである:2007/02/27(火) 13:13:35
(そうだっけ?)
464吾輩は名無しである:2007/03/02(金) 21:29:37
あなたは ひかりのなかに さうらうとしてよろめく花、
あなたは はてしなくくもりゆく こゑのなかの ひとつの魚、
こころを したたらし、
ことばを おぼろに けはひして、
あをく かろがろと ゆめをかさねる。
あなたは みづのうえに うかび ながれつつ
ゆふぐれの とほいしづけさをよぶ。
あなたは すがたのない うみのともしび、
あなたは たえまなく うまれでる 生涯の花しべ、
あなたは みえ、
あなたは かくれ、
あなたは よろよろとして わたしの心のなかに 咲きにほふ。

みづいろの あをいまぼろしの あゆみくるとき、
わたしは そこともなく ただよひ、
ふかぶかとして ゆめにおぼれる。

ふりしきる さざめゆきのやうに
わたしのこころは ながれ ながれて、
ほのぼのと 死のくちびるのうへに たはむれる。

あなたは みちもなくゆきかふ むらむらとしたかげ、
かげは にほやかに もつれ、
かげは やさしく ふきみだれる。
465吾輩は名無しである:2007/03/04(日) 01:43:26
すべての無知は知ることへ滑り落ちていく
そしてまた無知へのろのろとのぼっていく
けれども冬は永遠ではなく、雪でさえ溶ける
466吾輩は名無しである:2007/03/18(日) 21:35:19
僅かのもので満足し、沢山あれば陽気にし、
悲しみ心配に出会った時には、
愚図つく奴を叩き出す、
よい酒の杯と、古いスコットランドの歌をもて。

時には思案に暮れるけど、
人は軍人、世は戦争。
楽しみ笑うは私の資本、
自由は絶対無上の王位。

十二ヶ月の苦しみが私の運命であろうとも、
楽しい一夜の歓楽は其を癒して余りあり。
斯くて旅路の嬉しい終りに辿り着いたる其の日には、
誰が一体通った道の事なんかをば考える。

盲目の機会よ、躓け、よろめけ、
来るなら来い、行くなら行け、えゝどうなりと勝手にせ。
安楽も来い、苦労も来い、楽しみ苦痛皆んな来い、
私の最悪の言葉というのは――「喜び迎え又迎える!」のだ。
467吾輩は名無しである:2007/03/19(月) 00:40:41
(=゚ω゚)ノいよぅぼくだよ。
出てきたよ。
えぼがへるだよ。
ぼくだよ。
びっくりしなくってもいいよ。

やりきれんな。
真っ青だな。
匂ひがきんきんするな。
ほっ雲だな。
468吾輩は名無しである:2007/03/19(月) 22:18:01
春ははや寒からぬ温気をもたらし、
はや彼岸ごろの空あれのけはひも
和やかな西の微風にしづまつていく。
出でたたうよ、カトゥルス、フリュギアの野山も
燃えわたるニーケアの饒かな畑も後へに、
世に聞えたアシアの国の大邑さしてとんでゆかうよ。
心ははや今もふるへときめいて遊行をおもひ、
脚もはやその翹望にうれしくはりきってゐる。
さらば、道づれの愉しい集ひの人らよ、
はるか家郷をおなじく出でたつたわれわれを
八ちまたの道はとりどりにまたつれかえすのだ。
469吾輩は名無しである:2007/03/21(水) 02:41:57
春と聞かねば 知らでありしを
聞けばせかるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
470吾輩は名無しである:2007/03/22(木) 22:53:18
弥生ついたち、はつ燕、
海のあなたの静けき国の
便もてきぬ、うれしき文を。
春のはつ花、にほひを尋むる
あゝ、よろこびのつばくらめ。
黒と白との染分縞は
春の心の舞姿。

弥生来にけり、如月は
風もろともに、けふ去りぬ。
栗鼠の毛衣脱ぎすてて、
綾子羽ぶたへ今様に、
春の川瀬をかちわたり、
しなだるゝ枝の森わけて、
舞ひつ、歌ひつ、足速の
恋慕の人ぞむれ遊ぶ。
岡に摘む花、菫ぐさ、
草は香りぬ、君ゆゑに、
素足の「春」の君ゆゑに。
471吾輩は名無しである:2007/03/23(金) 00:17:18
ケルルン クック
ケルルン クック
472吾輩は名無しである:2007/03/23(金) 22:03:05
かすかなれども愛らしき
ものの音、胸を吹き過ぎぬ。
ひびけ、かそけき春のうた。
ひびけ、霞めるおちかたへ。

花咲き初むるかの家に
ひびきつたえよ、春のうた。
かの家に咲く佳き薔薇に
わが挨拶をことづてよ。
473吾輩は名無しである:2007/03/24(土) 00:56:59
春(わたしたちのすべての夜が昼になる)ああ、春!
すべての美しい鳥は空の中心へ飛び込んでいく
すべての小さな魚は海の心をのぼっていく
(すべての山は踊っている、踊っている)
474吾輩は名無しである:2007/03/24(土) 22:35:55
きさらぎ弥生春のさかり
草と水との色はみどり
枝をたわめて薔薇をつめば
うれしき人が息の香ぞする
475吾輩は名無しである:2007/03/25(日) 00:13:43
いま、翼の生えた自我たちがやさしく歌う
あちこちの雪の亡霊がおののく間に
くらくらして 地球は彼女の輝く心から眠りをふるい落とす
いま、あらゆる場所に希望という驚きの趣

いま、冬は終わった(わたしとあなたのために、いとしい人よ!)
人生の星が跳ねまわる 目もくらむような青
476吾輩は名無しである:2007/03/25(日) 22:32:42
挿頭に編むは白すみれ、編むはやさしい水仙の花。
桃金嬢に添へて 編むはまたほがらに笑う百合の花。
編むはまたもや かはいいサフラン、紫の風信子花に
なほも加えて 編みたすは、恋の身方の花のうばら。
薫る華鬘のヘーリオドーラが鬢のあたりに、
掛けまとわれて その垂髪へ花を添ふべく。
477吾輩は名無しである:2007/03/26(月) 00:25:51
春 ふしだらな季節
汚れた足と泥だらけのペチコート
唇は眠たげで、瞳は夢にまみれている
びしょ濡れの体
クロッカスのベッドに運ばれて
しゃがれた声で歌うとき
草は地球のてっぺんまでのぼっていき
木々をぴりぴりさせる
478吾輩は名無しである:2007/03/26(月) 04:38:42
最後の二行だけはいいな
479吾輩は名無しである:2007/03/26(月) 22:06:41
ああ、春は遠くからけぶつて来る、
ぽつくりふくらんだ柳の芽のしたに、
やさしいくちびるをさしよせ、
をとめのくちづけを吸いこみたさに、
春は遠くからごむ輪のくるまにのつて来る。
ぼんやりした景色のなかで、
白いくるまやさんの足はいそげども、
ゆくゆく車輪がさかさにまわり、
しだいに梶棒が地面をはなれ出し、
おまけにお客さまの腰がへんにふらふらとして、
これではとてもあぶなさうなと、
とんでもない時に春がまつしろの欠伸をする。
480吾輩は名無しである:2007/03/27(火) 01:23:45
春は窓の手みたいなものだ おそらく
注意深く 動かしていく
新しいのと古いものとをいったりきたり
人々が見つめているあいだに 注意深く
動かしていく おそらく 
並べていく
ここに花の欠片
あそこにほんのすこしのそよ風
そしてなにひとつ壊さずに
481吾輩は名無しである:2007/03/27(火) 22:27:10
ああ春はわれらの呼吸をふかくし
春はわれらの心をふかくする
ながいながい冬の日の不如意の後で
堅い氷をおし破って帰つてくる春の日は
われらの心をのびのびと
今日の烟った野山の間へ
天の一方へ解き放つ
まだ歌うたふ日ではない小鳥たちも
枯木のままの枝の間で
なんと活発な羽ばたきをすることだらう
われらみな芝生の上で
われらみなめいめいの夢をみながら
われらの心もまた
やがて明日は歌うたふ前の羽ばたきをしよう
482吾輩は名無しである:2007/03/28(水) 01:12:45
小女子よ
時なすごしそ
菫を摘むは 春にこそ
ら ら ら りれっと ら り ろん らん ら
ら ら ら りれっと ら り ろん らん ら
483吾輩は名無しである:2007/03/28(水) 22:24:48
からりはたはた織る機は
仏蘭西機か、高機か、
ふつととだえたその窓に
守宮吸ひつき、日は赤し、
明り障子の沈丁花。
484吾輩は名無しである:2007/03/29(木) 03:38:50
川面に春の光りはまぶしく溢れ。
そよ風が吹けば光りたちの鬼ごつこ葦の葉のささやき。
行行子は鳴く。
行行子の舌にも春のひかり。

土堤の下のうまごやしの原に。
自分の顔は両掌のなかに。
ふりそそぐ春の光りに却つて物憂く。
眺めてゐた。
485吾輩は名無しである:2007/03/29(木) 22:24:00
とてもはや、蜜の咽喉の、
ほれぼれとする声音の乙女どち、
もう足腰がよう利かぬわえ、
やれ、ほんに雄翡翠にもなりたや、
かう、波の秀の、華をかすめ、
雌翡翠らと群れ飛び交はし、
恐れごころもつゆ知らぬげな、
潮紫の春の鳥とも。
486吾輩は名無しである:2007/03/30(金) 01:58:03
かわいいかわいいこまどりよ
とても緑の葉の下で
幸せな花
おまえがむせび泣くのを聞いている、むせび泣くのを
かわいいかわいいこまどりよ
わたしの胸のそばへ
487吾輩は名無しである:2007/03/30(金) 22:21:16
春くれば
宮いの園にさく花の
ももの花の
花はずかしき
サロメが舞いをみたまえ

なないろの
ななえのきぬをきて舞えば や
夕立しぶくカルメルの峯にかかる虹の
いつのかけ橋うちこゆる紅鶴の べに鶴の
たおの翼の
金砂をちらすごとくなり

白妙の
ひとえの衣をぬげば や
なまめくもろただむき
ガリラヤの海こぐ舟の
かじにおどろく游魚の
藻の花がくれ
ひらめくにさもにたり
君よ
なんぞ柔き愛の網をもってそをとらえざる
488吾輩は名無しである:2007/03/31(土) 02:30:40
下りて来い、下りて来い、
昨日も今日も
木犀の林の中に
吊つてゐる
黄金の梯子
瑪瑙の梯子。

下りて来い、待つてゐるのに
嘴の紅く爛れた小鳥よ
疫病んだ鸚哥よ
老いた眼の白孔雀よ。
489吾輩は名無しである:2007/03/31(土) 22:24:54
唄を忘れた 金糸雀は
後の山に 棄てましょか
いえ いえ それはなりませぬ

唄を忘れた 金糸雀は
背戸の小薮に 埋けましょか
いえ いえ それはなりませぬ

唄を忘れた 金糸雀は
柳の鞭で ぶちましょか
いえ いえ それはかわいそう

唄を忘れた 金糸雀は
象牙の船に 銀の櫂
月夜の海に 浮べれば
忘れた唄を おもいだす
490吾輩は名無しである:2007/04/01(日) 01:38:04
ながい塀にそうて、
月夜のはてがある。

ながい塀のむかうにあるものは、もはや、風景ではない。
それは、この世のさけめである。

塩。
干潟のうへの
かよわい星くづ。
491吾輩は名無しである:2007/04/01(日) 22:24:27
君の心は 奇らかの貴なる風景、
假面假装の人の群、窈窕として行き通ひ、
竪琴をゆし按じつつ 踊りつつ さはさりながら
奇怪の衣裳の下に 仄仄と心悲しく、

誇りかの戀 意のままのありのすさびを
盤渉の調にのせて 口遊み 口遊めども、
人世の快樂に涵る風情なく
歌の聲 月の光に 入り亂れ、

悲しく美しき月魂の光 和みて、
樹樹に 小鳥の夢まどか、
噴上げの水 恍惚と咽び泣き、
大理石の像の央に 水の煙の姿たをやか。
492吾輩は名無しである:2007/04/02(月) 01:42:23
白き月かげ 森に照り
枝に 声あり 葉ずれして

おお、愛人よ聴きたまえ。
そこひなき鏡となりて 池水は映すかな
枝に来て風の泣く 黒き柳の姿をば
夢見んいざや二人して。

やさしくも深き心の なごやかさ
月の光に照り映ゆる 空より降ると 見ゆるかな
ああ、この良夜を如何せん。
493吾輩は名無しである:2007/04/02(月) 22:27:37
歌の翼にきみを乗せ
遠つくにの
ガンギスの野に連れ行かん、
われは知る、いとも愛ぐしき辺りをば。

紅き花さく園ありて
静かなる月影そこに照りわたり、
あまたの蓮花きみを待つ、
そのはらからを待つごとく。

菫は笑まいさざめきて
星々の高き光をうち見上げ
薔薇はひそかに物語る、
いとかぐわしき物がたり。

性の良き、心の賢き羚羊は
傍えを走り、ものの音にふと聴き入りて立ちどまる。
遙かに遠きものの音は
畏き河の波のおと。

かしこに行きて、椰子の葉の
翳にわれらは憩うべし。
愛と憩いを共に飲み
こよなき幸を夢に見ん。
494吾輩は名無しである:2007/04/03(火) 01:46:57
はい はたのしい国
もしも は冬のよう
(わたしのすてきな人)
一年をひらいてみましょう

どっちも はとても移り気
(どっちかの、ではなくて)
わたしのたいせつな人
菫の花があらわれたら
愛情は理由よりも深い季節に
わたしのいとしい人
(わたしたちのいる場所は四月)
495吾輩は名無しである:2007/04/03(火) 23:10:23
おまへは とほくから わたしにはなしかける、
この うすあかりに、
この そよともしない風のながれの淵に。
こひびとよ、
おまへは ゆめのやうに わたしにはなしかける、
しなだれた花のつぼみのやうに
にほひのふかい ほのかなことばを、
ながれぼしのやうに きらめくことばを。
こひびとよ、
おまへは いつも ゆれながら、
ゆふぐれのうすあかりに
わたしとともに ささめきかはす。
496吾輩は名無しである:2007/04/04(水) 02:28:35
どこからか、動悸をうってくる。
それが君なのか。それとも
大気のゆらぎで感じ取る
片すみで、君はおののいているのか。

とらえようとすればのがれる
まなざしのふかさに、君は住むか。
そのまなざしをあやつる
みえないこころのなかにいるのか。
497吾輩は名無しである:2007/04/04(水) 22:29:06
日なたには いつものやうに しづかな影が
こまかい模様を編んでゐた 淡く しかしはつきりと
花びらと 枝と 梢と――何もかも……
すべては そして かなしげに うつら うつらしてゐた
           
私は待ちうけてゐた 一心に 私は
見つめてゐた 山の向うの また
山の向うの空をみたしてゐるきらきらする青を
ながされて行く浮雲を 煙を……

古い小川はまたうたつてゐた 小鳥も
たのしくさへづつてゐた きく人もゐないのに
風と風とはささやきかはしてゐた かすかな言葉を

ああ 不思議な四月よ! 私は 心もはりさけるほど
待ちうけてゐた 私の日々を優しくするひとを
私は 見つめてゐた……風と 影とを……
498吾輩は名無しである:2007/04/05(木) 01:53:57
小川のあらゆるささやきを 岩窟のあらゆる水滴を
ふるえながら かよわい腕で わたしは神へと返すのだ

そしてわたしたちは讃える 輪舞をば

風が向きを変える度毎に
それは招きであった 驚きだった
すべての深い発見が 再びわたしを幼な児にした

そしてわたしは感じたのだ わたしは知っていると
おお わたしは知っている わたしは理解している
もろもろの名の本質と理解とを
成熟の内部には休らっているのだ 原初の種子が

ただ限りなく倍加して
499吾輩は名無しである:2007/04/05(木) 22:52:23
清浄に 緩やかに 蹈む
きみの歩み、わが沈默の子どもらは、
聲もなく また 冷やかに
わが凝念の臥床に 進む。

神さびし影よ、純粋なる人よ、
捕はれしきみの歩みの 快さ。
神々よ……わが解きほぐす賚は
なべて その素足に乗りて來迎す。

若し、きみが脣をさし伸べ、
わが想念の住人を
宥めむために、接吻の
糧を與ふる意ありとも、

在るごとき在らざるごとき優しさよ、
愛情の業を 急ぐなかれ、
そは、きみ待ちて 生きしわれゆゑ、
わが心は きみの歩みに過ぎざりしゆゑ。
500吾輩は名無しである:2007/04/06(金) 02:23:38
恋はいちばんに軽い熱病だ
わたしのなやみの凡てを去ってくれる
脣の色をした石榴水
見てゐるだけでわたしは酔ふ
501吾輩は名無しである:2007/04/06(金) 23:19:20
戀はパリの色
そこはかとうれしきほのほ
道のかみ手に生る。

底深き青空に
ささげられたる街燈の灯、
灰色の霧にかこまれし
黄金いろの火とやいはまし

いささかはうれしきほのほ。

戀はパリの色。
502吾輩は名無しである:2007/04/07(土) 00:35:51
脆く不誠実で鮮明な記憶の通りにそって
愚か者のように歌いながら、酔っ払いのようにささやきながら
わたしの心にやってくる
(ある角で突然に)わたしの心の背の高い警官に出会う
                      目覚める
眠ってはいない、どこか他の場所で
いまは閉じてしまったわたしたちの夢がはじまった
だけど、月日は彼の人生を忘れ去られた囚人として終わらせる

"Ici?" "Ah non,mon cheri;il fait trop froid"
彼らは行ってしまった、この庭にそって
雨と葉っぱを運んできた風を動かして、空気を恐怖で満たして
そして甘美な中断(半分ささやきながら、半分歌いながら

いつも笑顔の chevaux de bois ゆり動かす)

あなたがパリにいたとき、わたしたちはここで会っていた
503吾輩は名無しである:2007/04/07(土) 22:21:08
嘗てわれ夢みたり、荒き恋の炎を、
麗しき巻髪を、てんにん花を、薫り良きもくせいそうを。
甘き唇と苦き言葉を、
仄暗き歌の悲しき節を。

その夢の色褪せて消え失せしより既に久し、
夢の中なるいと懐かしき姿さえ消え行きぬ。
残れるはただ歌のみ。その往日愛の思いに燃えてやわらかく
わが歌いける歌屑のみ。

歌よ、孤児となりて残れるわが歌よ。今も鳴り漂いて
わがために消えて久しきかの夢の愛しき姿を探ねゆけ。
おんみその姿にめぐり遭う日もあらば
わが挨拶を告げよかし、
その幻のみすがたに、われは今、わが幻の歌を送らん。
504吾輩は名無しである:2007/04/08(日) 02:53:58
すべてがどうやって始まったか覚えている?
快速帆船とピンク色の電飾の木
地平線の夜明けの光 橋のきざはし
記憶の屋根の上には通りの灯り
そこにわたしはいて、春がきて
春の雨の曲を演奏していた
あなたの名前の中にあるメロディ
夜はこれまでよりもずっと憂鬱になってやってくる
ピンクの尼僧は前よりもずっと悲しそうに歌う
彼女は時々ありえないようなことを歌う
月が16階の床を反射しているみたいに
愛はもう終わってしまった
紙とピンでは治せない
月がうそをついても
505吾輩は名無しである:2007/04/08(日) 22:21:32
接吻! 愛撫の園の立葵!
「愛の女神」がとけそうな天使めく声に
恋びとたちのためにと歌う鼻歌の
歯列の鍵を弾き鳴らす激しい伴奏、接吻よ!

鳴り高く甘い接吻、神ほども尊い接吻!
類ない逸楽、最高の酩酊!
そなたに礼す! 愛すべきそなたの酒杯に口当てて
人は尽きせぬ幸福に酔う。

ライン・ワインのように、音楽のように
そなたは慰め、そなたは落ち着かす、
そしらぬ顔で憂いは消える、そなたの赤いひだの間に……。
ゲーテやシェークスピアなら多分立派な詩を書くだろうが

パリの哀れな吟遊子、自分には
児戯に類するこのような詩の花束しか贈れない、
おお、接吻よ、祝福されてあれ、僕の愛する誰やらの
強情な唇に降りて来て、にっこり笑ってみせてくれ。
506吾輩は名無しである:2007/04/09(月) 02:01:13
真珠をころがすような声は、
わたしの暗い暗い奥のほうまで染みとおり
そしてよくととのった詩のようにわたしに充ちて
媚薬のようにわたしを悦ばせてくれる。

どれほどひどい苦痛も眠らせ
どのような恍惚も含んでいて
いつまでも続きそうな内緒話を
一語もいわずに聞かせてくれる声。

わたしの心は申し分ないヴァイオリン。
これを奏でてこの弓ほどに
もっともはげしくふるえる弦を
これより高らかに歌わせる弓はない。
507吾輩は名無しである:2007/04/09(月) 22:10:07
test
508吾輩は名無しである:2007/04/09(月) 22:48:07
われ希ふ、愛慕に満ちし汝が目ざしに包まれて
打ち戦ける蘆のあひだに
青ざめし黄昏のほの白き花を摘まんこと。

おお、愛人よ、われ希ふ、もの思はしげなる池水の傍にゐて
暮れての後の香はしき影漂ふ中に
汝が愛慕の脣より汝が魂を吸はんこと。

夕闇はやはらかく重き幔幕さながらよ
われ等が心はかたみに倚りそひて
しめやかなる愛慕の思ひうれしげに睦言す。

静なる林間にて新生の星に禮する如く
心の秘密を語り合ふわれ等が聲は
夕闇に清らかに祈の如く昇り行く。

かくてわれ今、天使めく汝が肉體を瞼の上に接吻す……。
509吾輩は名無しである:2007/04/10(火) 02:19:21
わたしの詩句は飛び去るでしょう、やさしくそっと、
あなたの美しい庭をめざして、
もしもわたしの詩句に翼があれば。

飛んでいくでしょう、火花となって、
あなたの暖炉の笑うほとりへ、
もしもわたしの詩句に翼があれば、
精霊のように翼があれば。

あなたのそばへ、純粋に、忠実に、
夜も昼もかけつけるでしょう、
もしもわたしの詩句に翼があれば、
愛の神のように翼があれば。
510吾輩は名無しである:2007/04/10(火) 22:45:02
おまへの心が 明るい花の
ひとむれのやうに いつも
眼ざめた僕の心に はなしかける
ひとときの朝の この澄んだ空 青い空

傷ついた 僕の心から
刺を抜いてくれたのは おまへの心の
あどけない ほほゑみだ そして
他愛もない おまへの心の おしゃべりだ

ああ 風が吹いてゐる 涼しい風だ
草や 木の葉や せせらぎが
こたへるやうに ざわめいてゐる

あたらしく すべては 生れた!
露がこぼれて かわいて行くとき
小鳥が 蝶が 昼に高く舞ひあがる
511吾輩は名無しである:2007/04/11(水) 02:08:31
他の色とくらべて、自然はめったに黄色を使わない
夕暮れのためにすべてとっておく
青はたっぷりと
女の人のように深紅は使う
黄色は、ちょっとずつ厳選して見せてくれる
恋人の言葉のように
512吾輩は名無しである:2007/04/11(水) 09:30:28
夕暮れのまどろみの中で
恋人たちが溜め息を溢す
公園の黄色のベンチに座り
恋人たちが明日の約束を交す
夕暮れの空に似た
約束を交す
513吾輩は名無しである:2007/04/11(水) 22:32:37
ゆふぐれは そこにちかづいて
ことばを さしいれる、
きえてゆかうとする、あをいことばを。

ゆふぐれは うすいろのきものをきて、
こころのおもてに
うまれない星を ちりばめる。

ゆふぐれは あのひとの こゑのないことばを
そよそよと そよがせ、
みづのやうに こころをふかくする。

ゆふぐれは はなればなれの思ひを
けむりのやうに つなぎあはせ、
かくれてゐる おどろきを そだててゆく。
514吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 02:33:02
夜がほとんど明けそうで
触れられそうなほどに
暁が近くまで伸びたなら
髪の毛を梳かす

そして笑おうとしてみる
考えてみる
さっきまであんなに恐れていた
あの古い褪せた真夜中を
気にしていられるかどうか
515吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 21:50:31
ああ ぼくらの善きカスパールは死んだ。
これからはだれが燃える旗を髪にかざしだれがコーヒーミルをまわすのだろう だれがのどかな野呂鹿を誘いだすのか。
海のうえでかれはこうもり傘と船を呼んで困らせ風たちを養蜂家だと言った。
ああ ああ ああ ぼくらの善きカスパールは死んだ 聖リンリン・カスパールは死んだ。
かれの名前が聞こえると鐘のなかで干魚がからからと鳴るからぼくはカスパルカスパルカスパルと溜息をつきつづける。
なぜおまえは星になったあるいは熱い旋風に懸かる水玉の鎖になったあるいは黒い光の乳房になったかあるいは岩法師の呻き太鼓のそばの透明な瓦になったか。
いまぼくらの頭と足は干からび妖精たちは半分炭になって薪の山のうえに転がっている いま太陽のうしろで黒いボウリング・レーンが雷の音をたててもうだれも羅針儀も手押車の車輪も引っぱりあげる者がない。
これからはだれがネズミといっしょに寂しい食卓で食事をするのか だれが悪魔が馬をさらおうとすれば追っぱらうのか だれが星たちのモノグラムをぼくらに説明してくれるのだろう。
かれの胸像はすべての真に尊い御方々の暖炉をかざるだろうしかしそんなことは髑髏には慰めにも嗅煙草にもならない。
516吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 22:05:37
そのあをじろさの
それとなく うつつににほふつばさのかげに
もれもれする葉かげの細い月のやうに
おまへの眼が かなしみにわらつてゐる
あからむ花のやうに また ひそまりしづむなげきの羽のやうに
やはらかく わたしの胸にときめきをせまり
くるしさのつぶてを かなたこなたのゆめにちらして
おまへは めぐる日のやうにもえてくる
まぢかに そよそよとゆれてくる 美しい眼の恋人よ
わたしのむねは 青い鐘のひびきにぶるぶるとふるへている
517吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 22:07:16
月は ひとしほものうげに、今宵、夢見る。
小蒲團を八重にかさねて、その上に臥したる美女の、
無心の輕き手を触れて、雙の乳房のふくらみを、
まどろむ前に 愛撫する 幽艶なる姿さながら、

仰向けに 柔肌の雪崩の繻子の背を下に、
消なむばかりに、いつまでも息絶え絶えの風情にて、
花咲くごとく 蒼空に立昇りゆく 眞白なる
幻影に その眼をめぐらし 眺めやる。

ときをりは、やるせなきその物憂さに、
下界に 月の 一滴 ひそかに涙を流す時、
眠りもやらで夜をあかす 聖なる詩人は

掌に 猫目石の破片の如く 七色の
虹にもまがう輝きの 蒼き涙を汲ひとり、
太陽の目遙けき奥深き心の底に 秘むるかな。
518吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 22:08:32
月は入り
  すばるも落ちて、
夜はいま
  丑満つの、
時はすぎ
  うつろひ行くを、
我のみは
  ひとりしねむる。
519吾輩は名無しである:2007/04/12(木) 23:01:05
こころをばなににたとへん
こころはあぢさゐの花
ももいろに咲く日はあれど
そは全て土壌ばらんす
さんせいとあるかりの色
520吾輩は名無しである:2007/04/13(金) 02:07:58
はながちる はながちる               
ちるちるおちるまいおちるおちるまいおちる
光と影がいりまじり           
雪よりも 死よりもしずかにまいおちる       
まいおちるおちるまいおちる       

光と夢といりまじり           
ガスライト色のちらちら影が       
生まれては消え             

はながちる はながちる               
東洋の時間のなかで           
夢をおこし 夢をちらし               

はながちる はながちる               
はながちるちる             
ちるちるおちるまいおちるおちるまいおちる
521吾輩は名無しである:2007/04/13(金) 10:42:00
軍艦を内蔵している!
522吾輩は名無しである:2007/04/13(金) 11:46:04
丁丁丁丁丁丁丁丁
523吾輩は名無しである:2007/04/13(金) 22:16:51
小手招きする
あまにがい丁字の花はこぼれ、
かへりゆく人のうしろ姿に
憎み多い追懐を投げかける。

小手招きする
あまにがい丁字の花はこぼれ、
かへりゆく人の濃い影に
命の香をとこしなへにふりそそぐ。
524吾輩は名無しである:2007/04/13(金) 22:19:01
オフェリアの白衣に似たる、
しみもなき白き花、
地に積もりたる雪かとも
散りては、かなし。

美しき薔薇の花、
花瓶の水に散り、
戀の形見とや云はまし、
花のつや溺れ悩める。

さはれ薔薇よ、わが心のうちには生きよ!
わがために、花のひだもとの如くにふくらみ
われまたしても心ゆく許り、
そが匂ひをきかんと希ふ。

薔薇よ、清くあれ、汝をわれに捧ぐる、
手のうちに見し夕のごとく、
われ汝を見、われ汝を愛でん、
汝うつくしかりし、その日のごとく。
525吾輩は名無しである:2007/04/14(土) 01:40:39
今朝、あなたに薔薇をお届けしようと思い立ちました。
けれども結んだ帯に、摘んだ花をあまりたくさん挟んだため
結び目は張り詰め、もう支えきれなくなりました。

結び目ははじけました。薔薇は風に舞い散り、
一つ残らず、海に向かって飛び去りました。
潮のまにまに運ばれて、はや二度と帰っては参りません。

波は花々で赤く、燃え立つように見えました。
今宵もまだ、わたしの服はその薔薇の香に満ちています。
吸ってください、わたしの身から、その花々の芳しいなごりを。
526吾輩は名無しである:2007/04/14(土) 22:26:12
お姫さまが 眠ってゐる、純粋な薔薇の宮殿で、
寥亮に響く葉ずれの音、移動する日陰の下に眠ってゐる。
迷子の小鳥が 金の指輪を啄く時、お姫さまは
譯のわからぬ一言を 珊瑚の色に幽かに漏らす。

点々と落下する水滴が、遙か遠くに 空白の
一世紀の財寶を鳴り響かせてゐた音も、
茫々とした森の上に、横笛の音の溶け込んだ風が 角笛の
旋律のざわめきを引裂いたのも、お姫さまには聞えない。

長いこと、木霊はそのまま 森のディアナを眠入らせて置け、
輕く左右に揺れながら 瞑っている眼を愛撫する
柔軟な蔦葛にも、おお、いつも最も匹敵するものよ。

頬の近くに緩やかに揺れる 薔薇の花さへ、
そこに身を休らふ光を 密やかに鋭く感ずる
瞼の襞の この安逸を、追ひ散らすことはあるまい。
527吾輩は名無しである:2007/04/15(日) 02:13:23
わたしは指のなかに宝石を持っていた
そうして眠りについた
一日はあたたかく、風はおだやかで
わたしは言った「ずっとこのまま」

わたしは目を覚まし
正直な指をたしなめた
宝石はもういってしまった
今では、アメジストの思い出だけが
わたしの持っているもののすべて
528吾輩は名無しである:2007/04/15(日) 22:07:49
不意くも、戯れに似て
私のさまざまな笛の木管が
すこしでも現れるのを聞きたいと
しきりに望んだお嬢さん

絵のような風景を前にした
この試みには、取柄もあるようだが
その時ふと私は、吹く手をやめて
あなたの顔をまじまじと眺めた

そうです、こわばった私の指につれて
その極限まで吐きだした
この徒らな息づかいは
なすすべを知らぬといってよい

大空を魅了するあなたの笑いの
子供っぽい明朗さを真似ようとしても。
529吾輩は名無しである:2007/04/15(日) 22:09:17
白い指をつたはつて
にほひ深い情趣のなかに縫ひこまれる
さらさらとして、くすぐつたい少女の髪の毛よ、
わたしの指の腹を撫でてうごき、
わたしの指の背と爪をさすつてすぎゆく、
やはらかい、そして永劫の粗野をふくんでゐる感じやすい髪のくさむらよ、
その髪のひとすぢの触れるごとに、
からだをながれる夕暮の心は
とぼとぼと木の間がくれに顔をあかめつつ歩みはじめる。
530吾輩は名無しである:2007/04/16(月) 01:28:26
シモーヌよ、君の髪毛の森の中には、大きな謎が隠れている。

君は干草の匂い、けものが身をおいたあとの石の匂いがする。
君は革の匂い、箕でより分けられたばかりの小麦の匂いがする。
君は林の匂い、朝に運ばれてくるパンの匂いがする。
君は打ち捨てられた壁に沿って生え出た花々の匂いがする。
君は木苺の匂い、雨に洗われたきづたの匂いがする。
君は日の暮れ方に鎌で刈られる燈心草と羊歯の匂いがする。
君は柊の匂い、苔の匂いがする。
531吾輩は名無しである:2007/04/16(月) 22:10:21
白き菫はや花ひらき
 雨恋うる水仙も咲きそめて
 丘には百合の花咲きこぼる。
はた、いとも愛らし
 花々のうちのたぐいなき花
 今を盛りと咲き匂う
 ペイトーの女神さまのかぐわしき薔薇
 ゼーノフィラーも花ひらけば、
牧の原よ、美わしき髪もゆたかに
 いかでか空しく笑まうや
わがいとし子のゼーノフィラーこそ
 あまき香薫る花つづれにもまし
 その香も姿も立ちまされるものなるに。
532吾輩は名無しである:2007/04/17(火) 02:14:44
春の貴婦人さん
なんてうつくしいのかしらね、
レモンの木の
オレンジの木の花を見たでしょう。

はば広い葉っぱの
サンダルをはき、
紅色のフクシアの
イヤリングをつけている。

この道をいってごらん
きっと会えるわよ。
陽の光に 有頂天になっている!
鳥のさえずりに 有頂天になっている!
533吾輩は名無しである:2007/04/17(火) 23:03:23
微笑は光、微笑は匂ひ、微笑は葉末の露の玉、
微笑は姿を變うるなり、或ひは松明、また燐火、
黄昏の星、牧の野火。

あはれ微笑は光なり、微笑の髪の周圍には、
菫、ヂンヅリン、アメチスト、
青、紅、紫、淺黄ちりばふ。

微笑の色の様々は、特に何れも紛はし、何れも特に愁しかり、
そは譬ふれば太陽に、あこがれ過ぎし白き花、
茶褐の色は疼痛を樂しむ心と似たるかな。

肉色と藁色を僅かに交へたる白さ、
海の色、空の色、麗かなる碧潭の色、
これらの色は、神々の嘲りの目を色づくる。

ああ! 遊女の目の下を、染めて身にしむ鉛色!
ああ! たをやめの頬に照る朱、
眞白き膝の「月の女神」よ、宿命の乳房あらはの汝ヴィナス!

微笑は匂ひなり、愛撫なり、
天來の清香はその接吻に生氣づけ、
目に見えぬそが氤?を、そが轉化する痙攣を激せしむ。

微笑は光、微笑は匂ひ、微笑は葉末の露の玉。

微笑は變幻極みなく人の魂魅する神。
534吾輩は名無しである:2007/04/18(水) 02:01:37
彼女はぼくの瞼の上に立っていて
彼女の髪はぼくの髪のなかにある。
彼女はぼくの手の形をし
彼女はぼくの目の色をしている。
彼女はぼくの影の中に沈む
石が空へと沈むように。

彼女はいつも目を見開いていて
ちっともぼくを眠らせてくれない。
彼女の夢は いっぱいに光を浴びて
太陽という太陽を蒸発させ
ぼくを笑わせ 泣かせ 笑わせ
言うことがないのになお語らせる。
535吾輩は名無しである:2007/04/18(水) 23:11:33
月魂は悲しかりけり。熾天使は涙に濡れて、
指に樂弓、朧にけぶる花々の靜寂の中を
夢みつつ、花瓣の蒼空の上を渡りゆく
眞白き啼泣 音も絶え絶えの胡琴に ゆし按じたり。
――この日こそ、君が初穂の接吻に祝福されし日。
わが身を贄に獻げたる苦行を好む冥想は、
夢の果實の收穫の、夢を摘みたる魂に、
恨みもあらず悔もなく、殘す悲哀の芳香に、
賢しく酔いて、酔い癡れゐたり。
されば、年經し甃路に 眼を伏せて行き迷ひ、
迷ひて行けば、夕闇に 街の眞中に、微笑みて、
たわわの髪も燦々と、あらわれ出でし この君に、
人に驕えし少年の美しき夢路に その昔
光の冠をいただきて、掌 緩かに握りたる
御手より零るる 香も高き星の素白き花束の
雪降らしつつ過ぎゆきし 妖女を見しと、われは思ひぬ。
536吾輩は名無しである:2007/04/19(木) 02:00:02
やさしい、真夜中。
わたしは薔薇の節々の音をきいている、
薔薇の花芯へとのぼってゆく樹液が押しているのだ。

わたしはきいている、
王なる虎の焦げた
縞模様の音を、彼を眠らせないのだ。

わたしはきいている、
誰かの詩の連を、
それは 夜 ふくらむ
砂丘のように。
537吾輩は名無しである:2007/04/19(木) 22:40:48
肉體の果實が、爽やかな水盤に身を浸してゐる、
(顫へてゐる庭の中の蒼空よ) けれども水の上に出て、
兜のやうに力強く 撚り紐の髪を孤立させながら、
金色の頭は光つて、その襟首を水の墓が切離してゐる。

薔薇の花と釵子によって 美が繚亂と咲くやうに。
その寶玉を涵してゐる鏡からさへ 抜け出した美よ、
寶玉の屈折をした奇異な火の 堅い花束は
穏やかな波の裸な言葉に溺れた耳を 鞭打つ。

徒らに摘まうとして摘み得なかつた花影のため
透明な虚無の中に浸された 茫莫とした
腕が 伸び、ゆらゆらと揺れて、空しい歡喜に眠り、

他方の腕は、美しい虚空の下で 純らかに彎げられ、
腕が濡らしてゐる 房々とした髪の間に、
單純な黄金の中で 昆虫の醉つた飛翔を捕へてゐる。
538吾輩は名無しである:2007/04/20(金) 02:26:51
ある人々は世界の終わりは火になるだろうと言う。
ある人々は氷になるだろうと言う。
自分が欲望を味わい知ったところから判断して
わたしは火になるという人々に同意する。
だが、もし世界の滅亡が二度あるものとすれば
わたしは憎しみも十分に知っていると思うから
破滅のためには
氷もまた偉大で
それもよいだろうと言いたい。
539吾輩は名無しである:2007/04/20(金) 22:23:50
春さきに かねて薔薇は花咲くときまつたものを、
いま冬のさなかに、濃い紅のつぼみを綻ばすわたしら。
今日、貴女の誕生日のこの朝け、そのよろこびに笑ひを贈ると、
新花嫁御の祝ぎごとも はや間近に迫ってゐるをり、
されば、よに比ひない艶の姿の 垂鬘に花の挿頭となるのは、
いつそわたしも嬉しからうもの、春の光を待ち詫びるより。
540吾輩は名無しである:2007/04/20(金) 22:24:58
しろけれど こころをこめて色にぬれ、
ひかりをつつみ、
ひびきはむらむらとまようて
たのしいときめきの瞼をひたす。
ゆれるやうにひらくばらのはづかしさよ、
明日の日に おまへはゆれるよ、
おまへは ほのぼのとあかくなるよ、
ふかいにほひに おまへははてしなくながれてゆくよ。
あすの日に鳥のはおとのやうにひらくばらのゆめ。
541吾輩は名無しである:2007/04/21(土) 00:55:12
櫻のはなのびたびたぬれたところで
よつぱらつて大あめに寝てしまうた
ぼうぼうと燃える大火事の夢をみた
いんけんなやせ鴉のむれが
ぞろぞろうろついてゐた
僕はこはいこはいと思つて考へ込んでしまつた
どこか遠いところに半鐘の音をきいた
黄ろいきものの女が歩るいていつた
おそろしくて怖ろしくて四つん這ひになつて逃げた
鴉のむれが跡を追つかけてきた
ああ わたしがわるいのだわるいのだ
と思つて泣きながらにげた
雨にうたれた櫻の花が
ゆくてにびつしよりまつさかりであつた
542吾輩は名無しである:2007/04/21(土) 01:22:44
月の光のこぼれるやうに おまへの頬に
溢れた 涙の大きな粒が すぢを曳いたとて
私は どうして それをささへよう!
おまへは 私を だまらせた……

星よ おまへはかがやかしい
花よ おまへは美しかつた
小鳥よ おまへは優しかつた
……私は語った おまへの耳に 幾たびも

だが たった一度も 言ひはしなかつた
私は おまへを 愛してゐる と
おまへは 私を 愛してゐるか と

はじめての薔薇が ひらくやうに
泣きやめた おまへの頬に 笑ひがうかんだとて
私の心を どこにおかう?
543吾輩は名無しである:2007/04/21(土) 02:15:19
わたしの旅したことのないどこか
幸福にも、どのような経験をもこえて
あなたの瞳にただよう静けさ
あなたの最もこわれやすい仕種は
わたしをつつむ
でもわたしは触れることができない
なぜならば近すぎるから

あなたをちょっと見ただけでわたしは簡単にひらいてしまう
わたしは指のように自分を閉じてしまったけど
あなたはいつも、春が最初の薔薇をひらくように
(上手に、神秘的にふれて)花びら一枚一枚わたしをひらく
544吾輩は名無しである:2007/04/21(土) 03:46:42
 いまふいに春になってしまって、わたしたちは去就に迷うのである。
今朝は、灰色のどんよりした空模様であったのが、いま窓辺に出てみ
ると、ふいをおそわれた気持で、わたしは窓の把手に頬をおしあてた
ままでいる。
 見おろすと、あどけない女の子がひとり、もちろんいまはもう沈んで
いく太陽の光を、まともに浴びて、歩きながらあたりを見廻す、すると、
ひとりの男の影が見え、うしろから次第に歩度を早めてくるのだ。
 やがて男は追い越していき、子供の顔が、澄み切った感じで、あとに
残ってしまう。
545吾輩は名無しである:2007/04/21(土) 22:56:21
あたたかい香りがみちて 空から
花を播き散らす少女の天使の掌が
雲のやうにやはらかに 覗いてゐた
おまへは僕に凭れかかりうつとりとそれを眺めてゐた

夜が来ても 小鳥がうたひ 朝が来れば
叢に露の雫が光って見えた――真珠や
滑らかな小石や刃金の叢に ふたりは
やさしい樹木のやうに腕をからませ をののいてゐた

吹きすぎる風の ほほゑみに 撫でて行く
朝のしめつたそよ風の……さうして
一日が明けて行つた 暮れて行つた

おまへの瞳は僕の瞳をうつし そのなかに
もつと遠くの深い空や昼でも見える星のちらつきが
こころよく こよない調べを奏でくりかへしてゐた
546吾輩は名無しである:2007/04/22(日) 02:09:38
たよりないうす明かり
沈む日の
メランコリヤを
野にそそぐ。
メランコリヤの
歌ゆるく
沈む日に
われを忘れる
わがこころ
うちゆする。
砂浜に
沈む日もさながらの
不可思議の夢
紅の幽霊となり
絶えまなくうちつづく
うちつづく
大いなる沈む日に似て
砂浜に。
547吾輩は名無しである:2007/04/22(日) 03:38:30
 五月に入つて雨や風の寒むい日が續き、日曜日は一日寝床の中で過した。顏も洗らはず、
古新聞を讀みかへし昨日のお茶を土瓶の口から飲み、やがて日がかげつて電燈のつく頃と
なれば、襟も膝もうそ寒く何か影のうすいものを感じ、又小便をもよふすのであつたが、立ち
あがることのものぐさか何時までも床の上に坐つてゐた。便所の蠅(大きな戰爭がぼつ發し
てゐることは便所の蠅のやうなものでも知つてゐる)にとがめられるわけでもないが、一日寝
てゐたことの面はゆく、私は庭へ出て用を達した。
 青葉の庭は西空が明るく透き、蜂のやうなものは未だそこらに飛んでゐるらしく、たんぽぽ
の花はくさむらに浮んでゐた。「角笛を吹け」いまこそ角笛は明るく透いた西空のかなたから
響いて來なければならぬのだ。が、胸を張つて佇む私のために角笛は鳴らず、帯もしめない
でゐる私には羽の生えた馬の迎ひは來ぬのであつた。
548吾輩は名無しである:2007/04/22(日) 22:49:45
畳の上に、寝ころばう、
蠅はブンブン 唸つてる
畳ももはや 黄色くなつたと
今朝がた 誰かが云つてゐたつけ

それやこれやと とりとめもなく
僕の頭に 記憶は浮かび
浮かぶがまゝに 浮かべてゐるうち
いつしか 僕は眠つてゐたのだ

覚めたのは 夕方ちかく
まだかなかなは 啼いてたけれど
樹々の梢は 陽を受けてたけど、
僕は庭木に 打水やつた

打水が、樹々の下枝の葉の尖に
光ってゐるのをいつまでも、僕は見てゐた
549吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 02:06:48
蟻で 十八メートルあって
頭に帽子をかぶってるの
そんなのいない、そんなのいない。
蟻で 荷ぐるま引っぱって
ペンギンとアヒルをいっぱい積んでるの
そんなのいない、そんなのいない。
蟻で フランス語を喋って
ラテン語やジャワ語も喋るの
そんなのいない、そんなのいない。
へえ!どうしていないの?
550吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 04:30:53
1.いまぼくは夏の来るのを待ち伏せている、少年たちよ。

2.ぼくらはラム酒を買い込み、ギターに新しい弦を張った。あと
稼がなきゃならないのは、白いシャツだ。

3.ぼくらの四肢は六月の草のように伸び、八月半ばに処女は
いなくなる。歓びがとめどなくあふれる、この季節。

4.空は日ごとに和やかな輝きに満ちてゆき、来る夜はひとの
眠りを奪う。
551吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 22:15:20
ある日 小鳥をきいたとき
私の胸は ときめいた
耳をひたした沈黙のなかに
なんと優しい笑ひ声だ!

にほひのままの 花のいろ
飛び行く雲の ながれかた
指さし 目で追ひ――心なく
草のあひだに 憩んでゐた

思ひきりうつとりとして 羽虫の
うなりに耳傾けた 小さい弓を描いて
その歌もやつぱりあの空に消えて行く

消えて行く 雲 消えて行く おそれ
若さの扉はひらいてゐた 青い青い
空のいろ 日にかがやいた!
552吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 22:17:11
>>245
激しく亀だが、この美しい一節は誰の詩?
553吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 22:21:14
>>552
フランシス・ジャム
554吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 23:04:18
>>553
おお、ありがとう。
検索してみたけど題名がわからない。
もしご存知ならばご教示ください。
555吾輩は名無しである:2007/04/23(月) 23:55:16
>>554
「素直な妻を得るための祈り」 
手元の手塚さんの訳ではこのようになっています。
556吾輩は名無しである:2007/04/24(火) 02:10:37
華々しくて混沌とした印度の彼方に
旅立ってゆく唯一の念願に封して、
――この乾杯は、帆船の艫が今周航してゐる
希望峰、時間の岬から送る使者であるやうに。

それは恰も、あたらしい報を齎す 一羽の
小鳥、大帆船と共に帆桁が横揺れする
上に 止まって、絶えず嬉々と
飛沫を浴びて 囀っていた小鳥、

只管に舵柄の方向の変らぬやうに、
やうにもたたぬ沿岸の土地の起伏を、
夜、絶望、また 宝石を、
ただそればかり単調に 叫び続けた。

その小鳥の歌は 顔色蒼白の
ヴァスコの微笑にまで反映されてゐた。
557吾輩は名無しである:2007/04/24(火) 03:28:53

 夕方になってやっと決心がついた様子で、家にいようと思い、部屋着に
着換え、晩の食事のあとはランプをつけて机に向かい、仕事かゲームか
手当り次第に始めて、それがすめば習慣的にベッドにもぐりこむことにな
る、そとは天気が思わしくなく、これでは家にいるのがあたりまえだ、そん
なわけで、もうかなりな時間机に向かっていたから、いま外出すればみん
ながへんに思うにちがいない、階段の踊り場ももうまっくらだし、おもての
門もしまっている、にもかかわらず、ふいに、物足りない気持におそわれ
て立ちあがると着物を着換え、間もなく、町に出かける服装で姿を現し、
出ていかねばならぬと宣告し、そっけなく別れを告げると言ったとおりのこ
とを実行に移す、部屋の戸をすばやくしめる、その速さの程度によって家
人が味わう腹立たしさもちがうのだ、と思う、こうしてふたたび路上のひと
となる、手足が思いがけず与えられたこの自由にこたえて、特別によく動
いてみせる、こうしたひとつの決意を抱いたことはすべての決意を抱く能力
がひそんでいることの証拠だ、そんな気持を抱く、また、ふいの変更をたや
すく成しとげその変更に耐えること、人間はそうした欲求も抱いているが、
それ以上に、そうした能力を備えている、この事実の並々ならぬ重大さに気
がつく、そして、長い街路を歩いていくのだが、――この夜、ひとは、その家
族とはまったく隔絶した境地に生きている、家族などというものは、ゆれうご
きながら影も形もないものとなって消え失せていく、同時にひとは、まったく
確実に、輪郭もくろぐろと、脚をうしろに蹴りあげながら、自分のほんとうの
姿に高められていく。
 このとき、この夜ふけに友達を訪ねて、ひとつ様子を見てやろう、という気
持を実行に移すとすれば、すべてはいっそう強いアクセントを帯びてくるのだ。
558吾輩は名無しである:2007/04/24(火) 22:34:23
毎晩々々、夜が更けると、近所の湯屋の
  水汲む音がきこえます。
流された残り湯が湯気となつて立ち、
  昔ながらの真つ黒い武蔵野の夜です。
おつとり霧も立罩めて
  その上に月が明るみます、
と、犬の遠吠がします。

その頃です、僕が囲炉裏の前で、
  あえかな夢をみますのは。
随分……今では損はれてはゐるものの
  今でもやさしい心があつて、
こんな晩ではそれが徐かに呟きだすのを、
  感謝にみちて聴きいるのです、
感謝にみちて聴きいるのです。
559吾輩は名無しである:2007/04/25(水) 02:33:05
微笑みが草に落ちる
取り返しがつかないほどに!

そしてあなたの夜のダンスはどうやって
失われるのだろう。数学の中に?

あんなに純粋な跳躍と螺旋
たしかに、それらは世界を永遠に旅している。

わたしはまったく、美しさを空っぽにしたまま
座り込むことなどないでしょう。

あなたの小さな呼吸の贈り物、びしょぬれの草
あなたの眠りの匂い、百合の花、百合の花
560吾輩は名無しである:2007/04/25(水) 22:57:38
白銀いろのはこ柳、菩提樹や樺や……。
月は水の面に木の葉の如く散りかかる……。

夕風なぶる髪に似て
夏の夜のものの香は黒き湖を匂はしむ。
香はしき湖は鏡かと輝き出でつ。

櫂は浮きつ、沈みつ、
幻と夢の境を、わが舟は滑り行くかな。

わが櫂はみ空を滑る、
形なき湖の上……。

わがやる二本の櫂
右は「もの憂さ」、左は「沈默」。

眼とぢ拍子とりつつ
おお、わが心よ、櫂をやれ、
緩やかに、しめやかに、水打ちて、

彼方、月は小山の上に肱つきて
水の上ゆくわが舟の靜けさに聽入りつ……。
手折り來し百合の花、脱ぎすてし上衣の上に凋落れゆく。

青ざめし歡樂の夜、汝が脣の方へ
忍び寄るは百合の精なるか? はた、わが魂なるか?
白銀の夜の黒髪、長き蘆の葉と垂れかかる……

水の面の月のごと
波間を滑る櫂のごと
わが心、嗚咽となりて散りかかる!
561吾輩は名無しである:2007/04/26(木) 02:36:07
おお みずうみよ!もの言わぬ岩岩よ!洞窟よ!暗い森よ!
時間から見逃され、あるいは時間の力で若返りうるものたちよ
美しい自然よ、とどめてくれ、とどめていてくれ、あの一夜の
    すくなくとも思い出を!

とどめてくれ、おまえの安らいのうちにも、嵐のうちにも、
美しいみずうみよ、そしてまた明媚な丘々の景観のうちにも
あの黒い樅の木立、おまえの水の上に迫りだしている
    荒々しい岩のうちにも!

そよぎ吹き過ぎる西風のうち、岸辺から、
かなたの岸辺へ響きあうこだまのうちに、
水面をやわらかな光で白く照らす
    銀の額を持った天体のなかにも!

嘆きの声をあげる風、ため息をつく蘆、みずうみの
かぐわしい空気に混じるほのかなかおり
見えるもの、聞こえるもの、かおるもの、それら全てよ
    言ってくれ、「かれらは愛した!」と。
562吾輩は名無しである:2007/04/26(木) 22:24:52
大きなる月は
まんまろく転び出でたり
護謨の葉は豊かに動く。
いざや歩まん、二人して。

生洲には瑠璃のさゞなみ、
ゆれゆれて金の輪となる、
ああいまし、
麗くしき玳瑁の雄は
雌の上にそつと重なる。

静かなれ、深く潜めかし、
月はいま蒼き暈きる、
磯煙草みどりにゆらぐ。
ああ、しばし
玳瑁は幸福に住む。

声もなし、さあれ、うつくし、
何物か、光りとろけて
霊をゆするがごとし、
玳瑁はふたつ重なる。
護謨の葉は豊かに動く。
いざや眠むらん、二人して。
563吾輩は名無しである:2007/04/27(金) 02:53:03
ああ 微笑 はじめての微笑 私たちの微笑――
ああ なんとそれが一つだったか
菩提樹の香りを吸うことと
公園の静けさに聞き入ることが――ふいにおたがいの
内部をのぞきこみ
そして驚きの果てに微笑をうかべることが
564吾輩は名無しである:2007/04/27(金) 22:30:08
翼と動きものうげに軽く流れて
派手好みわれらが袖のひらめけば
青ざめしいろの空、かぼそき木立、
面はゆとほほえみて眺めやしつる。

そよ風はつつましき池水に小波たたせ
低き並木の菩提樹の影すきて
日の光われらに至る、青澄みて
ほどよくもとぎれとぎれに。

ろうたけしみやび男と、あだめけるみやび女と
いずれ皆やさしくも浮気なるやさ心
楽しくもわれら語りつ戯れて
ほざきつつ恋男は恋女なぶる、にぎやかに。

目に見えぬ恋女の手は、時につと
そが小指その指先に置かれたる
許しなき接吻の報復に
ぴしゃりと平手、振舞いの

猛々しさよ、あられもな!
むっとして男はむくゆ冷たき目、
されどまたしかすがに恋男なれや
うれしげにやさしきさまの唇と対照のおかしくて。
565吾輩は名無しである:2007/04/28(土) 02:04:07
空には星の花房が
ゆれませう

少女よ
恋は一番に楽しいかくれんぼです

石に躓いて
ころんだら

四葉のクローヴァーを摘んで
起きませう
566吾輩は名無しである:2007/04/28(土) 22:39:02
摘み溜めしれんげの華を
   夕餉に帰る時刻となれば
立迷ふ春の暮靄の
      土の上に叩きつけ

いまひとたびは未練で眺め
   さりげなく手を拍きつつ
路の上を走りてくれば
      (暮れ残る空よ!)

わが家へと入りてみれば
   なごやかにうちまじりつつ
秋の日の夕陽の丘か炊煙か
      われを暈めかすもののあり

        古き代の富みし館の
            カドリール ゆらゆるスカーツ
            カドリール ゆらゆるスカーツ
        何時の日か絶えんとはする カドリール!
567吾輩は名無しである:2007/04/29(日) 01:41:35
爪先で歩みながら蟹が這ひ出る。
両腕を花籠のやうに捧げて
耳元まで微笑する。

オペラの踊り子も
蟹に似て
きらびやかな楽屋から
腕を輪にして出てまゐる。
568吾輩は名無しである:2007/04/29(日) 22:29:16
日曜日。ジャケツのボタンが光る、笑いがこぼれるように。
バスは行った。
幸せな声。きみが聴いて答えてる不思議さ。
松の木の下で労務者がハモニカの練習。
女がおはようと誰かに言ってる。実に単純で自然な「おはよう」。
きみも松の木の下でハモニカを習いたくなる。

割算も引算もなしさ。きみも自分のそとを見られる。
あたたかさと安らぎ。
「きみだけ」ではなく「きみも」だよ。ちょっとした足し算さ。
やさしい算数。すぐ分かるさ。
こどもだってできる。指を陽にかざして
折って数えればいい、
ハモニカを吹けばいい。女が聞くでしょう。
569吾輩は名無しである:2007/04/30(月) 02:39:35
せわしなくて短い
人生
ハンドオルガンと四月
暗闇と友達

わたしは笑いながら
薄い髪の毛のような色をした
黄色い朝焼けの中へ
女の人のような色をした夕闇の中へ

わたしは微笑みながら
すべり落ちる わたしは
大きな朱色の出発へと
泳いでいく

(こう思わない?)
世界はきっと
薔薇 と こんにちわ で出来ている
(またね と 灰 と)
570吾輩は名無しである:2007/04/30(月) 22:26:52
羊の雲の過ぎるとき
蒸気の雲が飛ぶ毎に
空よ おまへの散らすのは
白いしイろい絮の列

帆の雲とオルガンの雲 椅子の雲
きえぎえに浮いてゐるのは刷毛の雲
空の雲……雲の空よ 青空よ
ひねもすしイろい波の群

ささへもなしに 薔薇紅色に
ふと蒼ざめて死ぬ雲よ 黄昏よ
空の向うの国ばかり……

また或るときは蒸気の紅にてらされて
真白の鳩は暈となる
雲ははるばる 日もすがら
571吾輩は名無しである:2007/05/01(火) 01:33:28
重なり合って流れる天使の髪の毛
空にはアイスクリームのお城
羽の渓谷があちこちに
わたしは雲をそんな風に見ていた

だけど今では雲は太陽を覆っているだけ
すべての人に雨と雪を降らせる
わたしにはたくさんのことが出来たはずなのに
雲がわたしを遮った

わたしは雲を両側から見てきた
上からも下からも それなのに
思い出すのはその幻だけで
わたしは今でも雲のことが何もわからない
572吾輩は名無しである:2007/05/01(火) 22:24:22
ゆたかに波うつ黄金の髪より
ただ一筋のほそき髪ぬきて
ドーリス 囚われ人のごと
わが手を結えぬ。

愚かや、その折われは
からからとうち笑いてやみぬ
やさしきドーリスが縛め解くは
いとやすきことと覚えぬれば。

されど縛めのいとかたく
力のかぎりを尽せどもなお
振りほどく術のなければ
笑いはいつしか呻きとなりぬ。

かくてただ一筋の髪により
哀れなる囚われの身となりて
彼の女のゆくままに
引かれゆくわが身かな。
573吾輩は名無しである:2007/05/01(火) 22:25:46
夏の夕ぐれ青い頃、行こう楽しく小径沿い、
麦穂に刺され、草を踏み
夢心地、あなうら爽に
吹く風に髪なぶらせて!

もの言わず、ものも思わず、
愛のみが心に湧いて、
さすらいの子のごと遠く僕は行く
天地の果てしかけ――女なぞ連れたみたいに満ち足りて。
574吾輩は名無しである:2007/05/02(水) 02:04:36
鳥の最後の歌は 黒い翼を
沈黙の時刻に睡眠の時刻に与える
鳥の最後の嘴はぼくの眼の上に閉まる
土台もなく 壁もなく そこからぼくが輝きでる住居

ぼくは 正午の 恐るべき大海原を思い出す
ぼくは 金色の雷雨の上の 鉛色の綿毛である太陽に
猿轡をかまされた平野を 思い出す

ぼくは夏にはたのしく暮らす 暑さはぼくを驚嘆させる

黄色な髪をした 灰色の眼をした あの娘をぼくは思い出す
ひたいと頬と乳房とは 蒼白い空が
ひとが接吻を掘るように ひとすじの道を 自らのために掘っていた
あの不透明で硬い街路の 青葉と月に洗われて
575吾輩は名無しである:2007/05/02(水) 22:26:10
どんな秘密が心臓の中で燃えて私の若い友を暖めてゐるのだらう、
魂のはうは甘いマスクをとほして花の香を吸ってゐるのに?
どんな虚しい養分によって自然の熱が
眠る女体の輝きの放射を作ってゐるのだらう?

吐息、夢、音が途絶える、揺さぶっても無駄な静まり。
きみの勝ちだ、憩ひは涙より強い、
熟睡の満潮の重い波と豊かな水量とが
かういふ敵の胸の上で力を合はせる時は。

眠るひと、なげやりと影との黄金かがよふ塊、
こんな宝を積んだきみの恐ろしい安らぎ。
葡萄の房の傍にながながと寝そべる、たゆげな牝鹿の

魂は留守で今地獄で忙しいが、
流れる片腕がシーツで覆ってゐるすがしいお腹の形は
醒めてゐる。きみの形の夜どほしの目醒めに私は眼をみひらいたまま。
576吾輩は名無しである:2007/05/03(木) 02:42:38
ぼくの欲望をかたどり
きみの唇を 星のように きみの言葉の空に
きみの接吻を 生きている夜に
きみの両腕の航跡を ぼくのまわりに置いたため 愛しいきみよ
征服のしるしの炎のように
ぼくの夢は この世にあるのだ
あきらかに そして永久に。

そしてきみがいないときには
ぼくは自分が眠っている夢を見 自分が夢見ている夢をみるのだ。
577吾輩は名無しである:2007/05/03(木) 22:26:11
夜ごと臥床に涙ながすと
きみには言わね、
搖籃のごと
われの眠りを誘う きみよ。
われゆえに目ざむと
語らぬ きみよ。
いかならん、この美しききわみ
そのままに、
われら かたみに 祕めてありなば。

見よ、世の戀するものたちを。
告白の始まりしとき、
すでに はや 僞りのあるを。

きみ われを孤獨にす。面影をかえうるは ひとり きみのみならん。
しばしがほど きみかと思えば いつしかに風のさゆらぎ、
またありて 果知らぬ ゆかしき桙閨A
あわれ わが腕に そのなべては消え失せつ。
ひとりきみのみ きみのみぞ 繰りかえし生るかな。
ひとたびもきみに觸るることなくて なお われの しかと抱けば。
578吾輩は名無しである:2007/05/04(金) 02:01:48
予め失われている
恋びとよ いちども現れたことのないひとよ
私は知らないのだ どんな音調がお前に好ましいかを
未来の波がたかまっても もはや私はお前をそこに
見分けようとはしない 私の内部の
すべての偉大なイマアジュ 遠い国で見知った風景が
都会が 塔が 橋が 思いがけなく
曲った道が
むかしの神々の生活をないまぜていた
あの壮大な国が
私の内部でたかまって 去ってゆくひとよ お前を
みんな告げているのだ
579吾輩は名無しである:2007/05/04(金) 07:12:11
>>578>>577
リルケはいいですねえ・・・。
とくに577の歌曲は口語訳より文語訳の方が断然よい。
リズム感が全然違いますね。

ああ 微笑 初めての 微笑 私たちの微笑-
ああ なんとそれが一つだったか 菩提樹の香りを吸うことと
公園の静けさに聞き入ることが-ふいにお互の
内部をのぞきこみ そして驚きの果に微笑をうかべることが
580吾輩は名無しである:2007/05/04(金) 18:43:52
>>579
文語の「歌曲」いいですね。はじめて読みました。
最初に口語で読んでいる詩を文語でもう一度読むと
同じものなのにちょっと別のものみたいに感じるのが不思議です。
581吾輩は名無しである:2007/05/04(金) 22:44:25
わたしに飢えをお与え下さい。
おゝ、坐して世界に
秩序を与えられる神々。
わたしに飢えと、苦痛と窮乏をお与え下さい。
わたしを恥と失敗で
あなた方の黄金と名声の扉から閉め出して下さい、
わたしにあなたの最もみすぼらしい、最も疲れ果てた飢えをお与え下さい!

しかし小さな愛だけは残しておいて下さい、
一日の終りにわたしに呼びかける声を、
長い孤独を破って
暗い部屋の中でわたしにふれてくれる手を。
落日をにじませる
昼の影にみちたたそがれに、
西空には一つの小さな星が浮んで
移りゆく影の岸辺からあらわれます。
わたしを窓のそばに近よらせて下さい、
そこにたそがれの中の昼の影を見つめ
待っているときにどうか知らせて下さい、
小さな愛がやってくるのを。
582吾輩は名無しである:2007/05/05(土) 02:10:11
ほとんどあらゆるものが感受へとさしまねく
すべての転向からそよいでくるささやきがある 思い出せよと
私たちがよそよそしく通り過ぎた一日が
いつかふいに私たちへの贈り物となる

私たちの収得を計る者は誰なのか?私たちを
むかしの過ぎ去った年月から切りはなすことが 誰にできるのか
私たちがこの世に生まれてから知ったことは
一が他のなかに自分を認めるということ

なんでもないものが私たちによって温まるということのほかにはない
ああ 家よ 牧場の傾斜よ 夕映えよ
ふいにお前はほとんど一つの顔となって
私たちに寄りそって立つのだ 肩と肩とを抱きあって。
583吾輩は名無しである:2007/05/05(土) 03:15:31
夜明けの黒いミルク僕らはそれを晩に飲む
僕らはそれを昼に飲む朝に飲む僕らはそれを夜に飲む
僕らは飲むそしてまた飲む
僕らは宙に墓を掘るそこなら寝るのに狭くない
一人の男が家に住むその男は蛇をもてあそぶその男は書く
その男は暗くなるとドイツに宛てて書く君の金色の髪マルガレーテ
彼はそう書くそして家の前に歩み出るすると星が輝いている彼は口笛を吹いて自分の犬どもを呼び寄せる
彼は口笛を吹いて彼のユダヤ人どもを呼び出す地面に墓を掘らせる
彼は僕らに命令する演奏しろさあダンスにあわせて

夜明けの黒いミルク僕らはお前を夜に飲む
僕らはお前を朝に飲む昼に飲む僕らはお前を晩に飲む
僕らは飲むそしてまた飲む
一人の男が家に住む蛇どもをもてあそぶその男は書く
その男は書く暗くなるとドイツに宛てて君の金色の髪マルガレーテ
君の灰色の髪ズラミート僕らは宙に墓を掘るそこなら寝るのに狭くない

彼は叫ぶ大地にもっとシャベルを入れろこっちの奴らそっちの奴ら歌え演奏しろ
彼はベルトの武器に手をのばす彼はそれを振り回す彼の眼は青い
もっと深くシャベルを入れろこっちの奴らそっちの奴らもっと演奏しろダンスにあわせて

夜明けの黒いミルク僕らはお前を夜に飲む
僕らはお前を昼に飲む朝に飲む僕らはお前を晩に飲む
僕らは飲むそしてまた飲む
一人の男が家に住む君の金色の髪マルガレーテ
君の灰色の髪ズラミート彼は蛇をもてあそぶ

彼は叫ぶもっと甘美に死を演奏しろ死はドイツから来た名人だ
彼は叫ぶもっと暗くヴァイオリンをひけそうすればお前らは煙となって空に立ち昇る
そうすればお前らは雲の中に墓を持てるそこなら寝るのに狭くない
584吾輩は名無しである:2007/05/05(土) 03:22:25

夜明けの黒いミルク僕らはお前を夜に飲む
僕らはお前を昼に飲む死はドイツから来た名人
僕らはお前を晩に飲む朝に飲む僕らは飲むそしてまた飲む
死はドイツから来た名人彼の眼は青い

彼は鉛の弾丸を君に命中させる彼は君に正確に命中させる
一人の男が家に住む君の金色の髪マルガレーテ
彼は自分の犬を僕らにけしかける彼は僕らに宙の墓をおくる
彼は蛇どもをもてあそぶそして夢みる死はドイツから来た名人
君の金色の髪マルガレーテ
君の灰色の髪ズラミート
585吾輩は名無しである:2007/05/05(土) 22:25:39
私が単純な事物の背後に隠れるのは、きみが私を見つけるようにです。
私を見つけなくとも、ものを見つけてくれるでしょう。
私の手が触れたものに触れて下さるでしょう。
私たちの指紋が重なって一つになるでしょう。

八月の月が錫のポットのように台所できらめいています。
(きみに語るためにこういう言い方になるのです)
月が人の住まない家に灯をともします。家にはじっと膝まずいている静けさが。
静けさとは、いつも膝まずいているものです。

一語一語が入り口、
出会いへの入り口です。でも出会いはよく邪魔されます。
ことばが真実な時です。ことばが真実な時とは出会いを求める時ですが――。
586吾輩は名無しである:2007/05/06(日) 01:41:31
 あるとき、世界が終わろうとしているのに、
ぼくらは自分たちの愛を全然知らずにいるのだった。
彼女はゆっくりとやさしく頭を動かしてぼくの唇を求めた。
その夜ぼくは、彼女を昼の世界へ連れ帰ろうと、まさに考えたのだった。
 そしてそれはいつでも同じ告白、同じ若さ、同じ澄んだ瞳、
ぼくの首に腕をまわす同じ無邪気なしぐさであり、
同じ愛撫、同じ秘密の暴露なのだ。
 しかしそれは決して同じ女の人ではない。
 トランプ占いは、ぼくが人生において彼女とめぐりあうだろう、
「しかしそれがそのひととは知らないで」と告げた。恋を恋しつつ。
587吾輩は名無しである:2007/05/06(日) 02:35:58

お寺の前の広場にまた太陽が照るようになった。
子どもたちが古い噴水のまわりで遊んでいる。
鳩が石段の上にむらがって銅のように輝いている。
光をいっぱい吸い込んだ海綿のように
ぽっかりと雲が浮んでいる。もう春だ。

お寺の前の広場に面して、開いた窓ぎわに
このごろは毎日顔色のわるい若い女の人がすわっている。
彼女の目には雲も映らず、美しい鳩も見えないらしい、――
彼女は見も知らぬ婦人たちのために
一日中、そしてよく真夜中まで
服を縫ったり、絹の帽子を仕立てたりしなければならないのだ。
彼女の表情はいつも冷たくきびしい。
ただときどき、彼女の心臓の下のところで
だんだん育ってゆく胎児が、何も知らず、
それでももうこの世の光を求めるかのようにそっと身じろぎすると、
そのときだけ彼女の冷たい唇が燃える。もう春だ。
588吾輩は名無しである:2007/05/06(日) 22:34:42
ついに理解した、海の微風を、樹の果てしないささやきを、
  理解した、岸壁に並ぶ赤い水指しを、
  木の鎧戸の近くで横ざまに寝る時、
      隙間に吹き込んで大きく甲高く鳴る北風の音を。
      また、理解した――、
波打ち際のすべっこい小石の肌の美しい乙女らの
一糸まとわぬ身体のふともものデルタに一刷毛はいた黒を、
また肩甲骨に沿ってゆたかにひろがる高貴なびろうどの黒い陰を。
      突っ立ってホラ貝を鳴らす乙女。
      チョークでまだ見たこともない謎文字を描く乙女。
「ロエス、ミウ、ナリーマ、ヨウタイ、シフ、リエティス」
      鳥たちの小さなさえずり、ヒヤシンス、
      まだまだある"七月のことば"。
時が十一時を打つ時、
  五尋の深さには
  タイとスズキとハゼ。
  その大きなエラと短い尾。
      すこし上には、おお、海綿、ヒトデ――海の星、
      無口の痩せたイソギンチャク。
  さらに上、水がくちびるをぴちゃぴちゃ鳴らすあたりには
  フジツボがあがっている。
      半分開いたイガイにワカメ――。
「皆ものをきっかり表す名だ。古代の誓いを
『時』と遠くを過ぎる風の確実な耳とが護ったのだ」と私に告げたひと。
      木の鎧戸の近く、横ざまに寝る習いの場所で
      私は枕をひしと胸にいだいた。眼に涙が溢れた。
私の愛は妊娠六ヶ月であった。
私の内臓でとうとい種子がうずいた。

      これよ、
      この世界、このちいさな世界の大きさ!
589吾輩は名無しである:2007/05/07(月) 00:55:51
ほつとして
腹と卵をながめた
(まあ!)
微笑がむずがゆくわきあがってくる
睡蓮が映つてる
――キレイ キレイ
――男たちのぐりりぐりり
水かきはすべつちゃつて
目高は泡に眼くるまつた
からつぽの腹によろこびがいたい

泳ぎつかれて 水をぬけると
蒼空が
つるり眼にすべつた
590吾輩は名無しである:2007/05/07(月) 22:39:23
このながれのなかに わたしはうかび
あわだつみづのなかに ひたひたとうかび
こゑのなかに咲く ひといろのにほひをもとめる
このくづれるこゑのとほざかり
また ちかづくこゑのつやめくほがらかさ
わたしはつつましい願ひのうちに
そのこゑのしぶきをしたふ
591吾輩は名無しである:2007/05/07(月) 22:40:35
新しい烏龍茶と日光、
渋味もつた紅さ、
湧きたつ吐息………

さうして見よ、
牛乳にまみれた喫茶店の猫を、
その猫が悩ましい白い毛をすりつける
女の膝の弾力。

夏が来た、
静かな五月の昼、湯沸からのぼる湯気が、
紅茶のしめりが、
爽かな夏帽子の麦稈に沁み込み、
うつむく横顔の薄い白粉を汗ばませ、
而してわかい男の強い体臭をいらだたす。

「苦しい刹那」のごとく、黄ばみかけて
痛いほど光る白い前掛の女よ。
「烏龍茶をもう一杯。」
592吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 01:03:01
せんだんの葉越しに、
青い鳥が鳴いた。
「たつた、ひとつ知つてるよ。」つて、
さもうれしさうに、さもかなしさうに。

日の光に顫へながら、
今日も今日も鳴いてゐる。
「棄兒の棄兒のTONKA JOHN
眞實のお母さんが、外にある。」
593吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 22:29:03
あなたの足音は私の沈黙が生んだ子です。
きよらかな、ゆるやかな歩みです。一歩また一歩と
私が夜っぴて目覚めている寝床に向って
進んでくる、凍りついた、押し殺した音です。

どのひとでもない純粋なひと、おん神の影、
抑への効いたあなたの足音の何といふ優しさ、
さう!……頂けるだらうと睨んだ贈り物は皆、
この素足に乗って私に来るのです!

あなたは唇をさし伸べ、
口づけといふ御馳走を与へて
私の思考に住む小人を
なだめやうとなさってをられるやうだが、

そんな優しい仕草はまだお控へ下さい、
「在」るか「非在」かのあはひにある優しさは――。
あなたをお待ちすることで私は生きてきました。
私の鼓動はあなたの足音そのものでした。
594吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 22:29:36
いざ、こなたへ、クレーターを立ち出でたまい、
この聖らなる神殿へとわたらせたまえ、こなたには
おんみがためのうるわしき林檎樹の社ありて、
祭壇は乳香にくゆり立つ

こなたには、林檎樹の小枝縫うて清冽なる流水さざめき、
神域は隈なく薔薇の樹のほのぐらき蔭なし、
さざめきゆれる木の葉つたって、
熟睡は滴り落つ

こなたには、牧の原ありて駿馬ら牧草をはみ、
春の花々いちめんに咲きそうて、
ここちよき微風はのどやかに
吹きわたる

ここにこそ、キュプリスよ、……を取らせたまい、
手つきもいともみやびに、黄金の杯へ
祝祭のよろこびまじえた神酒を
注がせたまえ
595吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 22:30:27
はしけやし きらがの座に
  とはにます神、アプロディータ、
天帝のおん子、謀計の織り手、
  御前にねぎまつらくは、
おほよその世のうきふし、
  なやみごともて
吾が胸を挫ぎたまはで、

いざここに 神降りませ、
  あはれ、かのいその昔に、
はるかより 我が祈るこゑを
  しるべして 聴きとめ給ひ、
父のみの 父の御神の
  真黄金の宮いでたたせ、
吾がもとに 来ませしがごと、

神輦のたづなとらせて。
  翅迅く美しき
二羽の日雀 か黒の地へ
  御神を伴ひませし、
渦をまく 羽音をしげみ、
  高そらのさ中を分けて
久方の 天より下り、

たまゆらに 地に降りゐぬ。
  御神はいとも畏し、
とこはなる 不死のおもわに
  笑みまけて問はせ給ひぬ、
そも我れの 何をか悩み、
  如何なればまた
御神を招びおこせしと。
596吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 22:31:03
はた何を くるほしき我が
  玉の緒に全てを措きて、
うつたへに 願ぎもとむると。
  「誰をかもかたらひて、
馴れなれし 汝がむつごごろ
  契らむとかは逸る、そも誰ぞ
サッポオ汝を害めしは。」

「よしや今 汝を避くるとも、
  やがてこそ追ひもて来なめ、
贈物を いま受けずとも、
  やがて彼方より送りおこさむ、
よしや今、汝を恋ひずとも、
  いつしかあくがれ寄せむ、
そもおのが 心ともなく。」

来ませよや、こたびもまた、
  いと辛きもの思ひより
吾を救ひ まもりたまひね、
  はた我の懐ひとげんと、
わが胸に くがるるほどを、
  手づからに協へ給ひね、
御神わが 楯ともならせ。
597吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 22:31:28
小鳥よ はねをぬらせよ、
をかのかなたに 日はあたたかに
銀の冠毛のふはふはとして、
草はとびらをひらき、
むらさきいろの月をさがす。
598吾輩は名無しである:2007/05/08(火) 23:51:26
穏やかなこの屋根は、鳩たちを伝い歩かせ、
松の間、墓石の間に脈打っている。
真昼がまさに、火をもってそこに形づくる
海、海、いつもふたたび始まる海!
おお 一つの思いをこらしたあとの報酬か
神々の静けさをじっと眺めやることは!
599吾輩は名無しである:2007/05/09(水) 22:32:41
↑安藤元雄。つーか、判じ物がしたいわけじゃないよ。
リルケ教徒なら、サフォー見たら貼るもんがありそうだがね。じゃ今晩の↓
600吾輩は名無しである:2007/05/09(水) 22:33:18
太陽の還り来るを敬って
西風は澄み切った薫風をそよそよと送る、
すると、流水も大地も眠りから覚める。
いま眠りから解き放たれて、

流水はさらさらと音立てて流れだし、
大地は目もあやなさまざまの花に覆われ、
小鳥たちは樹々の上で妙なる歌囀りうたって、
道行く人の憂いをやわらげる。

妖精らは月の光浴びてさまざまの遊戯にふけり、
足踏みならし、草地搏って軽やかに舞い踊る。
西風よ、いまわたしに幸福の時季もたらして、

その恵みによりわたしを生れ変らせようとするのか?
ならば、わが太陽をわたしのもとに還らしめよ、
されば見届けられよう、かの人ゆえに私がより美しくなるさまを。
601吾輩は名無しである:2007/05/10(木) 01:16:28
はねろ、はねろ、はねっかえりのバッタ、
今日は木曜、遊べる日。
――なによ、あたいははねつづけ、
  曜日もへちまもあるもんか。

はねろ、はねろ、はねっかえりのバッタ、
町じゅうはねて、はね歩け。
はねっかえり娘ははねるが商売、
はねて浮かれて日を暮らせ。
602吾輩は名無しである:2007/05/10(木) 22:43:02
おお、御身荒々しく遠くまで槍を投げるひとよ、
他の事物たちの許に横たわる槍のように
私は私の家族たちの許にいました。あなたの歌の響きが私を
遠くへ投げたのです。私は今自分が何処にいるのか分からない。
誰にも私を連れ戻すことはできません。
私の姉妹たちは私のことを思いそして機を織っています。
そして家は親しい足音で満ちています。
私ひとり遠く手放されました、
私はさながら懇願する者のように震えています、
なぜなら神話に取り巻かれている美しい女神が
赤く燃えて私の生を生きているからです。
603吾輩は名無しである:2007/05/10(木) 22:43:33
不安を私は与える者です、
私はあなたを振り回すつもりです、蔓に取り巻かれた杖よ。
死のように私はあなたを貫き通し
そして墓のようにあなたを万象に委ねる
つもりです、これら全ての事物に。
604吾輩は名無しである:2007/05/10(木) 22:45:05
きみに見せたい、あの深夜のバラ色の雲。
だが、きみは見ない。夜ですもの、どうして見えるの?

でも、きみの眼で見てもらうより仕方ない――と彼は言った。
きみと私とが孤独から救われるためには――。
私の指さすあそこにほんとうは何もないのだけれど。

夜に集まるのは星ばかり。疲れた星たちは
遠出から帰るトラックの群衆のようだ。
落胆と空腹と。歌もなく、
汗ばんだ掌にしおれた花を握った人々。

でも、これからもきみを見たい、きみに見せたい――と彼は言った。
きみが見なければ、私が見なかったと同じだもの。
せめてあなたは眼で見ないで、と私は言いたいの。
そうすれば、私たちはいつか会えるでしょう、それも思いがけない方角で。
605吾輩は名無しである:2007/05/11(金) 01:11:54
なにをかくしませう
ワイルドのいのちを吸ひとったのはあたしよ
槐多もさうよ
槐多のやつ 鈍色の飛行船だってさ
あたしのお化けをしらないでさ
あたしときどきあんな人間たち好きになるの
606吾輩は名無しである:2007/05/11(金) 22:43:18
それは……大空がひっそりと
大地に口づけてでもいるようだった、
ほのかに明るんでいる花に埋もれて
大地が大空のことだけを夢みずにはいられないほど。

そよ風が野づらをわたり、
やわらかに穂波が揺れ、
森がかすかな葉ずれの音をさせていた……
星があんなにも明るい夜だった。

そして、私の魂は 
ひろびろと翼を張って、
あたりの静寂の中を飛んでいった、
わが家へ帰ってでもゆくように。
607吾輩は名無しである:2007/05/12(土) 00:32:32
水沼に 言葉はつづく。
水面に 円いつきが 浴して いと高い!
もう一つの月のそねみを招く。
沼岸に 子供が一人 上下の月を見て言う、
――夜よ、シンバルを鳴らせ!
608吾輩は名無しである:2007/05/12(土) 14:39:13
白き薔薇(さうび)は傷つきぬ、
荒(すさ)ぶ暴風雨(あらし)の手あらさに、
されども花の香はましぬ、
多くも享(う)けし苦の為に。 
609吾輩は名無しである:2007/05/12(土) 22:33:48
純粹といい 薔薇といって 私たちは
生起するあらゆるものに反響を示しています。
けれども、そのかげの名状しがたいものこそ、
本來、形像と領域とをあたえてくれるのです。

月は私たちには男です、大地です、女性です。
牧場は謙虚に、森は誇りにみちています。
しかし、そのすべての上に、つねに捉えがたい姿が、
比類なくただようています。

世界は子供のままです。殘念ながら私たちだけが成長します。
花も星も私たちを靜かに見まもっているだけです。
ときおり 私たちは 花や星の試錬を
身にこたえて感ずるような氣がします。
610吾輩は名無しである:2007/05/12(土) 23:44:56
道は月と星で明るかった――
樹々は輝いて静かだった――
遠い光で――私はみとめた
丘の上の一人の旅びと――
魔術的な急斜面を
登っていくのを、地の上ながら――
彼のきらめいている究極は知られないが――
ただ彼は光輝を確認していた。
611吾輩は名無しである:2007/05/13(日) 22:26:39
何、あれはな、空に吊した銀紙ぢやよ
かう、ボール紙を剪つて、それに銀紙を張る、
それを綱か何かで、空に吊し上げる、
するとそれが夜になつて、空の奥であのやうに
光るのぢや。分つたか、さもなけれあ空にあんなものはないのぢや

それあ學者共は、地球のほかにも地球があるなぞといふが
そんなことはみんなウソぢや、銀河系なぞといふのもあれは
女共の帯に銀紙を擦りつけたものにすぎないのぢや
ぞろぞろと、だらしもない、遠くの方ぢやからええやうなものの
ぢやによって、俺なんざあ、遠くの方はてんきりみんぢやて

見ればこそ腹も立つ、腹が立てば怒りたうなるわい
それを怒らいでジツと我慢してをれば、神秘だのとも云ひたくなる
もともと神秘だのと云ふ連中は、例の八ッ当りも出來ぬ弱蟲ぢやて
誰怒るすぢもないとて、あんまり始末がよすぎる程の輩どもが
あんなこと發明をしよつたのぢやわい、分つたらう

分らなければまだヘへてくれる、空の星が銀紙ぢやないというても
銀でないものが銀のやうに光りはせぬ、光りがするつてか
それや光りもするぢやろう、銀紙ぢやから喃
向きによっては光りすることもあるぢや、いや遠いつてか
遠いには正に遠いいが、それは吊し上げる時綱を途方もなう長うしたからのことぢや
612吾輩は名無しである:2007/05/13(日) 22:28:43
ぼくは いつも昂然と頭をもたげて歩きます
なかなか強情で人の言うことは聞きません
たとい 王さまがぼくの顔をのぞかれても
おそらく眼を伏せたりはしないでしょう

だが お母さん うちあけて申しますが
いくらぼくが高慢不遜で威張っていても
お優しいなつかしいあなたのそばにいると よく
ためらいがちな謙虚な思いにひたるのでした

ぼくを人知れずおさえつける力 それがあなたの魂なのでしょうか
あらゆるものに おもいきり沁みこんで
あかるい天へきらめきあがるのが あなたのけだかい魂でしょうか

あんなにぼくを愛してくださったその美しいお心を
あなたのお心を悩ますかずかずの仕打ちをやった
あの思い出がぼくを苦しめるのでしょうか
613吾輩は名無しである:2007/05/13(日) 22:29:36
もの狂おしい情熱からぼくはあなたを去りました
世界の果てまで行こうとしたのです
まごころから抱きしめられる愛を
その愛を見いだせるかどうか 知りたかったのです

路地という路地をさがしてみました
一軒一軒戸口に両手をひろげて
わずかな愛のほどこしを乞いました
けれども与えられたのは ただ 嘲笑う冷たい憎しみだけでした

ぼくは たえず愛を求めてさまよいました
その愛をいつまで求めても見いだせず
やつれはて悲しんで家へ帰ってきたのです

でも あなたは待っていて ぼくを迎えてくれました
そのとき ああ あなたの眼に浮かんでいたもの
それこそ 長いあいだ求めて歩いた美しい愛でした
614吾輩は名無しである:2007/05/13(日) 23:26:53
長いあいだぼくは抱きすくめられていた――いつまでも、いつまでも。
ぼくを産むための準備は莫大だった、
ぼくを助けてくれた腕はいずれも忠実で親切だった。

めぐりゆく歳月が陽気な船頭よろしく漕ぎに漕いで、
ぼくの揺籠を渡してくれた、
ぼくが通れるように星たちも軌道をめぐりつつ脇へ避け、
おまけに顔を利かせてぼくの里親を探してくれた。

ぼくが母から生まれる前にあまたの世代がぼくを先導し、
胚子のあいだもぼうは瞬時も活動をやめず、
ぼくを押しつぶせる者など皆無だった。
615吾輩は名無しである:2007/05/13(日) 23:54:13
揺籠のうたを、
カナリヤが歌ふよ。
ねんねこ、ねんねこ、
ねんねこ、よ。

揺籠のうえに、
枇杷の実が揺れる、よ。
ねんねこ、ねんねこ、
ねんねこ、よ。

揺籠のつなを、
木ねずみが揺する、よ。
ねんねこ、ねんねこ、
ねんねこ、よ。

揺籠のゆめに、
黄色い月がかかる、よ。
ねんねこ、ねんねこ、
ねんねこ、よ。
616吾輩は名無しである:2007/05/14(月) 22:31:34
今宵月は茗荷を食い過ぎてゐる
済製場の屋根にブラ下つた琵琶は鳴るとしも想へぬ
石炭の匂ひがしたつて怖けるには及ばぬ
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!

さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
ポケットに入れたが気にかゝる、月は茗荷を食ひ過ぎてゐる
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!
617吾輩は名無しである:2007/05/14(月) 22:34:30
俥に乗つてはしつて行くとき
野も 山も ばうばうとして霞んでみえる
柳は風にふきながされ
燕も 歌も ひよ鳥も かすみの中に消えさる
ああ 俥のはしる轍を透して
ふしぎな ばうばくたる景色を行手にみる
その風光は遠くひらいて
さびしく憂鬱な笛の音を吹き鳴らす
ひとの偲びて耐へがたい情緒である。

このへんてこなる方向をさして行け
春のおぼろげなる柳のかげで 歌も燕もふきながされ
わたしの俥やさんはいつしんですよ。
618吾輩は名無しである:2007/05/15(火) 00:30:43
夜明けには わたし人妻なの
日の出さんわたしのための旗を お持ち?
夜のうちは まだほんの少女
でもあっという間に 花嫁なのよ
だから真夜中さん あなたをおいて
東雲の 勝利へと わたしは行くの

真夜中さん さよなら みんな呼んでるの
天使たち 廊下で騒いでるわ
わたしの未来が しずかに階段をのぼるの
子供じみたお祈りして まごついているわたし
だってもうすぐ 子供でなくなるの
永遠なるお方 いざあなたの許にまいります
神さま あの方のお顔 以前に見ましたわ!
619吾輩は名無しである:2007/05/15(火) 22:40:48
 わたしたちが母さんのお腹の中にいたのは、二人とも
同じ頃なのに、わたしの一番大事なお友達のメリッサは、
今宵お嫁にいってしまった。道にはまだ撒かれた薔薇が香り、
松明もまだ燃え尽きてはいない。

 母さんと一緒に、同じ道を帰る道すがらわたしは夢みた。
それじゃ今日のメリッサみたいに、わたしだってなれたのね。
わたしって、もうそんなに大きな娘なのかしら?

 行列や笛の音、祝婚歌、花嫁の乗った花車、
そういったあらゆる祝いの儀式が、いつかまたある宵に、
オリーブの枝に囲まれて、わたしのまわりで繰り広げられるのね。

 ちょうど今頃メリッサがしているように、男の前で
ヴェールを脱いで、夜の闇の中で愛を知るんだわ。
そしてやがては、小さな赤ちゃんが、
わたしのふくらんだ乳房を吸って育ち……
620吾輩は名無しである:2007/05/15(火) 23:28:22
 花嫁衣裳をひきずって、蛾が
からだをそつとすり寄せて、
そして、吐息一つもらさず
じつとしてゐた。僕の本のそばで。

生きるかなしさを身に沁みて知る蛾は、
きこえぬほどの声で、言ふ。
「これ死装束よ」
その声のわずかなあふりで、燈し火がゆらいだ。

賀宴がはてて、奏楽だけが
頭の芯部で蝉のやうにないてゐるが、
すでに式場には、別の一組の
よそ家の縁者の誰彼がつめかける。

婚姻の場ほど、荒涼としたけしきを、かつて見たことがない。それは
うつくしい白蛾の胴なかに、むざん
坊主ピンを突きさして、机に縫ひとめるしわざで、

うごけない蛾は、僕の魂のかげで、
をりをり、おもひだしたやうに
ばたばたと力ない、でも、それがゆきつくはての安堵の
小さな羽ばたきをやつてみせるが。
621吾輩は名無しである:2007/05/16(水) 00:01:34
すでに式場には、別の一組の
622吾輩は名無しである:2007/05/16(水) 00:21:12
(花婿に)
しあわせな花婿よ、祈りしままの婚儀を迎え、
祈りしままの処女を娶りて。

(花嫁に)
君が姿こそうるわしけれ、そのひとみ
蜜のごと甘やかにして、
憧れさそう面輪には、微笑たたえたる
愛ゆたかにあふれたり。
げに、アフロディーテー女神おんみに
いや高き栄誉をさずけたまいぬ。
623吾輩は名無しである:2007/05/16(水) 21:45:29
最近長い詩を書いてくれる人が多いんだけど、
できたら引用元を付記してくれればとてもうれしい。
浅学のせいか、詩かどうかすらわからないものもある・・・
624吾輩は名無しである:2007/05/16(水) 22:30:10
それは夏の明るい一と日でしょう
大太陽までが僕の歓喜に荷担して
金襴緞子に包まれたあなたの美しさを
一そう美しく見せてくれましょう。

幸福感と待ちどおしさに
青ざめるふたりの額の上に
青い空は高いテントもさながら
長いひだを浮べてゆれることでしょう。

やがて夜、甘やかな楽の音まつわり
あなたのヴェールを愛撫する。
平和な星のまなざしは祝福の微笑を送ってくれる
新婚の僕らふたりに。
625吾輩は名無しである:2007/05/16(水) 22:32:33
垣根に採つた朝顔の種
小匣にそれを入れて
吾子は「蔵つておいてね」といふ
今年の夏は ひとの心が
トマトや芋のはうに
行つてゐたのであらう
方々の家のまはりや野菜畑の隅に
撒きすてられたらしいまま
小さい野生の漏斗にかへつて
ひなびた色の朝顔ばかりを
見たやうに思ふ
十月の末 気象特報のつづいた
ざわめく雨のころまで
それは咲いてをつた
昔の歌や俳諧の なるほどこれは秋の花
――世の態と花のさが
自分はひとりで面白かつた
しかしいまは誇高い菊の季節
したたかにうるはしい菊を
想ふ日多く
けふも久しぶりに琴が聴きたくて
子供の母にそれをいふと
彼女はまるでとりあはず 笑つてもみせなんだ
626吾輩は名無しである:2007/05/17(木) 00:53:11
リルケの詩が元になっているという
ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」をこないだ見ました。
良い映画でした。ただ、リルケの詩が引用されてる部分がある?
らしかったのですがどこかわからなかったです。
627吾輩は名無しである:2007/05/17(木) 00:54:38
絵本をひらくと、海がひらける。若葉にはまだ、海がわからない。
若葉よ。来年になったら海へゆかう。海はおもちゃでいっぱいだ。
うつくしくてこはれやすい、ガラスでできたその海は、
きらきらとして、揺られながら、風琴のやうにうたってゐる。
628吾輩は名無しである:2007/05/17(木) 02:18:57

そこへ行くな
なにもかも計略だ
勝負は八百長だ
フラッシュを浴びて
やつがリングにあらわれると
かれらは声を限りに讃美歌を歌う
きみが椅子から立ちあがるいとまもなく
かれらはめったやたらにゴングを鳴らし
きみの顔めがけて
タオルを投げる
それを払いのけようともがくきみに
跳びかかる それからおもむろに
やつがきみの下腹部に反則のロウブロウだ
きみはくずおれる
腕をおろかしく十字に組んで
鋸屑のなかに
そしたら永久に女とまじわることもできないぞ。
629dfszf:2007/05/17(木) 02:19:44
この人詩をかいたりしてるよ☆ 
面白いサイトだからみてみてね☆http://pr7.cgiboy.com/S/9008735/
630吾輩は名無しである:2007/05/17(木) 22:35:31
>>626
映画の中で使われている詩、"Lied Vom Kindsein"(Als das Kind Kind war……)は、
脚本家Peter Handkeの創作です。天使のイメージはドゥイノの悲歌から触発されたもの、
ということらしいですが、私はこの映画を見たことがありませんので、どうイメージが
扱われたのか判断が付きかねます。

# あなたのおすすめならいづれ見てみます。

どなたか詩にも映画にも詳しい方、補足していただければ幸いです。
631吾輩は名無しである:2007/05/17(木) 22:37:16
そなたの胸は海のやう
おほらかにこそうちあぐる。
はるかなる空、あをき浪、
涼しかぜさへ吹きそひて
松の梢をわたりつつ
磯白々とつづきけり。

またなが目にはかの空の
いやはてまでもうつしゐて
竝びくるなみ、渚なみ、
いとすみやかにうつろひぬ。
みるとしもなく、ま帆片帆
沖ゆく舟にみとれたる。

またその額のうつくしさ
ふと物音におどろきて
午睡の夢をさまされし
牡牛のごとも、あどけなく
かろやかにまたしとやかに
もたげられ、さてうち俯しぬ。

しどけなき、なれが頸は虹にして
ちからなき、嬰児ごとき腕して
絃うたあはせはやきふし、なれの踊れば、
海原はなみだぐましき金にして夕陽をたたへ
沖つ瀬は、いよとほく、かしこしづかにうるほへる
空になん、汝の息絶ゆるとわれはながめぬ。
632吾輩は名無しである:2007/05/18(金) 01:02:57
>>630
映画の中に出てくる詩は脚本家の創作だったんですね。
「ドゥイノの悲歌」のことは知りませんでした。
さっそく探して読んでみようと思います。
映像が美しくて、かわいいストーリーの映画でした。
せりふの中での「予感」とか「偶然」「必然」ていう言葉の使われ方が
なんとなくリルケの詩のことを思い出させるような感じがしました。
633吾輩は名無しである:2007/05/18(金) 01:04:39
わたしは荒地を見たことがありません
わたしは海も見たことがありません
けれどもヒースの丘はどのように見えるか
波はどんなものかは知っています
わたしは神さまと話したこともないし
天国に行ってみたこともありません
けれどもあの場所はちゃんとわかっています
あたかも合札を与えられたかのように
634吾輩は名無しである:2007/05/18(金) 22:53:34
甘露のやうに 元氣をつけてくれるもの、
空を行く雲のやうに 優しくしてくれるもの、
舞ひめぐる鳩のやうに したしいもの、
あふれ流れる河のやうに ゆたかなもの、
いつまでも いついつまでも
わが身の幸とも目じるしとさへ思はれるもの、

ものうい夜の音樂の
消えて行く一節のやうに なつかしいもの、
ほんの一時のたのしみに
乙女が摘んで捨ててしまつて
すつかりわすれた花のやうに うつくしいもの、

やつと夜が明けはなれ
一面に日を浴びて すがすがしい
黄花野原のやうに はれやかなもの、
もう一日も暮れる頃の
うすれ陽のやうに なごやかなもの、

たそがれの夕燒のやうに かがやくもの、
芽の萌える木立のやうに たのしいもの、
人知らぬ海にかこまれた
小島のやうに Cらかなもの、
露深い花薔薇の香のやうに
うれしくて そして やつぱり實のならぬもの、

目覺めては つらい夢とはいひながら、
あゝ夢の間の うれしいこと。
飲めば毒のある泉とはいひながら
あゝ その水のおいしいこと。
635吾輩は名無しである:2007/05/19(土) 00:54:01
彼女はぼくの傷を癒してくれる
まるで蜜蜂の助けなんかいらない花のように
甘くやさしく
ああ芳酵なる花よ
汝のせいで蜂どもの羽根はオペラになり
彼らの収穫する蜜は
カリフォルニアの架空の郡を記す
さびしい地図のごときものになる
彼女はぼくの傷を癒すと
手際よく鏡台にしまいこむ
ぼくの傷を収納した引出しからは
自転車の亡霊の匂いがするみたいなんだ
ぼくは彼女に向かって怒りの声をあげた
きみはどうして
そんなにいつも
甘くやさしいんだい?
636吾輩は名無しである:2007/05/19(土) 22:40:48
このそよぎの意はいかに
東風われにたのしき消息はこぶや
風の翼のさやけきはばたき
胸の痛手をすずしくす

風は塵と狎れたわむれ
吹きあげてそを軽きちぎれ雲とし
小虫のたのしき群を
安けき葡萄の棚へ追いやる

風はやさしく陽の熱を和らげ
わが火照りし頬を冷やし
野と丘をかざりてかがやく葡萄に
口づけしては逃げ行きぬ

その幽けき囁きは
友の幾千の会釈を送り
この丘々の明るきうちに
百千の口づけをわれに礼す

かくておんみは吹きすぐるもよし
おんみの友と悲しめるものに仕えよ
高き壁の陽にもゆるところに
われはやがていとしき人を見ん

あわれまことの心の消息と
愛の息吹きと若がえる生とを
われにさずくるはかのひとの口のみ
われにあたえ得るはかのひとの息吹きばかりぞ
637吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 01:04:01
恋人らはしんしんと静もる夜気のうちに霊妙に語り出ることもあろう、
もしもかれらが語るすべをこころえているならば。だがすべてのものは
われら人間は何ものかをつつみかくしているように思われるのだ。
みよ樹々はある、われわれが住家としている
家々さえ今はまだありつづけている。ただわれわれだけが、
万物のかたわらを流れすぎゆく、去来する風のように。
そして万物はしめしあわして、われらのことを緘黙しているのだ、
なかばはおそらくわれわれを恥辱として、またなかばはわれわれを
言いつくせぬ希望として。
638吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 05:49:57
手で
手をあらい
足をあらい
あそこもあらった
だが 持って生まれたものだけはあらえなかった
あらう先から再生するのだ
(幾度でもでてきます)

みすぼらしいなりと
悲愴感と不治の病を抱え
ひとりごねごねになって
いまにもはち切れんばかりにふくらんだまま
どこにも身の置きどころのなくなった
そのたえがたいもの

あらゆる角度から
あらゆる視線を
全身のあらゆる部分に感じながら
つねに奇蹟のすきまを探している
十人が十人考えていることをただのひとつも考えず
十人が十人持っているものをただのひとつも所有せず
十人が十人していることをただのひとつもしていない

それでも そいつ
眼だけは凛として
好物の金太郎飴をしゃぶっている
や々うつ向き加減にみえる姿勢は
例によって物思いに耽っている という合図
まがいのないものとして
真打の自覚を胸に秘め
ほんのり赤くなった頬は繊細にふるえながらも
昂然とひかりかがやいている
639吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 22:18:40
中心に燃える一本の蝋燭の火照に
めぐりつづける廻燈籠
蒼い光とほのあかい影とのみだれが
眺め入る眸 衣 くらい緑に
ちらばる回帰の輪を描く
そして自ら燃えることのほかには不思議な無関心さで
闇とひとの夢幻をはなれて
蝋燭はひとり燃える
640吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 22:19:49
今宵 荒風に 君 相見ます
  生命の友 愛しき君
    心砕けて 虚空は泣く
    われ 寝も寝ずに
    戸を開く こよなき君よ
      幾度か われ尋ぬ
    生命の友 愛しき君

  外の方に 誰もいまさず
  君が道 何処に尋ねむ
    いと遠く 何処の河辺
    茂き森の 端
    底深き黒闇に
      渡りますにや
    生命の友 愛しき君
641吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 22:20:50
知らず 世の始より 幾度か
生命の河に われを浮かべし
君よ はた 幾何の家に 道に
  歓喜を 生命に 授けし

幾度か 君 雲の蔭に
かく微笑みて 立ち
朝日影に み足 踏まして
  優しく 頭 かき撫でし

このわが眼に 見慣れたり
幾度か 幾世にか
新た新たの光明のうちに
  相なきものの相を

人知らず 幾何の代に
生命を 満たせし
苦と楽を 愛と歌を
  幾何の甘露の雨に
642吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 22:21:42
師よ いかに唄ひたまふや
  口噤み ただわれは聞く
    歌の光明 地を 掩ひ
    歌の息吹 天に 漂ふ
    岩を劈き 激しくたばしる
      歌の 妙なる調べ

  いざ われも ともに唄はむ
  咽喉に 歌を求めて 空し
    言ふ術知らに 口吃る
    詮方なし わが生命 泣く
    君 われに 羂をかけ
      われを包む 歌の網に
643吾輩は名無しである:2007/05/20(日) 22:22:58
歌をうたって誰かを眠らせてやりたい。
誰かのそばに坐っていたい。
うたいながらあなたを搖ってそっと眠らせてあげたい。
夜の寒かったことを、
家中で 私だけが知っていたい。
耳を澄ませてじっと聽き入りたい、
あなたのなかへ、世界のなかへ、森のなかへ――
時計が時を打って告げると、
人は時間の根柢を知るのです。
下の街を未だ見知らぬ男が歩いて、
どこかの犬を驚かせている。
そのあとはひっそりと靜まりかえる。大きな眸をひらいて、
私はじっとあなたを見つめている。
私の眸はあなたを靜かに抱いていて、暗がりに
「物」のけはいを感ずると そっと放してやるのです。
644吾輩は名無しである:2007/05/21(月) 00:44:50
↑文語は、読むのに時間がかかる分
言葉のひとつひとつを丁寧に味わうことができるのかもと
思ったりします。でもたまに誤読してしてしまって
同じ詩を口語で読み直したときに驚くことも(・∀・)
645吾輩は名無しである:2007/05/21(月) 00:48:28
夜は黒…銀箔の裏面の黒。
滑らかな潟海の黒、
さうして芝居の下幕の黒、
幽霊の髪の黒。

夜は黒…ぬるぬると蛇の眼が光り、
おはぐろの臭のいやらしく、
千金丹の鞄がうろつき、
黒猫がふわりとあるく…夜は黒。

夜は黒…おそろしい、忍びやかな盗人の黒、
定九郎の蛇目傘、
誰だか頸すぢに触るやうな、
力のない死蛍の翅のやうな。

夜は黒…時計の数字の奇異な黒。
血潮のしたたる
生じろい鋏を持って
生肝取のさしのぞく夜。

夜は黒…瞑つても瞑つても、
青い赤い無数の霊の落ちかかる夜、
耳鳴の底知れぬ夜、
暗い夜、
ひとりぼつちの夜、
夜…夜…夜
646吾輩は名無しである:2007/05/21(月) 22:29:10
屋根は月の光に濡れて光り
女たちはショールに身をくるむ。
女たちは走って家に隠れる。
戸口でもうちょっとぐずぐずしていたら
月が女たちの涙を捉えたものを。

男が鏡を一枚一枚ためつすがめつ見る。
ここの家の鏡にはぜんぶに
ひとりの女のひと
すきとおったひとが封じこめられているのじゃないだろうか

一糸まとわぬ だが目にはみえない ひと
さっきのひとたちとはちがう ひとりの ひと。
いくら起こそうとしてもそのひとは目を覚まそうとせぬよ
星のかおりに浸りつつ寝入ったのだから――

男も横になって だが 眠らずにいる――同じ星のかおりに浸りながら。
647吾輩は名無しである:2007/05/22(火) 00:25:07
ばらの花びらそっくりの縁にまくれた微笑が
眠るそなたに飽き足らぬ僕の心を慰める。
やがてそなたは目を醒す、今みた夢は忘れてる。
さて僕は、またしてもそなたの幹に縛られる、
小さな力一ぱいに、そなたは僕を抱き締める。
ふたりはなぜ樹でないか、一つの樹皮に包まれた
同じ体温、同じ色、
そしてふたりの接吻が、唯一の花の樹でないか。
648吾輩は名無しである:2007/05/22(火) 22:27:53
お前の顔はいっぱい夢をたたえていた
私は黙って 震えながら お前を見つめていた
ああ なんと浮びあがってきたことか! 私がかつての夜々に
すっかりこの身をおぼらせた

あの月と あまりに愛した谷間とが
そのはだかの斜面には ばらばらに
やせた樹木が生え その間を
ひくく わずかな霧が棚びいていた

静寂のなかにはいつもさわやかな
いつもよそよそしい 白い銀色の川が
さざめき流れていた――ああ なんと浮びあがってきたことか!

ああ なんと浮びあがってきたことだろう! なぜならこれらすべてのものと
その美しさに――それは実らない美しさだった――
私は深く憧れて すっかり溺れていたのだから
ちょうどいま お前の髪の毛と
お前の瞼の間の輝きを見つめてのように
649吾輩は名無しである:2007/05/23(水) 00:51:18
腿のあたりが燃える花で覆いつくされるまで歩いていく
太陽を口の中に入れて
熟した空気の中に飛び込んでいく
輝く閉じた瞳たちが
わたしの体の中の眠ったままの曲線の
暗闇へと投げかけられる
わたしはなめらかな熟練した指を入り込ませ
カモメのような貞淑さで
肉体の秘密を完成させる
650吾輩は名無しである:2007/05/23(水) 22:29:06
まだお前は知つてゐるか、
ひるの数多い接吻のあとで
わたしが五月の夕暮のなかに寝てゐた時に
わたしの上にふるへてゐた水仙が
どんなに青く、どんなに白く、
お前のまへのお前の足にさわさわとさはつたのを。

六月真中の藍色の夜のなかに、
わたし達が荒い抱擁につかれて
お前の乱れた髪が二人のまはりに絡んだとき、
どんなにやはらかくむされるやうに
水仙の香が呼吸をしてゐたかを
お前はまだ知つてゐるか。

またお前の足にひらめいてゐる、
銀のやうなたそがれが輝くとき、
藍色の夜がきらめくとき、
水仙の香は流れてゐる。
まだお前は知つてゐるか。
どんなに暖かつたか、どんなに白かつたか。
651吾輩は名無しである:2007/05/24(木) 00:13:10
オレンジのように大地は青い
まちがいは決してない 言葉は嘘をつかないから
言葉はもうきみたちに 歌うことを許さない
睦み合う接吻のまわりには
狂人どもと恋人たち
彼女 その契りの唇
秘密のすべて ほほえみのすべて
そして なんという寛大さの衣だろう
彼女は全裸なのだと思うほど。

雀蜂はみどりに花咲き
夜明けは首筋のまわりにかかる
窓々の首飾り
いくつかの翼が 葉むらを蔽いかくし
きみは太陽のあらゆる歓びを
大地の上の
きみの美しさの歩いてゆく道々の すべての太陽を持っている。
652吾輩は名無しである:2007/05/24(木) 22:32:57
あなたは誘惑でいっぱいな果樹園
行人の飢えにとってそれは金蓮花であり
野葡萄であり 二つの茨の冠を
やさしく差出す時計草

あなたは春秋を兼ねた果樹園
果樹は退屈な空に向ってふくれあがり
春は花 秋なら果実が 夜ともなれば
あたり一面香気を満たす

果樹の枝から散り落ちた花弁は
五月の花の色をしたあなたのむごい爪でしょう
凋れた花弁はあなたの瞼と似ています
おお あなた 清らな春よ そしてうっとりした秋よ
653吾輩は名無しである:2007/05/24(木) 23:48:30
メハリらくだ十二頭を従えた
ジャン・ド・パリ殿は美々しいかぎり。
シャモー十四頭を従えた
ジャン・ド・ボルドー殿は美々しいかぎり。
けれどぼくの好きなのはジャン・ド・マデール、
四頭のドロマデールと行く男。

遠い遠いどこかの国を、ジャン・ド・マデールは、
ロベール・マケールと旅しているよ。
仲良しのアポリネールもそこにいる。
元気だったころ、四頭のドロマデールの
ゆかいな歌をつくったアポリネール。
654吾輩は名無しである:2007/05/25(金) 22:23:49
切り口も真新しい旅の杖を手に
朝早く
森を抜け
丘を越えて歩けば
葉陰で小鳥が
歌い跳ねるように
金色の葡萄が
さしそめる朝日を浴びて
歓喜の霊を感じるように
いにしえのわが親愛なるアダムも
秋と春の火照りを感じたのだ
神に励まされ
決してうっかり失ったのではない
最初の楽園の悦びを

だからなつかしのアダムよ 君は
お堅い先生方のおっしゃるほど悪くはない
君はいつだって愛し誉め
歌い賛えているのだから
永遠に新しい天地創造の日々の如く
君の創造主にして守護者なる方を
願わくば
私の人生も
軽く汗して歩く
こんな朝の旅でありたい!
655吾輩は名無しである:2007/05/26(土) 00:40:39
出かけよう、かつて始まりがなかったように
今は終わりのないそのものに向かって、
日々の放浪、夜ごとの休息をたっぷり味わうために、
彼らがめざす旅のなかに、彼らがめざす昼と夜のなかに、
いっさいを溶かしこむために、
そればかりか彼ら自身をさらに高遠な旅立ちのなかに溶かしこむために、
どちらを向いても見えるのはすべて辿りつき
離れていけるものばかりとなるために、
たといどんなにかなたでも心に浮かぶ時間はすべて辿りつき
離れていけるものばかりとなるために、
前を眺めうしろを見ても君のために延び君を待ってる道ばかり、
どんなに長く延びていても君を待つ君のための道ばかりとなるために、
656吾輩は名無しである:2007/05/26(土) 22:37:23
闇のなかにまなざしが光っているような気がする。
おののきながらあなたはわたしを道づれに選んだのだった、
わたしはそのつらい旅路をことほいだ、
それほどにあなたの足どりとあなたの声音はわたしの心をうごかしたのだ。

あなたは銀色の衣とつめたい光につつまれて
声高なよろこびや煩いを離れた
静寂な大地の壮麗をわたしにたたえた、
わたしたちはそれを孤独で貞潔な蒼白の大地と呼んだ。

そしてわたしたちはその大地にこもる荒々しい力のために
きよらかな大気にはさまざまな音色がひびき
空はもろもろの形姿でみたされるのを見た、
それは五月のどの頃にもくらべられぬすばらしさだった。
657吾輩は名無しである:2007/05/27(日) 01:00:19
「ぼくらの分別をそんなふうにそらすな、
きみの沈黙は瞞着ではないか。

ぼくらはきみと一体でしかないのだ、
ぼくらのことを忘れるな。

長い旅を行くために
ローソクを吹き消した
花婿と花嫁のように、
ぼくらは一つに結びついているのだ。

――大骨よ、小骨よ、軟骨よ、
もっと残酷な檻というものがあるのだ。
ぼくの肉の閉ざされた嵐のなかで
激しい稲妻よ がまんしてくれ。
胸廓よ 気をとりなおして

窓から風を吹き入れるがいい。
太陽は空の奥からきみのところまで
とどくということがわかるだろう?
658吾輩は名無しである:2007/05/27(日) 22:40:47
長い旅からもどって来、
冷たい部屋に、待ちうけている郵便を見つける。
腰をおろして、重苦しい気持で手紙を開き、
息苦しい寒気の中に白い息を吐く。

ああ、君たちはなんと色々な手紙をくれることだろう。
見知らぬ人や、私と同じ巡礼や求道者は!?
――ものみなのかげに夜と秘密が眠っていなかったら、
生活はどんなにか荒涼とすさまじいことだろう!

君たちの手紙を私は黒い暖炉に積み上げる。
君たちのたずねることに対し、私は答えを知らない――
ぎらぎらと燃え上がる炎で私と共に暖まれ、
あすはまたあすの日の明けるのを、私と共に喜べ!

世界は冷たく、私たちのまわりに敵意ある壁をめぐらしている。
私たちの心だけは太陽で、楽しむことができる――
おお、世界の数々の幻よりも生きながらえる
内気な火花が、私たちの胸の中でなんとふるえることよ!
659吾輩は名無しである:2007/05/28(月) 00:19:00
わたしの手紙の読み方はこうです
最初は戸に錠をおろし
確かに戸が閉まったか
手で押してみる

それからずっと端にいって
外からのノックを防ぎます
そしてやっとわたしのかわいい手紙を引き出して
そっとその錠をこじあけます

それから壁をよく見回し
床もよくのぞきこむ
追い出されていないねずみが
確かにいると考えて

どんなに念入りに読むことだろう
だれにも負けないくらいに
それから天国のないのを歎くのです
教義が与える「天国」ではなく
660吾輩は名無しである:2007/05/28(月) 22:43:44
彼らはぼくに言った、「激しく生活をうたわなければならない!」
……彼らは村祭のヴァイオリン弾きのことを話したのだろうか? それとも
腐った胡桃のことか、それとも雷雨の前に馬鍬を引く
明るい色のおとなしい牡牛のことか、それとも葉陰の郭公の悲しみか?

――「憐れむことはない、憐れむことはない!」彼らは言った。
……子供に傷つけられた針ねずみを、ぼくは
古いコートにつつんで庭に放してやった。
彼らの言葉にもう不安を感ずることなく。

ぼくはぼくの心がよろこぶことをする、なぜそうするのか、
考えてみてもはじまらない。流れのなかの薄荷のように
ぼくはただ成行きにまかせる。
ぼくは友だちに訊ねた、「で、ニーチェって誰だい?」

彼が言うには、「超人の哲学だよ」
――ぼくはすぐににわとこを思った。
生ぬるい香りで岸辺を甘くし
その影がやさしく踊りながら、水に浮かんでいるにわとこの木を。

彼らはぼくに言った、「きみはもっと客観化できるだろう」
ぼくは答えた、「うん、たぶん……でも、できるかどうか」
彼らはこんなにも無知なぼくを見て考えこんでしまった。
そしてぼくは彼らに学があるのを驚いていた。
661吾輩は名無しである:2007/05/29(火) 01:15:37
キャンディディアが新しい恋人を捕らえたので
三人の詩人たちが喪に服している。
最初の一人は「クローリスに、
貞節にして無常なるクローリス、
わが唯一のクローリスに」捧げる長い挽歌を書き、
次なるものは女心の変わりやすさについて
     一篇のソネットを書き、
最後の一人はキャンディディアに捧げるエピグラムを書いている。
662吾輩は名無しである:2007/05/29(火) 22:29:37
おやすみ やさしい顔した娘たち
おやすみ やはらかな黒い髪を編んで
おまへらの枕もとに胡桃色にともされた燭台のまはりには
快活な何かが宿つてゐる(世界中はさらさらと粉の雪)

私はいつまでもうたつてゐてあげよう
私はくらい窓の外に さうして窓のうちに
それから 眠りのうちに おまへらの夢のおくに
それから くりかへしくりかへして うたつてゐてあげよう

ともし火のやうに
風のやうに 星のやうに
私の声はひとふしにあちらこちらと……

するとおまへらは 林檎の白い花が咲き
ちいさい緑の実を結び それが快い速さで赤く熟れるのを
短い間に 眠りながら 見たりするであらう
663吾輩は名無しである:2007/05/30(水) 01:11:07
低くたれた空の下で
この静かな朝
赤と
黄いろの葉の

一羽の鳥は
みどりの葉のついた
桃の木の一本の小枝
だけしか残さない
664吾輩は名無しである:2007/05/30(水) 22:28:52
わが思ふ少女が手飼ひの小雀よ、
  いつも 一緒にあそんだり、
           懐に抱いたり、
指先を 突つつきたがるお前に出しては
  わざと手ひどく噛ませたり
           してる小鳥よ。
それはわたしの綺羅やかな愛しい女が
  何かしらちよつと巫山戯て
    心をやりたく思ふときのこと。
多分は熱いあくがれの苛責が和んで
  来たをりに、胸のつらさの
    いささかは慰めにもしようとてか。
ほんに私もお前と一緒に
    そのひとみたいに遊びくらして、
  いぶせい思ひの数々を 忘れたいもの。
665吾輩は名無しである:2007/05/31(木) 00:32:11
メムノーンよ、メムノーンよ、あのように
愛嬌たっぷりで気まぐれな様子で
僕等と一緒に歩き回っていた彼女が
今度イギリス人の夫を持ったのだとさ。
歎け、ヴィーナス達よ!歎け、キューピッド達よ!
666吾輩は名無しである:2007/05/31(木) 22:34:03
庭のざわめきが雨をまへぶれしてゐる。
やがてくる驟雨を知つて、何もかもが慄へてゐる。
本を閉ぢ、本の上に肘を突いて、
そなたは、来られないだらう恋人のことを思つてゐる。

彼方には羽を畳んで、木陰にひそみ
見渡す限りの眼界を拒まれ、
仲間を呼んだり、空を見上げたりしてゐる。
山鳩がゐて、そなた同様嵐を喞つてゐる。

降るなら降るでいいではないか、淋しがりやのそなたたちよ!
嵐が過ぎればまたなにもかも、よくなるのだ。
太陽も、雨がなくては、花咲かすことも出来ない。
娘も鳩も、待つがいい、待つがいい。
667吾輩は名無しである:2007/06/01(金) 00:19:00
彼女はいう「目ざめた鳥たちが
飛ぶ前に美しい声で聞きながら
霞む野原の現実を試す時
わたしはほっとするわ。
だけど鳥たちも去ってしまい 暖かい野原も
もう戻ってこない時には天国はどこにあるのかしら」
預言者も現れない
墓場には古の妖怪も出ない
黄金の地下もなく
霊が住む美しい調べの島もなく
幻の南国もなく
四月の緑が持続したように
天の丘に遥かにのぞむ
雲のかかる棕櫚の木もない。
それは持続するだろう
目ざめた鳥たちの彼女の記憶のように
またツバメの翼の完成で先をつけた
六月の夕暮れを求める彼女のように。
668吾輩は名無しである:2007/06/01(金) 22:35:56
おお、夢みる女よ。掟めもなく
純粋な歓喜に沈む私のために、
巧妙な虚偽によって、お前の掌に、
私の翼を収めておくれ。

黄昏の涼気は、一うちごとに
お前をつつみ、囚われの扇の風は
えもいわれぬさまに
地平線を後退させる。

眩暈! いまや空間は
大きな接吻にも似て、顫えおののく、
誰のためにか狂おしく生れでて
溢れも、鎮まりもせぬ接吻のように。

お前は天国を残忍だとおもうのか、
お前の唇の一隅から迸り
人も知る襞の奥へと流れゆく
埋れた笑いさながらに!

金色の宵によどんだ
薔薇の岸辺の王杖、まさにそれだ、
腕環の輝きに、お前が押しつける
閉ざされた真白の飛翔。
669吾輩は名無しである:2007/06/02(土) 01:03:41
夢の中でその鳩は見たのであつた。
ボク死ニマシタ。
ボクエヴエレスト見タカツタ。
その鳩は自分に話しかけてゐるのだから。
死んでいるといふのはをかしいのだが死んでるといふのである。
千島あたりの島らしい。
つつぬけのガラスの空。
君はどの鳩だつたんだらう。憶えてないけど。
ボクモオボエテナイデスケド。
エヴエレストつてあのエヴエレストかい?向うの。印度の。
イイエ。ボクタチノクニノデス。
風化された岩に腰をおろし。枯れ草をむしりながら。
海が見える。
死ぬとかへつておもしろいかい?
ン。ボクエヴエレスト見タカツタ。
670吾輩は名無しである:2007/06/02(土) 01:21:27
私は愛する名に生きた。
老いたるオリーヴの樹の蔭に、
我が生命尽きるとも変わらぬ海の轟きの中に。

私に石を投げたものはもう生きていない。
彼等の石で湧き井戸を作った。
縁に緑の乙女が来る。
乙女の口唇は暁からの贈り物。
乙女の髪は解けて遠い未来になびく。

ツバメが来る。風の幼な児、ツバメ。
水を飲み、飛び交い、生きつづける。
夢の脅しは夢になり、
痛みは岬を回って静水面に入る。
どの声も空の胸の中でいつまでも消えない。

不死なる海よ、きみの囁きを教えよ。
私は朝早くきみの朝の河口に行って、
きみの愛が現れる山頂で
夜の意志が星を撒き、
昼の意志が大地のひこばえを枯らすのを見る。

私は蒔く、生命の牧場に千の野ユリを、
真実の風の中に千の子どもを。
美しい強い子、優しさを自然に呼吸している子、
音楽が島々を伸び上がらせる時、
遠くの水平線を見つめる術を知る子。

私は愛する名を彫った、
老いたるオリーヴの樹の蔭に、
我が生命尽きるとも変わらぬ海の轟きの中に。
671吾輩は名無しである:2007/06/03(日) 00:03:22
時にこういうことがある 森全体の中で ただ一本の樹だけが
なぜかは知らず まったく風がないのに 全部の葉がそよいでいることが。
そしてあっという間にまた しずまり 大理石のようにしずかになる。
夜の闇の中心から下がる 灯の消えたシャンデリアだ。
羊飼いらの 馬たちの 星たちの 息づかいが 荒くなる。
672吾輩は名無しである:2007/06/03(日) 22:35:06
むかしは静かな谷がほほえんでいた、
そこに人々の住むことはなかった。
彼等はみな戦いへと赴いていた、
やさしい眼をもつ星の合図を信じて、
夜ごと、空色をした物見の塔から、
花々の上に監視の眼を光らせた、
その花々のさなかには昼のあいだ
赤い太陽の光線がものうげに憩っていた。
今ではそこを訪れる人は誰しも、この悲しい谷に
安らぎの欠けていることを認めるだろう。
そこに不動のものは何ひとつない――
何ひとつ、魔法のような静寂の上に
たちこめている空気をのぞいては。
ああどんな風にもこれらの樹々は揺すられないが、
霧深いヘブリディーズの島々をめぐる
凍てついた海原のように動悸している!
ああどんな風にもこれらの雲は追い払われず
おちつかない「天」にあって衣ずれの音を立てる、
不安げに、朝から夕べにいたるまで、
人間の眼の無数の型をかたどって
そこに生えているすみれの花々を越えて――
名もなく死んだ人の墓の上で、波とそよいで、
歎き悲しんでいる百合の花々を越えて!
花々は波とそよぐ――香りのよい頂きから
永遠の露はしずくをなして垂れる。
花々はいたみ歎く。――か細い茎から
枯れることのない涙は宝石のようにくだる。
673吾輩は名無しである:2007/06/04(月) 00:39:55
時は六月の或る真夜中に、
幽玄の月の光に照らされて私は立つ。
阿片のような蒸気は、霧と濡れ、おぼろげに、
金色のなすその縁から立ち昇り、
一しずくまた一しずく、しずやかに
ひっそりした山の頂きへと滴り落ちる、
ねむたげに、また音楽の音のように
広い谷のすべてに忍び入る。
ローズマリイの樹は墓の上で首を振り、
睡蓮は波の上をしだらにただよう。
その胸のあたりを霧につつまれ、
物みなはいま永遠の憩いに朽ち果てる。
忘却の河にも似て、御覧!湖は
うつらうつらとうたた寝をむさぼるよう、
たとえ千金をなげうっても目を覚まそうとしない。
すべて「美しいもの」は眠る!――見よそこに
アイリーンは横たわる、彼女の「運命」と共に!
674吾輩は名無しである:2007/06/04(月) 22:39:52
嘆き悼めよ、ウェヌス等もクピードたちも、
またありとある世の雅の友らも。
小雀は死んだ、私の情人の、
         私の情人の手慣れの小雀は、
あの女が自分の眼よりも可愛がつて
                   ゐたのに。
ほんに可愛くいとしらしく、まるで小娘が
母親を追ふやうにあの人になついて、
膝もとをいつも離れずあちらへまた
こちらへと飛びまはつては、主人にだけ
ちよちよと啼きかけてゐたものを。
それが今は暗闇の道をとほつて、
                 誰もそこから
戻つた人がないといふあの世へ行く、
ええ冥界の不吉な闇よ、おまへらに
禍ひがあれ、ありとある美いものを
                  貪りつくし、
また私のいつくしい小雀を奪ひさるとは。
何といふまがごとか、ええ可哀い小雀よ、
おまへのせゐで私のひとの双のまなこは
いま泣きつめて赤くふくれて終つたよ。
675吾輩は名無しである:2007/06/04(月) 22:41:50
さえわたる月のあたりの星々は、
その輝く面輪をかくす、
つきしろのみちて、そのひかり
地のおもてに、耿々とふりそそぐとき。
676吾輩は名無しである:2007/06/05(火) 00:16:39
神が思いあまって白鳥のなかへ入ったとき
彼は白鳥の美しいことにほとんど愕然としながら
まったく狼狽してその中に姿を消した
だが このまだ経験したことのない存在の感触を

試すひまもなく 既にその偽りの姿が
彼を行為へと導いたのだった そしてあけひろげのレダは
白鳥となって近づいてくる者を知り
一つのものを彼が求めていたことを悟っていた

それを彼女は 狼狽て抵抗しながらも
もはや隠すことができなかったのだ 神は蔽いかぶさり
次第に力のぬけてゆく彼女の手の間から頸をさしのべながら

ついに愛するひとのなかへはいりこんだ
それから はじめて自分の羽をうれしく思い
彼女のひざのなかでほんとうに白鳥となったのだった
677吾輩は名無しである:2007/06/05(火) 22:44:36
↑イェイツは同じ主題を違う視点で書いてて比べるとおもしろいです。
で、今晩の↓ 大丈夫かなぁ……
678吾輩は名無しである:2007/06/05(火) 22:45:59
嫋めかしくも媚ある風情を
しつとりとした襦袢につつむ
くびれたごむの 跳ねかへす若い肉体を
こんなに近く抱いてるうれしさ
あなたの胸は鼓動にたかまり
その手足は肌にふれ
ほのかにつめたく やさしい感触の匂ひをつたふ。

ああこの溶けてゆく春夜の灯かげに
厚くしつとりと化粧されたる
ひとつの白い額をみる
ちひさな可愛いくちびるをみる
まぼろしの夢に浮んだ顔をながめる。

春夜のただよふ靄の中で
わたしはあなたの思ひをかぐ
あなたの思ひは愛にめざめて
ぱつちりとひらいた黒い瞳は
夢におどろき
みしらぬ歓楽をあやしむやうだ。
しづかな情緒のながれを通つて
ふたりの心にしみゆくもの
ああこのやすらかな やすらかな
すべてを愛に 希望にまかせた心はどうだ。

人生の春のまたたく灯かげに
嫋めかしくも媚ある肉体を
こんなに近く抱いてるうれしさ
処女のやはらかな肌のにほひは
花園にそよげるばらのやうで
情愁のなやましい性のきざしは
桜のはなの咲いたやうだ。
679吾輩は名無しである:2007/06/05(火) 22:47:48
>>678
童貞だがつまらんと思う
680吾輩は名無しである:2007/06/06(水) 01:12:47
>>677
イェイツ、詩集探して読んでみようと思います。
クリムトの絵に「レダ」というのがあったらしくて
画集でそれを見てから、なんだかレダというもののことが
気になってます。

>>679
( ・ω・ )コンバンワ
681吾輩は名無しである:2007/06/06(水) 01:16:40
ぼくの体がきみの体といっしょにいる時の
ぼくの体が好きなのさ それは本当に全くのみずみずしいことなのだ。
筋肉はよく 神経はさらにすばらしい
ぼくはきみの体が好きだ それが何をするかが好きだ
それがどういうふうになるかが好きだ ぼくはきみの体の背骨とあらゆる骨に
さわるのが好きなのだ ふるえながらの
きりっとしてのなめらかさ それにぼくは
何回も何回も何回もキスをするのさ
ぼくはきみの ここのあそこの にキスをするのが好きなのだ
ぼくはきみの電気の毛皮の
ゆっくりさすり 刺激のむく毛 が好きで
例の何んとかで肉体が分かれる時になって…そうして眼は大きな愛のかたまり

そしてどうしたってぼくは
ぼくの下にいて きみが本当に全くのみずみずしい の ぞくぞくすることが好きなのさ
682吾輩は名無しである:2007/06/06(水) 01:26:49
>>681
形容詞形を名詞じゃなくて形容詞と思って訳してないかそれw
それともそれで正しいのかよw斬新だなw
683吾輩は名無しである:2007/06/06(水) 22:36:19
>>680
世紀末ウィーン、古代ギリシャでたどっていくといろいろ楽しめそうですね。
イリアスって最近映画になってませんでしたっけ?
684吾輩は名無しである:2007/06/06(水) 22:38:02
曙よ、恋する身には恨めしく
 そのつれなさが身にしむものよ、
かくも早うに起き出でて
 わが閨うちをうかがうはなにゆえぞ?
デーモーのやわき肌えに身をよせて
 温もりに心酔わするこの身には
 そのいとまをも与えぬとてか。
ええ、いざ来た途たどり、疾くと戻りて
 いまひとたびの宵とはなれ。
甘き光ふりそそごうとも
 この身にとつては苦いばかりぞ。
そも、そのかみゼウス様が
 アルクメネーと閨に睦みいし折のごと
 もと来た道をたどりて戻るを
 知らぬそなたでもあるまいに。
685吾輩は名無しである:2007/06/07(木) 01:25:17
>>683
「トロイ」という映画ですよね
当時はギリシャについて興味がなくてスルーしていました
いま見たら楽しめるかな〜

>>682
i like my body when it is with your bodyで検索すると
元の詩でてくるお
686吾輩は名無しである:2007/06/07(木) 01:27:50
多年にわたる禁欲の後、
   彼は六人の女性の海に身を投ぜしが、
今やメレアガルの燃え木の如く火を消されて、
   波騒ぐ海の岸辺に横たわる。

    波騒ぐ海の岸辺に
 
     止まれ、旅人よ
687吾輩は名無しである:2007/06/07(木) 22:42:32
>>685
映画とか絵画とか、かなり好きそうですね。
わたしは音楽からいろいろたどっていくことがよくあります。
たとえば、クリムトからある作曲家をたどると、こういう人が出てきます。↓
688吾輩は名無しである:2007/06/07(木) 22:43:28
花さく木々のもと、壷いっぱいに満ちた酒。
独り酌んでは飲むだけで、ともに親しむ相手がいない。
杯を高く挙げて、明月を招きよせ、
わたしの影と対いあえば、三人の仲間となった。
だが、月はもともと、飲酒の楽しみを知らないし、
影はただ、わたしの身体に付きまとうばかりだ。
ひとまずは、この月と影とを友としよう。
楽しむには、春の季節を逃がさないことが肝腎だ。
わたしが歌えば、月は夜空をめぐって動き、
わたしが舞えば、影は地上に乱れて揺れる。
醒めているうちは、ともに歓びを交わしても、
酔ってしまえば、それぞれバラバラに分かれてしまう。
それも良し、"無情"ゆえに変わらぬ交遊を永遠に結び、
遙かな銀河での再会を、たがいに固く約束しよう。
689吾輩は名無しである:2007/06/08(金) 02:14:51
>>687
映画も絵もよいですよね。もちろん音楽も。
クリムトに関係がある作曲家っていうとマーラーでしょうか?
持ってる本の解説に同時代の作曲家と書いてありました。
あとはシューベルトの肖像画が載ってました。
でも李白とつながるイメージがないです。

以前聞いた曲で、詩が印象的でした。↓
690吾輩は名無しである:2007/06/08(金) 02:17:57
我らは天上の喜びを味わう
だから地上のことは避けるのだ
どんな世の喧騒も 天上では聴こえない
すべてが最上の安息にある
我らは天使のような生活をし
しかも愉快にやっている
我らは踊り、跳び上がり、はね回り、歌う
天のペテロ様が見ていらっしゃる
ヨハネは仔羊を放し
屠殺者ヘロデは待ちうける
我らは寛容で、純潔な 愛らしき仔羊を
死に導く
聖ルカは牛を ためらいなく殺す
天上の酒蔵では
酒は1ヘラーもかからない
天使たちがパンを焼くのだ
691吾輩は名無しである:2007/06/08(金) 22:43:02
>>689
はい。マーラーの交響曲「大地の歌」では、ベートゲの訳による李白の詩が
使われています。>>690は交響曲第四番の終楽章で使われているものですよね。
「角笛」の詩は第二、第三交響曲でも使われていたと思います。
それで、クリムトの絵のイメージということなら、マーラーよりも新ウィーン楽派の
作曲家のほうがぴったりするかもしれませんね。そうすると、デーメル>>650 などが
あがってきます。デーメル、波長の合いそうな詩人なのですが、残念ながらまとまった
邦訳を見かけません。もしご存じなら教えてください。
あと、シューベルトだと、やはりこの人でしょうか。↓
692吾輩は名無しである:2007/06/08(金) 22:44:23
市門の外の噴水のそばに
菩提樹が一本立っている。
その木の陰で沢山の
甘い夢を見たものだった。

僕は沢山の愛の言葉を
その木の皮に彫りつけた。
うれしい時も悲しい時も
自然に足が向いてしまった。

今日も真夜中に木のそばを
通らなければならなかった。
それで暗闇の中なのに
目をしっかりと閉じてしまった。

すると枝々のざわめきが
僕に呼びかけるように思われた、
「私のところへおいで、若者よ、
ここならおまえは憩いが得られる!」

冷たい風が真っ正面から
僕の顔に吹きつけた。
帽子が頭から飛んでいった、
が、僕は振り向きもしなかった。

いま僕はあそこから
何時間も離れた場所にいる。
だがざわめきがいつまでも聞こえつづける、
「あそこならおまえは憩いが得られるのに!」
693吾輩は名無しである:2007/06/09(土) 01:47:33
>>691
マーラーの曲は、何曲か聴いたことがあります。
前に「ベニスに死す」を見たときにマーラーの曲が使われていて
それでCDを聴きました。そのときに「角笛」の曲が入ってたんだと思います。
あれは「交響曲第四番」というものだったのか〜
何枚かCDがあるので、またちょっとずつ聴いてみようかなと思ってます。
李白も、名前を知っているくらいで、実際に読んだことがないのです。
>>688の詩も、原文のまま読むことができたらまた印象が違ったりするのでしょうね。
デーメルも、このスレで初めて知った名前ですよ。
ここでいつも面白い詩人を教えてもらっています。

音楽と詩だと、ドビュッシーとヴェルレーヌの「月の光」は関連あり?と思いきや
関係あるのはピアノのほうの「月の光」じゃないんですね。
ヴェルレーヌの詩も、ドビュッシーの曲も「月の光」は好きで。

もうすでにクラシックでつなげられる知識がなく、なんとか歌で↓
694吾輩は名無しである:2007/06/09(土) 01:53:12
君がみ胸に抱かれて聞くは
夢の船唄 恋の唄
水の蘇州の花散る春を
惜しむか柳がすすり泣く

花を浮かべて流れる水の
明日の行方は知らねども
水に映した二人の姿
消えてくれるな何時までも

髪にかざろか接吻しよか
君が手折りし桃の花
涙ぐむよなおぼろの月に
鐘が鳴ります寒山寺
695吾輩は名無しである:2007/06/09(土) 22:40:09
ドビュッシーだとマラルメの詩に寄せた管弦楽曲が有名ですよね。
わたしはマラルメをこの曲から知りました。
歌曲だと、ボードレールやルイスにも曲をつけてます。
ごめんなさい。アイヒェンドルフ>>606 がお解りになったようなので
クラシックはかなり詳しいのかなと思っていました。
この詩にロルカ>>607 が返ってきたときはちょっと嬉しかったりしました。
このロルカのお月さまの詩はいいですね。好きです。
じゃあ「蘇州夜曲」が貼られたので、次はわたしも映画から。
西條八十と違って、この人はいわゆる文芸としての詩を書いてないと思います。
ミュージカルとか、映画とか、総合"芸術"ってことでいいのかなぁ……。↓
696吾輩は名無しである:2007/06/09(土) 22:41:31
夜も昼も、きみしかいないと
とにかくこの世にはきみしかいないのさ
僕の近くにいるかどうかなんてどうでもいい
きみがどこにいるかなど問題じゃない
僕はきみを夜も昼も想っている

昼も夜も、どうしてこうなんだろう
きみへの想いは僕の行くところどこにもついてくる
交通渋滞のすさまじい轟音のなかで
部屋に独りでいるときの静けさのなかで
僕は夜も昼もきみを想っている

夜も昼も、僕の肌の内側で
僕のからだの内部で、なんと飢えた渇望が燃えうずいていることか!
そしてその苦しみはけして終りはしないだろう
一生のあいだ一日中愛を語ることをきみが許してくれるまでは
夜も昼も!
697吾輩は名無しである:2007/06/10(日) 02:28:45
>>695
ドビュッシーはいつもピアノの曲ばかり聴いていたので
管弦楽や歌曲はノーマークでした。うわー。でも聴きたくなってきましたよ。
読みたい本や聴きたい曲が増えてくので楽しいです。
クラシックは、全然詳しくなくて、これから聴いていけるといいなと。
ロルカの詩は、>>606の詩を読んだときに、なんとなく思い浮かんで書いてみました。
まさかつながりがあったなんて。そしてどんなつながりなのでしょうか?
ロルカの詩は好きで、特に>>607の詩は一番気に入っていました。
ポーターという作曲家の名前も初めてきくものです。
メロディがつくとどんな感じになるんでしょう。気になります。

これはもう完全に詩じゃなくて歌詞になってしまうかも↓
698吾輩は名無しである:2007/06/10(日) 02:32:56
あなたの手の感触は天国のよう
わたしの知らない天国
あなたの赤くなった頬 わたしと話すときはいつでも
こう言って あなたはわたしのものだと
あなたはわたしのうずく心を欲望で満たしてくれる
ひとつひとつのキスが わたしの心に火をつける
わたしは甘い降参のもとに 自分自身を捧げる
わたしのたったひとつの恋
699吾輩は名無しである:2007/06/10(日) 22:39:14
>>697
またはずしましたですか……orz
まず>>606ですが、タイトルは「月の夜」といいます。アイヒェンドルフでは有名な詩らしく、
シューマンの他、ブラームス、フンメルなどが曲をつけています。
それから、コール・ポーターは没後40周年ということで、数年前に新しい伝記映画が公開
されてたんですけど……映画よく観ておられそうなのでご覧になったかと思ったです。
彼はミュージカルや映画のために粋なラブソングを沢山書きました。
あと、ジャズは同じ曲が演奏家によって大きく表情を変える様が好きで、最近よく聴くようになりました。
といって、クラシックのように音楽史に沿ってとかの系統だった聴き方はしてないので、
誰もが聴いてるはずの定番を完全に外してたりします。
で、My one and only love(Mellin/Wood)は、手元にはボーカルではカーメン・マクレエの
ライブ盤があるだけでした。(しかも実はこれ、ジョー・パスのギターを聴くために買ったのですw)

> あなたの赤くなった頬 わたしと話すときはいつでも

この辺のどきどきがいいですね。
あなたは誰の歌ったものがお気に入りですか?オススメがあれば教えてください。
じゃ、もうひとつポーターのを貼りますね。↓
700吾輩は名無しである:2007/06/10(日) 22:40:38
私はあなたの表情が好きだ
その惹きつけるもの、愛らしさ、純粋さが好きだ
あなたの目が、腕が、口が、
そして東、西、北、南から見たあなたが好きだ
あなたのすべてを思うように操れたらどんなにか素敵だろう
あなたの心や魂でさえこの手に掴めたとしたら
だから、少しでもいい、この私の一部分でもいいから愛してくれないかい?
私はあなたのすべてを愛しているのだから
701吾輩は名無しである:2007/06/11(月) 02:31:18
クラシックから詩へのつながり、いろいろあるものなんですね。
自分の引き出しの少なさをつくづく感じます!
コール・ポーターは、映画があったことを知りませんでした。
DVDになっているようなので、それを見たら曲も一緒に聴けるかな。
ジャズは、右も左もわからないので(ジャズに限らないですが…)
脈絡なく思いつくままにCDを選んで聴いています。
なのでこちらもおすすめを聞きたいくらいです。
My one and only loveは、リッキー・リー・ジョーンズのカバーで聴きました。
POP POPというアルバムの一番最初に入っています。
リッキー(ryのカバーとてもいいですよ。よく聴いてます。

シャンソンも詩と関係ありそうですね↓
702吾輩は名無しである:2007/06/11(月) 02:32:35
あなたが思い出してくれることを どれほど願っているだろう
わたしたちが愛し合っていた幸せな日々
あの時、人生はもっと幸福だった
太陽は今日よりもっと輝いていた
シャベルで集められている枯葉
わたしは忘れていない
シャベルで集められている枯葉
思い出も後悔も同じ
そして北風がそれらを運んでいく
忘却の冷たい夜の中へ
わたしは忘れていない
あなたがうたってくれた歌
わたしたちのための歌
わたしを愛したあなた あなたを愛したわたし
わたしたちは生きていた 二人一緒に
あなたを愛したわたし わたしを愛したあなた
だけど人生は愛したふたりを別々に
とてもやさしく 音もたてずに
そして海は 消し去ってしまう
砂の上の恋人たちの足跡を
703吾輩は名無しである:2007/06/11(月) 22:33:11
>>700
> シャンソンも詩と関係ありそうですね

貼っていいか、って意味ならどうぞどうぞ。
白状すると、>>702が唯一知ってるシャンソンかな……でもインストばかり。
あと、ピエール・バルーって歌手のを何枚か聴いたことがあるです。
例によって、興味があるのはバックのメンバーという歪んだ聴き方で、
いくつかは肌の合うものもありましたが、結局すぐに聴かなくなりました。
プレヴェール/コズマの曲から、しかるべき歌手で聴いてたら、わたしの今も変わったかも。
あと、ルネサンス期のシャンソンなら何枚か。ジョスカン・デ・プレとか
クレマン・ジャヌカンとか。ジャヌカンの「鳥の歌」って、鳥の鳴き声の擬声が楽しい
佳品なんだけど……知らないよね……orz
で、せっかくだから、わたしもプレヴェールの詩(歌詞かな)、貼っときます。
詩集じゃないんですが、最近買った本に引用されてました。著者ご自身の訳らしい↓
704吾輩は名無しである:2007/06/11(月) 22:34:11
愛し合う子どもたち 立ったまま抱き合う
夜の門々を背に。
通りかかる通行人たちが指をさす
でも愛し合う子どもたちは
そこにいないつもり 誰に対しても
いるのはただ影だけ
夜のなかでふるえ
通行人の怒りをよびおこす
怒りを 嘲りを 笑いを 羨みを。
愛し合う子どもたちはそこにいないつもり 誰に対しても
ふたりはよそにいる 夜よりはるか遠く
昼よりはるか高く
初恋のめくるめくまぶしい光のなかに。
705吾輩は名無しである:2007/06/11(月) 22:36:05
あー、>>703>>701宛です。ごめん。
706吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 00:48:45
>>703
ピエール・バルーって「男と女」に出演していたんですね。
ボサノバを歌っていたあの元夫役の人がそうだったのか〜
きのうたまたまyoutubeのコズマの動画を見つけたので
プレヴェールを貼ってみました。デスノスの詩のシャンソンをいつか聴いてみたいです。
今日もメモしておきたい名前が。鳥の鳴き声のシャンソン!
それと今日マイルス・デイヴィスのCDを聴いていたら、よく聴いていた曲が
コール・ポーターのものだったということがわかりました。
Love for saleという曲。ジャケットのタイトルの下に小さくC.Porterと書いてあった。
ずっと前から持ってたCDなのに、今日はじめて気づきましたw
>>704の詩は、なんの本に載っているのでしょうか?ちょっと気になります。

「子供」の出てくる詞で好きな歌です↓
707吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 00:53:49
脈絡のない官能的な主題、子供時代の方がずっとすてき
子供時代は魔法をもたらす
全てを読み、全てを食べ、全てをばらばらに与えてしまったら
全ての屋根に向かって叫んでしまったら
何をすればいいのだろう
街でも田舎でも泣き、そして笑ってしまったら
子供時代の方がずっと本物、高い柱廊の庭

家、昔の家、未来の家
静寂が私の中に入ってくる
708吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:10:58
シャンソンと詩といえば真っ先に思いつくのが
ミラボー橋。詩人アポリネールが画家ローランサンとの恋を
惜しんで歌った詩に旋律を乗せたシャンソンの名曲。

Sous le pont Mirabeau coule la Seine.  
Et nos amours              
Faut-il qu'il m'en souvienne       
La joie venait toujours apres la peine...

詳細は検索すれば山のように出てきます。
709吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:12:30
脈絡なく引用するということで。

・・・恋心こそ
うつし身の宝ならずや
その幸は
憩いなくとも。
710吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:50:29
>>708-709
あのね、段取りがあるんだから先回りしても貼るものは一緒だよw
Miles Davisは"Porgy and Beth"かなぁ。いや、例によってバックの(ry
んー、なんかやる気のない演奏で、がっかりした記憶があります。以来トラウマに……orz
Love for saleはNico Morelli Trioの演奏が最近のお気に入り。
Vocalはまだこれはってのに出会ってない。結局それほど数を聴いてないってことだけど。
それと本はね、書いてるのはアニメの監督さんです。
興味なさそうなんでこれ以上は言わない。調べましょう。
今日の↓ ジョージ・ガーシュインは没後70周年らしい。企画ものが楽しみ。
711吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:51:57
ああ、夏だわ、そして生活は楽だわね 
お魚も飛び跳ねてるし、綿もよく育って高く伸びたしね
お前のお父さんは金持ちだし、お前のお母さんは美人だよ
だから赤ちゃん、泣くんじゃないよ

そのうち、お前も歌いながら立ち上がる朝がくるんだろうね
それからきっと大きく翼を広げて、空に向かって飛び立っていくんだわ
でもその朝が来るまで お前はここにいれば、なんの心配もいらないんだよ
お父さんとお母さんがいつもそばにいて、あなたを守っていてあげるからね
712吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:52:37
もうひとつおまけ↓ おやすみ。
713吾輩は名無しである:2007/06/12(火) 22:53:42
どこかで悲しい吐息が漏れて
今、ぼくの心に憩う、
どこかで今、笑いが響き
ぼくの心が微笑む。
ぼくが娘の後を追いかける時、
どこかで、人生は素晴らしい、
ぼくが泣くことさえできない時、
どこかで、呪いは果てしない。

どこかで一つの心にならなくては、
壊れた、病んだ哀れな心、
願いと陶酔が殺してしまった
ぼくの心のように。
偉大な夜が下りてくる間、
互いに激しい心臓の音に耳傾けよ、
偉大な夜の中で、束の間の時、
二つの心臓が鼓動を止める。
714吾輩は名無しである:2007/06/13(水) 02:26:18
>>708
le pont Mirabeauで検索したらyoutubeでいろいろ出てきますた。
シャンソンになってるんですね〜
ローランサンの絵、はじめて見たとき色が不思議でした。

>>710
マイルスはLove for saleの前に入ってた
Two bass hitという曲もかっこよかったです。
「ポギーとベス」っていうとカポーティのことがまず浮かびました。
ガーシュイン、曲のタイトルだけだと聞いた事がある、と思うものが
いくつも。「サマータイム」はジャニス・ジョップリンのものを聞いたことがあります。
歌詞はじめてちゃんと読みました。あのメロディにこの歌詞なんですね。かなしい。

イェイツの子守唄↓
715吾輩は名無しである:2007/06/13(水) 02:29:43
坊やのねどこの上に
エンゼルが身をかがめる
すすり泣く死者たちの
お供にはあきてしまって。

神さまは天でお笑いだ、
いい子の坊やをごらんじて。
七つの星はにこにこめぐる、
神さまのごきげんよいために

私は接吻して吐息つく。
坊やが大人になったなら、
坊やの顔がみれなくなり
どんなにしょんぼりするでしょう。
716吾輩は名無しである:2007/06/13(水) 18:24:20
>>714
ごめん。今日は貼るの無理みたい。ごめんね。
717吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 00:42:18
>>716
脈絡なく猫の詩を貼っておきます(・∀・)
718吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:01:16
猫が
ジャム入れ
の上に

のぼった
まず 右の
前足を

そっと
それから後足
でおりて

空の
植木鉢
の穴に入りこんだ
719吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:23:43
>>717-718
用意したんだけど、いいや。へんな猫w
ドビュッシーのピアノ曲に>>425の詩句をタイトルにしたものがあります。
綺麗な曲なのでよろしければ。
「月の光」が弾ければ自分で響きを楽しむくらいはできると思う。
同じ詩を歌曲にしてます。お気に入りだったんですね。
そいで、ごめんなさい。せっかく紹介してくれたけど、ジャニス・ジョプリンの歌う
サマータイムは、Amazonでさわりを聴いた限りでは、わたしには容れられなかったです。
この曲はvocalの場合あまり冒険しない方がいいような気がしました。
むろん好みの話なんで念のため。
ところで、イェイツの「レダと白鳥」は読みました?
今日の↓ 拾い物だけど、ここの訳はなかなかいいです。シアリング+トーメのライブがおすすめ。
720吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:25:14
バードランドの子守歌っていうのはね、
あなたが吐息をもらす時、
私の耳にいつも聞こえてくる歌なんだけど、
それを聞いてどんな感じがするかっていうと、
私のボキャブラリーでは、
ちょっとひとくちでは言い表せないわ。

二羽のきじ鳩が愛しあう時のさえずりを聞いたことがある?
それはちょうど、私たちがキスする時くちびるでつくる、
一種の不思議な音楽みたいなもの。

そして、古いしだれ柳の木があって、
柳は本当の泣き方ってものを知っているわ。
それはね、あなたがもしも私にさよならを言ったとしたら、
私が枕に顔を埋めて泣く泣き方と同じなの。

バードランドの子守歌よ、低く静かにささやいて。
私に優しくキスをして。
そうしたら、私たちはバードランドの空高く飛んで行くわ。
なぜって、私たち、愛しあっているんだもの。
721吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:25:51
でもね、ほんとは子守歌といえばこれなんだ。↓
722吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:26:31
おやすみ、いとし子よ、
ばらにつつまれ、
カーネーションにかざられ
ふとんをかけておやすみ、
あすの朝神様が、
起こして下さるまで。

おやすみ、いとし子よ、
天使たちはお前をまもり、
クリスマス・ツリーを
夢の中に見せて下さる。
天国の夢にあそび、
やすらかにおやすみ。
723吾輩は名無しである:2007/06/14(木) 01:28:08
毎日遅くにごめん。明日からは一日置きに貼りましょう。
無理な時は声をかけてね。明日はホントに貼りませんw じゃ、おやすみ。
724吾輩は名無しである:2007/06/15(金) 01:26:46
>>719-723
詩をそれほどたくさん知らないので
段々ネタがなくなってきていましたw
このスレで収穫した詩人の本の積読を消化しながら、
またテキトーに書き込んでいようとおもいます。
詩だけじゃなくて音楽の話もできて勉強になりました。
教えてクレクレという感じで、たくさんの量を貼ってもらうことになり恐縮しておりますた。
毎日じゃなくても気の向いたときに貼ってもらえたらそれでうれしいです。
楽しんで読んでますので(・∀・)
イェイツの白鳥の詩、読みましたよ。他の詩も読んだら、思いのほか好きな感じでした。
なんか硬い感じかと思ってたら、ユニークな詩多いんですね。
725吾輩は名無しである:2007/06/15(金) 01:30:20
もし われに こがね また
しろがねの ひかりで織った
あまつみくにのあやごろも
よるまひる たそがれの
青き かすけき 夜のいろの
ころもがあれば それをあなたの
足もとに ひろげたいもの――
貧しく もつはただ夢
その夢を 足もとに敷きました
しずかにおあゆみ 夢の上ですら。
726吾輩は名無しである:2007/06/15(金) 23:27:48
>>724
遅くなりました。ごめんなさい。
んー、>>716は正確にはネタ切れって意味じゃなかったんですけどね。
あと、詩人の名前をメ欄に入れるようになってから、目新しい詩人の詩を貼ることに
こだわりすぎました。
詩人の名前なんて、べつにわからなくてもよかったんじゃないかと今は思います。
気にかけていればいづれ出会いますから。
おっしゃるとおり、一日おきとかこだわらず、ゆっくりと貼っていきましょう。
22:30ごろに毎日間に合わせるためのプレッシャーは結構なものがありましたしw
でも毎日返りがあってとてもうれしかったです。ありがとう。
>>725ですが、最後の行はたぶん、「夢の上ですから」ですよね。
手元の鈴木氏の口語訳は直截で、最後の行など、意味が過剰なところがあります。
この訳は雰囲気があっていいですね。よければ訳者を教えてください。

現在の読書から↓ 脈絡は、ありませんw
727吾輩は名無しである:2007/06/15(金) 23:29:11
死のように、
きみのきれいな目をとじさせる、すべてを
越えるあのあまい気分をぼくは知っている。

春さきのあらゆる樹液が
ぼくをよみがえらせようと、
老いたこの幹にそそいでくれても、きみを
見るだけで心をみたすこのすばらしさは
たしかに感じない、きみのそばにいて、きみの
一挙一動を、きみのあらゆる存在のしかたを、
きみのすべての小さな動作を見るときのようには。
そばにきみがいないと、深い孤独のなかで
きみのことを想って、ぼくの血管をつたう
肉の想いは燃えあがり、うねうねと
流れる、にがくて、

あまい気分のほのかな予感、
それがきみのうつくしい目をとじさせる、
死のように。
728吾輩は名無しである:2007/06/16(土) 01:37:32
>>726
やっぱり毎日同じ時間に合わせて貼ってくれていたんですよね。
このスレを見はじめたころは、時間が同じだから
きっと同じ人が書いてくれているのだろうなと思っていました。
詩人の名前、メル欄に入れないでまた貼っていこうかな〜と思いました。
自分にとってもちょっとした縛りになっていたw
というか詩人の名前わたしが入れ始めたんですね。
>>725の詩、本には「夢の上ですら」と印刷してあるんですよ。
原詩をみてみたら、意味からいっても「夢の上ですから」みたいだし
単純に誤植なのかな?これは尾島庄太郎さんという人の訳でした。
なんとなく好きな感じの訳です。今日もイェイツを。
>>727の詩の「サバ」という詩人、はじめてきく名前でした。
729吾輩は名無しである:2007/06/16(土) 01:39:00
ああ ツマンナイじゃない?
いのりや いこいに
みたされた小さい室も。
あのひとは呼ぶ 薄くらがりに。
あたしの胸は休む
あのひとの胸の上に。

ああ ツマンナイじゃない?
あたしの母の心づかいも、
やすらかなあたたかいわが家も。
蔭やどす花のようなあたしの髪は
荒れすさぶあらしから
あたしたち二人をかばう。

かばう髪と 露おく眼よ、
あたしには もう生も死もない。
あたしの胸は いこう
あのひとのあたたかい胸に。
あたしの吐息は あのひとの
吐息に まじりあって。
730吾輩は名無しである:2007/06/16(土) 23:00:32
>>728
尾島庄太郎さんは鈴木弘さんのお師匠さんでした。
よくみると本の扉に献辞がありました。
詩集は思潮社の翻訳草稿集以外は版が絶えているみたいで、
近くの図書館の蔵書にも単独の詩集はありませんでした。
暇を見て古本屋などゆっくりあたってみます。
>>729の詩は、鈴木さんの訳もゆかしくてなかなかいいですよ。
>>727はイタリアの詩人で須賀敦子さんの訳です。もうふたつ、貼りますね。
731吾輩は名無しである:2007/06/16(土) 23:01:53
失われた愛をたしかめあうのも
いい、それぞれの受けた傷をいたわるのも。
だが、中にいるのが重荷だったら、
外にすべてを出せばいい。

窓を開け放て。人ごみにじぶんで
降りていけ。ちょっとしたことで、
うまくいく。いきものを見る、ゲームとか、
ブルージーンズの、

手押車をおす若い労働者とか。
道を開けろと大声でどなり、
ちょっとでも下り坂とみると、
走るどころか、飛ぶ。

その時間、街にあふれる人びとは、
避けるけれども、黙ってなどいない。
そのうえを、がらがらと手押車の音と怒声が。
からだを揺すって、彼は歌う。
732吾輩は名無しである:2007/06/16(土) 23:02:56
鞠を手に持った、ぼくの娘は、
空のいろした、おおきな目をして、
かるい夏服を着て、パパちゃん、
と言う。今日はいっしょにお出かけしたいの。
ぼくはつくづく考える。この世でとびきりに
みえる物たちのいったいどれに、ぼくの
娘をたとえるべきか。たとえば、
泡。しろい波がしらの海の泡。青く
屋根から立ちのぼっては風に散る、けむり。
そして、雲。あかるい空に、かたまっては、くだけ、
くだけては、かたまる、あるかないかの雲。
軽くて、漂う、すべてのものたちに。
733吾輩は名無しである:2007/06/17(日) 01:52:31
>>730
手元にある尾島訳の本は
新潮社の「世界詩人全集」の15巻目です。
イェイツとロレンスの詩とが一緒に入っているやつです。
自分の近所の図書館では、読みたい詩人の名前を探すと
よくこの「世界詩人全集」が出てくるんですよね。
どこかで見かけたらほしいなーと思っていたのですが
いま調べたら普通にアマゾンのマーケットプレイスで出ていました。気になる。
イタリアの詩人はそういえば、あまり読んだことがなかったもしれません。
サバという名前覚えておこうと思います。
734吾輩は名無しである:2007/06/17(日) 01:54:19
誰かな(誰だろう)

(暗い窓辺で二つの顔)
この父と彼の子供が雪が一枚ずつ
(ふって と ふって と ふっている)
のを見つめている

眼と眼は

大地と空が(い
つも)びっくりして一つに
なって行くのを
見ている
735吾輩は名無しである:2007/06/17(日) 22:50:34
>>733
やあ、その本なら調べたところ近所の図書館の蔵書にありました。
こんど行って見てみます。ありがとう。
サバは書店でたまたま手に取って、二つ三つ拾い読みして、肌に合いそうだったのと、
口絵の詩人のポートレートが気に入ってw買いました。
須賀さんのガイドなど読みながら、他の詩人もたどっていこうかなと思っています。
それから、わたしは自分と少しでも関係ありそうだと思った本は、できるだけ買って
手元に置くことにしてます。すぐにわからなくても、あとになってわかることはよく
ありますし、そのとき手元になければ再会の機会は永遠に訪れなかったりします。
それはとても残念なことなので。
それで、このスレの過去ログに、イタリアの詩人の詩がすでにいくつかあります。
もっとも、下の二人は古代ローマのラテン語古詩ですけど。

ダンヌンツィオ >>431,>>470
ウェルギリウス >>441
カトゥルス >>419,>>468,>>664,>>674

カトゥルスは好きなの詩人の一人です。もっと邦訳が読みたいですが、ままなりません。
せっかくなので、もう一つカトゥルスを貼りますね。呉茂一さんの訳。
あとロンサールを貼っときます。井上究一郎さんの訳です。
「さんざしへのオード」などには、クレマン・ジャヌカンが曲をつけてますよ。
つまり、シャンソンw ではではヽ(´ー`)ノ
736吾輩は名無しである:2007/06/17(日) 22:55:20
生きようよ、私のレスビア、そいで
          愛しあはうよ、
気むづかしやな年寄りどもの
          かげ口なんどは
そつくりで びた一文に
          値ぶみしとかう。
太陽は、日々沈んでもまた
          昇りもえよう
が、私らの短い光のひとたび
          沈めば、
いつまでも明けぬ 一夜を
          眠るほかないのだ。
さあ接吻を千たびもおくれ、
          それから百も、
そいからもう千度、つづいて
          また百度、
それからもう千度まで、
          それから百たび、
そいで何千たびも やりすましてから、
             そいつを
みんなまぜつ返しちまはうね、
          わからないやう、
それにまた誰か 意地悪いやつが
       やつかみもできないやう、
そんなにまで接吻が たんとあるつて
          わかつた時にも。
737吾輩は名無しである:2007/06/17(日) 22:56:36
春、わが聖き乙女の歌に
よみがえる森 ここにあり。
夢みつつ ひとりさまよう足あとに
ひらきゆく花 ここにあり。

おお、美しき若草の
七宝摘みに歩み入る
その手にふれて萌え出ずる
さみどりの牧 ここにあり。

われは見ぬ、わが乙女、ここにはうたい、かしこに泣くを。
ここには微笑、かしこにはその美しき眼に
息絶ゆるまで魅せられぬ。

ここにはすわり、かしこにおどる。
かくも漠たる思念の機に、
愛はわが生命の緯を織る。
738吾輩は名無しである:2007/06/18(月) 02:23:06
>>735
カトゥルスはローマの詩人だったのですね。
なぜかギリシャの詩人だと思い込んでいました。
ダンヌンツィオも、きっとギリシャだろう、となぜか思い込んでいました。
>>736の詩!「そいで 愛しあはうよ」っていう響きがなんか新鮮です。
この訳、楽しいですね。呉茂一さんという人のことが気になってきます。
自分も、本はなるべく手元に置いておきたいと思うほうです。
再読の醍醐味に、最近気づきました。そして気になる本を、買い続けていたら
いつのまにか机の上がすごいことに。
739吾輩は名無しである:2007/06/18(月) 02:31:57
 おいで、昇っておいで。やがてこの上なく
軽やかな羽毛が、空中の潜水夫よ、おまえの
首根っこをつかむだろう。
 大地は必要なものと、そしておまえの美し
い類の鳥たち、微笑しか、載せないのだ。
おまえの悲しみのそれらの場所で、愛のうし
ろの影のように、風景はすべてを蔽う。
 早くおいで、走っておいで。そうすればお
まえの身体はおまえの思いよりも速く行き、
そしてなにものも、判るかい? なにもの
も、おまえを追い越すことができないのだよ。
740吾輩は名無しである:2007/06/18(月) 03:06:03
Paul Eluard
741吾輩は名無しである:2007/06/18(月) 23:07:39
>>738
> あまり読んだことがなかったもしれません。

あはは、こんな言い方をするから、からかいたくなったです。ごめんなさい。
おたがい時間にも機会にも限りがあって、読書の背景も好みも違うんですから
知ってる詩人がぴったり重なるはずがないですよね。だから面白いんです。
あなたが前に貼ったエリュアール>>651は、言葉使いが印象的でした。
プーランクがいくつか歌曲にしているようですが、聴いたことはありません。
こないだ古本屋で訳本を見かけましたが、どうも肌に合いそうになく、スルーしてます。
んー、どうしようかな。
それで、カトゥルスは呉茂一さんの「ギリシャ・ローマ抒情詩選」から貼りました。
もし欲しければ、岩波文庫ですので、待っていればいづれ再版されるでしょう。
古本屋で程度のいいものが出てますので、見かけたら買っておいて損はないです。
あと、図書館。わたしは否定してないですよ。むしろ出会いや再会の機会を増やすには
絶好の場所ではないでせうか。

今日の↓ ヴェルレーヌです。
742吾輩は名無しである:2007/06/18(月) 23:09:41
しなやかなる手にふるゝピアノ
おぼろに染まる薄薔薇色の夕に輝く。
かすかなる翼のひゞき力なくして快き
すたれし歌の一節は
たゆたひつゝも恐る恐る
美しき人の移香こめし化粧の間にさまよふ。

あゝゆるやかに我身をゆする眠りの歌、
このやさしき唄の節、何をか我に思へとや。
一節毎に繰返す聞えぬほどのREFRAINは
何をかわれに求むるよ。聴かんとすれば聴く間もなく
その歌声は小庭のかたに消えて行く、
細目にあけし窓のすきより。
743吾輩は名無しである:2007/06/19(火) 01:49:19
>>740
(・∀・)ソノトウリ!

>>741
いろんな意味でちゃんと読めてない、ていうことがどんどんバレていくw
「ギリシャ・ローマ抒情詩選」というタイトルだと、きっと自分は腰がひけてたと
思うのですが、>>736みたいな訳の詩がのってるのだと思うと読みたくなってきます。
古本屋で探せば見つかるかな。古本屋、まだあまり行ったことがありません。
行きだしたら絶対に楽しいんだろうな。でも散財しそうでおそろしいような気も。
プーランクという名前、これも初めて知りました。いまアール・デコの本を
読んでいるのですが、ちょうどその頃の作曲家なのでしょうか。
744吾輩は名無しである:2007/06/19(火) 01:50:17
ぼくたちはふたりとも さしのべる手をもっている
ぼくの手をお執り 遠くへ連れて行って上げよう

ぼくは何回も生きた ぼくの顔は変わった
ぼくが踏み越えた敷居ごと 手ごとに
家庭の春はよみがえったものだ
おのれのため 私のために そのはかない雪を 大切に守りつつ
死と 約束と
にぎりしめたり ゆるめたりする 五本の指をもつ 未来
ぼくの年齢は いつもぼくにおしえてくれた
他者によって生きることの
また ぼくの心臓の中に 他の心臓の血を持つことの 新たな理由を
745吾輩は名無しである:2007/06/19(火) 22:41:55
>>743
プーランクはドビュッシーのすぐあとのフランスの作曲家で、簡素で親しみやすい
メロディの曲をたくさん書いています。ドビュッシーよりとっつきやすいかも。
アール・デコが1920年代なら、ちょうど彼の活躍した時期とも重なりますね。
でも、ごめんなさい。ほんとは美術や画のことはよくわからないのです。
鑑賞の手がかりになるように、いろいろお話を聞かせてくれるとうれしいです。
それで、あなたが英詩の良いのをたくさんご存知のようなので、いま英詩のアンソロジー
を少し読んでいます。この本、挿絵がたくさん入ってて楽しいヽ(´ー`)ノ
今日はその中から↓ ウィリアム・モリス
746吾輩は名無しである:2007/06/19(火) 22:42:51
ひとことだけ、ぼくのために祈っておくれ、きみの閉じた唇から、
すこしだけ、ぼくのことを考えておくれ、星のまたたく空で。
夏の夜はあけ、灰色に ほのかに
朝のひかりが さしこんでくる、夜あけを待ちわびる
白楊の葉かげや 棚引く雲に、
息ひそめ、しらじらと。もうすぐ 金色の
曙の光が、そのなかを 流れようとしている。
見はるかす牧場のかなた、さみどりの小麦のうえで
にれの木は 重げにそびえ、小止みなく、ひんやりと
不安げに風はふき、バラの花は かげったまま。
ながい 薄明かりのなか、ひたすら祈る、
畑なかの一軒家に、暁よ来れと。
さあ、ひとことだけ、話しかけておくれ、麦畑をこえ、
うなだれた、やさしい麦の穂のうえから。
747吾輩は名無しである:2007/06/20(水) 01:18:20
>>745
「プーランク:ピアノ曲集」というアルバムがなんだか良さそうで
ほしくなりました。ドビュッシーやサティと近い時代の作曲家なら
自分の好みど真ん中っぽいです。
ウィリアム・モリス!モリスのテキスタイルに興味があって
何度か展示を見にいったりしてました。いまカベにも一枚、モリスのポストカードが。
モリスの詩も網羅しているようなそんなアンソロジーがあるんですね。
しかも挿絵つきだなんてすてきそうな本の予感。
748吾輩は名無しである:2007/06/20(水) 01:23:12
ぼくには名前がないんだ
まだ生まれて二日しかたっていないから。
おまえは何て呼んでほしいの?
ぼくは幸せだよ
喜びがぼくの名前だよ。
すてきな喜びがおまえの上に訪れますように!

かわいい喜び!
生まれて二日しかたっていないすてきな喜び、
すてきな喜びと呼んであげよう。
おまえは笑い、
そのあいだに私は歌をうたう、
すてきな喜びがおまえの上に訪れますように!
749吾輩は名無しである:2007/06/20(水) 22:43:12
>>747
> 「プーランク:ピアノ曲集」

んー、大丈夫だと思います。一応、試聴などして好みに合うか確かめてくださいね。
テキスタイルっていうのは、カーテンやクッション生地、壁紙なんかも入るのかな?
前にアール・デコって聞いた時、よくわからないながらも、画じゃなくて家具などの
工芸品や建築のことがとっさに浮かんだのですが、ひょっとしてインテリアデザイン
とか、そういうお仕事をされてるのかなーなんて想像しました。
本は平凡社ライブラリのもので、松浦暢さんの編訳です。ただ集め並べるだけじゃなく、
マイナー詩人を積極的にとりあげたり、テーマ毎の配列にしたり、挿絵を対にして
配置したりといろいろ工夫されている上、訳自体もよくこなれていて、労作だと思いました。
あとは、この値段で白黒じゃなくフルカラーなら完璧だったんですけど……orz

アンソロジーからもうひとつ↓ D.G.ロセッティ
750吾輩は名無しである:2007/06/20(水) 22:44:52
かげふかい スズカケの こかげに
夏半ばすぎても 若葉は茂る。
駒鳥が はてしない青空を背に
枝にとまってから このかた
青葉の奥ふかく 木の間がくれに
ツグミの甲高い声がつきぬける、しずかな青空を。

空想の枝さしかわすこかげ、夢ははてしなく
つづく 秋の日まで。しかし どの夢も
乙女の青春の夢ほどに 心おどるものはない。

みよ! 女は、まひるの夢をみる。
そのひとみには およばないが、濃青のそらのもと。
と、読みさしの本に 手から落ちる
忘れられた 花びらが ひとつ。
751吾輩は名無しである:2007/06/21(木) 02:15:17
>>749
テキスタイルって元々は織物のことをさすそうですが
プリントとか壁紙も入るのだと思います。おそらく。いま調べました。
インテリアはまったくの素人で、洋書などのカコイイ部屋をながめて
うっとりするのが趣味です。
松浦暢さんの、平凡社ライブラリから二冊でているみたいですね。
これは良さそう。「英詩」というくくりで読んでみるのも、
好きな詩人を探すのにいいのかなーと。
wikiでロセッティを調べてみたら、モリスとつながって
さらにモリスはイェーツともつながって、なんだかいろいろつながってました。
三人とも自分の中ではバラバラの位置にあったので不思議です。
752吾輩は名無しである:2007/06/21(木) 02:17:26
はにかみ はにかむ
ぼくの心の はにかむおとめ。
もの思い 遠のいて
ともしびのかげにたたずむ。

おとめは皿を運びいれ
一列に皿を並べる。
二人して 行きたいものよ
湖に浮かぶ小島へ。

ろうそくを運び入れ
カーテンひいて燈をともし
入り口で はにかみ
うすらあかりにはにかむ。

兎のようにはにかんで
まめまめしくはにかんで。
二人して 飛んで行こうよ
湖に浮かぶ島へ。
753吾輩は名無しである:2007/06/21(木) 23:11:27
>>751
あのぅ、なんとなくわかりました。ドビュッシーやサティでそのうっとりした気分を
盛り上げようということですよね。ピアノならラヴェルなんかどうでしょう。
時代は違いますけど、クープランのクラブサン組曲集など、典雅な曲がたくさんあって、
オススメですよ。
それで、わたしも読み進む手がかりが何も無いときは、よさそうなアンソロジーから
入ります。「海潮音」や「月下の一群」は今でも好きなアンソロジーです。
でも、アンソロジーだから入門用、ってことはないと思います。
選者にとっては、自分のセンスが問われる大仕事なわけですし、それ自体一個の
作品として見てもいいのではないかと思ったりします。


今日の↓ ロセッティ(妹)
754吾輩は名無しである:2007/06/21(木) 23:13:41
小夜更けの夜のしじまに訪ねきませよ
 うつつなの夢のしじまに訪ねきませよ
川波に照れる日のごと 目も輝きつ
 ふくよかの頬もゆたかに訪ねきませよ
   涙のなかに帰りきませよ
思ひ出よ すぎし昔の 恋よ 望みよ。

あゝ夢よ たのしき極み にがきわが夢
 目覚めなば 天津御国にわれはあるらむ
そこに住む人の情は やさしけれども
 あこがれつ慕ひこがれつ目を放たざる
   鈍音の戸はしづかにも
開きつつ 人は入れども 出づるよしなし。

夢にのり 訪ねきませば、昔ながらに
 われ生きん、死にし屍の冷たけれども。
夢にのり 訪ねきませよ、夢にはあれど
 脈はうち 絶え果てたりし息も通はむ。
   ささやけよ よりそへよ
恋人よ はるかに遠き昔さながらに。
755吾輩は名無しである:2007/06/21(木) 23:17:33
×恋人よ はるかに遠き昔さながらに。
○恋人よ はるかに遠き昔ながらに。

ごめん、修正……orz
756吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 01:35:30
>>753
クープランとプーランク名前が似てますね。どっちも聴いてみたいです。
それと以前に録画してあったガーシュインの番組を見てみたら
ラヴェルのことも話題に出てきていました。ガーシュインとラヴェルは相思相愛で
親交があった、とかいうようなことをたしか言っていたような。
その番組で聴いた「バイ・シュトラウス」という曲の歌詞が皮肉っぽくてすてきでした。
わたしはアンソロジーだと「フランス名詩選」が大活躍したなーと思います。
「月下の一群」もアンソロジーなんですね。そういわれてみれば。
自分の中で、堀口大學の訳している詩人と、堀口大學とが一体化していて
切り離せないような感じがあります。
757吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 01:39:21
その額に このくちづけを受けてくれたまえ。
そして今 君と別れるときに当って
いささか私にも言わせてくれたまえ。
過ぎたあの日々のことが夢であったと
君が思うとしても 誤りではないのだ。
けれどもある夜 それともある日、
希望が幻や虚無の中へと
消え去ったにしても だからといって
それがなおさら虚しいと言えるだろうか?
私たちの見るもの 見えるものは
ことごとく夢の夢に過ぎないというのに。
758吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 02:08:39
Edgr Poe
759ボコノン:2007/06/22(金) 08:59:43
マーラー交響曲「大地の歌」第三楽章‘青春について’〜李白による

小さいき池のまなかに 白に碧なる陶の四阿立てり。
あづまやには 虎の背のかたちに
硬玉の橋架かりてあり。

室の中に 友垣、美しき衣着て集ひ来たり、
酒飲み さざめき ある者は詩作りて居り。

皆の衣装はきくづれ、絹の帽は襟首に
をかしき様に、揺れてゐたりき。

しづかなる池の面には あたりの景色うつりて
あはれに趣ふかし。

その景色と 白に碧のあづまやと
みなさかしまに映りたり。

橋もまた、三日月のごと、さかしまの世にかかり
友垣の衣装美しく、酒飲み、さんざめきて居りけり。


・・・ドイツ語わからないのでテキトウに訳しました。乞ご批判。
760ボコノン:2007/06/22(金) 09:06:13
三好達治「測量船」よりT

  春の岬

春の岬旅のをはりの鴎どり
浮きつつ遠くなりにけるかも



761ボコノン:2007/06/22(金) 09:11:49
U

  甃のうへ

あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音空にながれ
をりふしにひとみをあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
762ボコノン:2007/06/22(金) 09:18:31
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ


三好達治の詩で良いのはこの二つだけ。後は読む必要なし。
近代文学なんてつまらん。
763吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 22:58:47
>>756
> 相思相愛

ええええーっっ、本当ですかーっっっ!!
あの、ジョージはラヴェルに管弦楽法を教わりたいと頼んだそうですが、ラヴェルは
「それよりも君の個性を大事にしなさい」的なことを言って、体よくお断りしたそうです。
当時既に"大衆向けの"流行作曲家で、自分の何倍も稼いでいるジョージに、ラヴェルは
あまりよい印象を持っていなかったのではないでせうか。できれば出典きぼん。
で、同性愛者ですか……そういや、ポーターもサフォーもそうなんですよね。
……いえ、わたしはノーマルですから。ちゃんと異性が好きですからねっっ。
んで、By Straussですけど、舞い上がった田舎物の戯れ唄の楽しさはありますが、
特に揶揄したり皮肉ったりしてるようには感じませんでした。わたしの英語力の無さ故かも。
でもちょっと聴いただけでこの歌詞味わえるなんてすごいですね。うらやましい。
「フランス名詩選」は岩波文庫のアンソロジーですよね。対訳って原詩の連分けに
合わせるために日本語に無理が出たりして、よくないことが多いので敬遠してました。
今度ちょっと見てみようかな。
堀口大學さんはわたしも好きな訳者ですね。でも新潮文庫で手に入りやすかったというの
が一番の理由かもしれません。なので、文庫になってない訳業はよくわからなかったりします。
そういえばデスノスも訳されてるんですよね。
あと、フランス詩では岩波文庫の鈴木信太郎さん。文語調の凛とした調子が好きで、
脚注が充実しているので重宝します。文庫なのであまり腹も痛みませんし、堀口訳と
読み比べると楽しい。でもマラルメ、ヴァレリーは、首を傾げたくなるような晦渋な訳が
多いです。日本語の詩として全体を見たら、堀口さんの方が読者には優しいかも。
764吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 23:00:07
>>759-761
こんばんは。>>759の文語訳いいですね。クラシックのお話歓迎します。
でも、

> 三好達治の詩で良いのはこの二つだけ。後は読む必要なし。
> 近代文学なんてつまらん。

もっと素直になりましょうw

今日の↓ ヴィヨン。もちろん鈴木さん。
765吾輩は名無しである:2007/06/22(金) 23:01:15
語れ、いま何處 いかなる國に在りや、
羅馬の遊女 美しきフロラ、
アルキピアダ、また、タイス
同じ血の通ひたるその從姉妹、
河の面 池の邊に
呼べば應ふる 木魂エコオ、
その美しさ 人の世の常にはあらず。
さはれさはれ 去年の雪 いまは何處。

いま何處、才拔羣のエロイース、
この人ゆゑに宮せられて エバイヤアルは
聖ドニの僧房 深く籠りたり、
かかる苦悩も 維 戀愛の因果也。
同じく、いま何處に在りや、ビュリダンを
嚢に封じ セエヌ河に
投ぜよと 命じたまひし 女王。
さはれさはれ 去年の雪 いまは何處。

人魚の聲 玲瓏と歌ひたる
百合のごと 眞白き太后ブランシュ、
大いなる御足のベルト姫、また ビエトリス、アリス、
メエヌの州を領じたるアランビュルジス、
ルウアンに英吉利人が火焙の刑に處したる
ロオレエヌの健き乙女のジャンヌ。
この君たちは いま何處、聖母マリアよ。
さはれさはれ 去年の雪 いまは何處。

わが君よ、この美しき姫たちの
いまは何處に在すやと 言問ふなかれ、
曲なしや ただ徒らに疊句を繰返すのみ、
さはれさはれ 去年の雪 いまは何處。
766吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 00:30:27
>>759
「さかしま」というところにグっときました。

>>763
「ベルリンフィルジルベスタ」というコンサートでガーシュインを演奏する、
という番組でした。そこで指揮者のサイモン・ラトルという人が
「ガーシュインとラヴェルは親しい友人でした」と言ってました。
でも「弟子入り」のエピソードを読むかぎりでは
ラヴェルは婉曲に断ったって感じだったのかな、と思えてくる。
だけど番組の中では「二人は互いの音楽が好きだったのです」って言ってる。
どういうことなんでしょうね。テキトーに言ったのかな…
By Straussは出てきた字幕を見ながら聴いてたので
その訳のせいで皮肉のように感じちゃったのかもしれません。面白い歌だなあと。
「フランス名詩選」、詩をあまり読んだことのない自分にはガイドブックのような感じでした。
>>764の詩は「フランス名詩選」にも入ってたんですが
文語調で読むとまた別のもののように感じます。「何處」←こんな漢字があるなんて!
767吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 00:34:24
  三本のマッチを一つずつ擦ってゆく夜の闇
    一本目は君の顔全体を見るため
        二本目は君の目を見るため
        最後の一本は君の口を見るため
あとの暗がり全体はそれをそっくり思い出すため
        君を抱きしめたまま。
768吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 04:15:18
儂は言ふ「預言者よ凶精よ しかはあれ儂が預言者よ 禽にまれはた妖異にまれ

人界をたち蔽ふ上天に是を誓ひ われ等両個を崇拝するかの神位に祈誓ひて是をまをす

哀傷を荷へるこの魂は 杳かなる埃田神苑に於いて、
天人の黎椰亜と呼べる嬋娟しの稀世の佼女これを獲べき歟
天人の黎椰亜と呼べる嬋娟しの稀世の佼女これを獲べき歟。」
大鴉いらへぬ「またとなけめ。」
769吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 22:40:24
>>766
ちょっとだけ図書館などで調べてみました。立ち読みなのでうろおぼえです。
まず、ラヴェルの側の伝記本を二、三当たりましたが、弟子入りの逸話以上の関係を
説いたものは見あたらなかったです。
ガーシュインの側の伝記本では、弟子入りの逸話に続けて、ラヴェルは、自分は教えられ
ないが、としながら、パリ音楽院のナディア・ブーランジュ教授への紹介状を書く労を
とった、とありました。ただしブーランジュも、すでに個性のできあがったガーシュイン
を教えられない(壊せない、ということでしょうね)として指導を断った、とあります。
ナディア・ブーランジュには、モダン・タンゴの重鎮アストル・ピアソラも一時期師事しています。
また、ラヴェルはガーシュインが作曲したミュージカル「ファニー・フェイス」の
ロンドン公演を見て、最終的には(微妙な書き方でした)熱心なファンになった、ともありました。
さらに、ラヴェルのト調ピアノ協奏曲(1931)にラプソディー・イン・ブルー(1926)の影響
を指摘する意見は、ネットでもいろいろ拾うことができます。
なので、茶飲み友達的親交ではなかったにせよ、単なる社交辞令を交わす以上の関係に、
二人はあった、と言うことはできると思いますし、互いの音楽が好きだった、というのも
間違っていないと思います。
あと、相思相愛についてですが、二人は共に生涯独身でしたが、ラヴェルは女性を
たいへん尊重していたそうですし、ガーシュインは女遊びがかなり派手だったようです。
ですから、同性愛者ということはたぶんないでしょうw 両刀? んー……
岩波文庫の「フランス名詩選」見ましたよ。はじめての詩人がかなりあって楽しい。
プレヴェールの>>767の前に置いてある、「鳥の肖像を書くために」という詩はとても
気に入りました。でも「ことば」の高畑さんの全訳、もう絶版なんだよなぁ……orz。

今日の↓ ボードレール
770吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 22:41:43
音楽は をりをりに 海のやうに私をうばふ!
あをじろい わたしの星にむかつて、
はてしない霧のふかみに また ひろびろとした空のなかに
わたしは帆をあげてゆく。

帆布のやうに
胸をはり 肺に息をすひこんで、
夜の闇におほはれはてた
たかまれる波の背に わたしはよぢのぼる。

なやめる船の
そのさまざまの苦しみに わたしは身ぶるひをする。
おひての風も 暴風も その動乱も

底しれぬ淵のうへに
わたしを ゆりゆり眠らせる。――また或時は なぎやはらいで、
わたしの絶望の大きな鏡!
771吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 23:25:54
跳り起ち声ふりしぼりこの儂は、「禽よ、この言葉をこそ袂別の符ともせよ。

大雨風や夜の闇の閻羅の界の海涯にとたち還れ、

爾の心の譚りたる誑誕の印として、 かの黝き羽をな賂ひそ。

儂がこの閑情をな攪乱しそ。 扉口なる石像の上を郤退け。

儂が胸奥よりは爾の鳥喙をさり、 この扉口よりは爾の姿相を消せ。」

大鴉いらへぬ「またとなけめ」
772吾輩は名無しである:2007/06/24(日) 00:24:26
>>768
黎椰亜←これでレノアだなんて!!!

>>769
「関係があった」ということ自体は間違ってはいないということなのですね。
でも微妙な書き方をしてるということは
ラヴェルのほうは思うところはあったという感じなのでしょうか。
ライバルみたいに思ってるところがあったのだろうか。
ラヴェルが、ガーシュインの影響を受けたと思われる曲をかいている、
というのは面白い事実のような。
「鳥の肖像を書くために」いいですよね。それは自分も好きな詩です。
同じプレヴェールの「朝の食事」で、カフェオレがミルクコーヒーという
訳になってるところが、なんだかわけもなく気に入ってました。
773吾輩は名無しである:2007/06/24(日) 00:26:51
森森、月月、花花、水水、
油断なき指指を持つ女よ
ぼくらは比肩すべき魔術を求めぬ
良くて詩人を、悪ければ魔法使いを
774吾輩は名無しである:2007/06/24(日) 01:39:22
さればこそ大鴉 いかで翔らず恬然とその座を占めつ、

儂が房室の扉の真上なる巴刺斯神像にぞ棲りたる。

その瞳こそげにげに魔神の夢みたるにも似たるかな。

灯影は禽の姿を映し出で、 床の上に黒影投げつ。

さればこそ儂が心 その床の上にただよへるかの黒影を

得免れむ便だも、 あなあはれ
−またとはなけめ。

775黎椰亜:2007/06/24(日) 01:54:06
クープランの「花開く百合」なんか、特にいいんじゃないですか。
776吾輩は名無しである:2007/06/24(日) 22:52:11
>>774

吉野山 峯の白雪 踏み分けて 入りにし人の 跡ぞ恋しき

しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな 

鴉つながりということでw
もうすこしわかりやすいものを貼ってくれるとうれしいです。


>>775
第3巻は第13組曲に限らず、いい曲が多いですよね。初めて聴くなら、この巻からかな。
クープランは最近聴いたのでは、A. Tharaudがピアノで弾いた選集が楽しかったです。


>>772
思うところ、というか、理解するのに時間がかかった、と読み取りました。
ありそうなことなので余り考えずにすぐ納得したです。なので読み違っているかもしれません。
ガーシュインと会う以前のラヴェルの作品、たとえばヴァイオリンソナタ(1927)など
にもジャズの影響は見られるようなので、ピアノ協奏曲に関しても、特にガーシュイン
の影響とせず、ジャズという新しい音楽の動勢を好意的に受け止め、取り入れようとした
しるしと捉えたほうがいいと思います。
あと、カフェオレはもう外来語として定着してますよね。でもこれはわざとでしょうね。
男の去り際の一挙一動をあまさずじっと見つめる女。なんかせつない。

今日の↓ なんとなく
777吾輩は名無しである:2007/06/24(日) 22:54:33
黒い蝶々にまじって
浅黒い少女がいく
白い霧の一匹の
ヘビとならんで

光は大地
大地は空

どうしてもとどかないリズム
その振動に魅せられた少女
彼女は持つ銀の心臓
右手には短刀

シギリーヤよ どこへいく
頭なきリズムとともに?
石灰と夾竹桃の
おまえの苦しみを
とりあげるのはどんな月?

光は大地
大地は空
778吾輩は名無しである:2007/06/25(月) 01:09:30
>>775
「花開く百合」ていう曲があるんですか。なんとなく覚えておこう。
文語調だと「鐘のうた」の擬音の部分はどんな訳になるのだろうか、とふと思いました。

>>776
ラヴェルもガーシュインも、まだ数曲しか聴いたことがないので
少しずつ聴いていきたいものです。ラヴェルも「ボレロ」と「水の戯れ」くらいしか知らなくて
いつかちゃんと聴いてみたいとずっと思っていました。
ジャズを取り入れようとしていた、とはまったく思いもよりませんでしたよ。
ミルクコーヒーだと、なんだかなつかしい感じですよね。子供の頃に飲んだのは
あれはカフェオレじゃなくてミルクコーヒーだったなーと思います。
プレヴェールの詩集も、手に入りやすそうなのあまりなさそうな感じですよね。
高畑勲さんの訳のもの、読んでみたいのですが絶版だというし
ああフランス語が読めたらなあ!と思います。
779吾輩は名無しである:2007/06/25(月) 01:12:33
まだ鸚鵡の時まで間がある
ある朝早く口笛の音に目をさまされ
窓辺にいってみると
庭は薄闇につつまれて若い男が一人
つぎのあたったズボンをはき
ぼくのサクラの木にのぼって
サクランボをつんで愉快そう
ぼくを見てうなずいて合図して
両手で枝々からポケットへ
サクランボとりいれていた
ぼくがまたベッドに横たわってからも
しばらくのあいだ聞こえていた
彼の吹く楽しい小さな歌の口笛
780吾輩は名無しである:2007/06/25(月) 02:51:54
>>778
鈴鐸歌

白銀の鐸
雪舟のすずの音きけば
いかで佚楽の世を言ひかたむ韻にもあるか。
ひややかなる夜気のうち
玲瓏玲瓏とこそ鳴りひびけ。
満天に
撒きちらしたる星屑が
水精の抃喜にまたたけるきはぞかし。
鑾 鑾 鑾 鑾
鑾 鑾 鑾のねいろや
錚々瓏々たり矣鑾鐸ゆ
伶楽さびてよびどむ丁当華鑾にうちつれて
古文北派体の古曲もて
律呂 律呂を諧せけむ。


やはり少しわかりにくいでしょうか。>765のヴィヨンの最後の節も、短歌にするとこうなります。

ふるとしの雪やいづくとあざかへし
このとしこの日跡とふなゆめ
781吾輩は名無しである:2007/06/25(月) 23:18:35
>>780
あのぅ、よくわからないのでだじゃれでごまかそうとしたんですけど……orz
んー、好みで語るなら別として、ことばは時代とともに移り変わるものだから、
その時々の読者にわかりやすく原詩の魅力を伝えようとすれば、口語自由詩に
移っていくのが当然の流れなのだろうと思います。
あとは、それが朗唱しても楽しいものになっていてくれるとうれしい。
あの、あなたとちがって、人の書いたものを貼るだけしかできない一般人の感想なので、
あまり絡まないでくださいね。

>>779
ラヴェルはそもそも作品数が少ないのですぐですよー。
お好きな独奏ピアノから聴きすすめるといいんではないでしょうか。
せっかくなので一枚、「鏡」と「クープランの墓」を弾いた、永井幸枝の演奏を
オススメしておきます。
あと、ミルクコーヒーはねぇ、わたしはコーヒー牛乳と呼んでいたですよ。
あぁ、書いちゃった……orz

今日の↓
782吾輩は名無しである:2007/06/25(月) 23:19:37
もゆる陽を
蓮はおそれ
うなじたれ
夜を待ちわぶ

恋うる月
光そそげば
花のおも
ほほえみひらく

そら見あげ
頬くれないに
なやましく
おののきかおる
783吾輩は名無しである:2007/06/26(火) 00:16:55
>>781
こちらこそ、流れを寸断しているようで申し訳ありません。文語にこだわってる訳ではないのですが。
「クープランの墓」はデュトワのオケ盤も良いかと。


イアシスの墓碑

イアシスここに眠る。この大都にみめよきをうたわれし者。賢者の賛美を
も凡人の渇仰をもほしいままにせしが ヘルメスよ ナルシスよ と愛で
らるるも度重なれば、ついに限りを越え、擦り切れて死にき。そこ行く人
よ、アレクサンドリアびとならば、われを責むるな。わがまちの狂熱を知
り、快楽に身も心も捧げつくす その民の生きざまを知らむきみなれば。
784吾輩は名無しである:2007/06/26(火) 01:05:26
>>780
鑾←こんな漢字があるなんて!読み方は「らん」なのでしょうか?
tintinnablationという言葉を見たときと同じくらいの衝撃を受けました。

>>781
ラヴェルは「ダフニスとクロエ」というのを、聴いてみたいです。
物語の方も、機会があったらどういう話なのか知りたいと思っていました。
岩波文庫から出ていたので、読みたい。
バレエのほうもBSあたりでやってくれないかなあと思います。
演奏、永井幸枝さんという人のがよいんですか。
探せるかな。うまく探せたらそれを是非聴いてみます。
コーヒー牛乳でおk!
785吾輩は名無しである:2007/06/26(火) 01:09:46
慎み深い薔薇は棘を出す、
謙虚な羊は角を出す。
一方、白百合の花は愛を喜び、
棘も脅しもその輝く美を汚さない。
786780・783:2007/06/26(火) 01:18:22
>>784
はい、読み方は「らん」です。
787吾輩は名無しである:2007/06/26(火) 23:14:38
>>783
生意気言ってごめんなさい。わたしの戯れ言など気にせず、思うようにしてください。
中井さんのカヴァフィス貼ってくれてありがとう。流れがあったのと、少し自分の好みと
肌合いがずれていて選びにくかったので、今まで貼りそびれていました。

>>784
「ダフニスとクロエ」は私も原作を読んだことがないです。
だいぶ前に読んだ、「笛ものがたり」っていう本の、笛と恋、という章に、
ダフニスがクロエに笛を教えるときに、笛を仲立ちに間接キスをせしめるくだりが
引用されていたのを思い出したので確認したら、呉さんの訳でした。
以前、角川文庫から出ていたようですので、すこし気をつけてみることにします。
岩波文庫の松平さんの訳はまだ在庫があるみたいですよー。
あと、ラヴェル関連本ではベルトランの「夜のガスパール」、これは本棚にありました!
積ん読のままになってましたけど……orz
ラヴェルの音楽の方は、終曲近くの「無言劇」のフルートが美しいです。
依頼主のディアギレフはラヴェルよりストラヴィンスキーの印象が強いですよね。

今日の↓ 「笛ものがたり」に引用されてたものの別訳です。
788吾輩は名無しである:2007/06/26(火) 23:15:49
 ヒュアキントスのお祭りのためにとて、あの人が
笛をくれた。みごとに切りそろえた葦の茎を
白蝋で固め合わせた笛。脣に当てれば蜜のような甘さ。

 膝に坐ったわたしに、あの人が吹き方を教えてくれる。
でもわたしは小さく身震い。わたしの後にあの人が吹く、
かそけき音色で、聞き取れぬほどに。

 こうしてぴったりと寄り添ってさえいれば、なんにも
話すこととてない。でもわたしたちの奏でる歌だけは、
かたみに応えようとして、二人の口は代わり代わりに
葦笛の上で重なり合う。

 もう時間も遅い。夜になると聞こえ出す、青蛙の歌が始まった。
失くした帯を探すのに、こんなに時間がかかったなんて、
母さんが信じてくれるはずはない。
789吾輩は名無しである:2007/06/27(水) 00:31:41
>>786
「らん」でよかったんですね。初めて知った漢字ですた。

>>787
「夜のガスパール」という詩集が先にあって、そこからラヴェルが曲を作ったんですね。
こういうのは両方読んで聴いてみたいものです。
以前に見た「肉体と悪魔」という映画で
煙草を仲立ちにキスをするというシーンがあって、とても印象に残ってました。
でも、笛を仲立ちに、というのがすでにあったんですね。古典の中に。
もしかしたらよくあるのかな。
>>788の詩を読んで、「ダフニスとクロエ」にさらに興味出てきました。
葦の茎を白蝋で固めた笛ってどんな音がするんだろ。
790吾輩は名無しである:2007/06/27(水) 00:35:39
この鍵にふれる私の指が音楽を
つくるように、私の魂にふれる
同じ音もまた音楽をつくる。

音楽は感情、だから音ではない
だから此処この部屋の中で君を求めて
私の感じているものが音楽なのだ。

君の青い影のある絹服を思うことは
音楽だ。それはスザンナがあの長老たち
の心にかき立てたいらだちのようなものだ。

みどりいろの夕暮れ、澄んだ暖かい夕暮れ、
彼女は静かな庭で水浴していた、すると
赤い眼の長老たちがのぞき見して

魔法の絃で自分たちの心の低い動悸の音を感じた
そして彼らの薄い血はホザンナの
爪弾曲を鳴らしている。
791吾輩は名無しである:2007/06/27(水) 02:14:01
女神は紫の季節を花の宝石で彩る。浮き上がる蕾を西風の呼吸で暖い総に繁ら
すためにあふる。夜の微風がすぎるとき残してゆく光る露の濡れた滴りを播きち
らす。
明日は恋なき者に恋あれ、明日は恋ある者にも恋あれ。
792吾輩は名無しである:2007/06/27(水) 23:05:30
>>789
ルイスのその詩や「ダフニスとクロエ」に出てくる笛はパンの笛です。音の高さごとに
切りそろえた管をまとめてつくります。アンデスの民族音楽なんかで今でも使われてます。
呉さんはその形から笙の訳語をあてていますが、これは音を出す仕組みが違いますから
正確には×です。ただ、ハーモニカのように吸っても音が出ますので(ry
マラルメの「牧神の午後」では太い双つの芦茎を選んで云々とありますから、アウロスの
笛ですね。しかしこれはオーボエの仲間で、フルートとは音色が異なるようです。
でも、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」のフルートは、気怠く艶っぽく、
美しいです。これを他の楽器になんて、ちょっと考えられない。

>>791
西脇さんの詩は食わず嫌いというか、いままで全然触れてこなかったのですが、
これはいいですね。もっとお好きな詩をたくさん教えてください。
あと、「ダフニス」と「牧神」のオススメもw

今日の↓ ルイスの「ビリティスの歌」から、ドビュッシーが歌曲にしたものをもう一つ
793吾輩は名無しである:2007/06/27(水) 23:07:05
 あの人がわたしに言ったわ。「ゆうべ夢を見たんだ。
きみの髪がぼくの首に巻きついて、
頸と胸で、黒い首飾りのようだった。

 その髪を愛撫していたら、それが僕の髪になっていたのさ。
脣と脣とをかさね合わせて、ぼくたちは同じ髪で
そのまま永遠に結び合わされていたんだ、
二本の月桂樹が一つの根から生えているみたいに。

 そして次第にこんなふうに思われてきたんだ、
ぼくたちのからだがしっかりと絡み合ってしまい、
ぼくがきみになったか、それとも夢とおんなじに
きみがぼくの中に入ってきたかのようにね」

 こう言い終えると、あの人はわたしの肩にそっと手を置いて、
やさしいまなざしで、わたしにじっと見入った。
それで思わず身震いし、眼を伏せてしまったの。
794吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 00:45:13
>>792
そうですねぇ、オーソドックスですが「ダフニスとクロエ」はデュトワ、「牧神」はクリュイタンスが好きです。
今の季節、ドビュッシーの「版画」を、ゾルタン・コチシュでよく聴きますが、ドビュッシーとしては異色かもですが、雨の匂いや色までも感じさせる演奏で、好きですね
795吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 00:59:58
めざめる夢をみる男の如く ねむられず夜明前
露の間の旅に 何人の山の家か知らねど
白いペンキの門をくぐり 坂をのぼつた
東南に傾いた山 青磁色の山々が地平に
小さく並んでゐる そのテラスの上に
水つきひからびた噴水の 真中に古さびた青銅のトリトン
淋しくしやがんでゐる 水なきふくべの如く
香水の空瓶の如く 鎗さびの五月の朝
家の窓は皆とざされ ただ二階に一つあく窓
花咲くいばらの中から外へ開かれ 鏡台のうしろが見える
何人の住める
山の端に夜明の あざみの色のふるへる頃
ひばりの尖搭に 夢を結ぶ女の住むところか
この荒れはてた家に うれしき夢の後かまた
ねむれずにか早く起きて 髪をくしけずる
女の知りたき
蜜月の旅の 昔のねどこか
入口の階段に 石に刻まれた若き恋人の
抱擁の中から苔のさがり 黄色い菫の咲く
春のせつなさ
坂の途中かたいきの哀れなる 杉葉を摘む女は語らず
誕生の日の近づく ばらの実の
いとほしき生命の実の ささやきのささやきの
葉をうつ音永劫の思ひ
796吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 01:56:50
>>792
「パンの笛」で検索してみたら、なんとなく見たことのある形の笛が出てきました。
ああいう長さの切りそろえてある笛、プラスチックで出来た小さいおもちゃのタイプを
子供の頃に持っていたような記憶が。
楽器についてもたくさんご存知なんですね。
子供の頃にいろんな楽器やっていればよかったなあ、と
たまに思うことがあります。
「牧神の午後への前奏曲」を聴くときには
フルートに注目してみようと思います。

>>795
「版画」!「雨の庭」!
(・∀・)イイ!!
797吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 01:59:23
ぼくはめざめる 雨が降る 風がおまえに しみとおる ドゥーヴよ
ぼくのちかくに眠っている樹脂のような 荒野よ ぼくはテラスのうえにいる
死の穴のなかにいる 葉の茂みの おおきな犬たちがふるえる

突然戸のうえで おまえがあげる腕が 時代をこえてぼくをかがやかす消炭の村
ドゥーヴよ ぼくはみる おまえが一瞬毎にうまれるのを
一瞬毎に死んでゆくのを
798ボコノン:2007/06/28(木) 12:15:52
「大地の歌」第五楽章'春に酔える者’〜李白による

人生よし一場の夢に過ぎざらば
労苦心苦もなんの甲斐やあらん?
吾寧ろ日がな酒に溺れてむ、
呑むに呑めざる境に至るまで。

魂もからだも酔ひしれて
よろめきつつも
宿の戸口に辿りつき
やがてその場に眠りこむ。

寝覚めの時、吾を待ちゐるは誰ぞ?
軒先の庭木に囀る鶯一羽
吾鶯に問う、
「春ははや来たるや?」

鶯答えて言ふ、
「春は来たりて此処にあり、
夜の闇超へて来るなり」と。
鶯は歌ひ笑ひ、吾その声に聞き惚れてをりき。

溜息をつき、再び酒を注ぎて呑み、
吾も終日歌うたはん。
夜空に月の輝き出づるまで。

春もはや来たりぬと言へど、
吾に何の用かあらん。
歌ふ歌もなきまでにうたひ、
呑むに呑み得ぬまでに呑まん、
酔ひつかれて眠り込む頃まで。
799ボコノン:2007/06/28(木) 12:26:08
これも至極テキトウな訳。変なところがあれば乞御指摘。
800吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 23:04:09
>>794
コチシュはお国ぶりのバルトークとリストが一枚ずつ手元にあるだけですた。
コチシュはドビュッシー得意のようですね。今度探してみます。
わたしは「版画」だとルヴィエかなー。
艶は不足気味ですが、明晰で誠実な演奏で気に入っています。
あと、棚をほじくっていたら、対の錦鯉の金蒔絵のジャケットのCDが出てきたです。
蒔絵はドビュッシーの愛蔵品らしい。「映像」第2集の霊感の源でしょうか。

>>796
楽器の話は聞いたり読んだりした話を元にそのまま書いているだけですよ。
あと、楽器のことを知っていると、音楽を聴く時に少しだけ余分に楽しめます。
読書もおんなじですよね。

>>799
すみません。好き嫌いでしか言えませんが、この訳は好みです。
鶯はベートゲではなく、李白の原詩からですよね?

今日の↓ 
801吾輩は名無しである:2007/06/28(木) 23:05:25
あちこちに、手が見える。
いくつもの手の黒い群れ!
燃えるような手、冷たい手、
手招きする手、盗人の手、諦めた手、
むしばまれた手、陽気な手、そして、麻痺した手の数々!

ぼくは悲しい夢人形、
操る手が動き出し、
ぼくと踊る、
手は星空高く、舞い上がり、
水底深く、潜っていく。

それらの手はぼくの夢、ぼくの酒、
ぼくの女、情熱、
それらの手は、空っぽの運命、
手が望む時にだけ満たされる
空っぽの運命。

ぼくは偉大な犠牲だ、
薪を燃やす背徳の子孫、
だから、責め苦を受け入れる、
ぼくには何もない、一本の葉巻があるだけ、
だが、その煙は勢いよく飛び出していく。

手よ、芳しい香りを
まき散らせ、薪はもう燃えている、
手よ、ちょっと待って、
待ってくれ、葉巻が燃えるまで、
すぐ、すぐに火がつくから。
802吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 00:13:32
>>800
コチシュのバルトークいいですね。こちらも掻き回してたら、プラッソンのフォーレが出てきたので、「ペレアスとメリザンド」をかけてみましたが、なんか蒸し暑い晩に合わないというか、自分の感覚では秋のものなので、R.シュトラウスの「四つの最後の歌」に落ち着きました。
803吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 00:19:01
黄色い菫の咲く頃
今は昔
海豚は天にも海にも頭をもたげ
船の尖りに花を飾り
ディオニソスの老神が
何事か夢みなが航行する
あの模様のついた皿の中で
顔を洗ふ麗な朝の忘らるる
そんな日に
宝石商人と一緒に地中海を渡る
少年も犬も忘られ
カラブリアの山々も忘らるる
804吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 01:14:09
ドビュッシーが好きとかいいながら
CD2枚しか持ってなかったです
3枚目探そう(・∀・)
805吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 01:18:53
暗くなりながら 水は魚たちの美しい戯れをめぐって流れる。
悲しみの時、太陽の沈黙するながめ。
地上では魂は異端のもの。霊のようにたそがれる
伐りひらかれた森の上の青さ、そして長く尾をひいて
暗い鐘が村で鳴っている。おだやかな道連れ。
死者の白い瞼の上でミルテは静かに花ひらく。

沈みゆく午後 水はひそかに音たてて
岸辺の荒野とバラ色の風の中の喜びは 緑の色を濃くする。
夕暮れの丘では兄弟のやさしい歌が。
806吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 23:01:10
>>802
シュトラウス! いいですよねー。あのウム、パ、パって3/4拍子でswingするやつ!
やっぱパリの夜会はシュトラウスでなきゃ! やー、バンマス君、もう一曲頼むよ。
それで、あのぅ……ニーチェって、誰ですか?



……とりあえずヘッセ貼っときます……orz

>>804
ごめんね。お詫びに今日はもう一つ貼りますね。
807吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 23:02:49
一日のいとなみに疲れて、
私の切なる願いは
疲れた子どものように、
星月夜をしみじみと抱きしめる。

手よ、すべての仕事をやめよ、
ひたいよ、すべての考えを忘れよ、
私の五官はみな
まどろみの中に沈もうとする。

魂はのんびりと
自由な翼で浮び、
夜の魔法の世界に
深く千変万化に生きようとする。
808吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 23:03:24
幾千年幾万年あったとしても
語るには
まだ足りない
ぼくがきみにキスし
きみがぼくにキスした
あの永遠の一瞬
ある朝 冬の光のなかで
パリのモンスーリ公園で
パリで
地球の上で
地球 それはひとつの星。
809吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 23:50:16
>>806
よい詩ですね。
第二帝政期のパリでは、オッフェンバックやマイアーベアのワルツやポルカも人気が高かったみたいですよ。
ってぁの・・・

ニーチェは野坂昭行ですw
810吾輩は名無しである:2007/06/29(金) 23:52:38
−−《陛下》陽光に明るく輝く古きパリを、礼拝堂の小窓から眺
めていた国王に、オジェ殿が尋ねた。《ルーヴル宮の中庭の、枝葉
が広がった葡萄の中を、喰い意地の張った雀どもが飛び廻っている
物音がお聞こえになりませぬか?》

 −−《聞こえぬでか!》国王が答えた。《面白い囀りではない
か。》

−−《この葡萄畑は陛下の庭にありますが、しかし陛下はその収
穫をお手にすることはできませぬ。》オジェ殿は穏やか微笑を浮
べて言った。《雀は厚かましい盗人でございます、この盗みが彼ら
を増長させて、これからも絶えず盗みに参ることでしょう。雀ども
は陛下の葡萄畑を陛下に代って摘みとってしまいます。》

−−《おお!それはならぬ!オジェ!余は雀どもを追い払
うぞ!》国王は叫んだ。

王が金鎖の輪に下げた象牙の呼子を唇にあて、強く鋭く吹くと、
雀は宮殿の屋根へ飛び去った。

−−《陛下》そこでオジェ殿が言った。《只今のことから一つ
の譬えを語ることをお許し下さい。あの雀どもは陛下の貴族衆であ
り、この葡萄畑は陛下の人民でございます。貴族は人民の金で日夜宴を張っております。陛下、人民を喰いものにする者は主人をも喰
いものにします。もう略奪は沢山です!呼子の一吹きで、御自身
で御自分の葡萄畑を穫り入れて下さりませ。》

−−オジェ殿はとまどい気味に、指で帽子の先を捻っていた。シャル
ル六世は哀し気に首を振った。そしてこのパリ市民の手を握りなが
ら、−−《お前は勇気ある人物じゃ!》と嘆息をついた。
811吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 00:55:25
ヘッセの「幸福論」 (;∀;)イイハナシダッタナア
812吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 00:56:31
子供のとき 飢えと恐怖で病気になった
記憶の中でなめる塩辛く冷たい味
僕は歩く どこまでも
玄関の階段に座って 暖を求め
笛の音につられるように ふらふら歩く
暑い 服をゆるめ横になる
ラッパが鳴り 光がまぶたを射し
馬が駆けた
母が道の上高く舞い上がり
手招きし
そして飛び去った
子供のとき僕は病気になった
813吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 01:50:12
>>811
雨後の月は綺麗ですね。三枚目のドビュッシーは、どれになるのかな。
自分ももう一つ貼ります。
814吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 01:50:57
永遠の
果てしない野に
夢みる
睡蓮よ
現在に
めざめるな
宝石の限りない
眠りのように
815ボコノン:2007/06/30(土) 14:39:23
「大地の歌」終楽章`告別’〜孟浩然/王維による(T)

山並みに夕陽落ち
寒々しき山あひに
夕闇ぞしのび来る。

見上ぐれば蒼き天球に
銀の小舟のごと月は昇り
小暗き松の陰に
吾一人涼風受けてをりき。

清らなる小川のせせらぎも
夕闇に音高く、
花々は夕映えに色失ひぬ。

大地は眠りに落ち
総ての憧れのこころが夢見始む。
生に疲れし者たちは家路につき
失はれし幸福と青春とを
夢のうちに取り返さんとす。

鳥達も静かに木々にやすらふ。
世界は眠りに落ちぬらし。


(つづく)





816吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 23:00:15
いろいろ、ごめんなさい。しばらく黙って貼ります。
817吾輩は名無しである:2007/06/30(土) 23:00:49
契おけり 小舟に乗りて 君とわれ
 ただ只管に 漕ぎ出でむと
天地に 知るものなけむ われらの道行
 何処に行くか 何れの国に
   岸遠く 海原行きて
   歌ひ聞かせむ ただ君の耳に
   浪に似て 詞の絆も絶えし
 わが相聞の曲を 聞きませ 声なく笑ぎて

今日 かの人は閑なかりしか 生業の残りしか
 夕闇迫れり 海の岸辺に
黄昏に 翼ひろげて 海辺の鳥は
 己が塒にみな帰り来ぬ
   君は何時 船場に来て
   纜を 断ち切りますや
   夕日の名残りの光明に似て
 小舟は 夜の帳に消え行かむ 人知れず
818吾輩は名無しである:2007/07/01(日) 01:19:02
>>813
聴きたい曲が入ってるのを
手当たり次第にいってみようかとおもいます
自分が持ってるのはウェルナー・ハース?という人のCDでした

>>816
レス楽しんで読んでますよw
自分だけだと見つけられるもののパターンって決まってくるんですが
別の角度から知らないことが聞けるのがおもしろいなあと
オヌヌメのものがあったらまた教えてください
819吾輩は名無しである:2007/07/01(日) 01:20:33
ああ 昇ってはまた落ちてくることから
この私の内部にも このように「存在するもの」が生まれでるといい
ああ 手なしで さし上げたり 受取ったりすることよ
精神のたたずみよ 毬のない毬遊びよ
820吾輩は名無しである:2007/07/01(日) 01:53:34
>>818
ウェルナーさんは知らないな〜。調べて見ようかな。

>>816
どうしちゃったんですか?シュトラウスのボケ、面白かったのに。
821吾輩は名無しである:2007/07/01(日) 01:57:14
疲れた若い労働者の夫婦が
窓のところへ椅子を引き寄せて
トスカーナの野に沈む太陽を
淋しそうに見ていた

鉄道線路の近くにニレの樹の下に
薮の上を這つて
モメンズルの花が白く咲いていた

フィレンツェで蘆笛をふいている
やせたパンの男根の神を
くず鉄で作つた人形と
紺色の蔓草を描いた灰皿と
ウフィツィーのヴィーナスのスライドと
海水浴へ行くのに都合のよい
藁で作つた籠を
買つた

突然
真夏がフィエゾレの山々へやつて来た
うす水色のドレスを着たサランドラ夫人は
すり鉢のような麦藁帽子を
買つた
822ボコノン:2007/07/01(日) 06:47:12
「大地の歌」終楽章(U)

松の木陰に吹く風もはや冷たきに
吾は友を待ちわびてをり。
永遠のわかれを告げんとして。

君をりせばこの美しき夕景を
ともに賞でやうものを。
君は今いづこ?
吾は一人待ちわびて立つ。

吾は琴を抱きて
草の花のやはらかに
波打つ道をさまよひぬ。

おお美しき哉、
おお永遠の愛に、生に、酔へる世界!

(つづく)

余談ながら、「大地の歌」はベートーベン第九と同じく、高名な割りにはこれぞ
決定盤!というようなディスクがない気がする。小生は最近買ったシノーポリ盤
が結構気に入ったのだけれど、友人には変な顔をされた。
ワルターも、インバルも良いんだけど・・・ベルティーニかな、次聴くとしたら。
823吾輩は名無しである:2007/07/01(日) 22:47:24
馨しい小枝ひとつを振り回し、
  闇の中でこの幸を飲みこみながら、
夕立ちに痴れた水分が花の
  萼から萼へと駆けて流れた。

萼から萼へ転がり落ちながら、
  その二つの萼のうえに滑り止まり、その二つに
雨しずくのおおきな瑪瑙となって
  懸かった、そして燦めき、おじけづいている。

甘いユキヤナギの灌木に吹きそよぐ風に
  しずくを苦しめ、ひらたくさせよ。
それは無瑕のままで、くだけようもない――
  二つのなおも接吻しあい飲んでいるしずくは。

しずくたちは声たてて笑い 千切れ落ちようと努め
  そしてもとのようにしゃんと身をたて
柱頭から流れ出ようもなく、
  そして切られても、この雨しずくたちは離れない。
824吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 00:56:16
>>822
素敵な訳ですね。シノーポリはロッシーニのオペラではまりました。


>>823
雨ですね。今夜は夏らしく、D・スカルラッティのチェンバロソナタを聴いていますよ。
825吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 00:57:22
わが世の数のうちにしも
うきよのさがはみられざり
ただかりそめのにくしみに
甘軟の愛をわすれてこととせず。

侘び人とてもことしぬび
さきくくらしてあるなるを
ただゆきずりのわがさだめ
緑葉のかなしみたまふぞなげかるる。
826吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 02:37:49
詩も好きでクラシックも好きな方はもしや多いのでしょうか?
自分が知らなすぎるだけなのか。
唯一見たことのあるオペラがロッシーニの「セビリアの理髪師」でした。
雨の日はエレクトロニカが聴きたくなります。
827吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 02:39:45
蓮と蛙が、
 雨がふる、雨がふる、ぬれるよ。
鰐を見張っている。
 鰐が泣く、鰐が泣く、鰐の涙はそら涙。
蓮は優しい花陰に、
蛙をかくまってやる。
 雨がふる、雨がふる、ぬれるよ。
828吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 02:51:04
>>826
色々じゃないでしょうか。エレクトロニカって、どんなもの?
なんか新参の自分が、スレ主っぽい方を黙らせたのでは、と気になるのですが。どなたの詩ですか?好きです。ついでにも一つ。
829吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 02:56:44
夏はよし、
君が水のべ。

皆すずし、
石の、濡れ色。

白き蓮
半ばくづれて、

かはせみの
ねらひ澄ますと、

早や、そよぐ
蓮の実の蕊。

折れ曲がる
影の、一茎。
830吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 23:09:59
ん? わたしのこころはいたって平静ですが?
831吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 23:10:33
正午なり……真白き道は海に走れり。
明き日の光窓より入りて、
まだ暑からぬ部屋の床板に、
出入の人の歩みにつきて落散りし
乾きてかゞやく砂を照す。
日曜と夏との匂ひに空気は爽なり。
日にやけし布と松脂の薫りよ。如何となれば、
布荒き日蔽には枝に下りし
松の実の影描かれたり。
静さは其さへもいと遠く思はるゝ迄の静さに、
想は去りて心空しき折からに
しづしづと身を動してPARESSEと呼ぶ女姿は
更によく倦みし休みを味はんと、
伏目遣ひの優しき眼を閉ぢ合せ、
長々と横はる柳細工の椅子の上、
真裸の快さ、人目に触れぬ嬉しさに窃とほゝゑむ。
832吾輩は名無しである:2007/07/02(月) 23:59:17
それは重畳。
833吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 00:00:05
軽い蹄の音ひびかせて
牧歌牧歌とキリンの散歩
(まばらな草原にねそべって
金いろのライオンは金いろのひるね)

風の葉脈
光の木の葉
高い梢にあご漂わせ
天上的なキリンの午餐

終えてまた 牧歌牧歌と散歩を開始
恍惚と砂あびをする縞馬の
砂の虹を脚にからませ
ライオンの金いろの夢を見おろしながら

帰るところはどこにある
遠ざかる軽い蹄の音ひびかせて
これは無限のダ・カポです
これは夢幻のダ・カポです
834吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 02:00:17
>>828
エレクトロニカ≒ロマンチックなテクノ?
と勝手に解釈してます。ほんとは電子音楽全般のことを指すらしいです。
827はデスノスの「蓮」という詩です。
>>829はどなたの詩なのでしょうか?簡潔だけど映像的な詩ですね。

>>830
平静でヨカタ(`・ω・´)
835吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 02:10:50
四つの夏は韻を踏んだ四行詩。
海と空とが韻を踏んで部屋の中に吊るされている。
ヒナゲシは夏の手首にはまった腕時計。
時計が正午を告げる。
太陽の指はきみを追って髪をつかみ
光と風の中に宙吊りにする。
836吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 23:11:33
テクノか……なにもかも皆懐かしい……
837吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 23:11:55
やかましく鳴く蝉よ、
おまえは露の雫を吸って酔い
人気ない野原の唯中で
鄙びた歌をうたつている。
木の葉の端にじつととまつては
陽を浴びて黒ずんだその腹に
鋸に似た脚打ち合わせ
竪琴に似た響を立てている。
だが、おい、わしの友だちよ、
森に棲むニンフらのために
なにか新しい曲をうたつてくれないか、
パーンの笛に応えて
楽しい歌声を響かせながら、
さすればわしもエロースの手を逃れ、
濃い陰をなしている
このプラタナスの樹の下で、
ゆつたりと身を横たえて
ちと午睡を愉しもうか。
838吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 23:51:22
>>834
テクノですか。電子音楽というと、ノイバウテンやゴッド・フレッシュ辺りはよく聴いておりましたが。
デスノスさんでつか。シュールの方はまだ読んだことがないな。
>829は白秋の『蓮の実』です。副題に「唐画」とあるので、やはり映像的なのだと思います。

>>836
自分もやはり懐かしい方かと。
839吾輩は名無しである:2007/07/03(火) 23:52:54
陶板を敷きつめた長い廊下に、わたしたちは、わたしは
ゐて、わたしたちの、わたしの長い衣の裾が、血の汚点
のある床面を擦る。太鼓のすり打ちとともに、緑色の揺
籃が水に投じられる。肥つた山羊が次々と咽喉を裂かれ、
床はまたしても血にまみれる。廊下の突き当たりは、夕闇
にすでに閉ざされて、さだかには見通せないが、ただ、
あの燐のやうな光を放つ巨大な牛の首が、わたしたちを、
わたしを、待ちうけてゐること、そのことだけは、痛い
ほど判る。
840吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 00:27:22
ふーん、わたしにとってテクノといえば刈り上げの三人組なんだけどね。
怪談結構。だけどちょっと丸めとくよ。悪く思わないでくれ。
841吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 00:28:44
マルメロの林にたゆとう風。
ブドウの樹液を吸う虫。
サソリが甲羅に載せる石。
打穀場に積まれ、
裸足の子どもが巨人に見立てる麦束。

蘇りの形象は
松の枝に擦られた壁にある。
真昼の陽を背負う漆喰、
そしてセミ。樹の耳の中にいるセミ。

石灰岩の大いなる夏。
コルクカシワの大いなる夏。
突風にかしぐ赤い帆の群。
海底の白い生き物と海綿、
岩のアコーディオン、
下手な漁師の手柄のスズキ、
陽の釣り糸を引っ掛ける誇り高いサンゴ礁。

誰も我等の運命を告げまい。それもよし。
我等は太陽の運命を告げよう。そういうこと。
842吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 02:03:28
>>838
北原白秋は、童謡の詩がずっと気になっていました。
「からたちの花」の詩をはじめて読んだとき、なんだろうこれは、と驚いて
詩に興味を持つようになりました。
>>829の詩もいいな!
ノイバウテンてドイツの人たちなんですね。
自分が一番よく聴くCDもそういえばドイツのグループです。

>>840
三人組、電気グルーヴ?刈り上げじゃないか。
843吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 02:12:53
求めていたものが見つからないからといって
不平は言えないとぼくは思う
水分を失った石や昆虫の抜けがらの傍らでも
ぼくは裸の子供たちと太陽の戦いを見ることはないだろう

しかしぼくは 衝撃と 液体と 物音の
原初の風景へと戻っていくつもりだ
――それは赤子を掘り起こし
そこでは物の表面のすべてが回避される――
ぼくが愛や砂にまじって飛んでいくとき
求めるものにこそ歓びがあることを理解するために
844ボコノン:2007/07/04(水) 12:02:53
「大地の歌」終楽章(V)

吾友来りて馬を下り
別れの盃差出し
吾に問ふ、
「君何処に行かんとするや、
 何故にや?」

愁ひに沈める声にて答ふ、
「吾友よ、今生にては
 吾幸くある事かなはざりき。
 何処にや行くべき?
 吾は山にぞ入りゆかん。
 寂しき心も憩ふべき、ふるさとを、
 つひの棲家を求めさまよふ、
 されどいと遠き方にもあらざらん。
 吾心澄まし、その時を迎へん。」

春来る時、慈愛の大地の
緑も新たに、至る所に花咲きて、
天地の果つる処まで、
永遠の、青き光こそ満つるらめ。
永遠に、永遠に・・・・

(了)
845ボコノン:2007/07/04(水) 12:03:51
「大地の歌」終楽章(V)

吾友来りて馬を下り
別れの盃差出し
吾に問ふ、
「君何処に行かんとするや、
 何故にや?」

愁ひに沈める声にて答ふ、
「吾友よ、今生にては
 吾幸くある事かなはざりき。
 何処にや行くべき?
 吾は山にぞ入りゆかん。
 寂しき心も憩ふべき、ふるさとを、
 つひの棲家を求めさまよふ、
 されどいと遠き方にもあらざらん。
 吾心澄まし、その時を迎へん。」

春来る時、慈愛の大地の
緑も新たに、至る所に花咲きて、
天地の果つる処まで、
永遠の、青き光こそ満つるらめ。
永遠に、永遠に・・・・

(了)
846ボコノン:2007/07/04(水) 12:27:54
間違えて二度送ってしまった。

さて終楽章は、表面的には死に場所を求めて山に入って行こうとしている者
が語っているようにも見えるけれど、それではあんまり身も蓋もなくて詩に
はならない気がするので、ここは(中国人にとっては必ずしも後ろ向きな生き
方ではない)隠者になろうとしている者の事と解したい、と私は思うのですが
ベートゲの詩は、その辺が少し曖昧な感じがするのは私だけか知らん。

それから、最後のところの「青い光 blauen licht」というのは何を指すのか
正直私にはよく分からない。ドイツ語、漢文学に詳しい方、ご教示頂けたら幸甚
であります。
847吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 12:33:38
>>839
つ 入沢康夫乙
848吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 22:44:49
>>846
参考になるかどうかわかりませんが、どうぞ。
ttp://www.japanphil-21.com/club/haohao/hao-gd-erde4.htm
ttp://homepage2.nifty.com/182494/LiederhausUmegaoka/songs/M/Mahler/S657.htm

>>847
ありがとう。人生は短いので、助かります。

>>842-843
わかんないかw まぁいいや。
849吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 22:45:53
日暮れ。光は悲しみに色褪せて、
鐘の音が物憂く沈んでゆく。
言葉は言わないでくれ。ぼくのなかで
愛の響きは黙り、そして時は
風や森と語りあった
昔のように、ぼくのものになった。

まどろみは空から垂れて
月明りの水に溶ける、
家はみな山々の睡りを眠り
雪は榛の木の梢に天使たちを休ませていた、
そして星座は曇った窓ガラスに
凧のように張りついていた。

緑に漂う島影、
岸辺に近づく帆の群れ、
帆綱と櫂を軋ませながら
雲と海とを追ってきた水夫たちが
ぼくに置いていってくれた
白い露わな肌の獲物よ、触れれば
密かに聞こえてきた
谷川や折り重なる岩の声。

やがて陸地が
水槽の底に置かれ、
そして倦怠の不安とその他の動きの命とが
夢うつつの天空に降り積った。

あなたを持つことの驚愕
それはあらゆる嘆きを飽きさせてしまう、
島影が呼び覚ます甘美さ。
850吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 23:49:40
>>848
YMOですねw

今日は短く俳句で。
851吾輩は名無しである:2007/07/04(水) 23:51:13
卓上の鮓に目寒し観魚亭


寂莫と昼間を鮓のなれ加減


鮒鮓や彦根の城に雲かかる
852吾輩は名無しである:2007/07/05(木) 01:55:33
>>848
ボケてみようかなと思って。どうやら失敗しますた。

訳者としての入沢康夫さんも(・∀・)イイ!!
好きな詩に入沢訳も多いなあ。
853吾輩は名無しである:2007/07/05(木) 01:56:41
あの彫像があげた腕を下ろすのを森じゅうが待っている。
それは多分今日だろう。
昨日 人びとは考えていた それは多分昨日だろうと。
今日、人びとは信じている。木の根さえが知っている。
それは多分 今日だろう。
854吾輩は名無しである:2007/07/05(木) 22:51:59
>>848に追加。今更でしょうけど。
漢詩 見事な韻文訳
ttp://www.rinku.zaq.ne.jp/bkcwx505/index.html
ドイツリート 歌詞対訳
ttp://www.damo-net.com/uebersetzung.htm
クラシック 歌詞対訳 原詩→各国語 注)日本語はありません
ttp://www.recmusic.org/lieder/

漢詩というと訓読書き下し文か散文調になってしまうのはいかにも不満。
上のサイトや>>474、↓のような韻文訳、他にないですか?
855吾輩は名無しである:2007/07/05(木) 22:52:41
岸辺の林花ひらき
江はあらたまり生めきぬ
月出しほの江に浮び
光ながれて花にほひ
石閧フ淀のさやけさに
紗を浣ぐ子も照されて
856吾輩は名無しである:2007/07/05(木) 22:54:03
雨はふる、ふる雨の靄がくれに
ひとすぢの煙立つ、誰が生活ぞ
銀鼠にからみゆく古代紫、
その空に城ケ島近く横たふ。

なべてみな空なりや、海の面に
輪をかくは水脈のすぢ、あるは離れて
しみじみと泣きわかれゆく、
その上にあるかなきふる雨の脚。

遥かなる岬には波もしぶけど、
絹漉の雨の中、蜑小舟ゆたにたゆたふ。
棹あげてかぢめ採りゐる
北斎の蓑と笠、中にかすみて
一心に網うつは安からぬけふ日の惑ひ。

さるにてもうれしきは浮世なりけり。
雨の中、をりをりに雲を透かして
さ緑に投げかくる金の光は
また雨に忍び入る。音には刻めど
絶えて影せぬ鶺鴒のこゑをたよりに。
857吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 00:51:14
雨についての詩ではまず
アポリネールの「雨」が降る」を思い出します。
雨の日に読むとますます落ち込みそうな詩。
858吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 00:53:05
青いとんぼの眼を見れば
緑の、銀の、エメロウド、
青いとんぼの薄き翅
燈心草の穗に光る。

青いとんぼの飛びゆくは
魔法つかひの手練かな。
青いとんぼを捕ふれば
女役者の肌ざはり。

青いとんぼの奇麗さは
手に觸るすら恐ろしく、
青いとんぼの落つきは
眼にねたきまで憎々し。

青いとんぼをきりきりと
夏の雪駄で蹈みつぶす。
859吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 01:51:58
白秋はいいですね。
860吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 01:52:54
若ければその瞳も悲しげに
ひとりはなれて砂丘を降りてゆく
傾斜をすべるわが足の指に
くづれし砂はしんしんと落ちきたる。
なにゆゑの若さぞや
この身の影に咲きいづる時無草もうちふるへ
若き日の嘆きは貝殻もてすくふよしもなし。
ひるすぎて空はさあをにすみわたり
海はなみだにしめりたり
しめりたる浪のうちかへす
かの遠き渚に光るはなにの魚ならむ。
若ければひとり浜辺にうち出でて
音もたてず洋紙を切りてもてあそぶ
このやるせなき日のたはむれに
かもめどり涯なき地平をすぎ行けり。
861吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 15:53:51
夏が過ぎ 風あざみ
862吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 18:28:12
私はいつでも、私の心からあらゆる悪を追い出して、私の愛の花を咲かせておくように努めよう
私の心の奥殿にあなたがいますことを知っているのだから


I shall ever try to drive all evils away from my heart and keep my love in flower,knowing that thou hast thy seat in the inmost shrine of my heart
863吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 23:06:30
>>862
ごめん。改行気をつけて。

んー、そんないじけた詩を貼ってるつもりはないけれど。
ここに貼るものを選んでいる時の気分は、前も今もかわりませんよ。
864吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 23:07:20
おそらくはまことの命の現れであろう。
ぼくの周囲に軽やかに
首を振っては踊る子供たちの手拍子
教会の草原に歌声が広がる。
夕べの祈り、またもや影が
真青な草に点る、
あまりに美しく火と燃える月よ!
追憶は束の間の眠りをゆるす。さあ
目を覚ますのだ。聞け、満ちてくる潮に
井戸は鳴る。時こそいま、もはや
ぼくのではない、燃え立つ遠い影、また影。
そしてオレンジの薫りをはらむ南風よ、
裸で眠る子供たちの月を
吹き上げよ、蹄に濡れた
田畑に仔馬を放て、海を
開け、林の上に雲を
飾れ。すでに青鷺は水辺に進み
茨のあいだにゆっくりと泥を嗅いでいる。
そして鵲が笑う、黒ぐろとオレンジの茂みに。
865吾輩は名無しである:2007/07/06(金) 23:12:29
>>863 自己レス
> んー、そんないじけた詩を貼ってるつもりはないけれど。

これは>>862への感想じゃないよ。わたしの詩を貼る態度のことだよ。念のため。
866吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 01:00:12
感じ方は人それぞれ〜
867吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 01:02:27
アア コレワ
なんという、薄紅色の掌にころがる水滴
珈琲皿ニ映ル乳房ヨ!
転落デキナイヨー!
剣の上をツツッと走ったが、消えないぞ世界!
868吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 01:28:59
私は生きることに親しくなっていった
私は姿ばかりを信じ続けて
心について何ひとつ知らないのだったが
それがかえって私の孤独を明るくした

私はむしろ心に疲れていたのかもしれぬ
もろもろの姿の毅然としたひろがり
それらは心よりもきっぱりと
時を生き 所を占める

今 私に歌がない
私は星々と同じ生まれだ
私は心をもたぬものの子だ

だがその時突然に心が還ってくる
私の姿が醜い故に?
いやむしろ世界の姿があまりに美しい故に
869吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 18:00:06
>>865
自己顕示欲がぷんぷん臭う輩が住み着いているようだな


-知恵を大げさに自慢し見せびらかすのをやめよ、
謙遜こそゆかしいものだ。
君は青年時代のあやまちを卒業するかしないうちに、
もうきっと老年時代のあやまちを犯すだろう。
870吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 18:30:46
引用して貼るだけの、どこが知性なんだよw
ただの積み木みたいなモンだから、目くじら立てんなww
871吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 19:42:50
>>869
申し訳ない。自分でも何とかならないかと思い、
少し静かにすることにしたのですが、
一応これもご覧ください。>>611
872吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 22:44:35
うーん、ここってどのくらいの人が見てるんだろう。

>>866-867
あはは、鼻白んでるw 態度ってそんな高邁なものじゃないよ。
でも自分だけ納得してればいいことだよね。ごめんね。

>>868
ごめんね。でも、話かけてもらえれば答えます。
前のように饒舌にはならないと思いますけど……。

あと、今晩はうちの近くは曇りです。残念。
873吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 22:45:18
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の  つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。

オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。

大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。
874吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 22:46:14
星に願いを懸けるとき
誰だって
心を込めて望むなら
きっと願いは叶うでしょう

心の底から夢みているのなら
夢追人がするように
星に願いを懸けるなら
叶わぬ願いなどないのです

愛し合うふたりの
密めたあこがれを
運命は優しく
満たしてくれます

星に願いを懸けるなら
運命は思いがけなくやって来て
いつも必ず
夢を叶えてくれるのです
875吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 22:46:53
夜空こそわがこゝろ
闇けれど いよゝ深しや、
歎かひに かつは愁ひに
閉さるゝ身にしあれども
こゝに三つ かしこに五つ
秘めたるは煌めける星。

夜空こそわがこゝろ
闇けれど いよゝ涯なし、
煩悩は星と散らへど
こゝろ海 千尋の底に
宿れるは かの海王の
青白き面ざしにして。

夜空こそわがこゝろ
ひとすぢに白く光りて
横へる銀河を胸に
たゆたひて 流れ絶えせず、
夢 傳説 夜々織りなして
わが小さき幸にこそ副へ。

夜空こそわがこゝろ
夕星は 過ぎし日の愛
暁に残れる星ぞ
わがけふの見出でし希望、
東雲の空はなたれて
よしや 影失はるとも。
876868:2007/07/07(土) 23:54:28
>>872
善くも悪くもここは2ちゃん。
あまり、お気になさらない方が(笑)。
877吾輩は名無しである:2007/07/07(土) 23:55:10
地球があんまり荒れる日には
僕は火星に呼びかけたくなる

こっちは曇で
気圧も低く
風は強くなるばかり
おおい!
そっちはどうだあ

月がみている
全く冷静な第三者として

沢山の星の注視が痛い
まだまだ幼い地球の子等よ

地球があんまり荒れる日には
火星の赤さが温かいのだ
878吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 01:05:18
>>872
>うーん、ここってどのくらいの人が見てるんだろう。

たしかに!
書き込みが増えるといろんな詩が読めていいですね〜
>>862の詩(・∀・)イイ!
879吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 01:06:06
空では誰ひとり眠ってはいない 誰ひとり 誰ひとり
誰ひとり眠ってはいない
月のこどもたちが鼻うごめかしながら小屋の回りをうろついている
元気者のイグアナがやってきて 夢みない者たちに噛みつくかもしれない
破れた心臓をかかえて逃げまどう者は 街角で
優しい星の抗議にも動じない 巨大なクロコダイルに出会うかもしれない
880吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 01:36:24
>875いいですね。どなたの詩ですか?
なんだかいつも場違いですが、短歌をひとつ。
881吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 01:40:30
骰子振つて遊べるわれや禁斷の
天を轉がる遊星の人
882吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 02:45:18


はしばみの実に映る我が眼のさゝやきは
地獄の泉に吹く夕陽の影と知るか。
女は横臥はり草の中に燃えては涙は
遠き国へ滴り行くか。
我が二つの眼は二人のアポロンである。
アポロンのなげきは草むらに消えた。
汝等行け、芝居は終わつた。
この朝我はすみれをたいて我がひやゝかな頸輪をあたゝめた。
883ボコノン:2007/07/08(日) 22:15:14
「大地の歌」第一楽章`大地の哀愁を歌う酒の歌’〜李白による

金杯に 酒は満てれど 君しばし
手付けずて 吾が歌を聴け
哀傷の その歌も 君が心に
哄笑のごと 響かなむ
哀しみの あらはにも 迫り来たれば
心の苑も やがて荒れ
喜びも歌も 枯れて消ぬべし
生は昏くして 死も昏し
884ボコノン:2007/07/08(日) 22:24:47
この酒家の 主人はありや?
酒蔵に 金色の 酒は満ち
吾が琴も これにあり
琴かき鳴らし 盃を 乾し合はんには
いとも宜しき この時に
一杯の 酒こそは
ありとある 王国にしも 勝るべし

生は昏くして 死も昏し
885ボコノン:2007/07/08(日) 22:32:52
とこしへの 蒼穹よ
ゆるぎなき 大地には
春来たりなば 花も満つらむ
されども人の 命数は 
数ふるに 飽く程にしも あるべきや?
おほかたは 百年に 満たざる時を
はつかなる 慰み求め 過ぐすらむ
886吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 22:45:05
>>876
ありがとう。

>>878
ほんとに、貼る人が増えてにぎわうといいですね。

>>882
西脇順三郎の詩ですよね? 
珍しいものばかり貼り競わないよう、わたしは伏せることにしてますが
タイトルと作者の記載は貼る人の裁量におまかせでいいと思います。

>>880
これは、朴英熙の「夜空こそわがこゝろ」という詩です。
岩波文庫から出ている、金素雲訳編の「朝鮮詩集」というアンソロジーから貼りました。
まだ現行アイテムなので比較的手に入りやすいと思います。
ここからもうふたつ、貼りますね。
887吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 22:47:06
よきひとのうたごゑは
こゝろにぞ濡れそぼる。

ひねもすは外にたゝずみ
きゝまもる うたのしらべの
暮れなづむ夕の耳に
はた よるのゆめに泌むなる。

あはれ かのうたの細音に
睡こそいよゝ深しや
ひとりねのわぶる臥床も
さながらに ゆめのはなぞの。

しかすがに 醒めてののちの
うた一つあらぬ憂たてさ、
うつゝこそ いかにせつなき
かのうたの きゝつつわする。
888吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 22:47:51
夜更けの掛時計は不吉な啄木鳥!
脳髄に突き刺さるミシンの針。

起きて 囀る「時間」を捩ぢ殺す、
殘忍な手にもつれる生暖い頸!

けふは十時間働けり、
疲勞した理性が ひとりでに齒車を廻す。

すでにして生活は一切の憤怒を杜絶せり、
窓ガラスの中で うろうろと立迷う黒熊のあくび。

夢物語は夢にもすまい、
必要とあらば涙だって製造する。

ともあれ 定刻かつきりの睡眠は
高尚な無表情、且つは一趣味。

明日!(日附などどうでもよい永遠の婚禮!)
音もなく滑りゆくわが白金ツェッペリンの悠々たる夜間航路よ!
889ボコノン:2007/07/08(日) 22:48:15
あれ見よ1
月の照らせる 墓の上
怪しきものぞ 臥せりたる
かれ一匹の 老猿ぞ
君よ聞け その鳴く声の 
甘やかの 生の香に 咽ぶが如く
鋭くも 響き渡るを
890吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 22:49:05
>>883-885
ひよっとして邪魔してしまったかな? ごめんね。
891ボコノン:2007/07/08(日) 22:54:14
友よいざ 盃を取れ
金色の酒 飲み乾すべきは
今ぞその時
生は昏くして 死もまた昏し
892ボコノン:2007/07/08(日) 23:02:09
>>890
お気遣いなく。

間違えました。「あれ見よ1」→「あれ見よ!」

自由律ではつまらない、って人もいるようなので、万葉長歌ふうの韻文
にしたいと思ったのだけれど、あんまり上手く行かなかった。
珍訳御笑照覧下さい。
893吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 23:07:04
>>883-885,>>889,>>891
>>892
いつもながら見事な訳、ごくろうさまです。
間に挟まってしまって申し訳ありませんでした。
894吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 23:28:29
>>886
ありがとうございます。
895吾輩は名無しである:2007/07/08(日) 23:29:18
このぎざぎざ。
この鋭いトゲ、花冠の重量。
なんて大きな紫の鬼あざみだ。
ほんとうにもいできたのか、きみの手で。
あたりを圧する絶対の乾燥。
どこに、どこに咲いていたのだ?
あっちというだけではわからない。
おしえてくれ、どこだ?
火を噴いている山でも
みえるか。
896吾輩は名無しである:2007/07/09(月) 00:23:07
僕は
アイスボックス
にあった桃
を食べてしまった

で それは
きっとお前が
朝食のために
とっておいたんだろ

すまない
桃は甘く
すごくうまく
すごく冷たかったよ
897吾輩は名無しである:2007/07/09(月) 23:03:34
ねこのひと? もも( ゚д゚)ホスィ…
898吾輩は名無しである:2007/07/09(月) 23:04:18
ひびきでさへもぬれるものを
まして、やさしい女靴のひもはほどけて、
なみだのやうな粉雪のうづもれるぬかるみに、
そのとげとげのきらめく舌を出し、
赤にけむる銀いろの露をはじいて、
ほがらかに、影のきものをはねのけ、
よろこばしくのびのびとうすあをの色大理石の肌に、
きこえてもきこえてもたえまない小鳥の唄をおさめる。
899吾輩は名無しである:2007/07/10(火) 00:36:23
>>897
(・∀・)アタリ!
ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩
900吾輩は名無しである:2007/07/10(火) 00:37:10
わたしの智恵は燈心草の葉
それであなたの指をお切り
わたしの肩に
赤い絵文字をぬいつけるため
キーヴィット キーヴィット

わたしの肩は速い船
ひなたのデッキに横におなり
ガラスでできた 煙でできた
島へとつれて行くために
キーヴィット

わたしの声は静かな牢屋
つかまらないよう気をおつけ
わたしの燈心草は絹の匕首
聞きほれないよう気をおつけ
キーヴィット キーヴィット キーヴィット
901吾輩は名無しである:2007/07/10(火) 22:32:28
あなたが年老いて髪に霜おき 眠りこけてばかりいて
炉ばたでこっくりしだしたら この書をとりだして
ゆっくりと読みながら むかし あなたの眼にあった
やわらかなひとみと 深いかげりをゆめみなさい

どれほど多くの者が心嬉しいあなたの挙措を愛したか
偽りの また 真の愛であなたの美を愛したかを
でも ひとりだけ あなたの胸にある巡礼の魂を愛し
移ろう顔に浮かぶ悲しみを愛した者がいたのです

あかあかと燃える炉ばたで その身をかがめて
やや愁い声でつぶやきなさい 「恋」が逃げ去り
そびえる山をつぎつぎに渡ってゆき ついに
むらがる星の間に その面を隠した時の思い出を
902吾輩は名無しである:2007/07/11(水) 00:05:13
鳥たちが帰って来た。
地の黒い割れ目をついばんだ。
見慣れない屋根の上を
上ったり下ったりした。
それは途方に暮れているように見えた。

空は石を食ったように頭をかかえている。
物思いにふけっている。
もう流れ出すこともなかったので、
血は空に
他人のようにめぐっている。
903吾輩は名無しである:2007/07/11(水) 01:51:55
日が暮れる。
遠いどこかで、がらんとした庭が崩れかかる。
折り重なって空を渡ってゆく風。
徐々ににどよめく街の家々。
人はひとりでにはためき、
最後に残った陽射し一筋が
見知らぬところへ都会を引きずってゆく。

日が暮れる。
日ごとこの土地には
美しい女たちが散り、つもる。
眠りの中でもいそいそと歩き、
寝床のそとに散らばる砂はおびただしい。
ひとひらずつ剥がれてゆく生死の
この真っ暗な数世紀の前では
だれもが自分の肉体を覆い隠すことができない。

家々がしゃくりあげる。
日が暮れる。
風に閉じ込められ、
一つの生涯が枝先の落果のように震えている。
高い屋根ごとに、ひそかに
空の途方もない時計の音を掛けておいて
曠野に散り、つもる
ああ、美しい砂の女たち。

崩れながら、わたしたちは
もっとも長い影を背後に残した。
904ボコノン:2007/07/11(水) 20:33:31
「大地の歌」第二楽章‘秋に寂しき者’〜銭起による(前)

夕霧は 蒼く湖面を 漂ひて
秋霜白く 一面の 草に置きたり
腕の良き 匠が玉の 粉をもて
美しく 花びらに 蒔きたるがごと

花々の 甘き香は はや絶へて
その茎は 冷たき風に しをれつつあり
睡蓮の 金色に 凋める花は
やがて水面を 流れ行くらん
905吾輩は名無しである:2007/07/11(水) 22:44:54
ぼくはいま何も言えないのだ、
   吹き荒れる疾風も
   もはやぼくを駆りたてることなく
   遂に囁き声になってしまうとき――
たぶんそのときにあなたに語ろう――
             いつかのときに。

   薔薇の花が落日にきらめき
   凋んだりよじれたりして散り果て
   薔薇は紅い過去となってしまうとき、
   ぼくの愛する顔が遠のき
   パタンといって閉じる終わりへの門、
   もはや会釈も「さよなら」ということも無駄なとき――
たぶんそのときにあなたに語ろう――
             いつかのときに。

ぼくはあなたより美しいひとを知らなかったのだ、
   想いの底でぼくはあなたを狩り求めてきた、
   風の下で打ちひしゃがれ
   ぼくは薔薇の中にあなたを探している。
    二度と見つけることはないだろう
             あなたよりすばらしいものは。
906吾輩は名無しである:2007/07/12(木) 01:24:26
ぼくたちの上に
円く切り抜かれた青空があった
死んだ犬 死んだ羊
そんなものに とり囲まれて
キュラソーの壜のように
おまえは白く立っていた
ぼくたちは口々に叫びながら
夜を待っていた

おお 友だちよ 何千年ものあいだ
ぼくたちはこの野原で待ったのだ
ぼくたちの
ぼくたちだけが知っている婚礼の夜を
けものたち やさしい犬たち羊たちは
ぼくたちのまわりでたわむれ
そうして
死んでいったが いつまでもつづく昼が
ぼくを落ち着かなくさせた
907吾輩は名無しである:2007/07/12(木) 01:31:04
夜中の二時は半端な時間
眠ることも 顔を冷たい水につけることも
本を読むこともできない
空想をするにはもう疲れていて
起きてうろつくにも気恥ずかしい

何かを食べるのはお隣りにわるいし
何かをつぶやくのも自分自身にさえ恥ずかしくなる
じっとしていることすらできないのだ

何もできない夜中の二時だ
半端な時間
この時代だ。
908吾輩は名無しである:2007/07/12(木) 22:43:45
小舟は睡たげな胸の中で脈悸っている、
柳はしなだれかかり、鎖骨に
肘に、櫂座に接吻をする――おゝ 待ってくれ、
これはだれにでも起こりうることではないか!

これはつまり――蒼穹を抱くことではないか、
巨大なヘラクレス座のまわりに両腕をからませることではないか、
これはつまり――幾世紀もぶつづけに
鶯たちの囀で夜々を蕩い果たすことではないか!

ひとはみな歌の中でこれを享楽むのではないか。
これはつまり――ライラックの灰のことではないか、
露の中のちっちゃなカミツレの花の華麗のことではないか、
唇と唇を星たちと交換ることではないか!
909吾輩は名無しである:2007/07/13(金) 01:14:13
あまり沢山
のっかっている

一台の赤い
手押し車に

雨の滴
でキラキラと

側に白い
ニワトリたち。
910吾輩は名無しである:2007/07/13(金) 03:42:39
わにかゐたはなかこのなかにい
ましのかはかなかれひかかけり
あしかしきりにゆれてきよきよ
すはなくかつくつくほふしもま
たひくらしもまたなかなかなか
ないふつきはしめのあしたつく
つくなつかしいなつのゆめのわ
うそくはかけはしをいそきあし
にわたりたまへはかはもにはす
たすたにちきれたわたしともの
たいちやうやせうちやうかなか
れて むまのきつりようきつに
のをか「こんなところまてきち
まつたんたねえ」「こんなまこ
とろてきちまつたのさ」きつね
かなきにはとりかかけまはりあ
しかゆれわにはとほりすきとほ
りしきりにかなかなかくほれい
りくれんとうはなかないかもし
れぬかもめはなくかもしくはし
ぬかもしれぬかなしみのはたて
911ボコノン:2007/07/13(金) 19:56:03
「大地の歌」第二楽章(後)

吾が心疲れたり 吾が小灯は
かそけき音と ともに消え
眠りが吾を いざなひぬ

なつかしき 憩いの場所よ
汝が許へ 吾は帰らん
生気失せたる 吾に与えよ 安らぎを

孤独のうちに 吾は泣く
心の秋は果もなし
泪干ぬべき 暖かの 陽の照るときは
今ひとたびも 来ざらんか。
912吾輩は名無しである:2007/07/13(金) 19:57:35
へんなハンドル
913ボコノン:2007/07/13(金) 19:59:17
余計な事を言うようですが、第二楽章は、曲も詞も少々退嬰的過ぎる気がする。
914吾輩は名無しである:2007/07/13(金) 22:52:46
>>913
ご苦労さまです。退嬰的なのはたぶん時代の空気なんでしょうね。
915吾輩は名無しである:2007/07/13(金) 22:53:25
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出かけませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。

沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂る水の音は
昵懇しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切れ間を。

月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇するときに
月は頭上にあるでせう。

あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
916吾輩は名無しである:2007/07/14(土) 00:53:53
月は海から遠く離れている
それでも、琥珀色の手で
彼女は彼の潮――少年のように素直な――を導く
定められた砂浜に沿うて

彼は寸分も間違うことがない
彼女の眼におとなしく従い
町に向かって 彼方から近づき
またそれだけ 遠のいていく

おお恋人よ、あなたは琥珀色の手を持ち
わたしには 遠い海がある
あなたの眼がわたしに課する
どんな小さい命令にもおとなしく従う海が。
917吾輩は名無しである:2007/07/14(土) 03:55:41
薬罐だつて、
空を飛ばないとはかぎらない。

水のいつぱい入つた薬罐が
夜ごと、こつそり台所をぬけ出し、
町の上を、
畑の上を、また、つぎの町の上を
心もち身をかしげて、
一生けんめいに飛んで行く。

天の河の下、渡りの雁の列の下、
人口衛星の弧の下を、
息せき切つて、飛んで、飛んで、
(でももちろん、そんなに早かないんだ)
そのあげく、
砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、
大好きなその白い花に、
水をみんなやつて戻つてくる。
918吾輩は名無しである:2007/07/14(土) 22:46:56
ラテン語徒然
ttp://litterae.blog8.fc2.com/

ラテン詩、ギリシャ詩のご自身の翻訳をたくさん載せておられます。
カトゥルス「歌集」の全訳も。右上のリンクを辿ってください。宝の山です。
……でもリンク目立たなさすぎ……やっと今日気付いたよ……orz
919吾輩は名無しである:2007/07/14(土) 22:47:42
白百合の花をいつぱいのせて
 海へ海へと滑つてゆく川、
白百合のひとつびとつを舟にして
 蜂が来る 一匹二匹、それ三匹、
友よ、あなたと私のための
 夢の小舟があればよいのに。

夢の小舟が ほんとにあつて
 川が二人を泛べるならば、
昔のことなど忘れてしまつて
 行末のことも氣になるまいに、
二人を繋いだ望みを忘れ
 二人を割いた苦しささへも消えてゆく。

流れて下ることもなしに
 二人でゆらゆら搖られてゐませう、
友よ あなたと私と二人で
 ゆらりゆらりと百合のやうに、
なんと氣高い空の下の
 けだかい百合の花のやうに。

あゝしかし そんな川はどこにある?
 岸には風信草が咲き並び、
水際にはもつと綺麗な百合が咲き
 百合の葉陰は川に溶け落ち、
ほのぐらい水色にまざりあふ川は?
 あゝそして わたしの友はどこにゐる?
920吾輩は名無しである:2007/07/14(土) 23:39:35
わがもとめる友よいずこ
夜はあけて、心さびしく
時はすぎ、時はすぎ
日は過ぎゆけど
友はいずこ、たずねあたらず
921吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 01:24:45
>>918
かなりたくさんの詩がありますね。しかも注釈まで。
じっくり読んでみたいサイトだなあ。
922吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 01:28:22
そいつが鳴るたびに
ぼく
かと思うけど、それは
ぼくじゃないし、だれのため
でもなくって、ただ
鳴るだけ、そしてぼくらは
そいつにいやいや仕える
ぼくもみんなも
923吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 17:39:30
「大地の歌」第四楽章‘美について’〜李白による(T)

岸辺にて 若き娘ら 蓮の花を 摘みてゐたり
草むらに 腰おろし 花びらをひざに 集めつつ
語らひ笑ひ たはむれて
金色の 陽光は 娘らつつみ 清き水面にきらめけり
陽光はまた 娘らの うつくしき その瞳 
たをやかの その身とを 水に映しぬ
吹く風も その香しき袖 吹き上げて 空に上りつ。
924吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 17:49:08
(U)
見よ!あれなるは 駿馬を駆れる 美少年たち
緑濃き 柳のあひだ かき分けて
太陽のごと 輝かしくも 馳せめぐる
嬉しげに 一頭の 馬は嘶き 
立ち止まり また走り去る
馬達は 草も花をも 靡かせて
倒れし花は 踏みしだき行く
そのたてがみは 喜びにゆれ
鼻より熱き 息吐けり
925吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 18:04:04
(V)
金色の 陽光は娘らをつつみ
その姿 清き水面に映したり
娘らのうち 一人とりわき 美しきが
少年に あくがれの 目を向けつ
いつはりて 事もなさげに 振るまへど
瞳の中の きらめきに
そのうつくしき 眼差しの 奥の闇にも
胸のときめき あきらかに
心ゆれ 動きて止まず 哀しかりけり

               (了)
926吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 18:08:50
李白の原詩からすると、最後は「苦しかりけり」のほうが良かったかな。

まあ、いいや。そう言う事を言い出すと、「蓮の花じゃなくて実じゃなきゃ」
とかいう話になって、収拾つかなくなるから。
927吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 21:56:58
子供らの歌う詩が聞こえるか
美しき思い出は消え去りぬ
みな消え去りぬ
我に見る目を与え知恵を授けよ
愛を知らしめよ
我に神の御国を見せよ
928吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 22:27:54
>>926
いつもご苦労さまです。
李白の原詩には荷花――(摘み取って)荷とした花――とあり、
ベートゲの原詩では die Blumen または die Blueten――いづれも花となっています。
採蓮は花、実、根とありますが、ここは素直に花で良いのではないでしょうか。
あと、見知らぬ同士の淡い恋慕の情を歌ったものですから、別れに際しての「断腸」に
「苦し」の訳語を含ませては意味が強すぎると思います。まだあなたがお選びになった
「哀し」の方がいいと思います。でもこれは、ベートゲの原詩にはありませんね。

また曲解のおそれありですが、今後も可能な限り全部を引用します↓
929吾輩は名無しである:2007/07/15(日) 22:28:53
なんの楽しみもないのみならず
悲しく懶い日は日毎続いた。
目を転ずれば照り返す屋根、
木々の葉はギラギラしてゐた。
雲はとほく、ゴボゴボと泡立つて重なり、
地平の上に、押詰つてゐた。
海のあるのは、その雲の方だらうと思へば
いぢくねた憧れが又一寸擡頭する真似をした。
このやうな夏が何年も何年も続いた。
心は海に、帆を見ることがなかつた。
漁師町の物の臭ひと油紙と、
終日陽を受ける崖とは私のものであつた。
可愛い少女の絨毛だの、パラソルだの、
すべて綺麗でサラサラとしたものが、
もし私の目の前を通り過ぎたにせよ、そのために
私の眼が美しく光つたかどうかは甚だ疑はしい。

――今は天気も悪くはないし、暴風の来る気配も見えぬ、
よつぽど突発的な何事かの起らぬ限り、
だから夕方までには浜には着かうこの小舟。
天心に陽は熾り、櫓の軋る音、鈍い音。
偶々に、過ぎゆく汽船の甲板からは
私の舟にころがつたたつた一つの風呂敷包みを、
さも面白さうに眺めてござる
エー、眺めてゐるではないかいな。

    波々や波の眼や、此の櫂や
    遠に重なる雲と雲、
    忽然と吹く風の族、
    エー、風の族、風の族。
930吾輩は名無しである:2007/07/16(月) 00:25:33
私は、あなたを愛する、とは言いませんでした。
私はただ、握手して下さい、
そして私をゆるして下さい、と言っただけです。

あなたは、私に似ている、
私と同じように若くやさしい、と思われたのです。
−−私は、あなたを愛するとは言いませんでした。
931吾輩は名無しである:2007/07/16(月) 05:07:41
また来ん春と人は云ふ
しかし私は辛いのだ
春が来たつて何になろ
あの子が返つてくるぢゃない
932926:2007/07/16(月) 06:55:48
>>928
別に反論ではありませんが、「新唐詩選」で吉川幸次郎が「採蓮」を「蓮の
実を採る」としているのは、正統的な解釈ではないのか知らん。

それはとも角・・・
そうですよね、「苦し」ではやっぱり少しへんだな。「哀し」がそれほど
良いとも思わないけど、今回はとりあえずOKにしとこ。
933吾輩は名無しである:2007/07/16(月) 22:38:58
>>932
ありがとうございます。勉強になりました。
934吾輩は名無しである:2007/07/16(月) 22:39:32
樺の木の乾いた枝が内側に
緑を秘めて回転窓の上を叩く
モスクワでのこと。夜更けにシベリアを離れた
風がきらめきながら泡立ちガラス窓を打つ、虚ろな
心にうちにもつれる糸。わたしは病んでいる。
たったいま、あるいはつぎの瞬間に、死ぬかもしれないわたし。
そういうわたしだが、ヴァルヴァーラ・アレクサンドローヴナ、あなたは
歩きまわっている、ボトキンの病室から病室をフェルトの
スリッパを履いて、忙しげな目配り、生まれながらの看護婦。
わたしは死を恐れない、
かつて一度も生に不安を抱かなかったように。
ただ考えている、ここに横たわっているのは別人ではないかと。
もしも愛を、憐れみを、離れがたいこの自然を
打ち砕く土を、鉛色の孤独の音を
思い出せなければ、この生から落ちてゆくこともあろう。
夜の見回りのあなたの手は熱い、ヴァルヴァーラ
アレクサンドローヴナ。激しさのうちにも
長い安らぎを残して握りしめる
わたしの母の指だ。あなたは人間的なロシアだ、
トルストイの時代の、マヤコフスキーの時代の
ロシアそのものだ。病院の鏡に映る
冷たい雪景色ではなく、あなたは
手から手へ手を差し伸べるたくさんの手だ。
935吾輩は名無しである:2007/07/17(火) 00:17:29
君を夏の一日に喩へようか。
君は更に美しくて、更に優しい。
心ない風は五月の蕾を散らし、
又、夏の期限が余りにも短いのを何とすればいいのか。
太陽の熱気は時には堪へ難くて、
その黄金の面を遮る雲もある。
そしてどんなに美しいものもいつも美しくはなくて、
偶然の出来事や自然の変化に傷けられる。
併し君の夏が過ぎることはなくて、
君の美しさが褪せることもない。
この数行によつて君は永遠に生きて、
死はその暗い世界を君がさ迷ってゐると得意げに言ふことは出来ない。
人間が地上にあつて盲にならない間、
この数行は読まれて、君に生命を与へる。
936吾輩は名無しである:2007/07/17(火) 22:37:47
室内楽はピタリとやんだ
終曲のつよい熱情とやさしみの残響
いつの間にか
おれは聴き入つてゐたらしい
だいぶして
楽器を片づけるかすかな物音
何かに絃のふれる音
そして少女の影が三四大きくゆれて
ゆつくり一つ一つ窓をおろし
それらの姿は窓のうちに
しばらくは動いてゐるのが見える
と不意に燈が一度に消える
あとは身にしみるやうに静かな
ただくらい学園の一角
あゝ無邪気な浄福よ
目には消えていまは一層あかるくなつた窓の影絵に
そつとおれは呼びかける
おやすみ
937吾輩は名無しである:2007/07/18(水) 00:48:48
あんなに帰りたがつてゐた自分の内へ
智恵子は死んでかへつて来た。
十月の深夜のがらんどうなアトリエの
小さな隅の埃を払つてきれいに浄め、
私は智恵子をそつと置く。
この一個の動かない人体の前に
私はいつまでも立ちつくす。
人は屏風をさかさにする。
人は燭をともし香をたく。
人は智恵子に化粧する。
さうして事がひとりでに運ぶ。
夜が明けたり日がくれたりして
そこら中がにぎやかになり、
家の中は花にうづまり、
何処かの葬式のやうになり、
いつのまにか智恵子が居なくなる。
私は誰も居ない暗いアトリエにただ立つてゐる。
外は名月といふ月夜らしい。
938吾輩は名無しである:2007/07/18(水) 23:00:14
小さな天体たちが音も立てずに虹色に震え
そのなかで太陽の音楽が背景の灰色の空との不協和音を聞かせている。

スポンジの女王が
ネプチューン王に言いました。

ホワイトチャペルの老露天商は唄を忘れていなかった
それはバルセロナのラ・ランブラ通りでのこと もうずっと以前。
さんさんと光を浴びて バザールの屋台の中
青い 黒眼がちの娘が
壊れやすい粘土のパイプで 宣伝用のシャボン玉をやっていた
娘は若くて美しかった
こちらも若くておなじぐらい美しい別の娘が 娘の方へ緑のクッションをさし出すと
束の間の小さな天体たちは
そこへ来て座ったとたん 笑いをはじけさせて消える。
ふたりの娘は歌っていた
ふたりはそれでお金を貰っていたんだ。

スポンジの女王が
ネプチューン王に言いました
わたしの全財産をさしあげますわ
シャボン一切れのためになら。

そしてみんな太陽のなかで笑い 太陽はみんなに笑いかけた
青春に 貧乏に 美しさに笑いかけ
外国人の旅行者に笑いかけた。

バルセロナでむかしな
老露天商は思い出す
バルセロナでむかし お日さんはこんな具合に笑ってたよ。
939吾輩は名無しである:2007/07/19(木) 14:11:20
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
940吾輩は名無しである:2007/07/19(木) 22:59:55
あなたは黒髪をむすんで
やさしい日本のきものを着ていた
あなたはわたしの膝の上に
その大きな眼を花のようにひらき
またしずかに閉じた

あなたのやさしいからだを
わたしは両手に高くさしあげた
あなたはあなたのからだの悲しい重量を知つていますか
それはわたしの両手をつたつて
したたりのようにひびいてきたのです
両手をさしのべ眼をつむつて
わたしはその沁みてゆくのを聞いていたのです
したたりのように沁みてゆくのを
941吾輩は名無しである:2007/07/20(金) 02:57:17
ふるさとにかへり來て
ふるさとの あくがれわびし。

雛いだく野雉はあれど
ホトトギス すずろに啼けど

ふるさとは こころに失せて
はるかなる港に 雲ぞ流るる

けふまた山の端に ひとり佇めば
花一つ あえかに笑まひ、

かのころの草笛 いまは鳴らず
うらぶれしくちびるに あぢきなや。

ふるさとにかへり來たれど
ふるさとの空のみ蒼し、空のみ蒼し。
942吾輩は名無しである:2007/07/20(金) 17:23:50
わたしみづからのなかでもいい
わたしの外の せかいでも いい
どこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのか
それが 敵であつても かまわない
及びがたくても よい
ただ 在るといふことが 分りさへすれば、
ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ
943吾輩は名無しである:2007/07/20(金) 22:40:35
東に向かって昇り、
縦横に方向を転じる、安定した影一つ、
鳥人の
モーターの唸りをあげる、
その喉に
死の笑いを込めて
そして心臓にはいつも
かなたの青い大空への愛。

たった一人、
遠く東に浮ぶ小さな点の影
操縦桿を握り
悠然として、
彼のまわりには大きな灰色の翼がひろがっている。
彼を支えてくれ、大きな柔らかい翼よ、
やさしく扱ってくれ、おゝ翼よ、
操縦桿を握る静かな、落ちついた影を。
944吾輩は名無しである:2007/07/21(土) 01:55:48
砂山に雨の消えゆく音
草もしんしん
海もしんしん
こまやかなる夏のおもひも
わが身うちにかすかなり
草にふるれば草はまさをに
雨にふるれば雨もまさをなり
砂山に埋め去るものは君が名か
かひなく過ぐる夏のおもひか
いそ草むらはうれひの巣
かもめのたまご孵らずして
あかるき中にくさりけり
945吾輩は名無しである:2007/07/21(土) 13:08:51
新年

それは昨日に続く今日の上
日常というやや平坦な場所に
言葉が建てたすばらしい家、
世界中の人の心が
何の疑いもなく引っ越して行きました。
946吾輩は名無しである:2007/07/21(土) 21:28:14
そして
英雄達は宴に集う
未だ温かき肉を喰らいに
私の知り得し唯一の事実は
獣達が今この時も殖やされし事
947吾輩は名無しである:2007/07/21(土) 22:40:03
ときとして人を愛することは――重い十字架、
しかしあなたはまっすぐな美しさ、
あなたの素晴らしさの秘密は
生の謎を解くことと同じ。

春には夢のささやき、
新しい知らせと真実の、さやぐ音が聞こえる。
あなたはそういう根本の出自。
あなたの存在は、空気のように、私利私欲がない。

こともなく目覚めて見つめ、
心から言葉の塵をふり払い
未来を塵で汚さずに生きることができる。
それもみな――たくまずして。
948吾輩は名無しである:2007/07/22(日) 00:10:06
夜ひとり、空になみだのしめやかに
かげひくごとくすぎされり。
おもひでは草にながるる月に燃え
草はさあをにむせびたり。
ああ、かの月のけむれるをさし入れ
しづかにも消えさるかげをうたひいづ。
うたひつかれてかへりくる
過ぎこしかたのかもめどり。
かもめはわかくすずしげに
空のとほきにすぎされり。
949吾輩は名無しである:2007/07/22(日) 03:33:03
>>927
その詩は誰のですか?教えて欲しいです。
950吾輩は名無しである:2007/07/22(日) 22:23:46
どこの歌声が湧き起こって
今夜は織りなしたのか
こだます心で
水晶の星空を

どこの祭りが湧き出たのか
婚礼の心から

久しくぼくは
暗闇の水たまりだった

いまは噛みしめている
乳房にすがりついた赤児みたいに
この空間を

いまは酔い痴れている
この宇宙に
951吾輩は名無しである:2007/07/22(日) 23:40:05
荒野の中を探しさまよう孤独な日々よ
この世は我々を何と惑わすものか
色のない映像に嘆かせ給うな
厳しき風はもういらぬ
荒れし海はもういらぬ
952吾輩は名無しである:2007/07/23(月) 01:21:18
その部屋を通る時
我は内なる子供に気づく
目を閉じて全ての恐れを静かに解き放つ
その花がかつてのように開くのを目にする
一歩一歩歩み続ける
一語一語語り続ける
ただ我を許したまえ
そして知らしめよ
953吾輩は名無しである:2007/07/23(月) 19:33:27
>>949
CLANNADのLET ME SEEです。
文学板なのにごめんなさい。
しかも読み返したら誤訳orz
その上一行目消えてる。
興味あったら聞いてみてください。
954吾輩は名無しである:2007/07/23(月) 22:57:24
>>953
ご苦労さまです。
歌詞はどのへんを線引きにすればいいのかちょっと迷いますよね。
でも、ご自分の訳ですし、あまり固く考えなくてもいいと思います。
955吾輩は名無しである:2007/07/23(月) 22:58:07
とほまはり。あちらからこちらへ。
うそつきをとこのみそかごと。
このゆっくりぶりよりも
みやびなわざってある?

ゆきつくさきはわかってます。
そこまでおつれまうします。
わがわるだくみはあなたさまを
わるいやうにはいたしませぬ。

(ほほゑむ
 ほこりたかさ。
 だが何をしてもよいとなれば
 何をしたらよいかわからなくなるひと!)

とほまはり。あちらからこちらへ。
うそつきをとこのみそかごと。
まだあとにとっておくよね、
いっとうやさしいことばは。
956吾輩は名無しである:2007/07/24(火) 20:09:14
>>953
どうもあなたが名訳だったようです。
平坦な英語にしか感じられず自分の感性のなさを感じました。
957吾輩は名無しである:2007/07/24(火) 22:39:32
夜、内面な分だけよけいに猛々しい
激しい諍いを鎮めようとして、なるだけ
かけ離れた争いについて考える。たとえばリッサ、

バルカンの人々、トリエステ、古いゲットーのことなど。
あげくのはて、ぼくは、とある居酒屋に逃げ込む。
思い出すだけで、眠りがやってくるように。

ながい夏の日は人影がなく、
壁に描かれた小さな島がひとつ、
魚のいる翡翠の海に囲まれて。

だが夜ともなると煙と歌が立ちのぼり、
だれより薄着の娘を連れているのはダルマチア人。
海の妖精にめぐりあう水夫、といったかっこうで。

ぼくは耳を傾ける、みなといっしょにいるのがよくて、
天の楽園の夢でないのが、よくて。ここの
陽気さとあれとは、まったくの別物で、

皆で歌うと、声は嗄れるし、顔が燃える。
958吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 07:14:44
>>956
ありがとうございます。曲調も優しくて美しい歌なので残念ではありますが。
読んだものを映像化して行きつく先が同じならOKくらいの気持ちで
訳したものなのでイメージが違いすぎたかもしれません。
959吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 22:50:15
配車センターのガレージが振動する、否、否、
骨の如き、ポーランドのカトリック教会が、閃光するだろう。
公園の上空にトパーズの黄玉が落ちる、
盲いた稲光の大鍋が沸騰する。
公園は――ハナタバコの花、舗道は――人の群れ
その中に――ミツバチたちの鈍いうなり。
雨雲たちの裂目、切れ切れの詠唱、
不動のドニェプル河、キエフの夜の、低地ボドール地区。

《来た》、――とニレの木からニレの木へと飛んで行き、
そしてマチョーラの花の不眠の芳香が
絶頂に達したとでもいうように
突然重苦しくなる。
《来た》、――とカップルからカップルへ飛んで行き、
《来た》、――と幹が幹へ片言を言う。
稲光、氾濫、雷雨、たけなわ、
不動のドニェプル河、夜のポドール地区。
960吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 22:51:07
一撃、もう一撃、パッサージュ、――そして一気に
球たちのミルクの円光の中へ
ショパンの葬送の音句が
病んだ鷲のように、遊弋して入る。
その鷲の下界には――熱帯杉の忘我、
しかし、底まで断崖を探しまわり
何かを見つけたとでもいうように、鈍く響く、
不動のドニェプル河、夜のポドール。

物語の進行のような鷲の飛翔。
そこには南国の樹脂のあらゆる誘惑
そして男性や女性にたいする
あらゆる祈りとエクスタシー。
飛翔は――イカロス失墜の伝説。
しかし静かに懸崖から白土層がつづく、
そしてザバイカルのカーラ河の徒刑囚のように、鈍く響く、
不動のドニェプル河、夜のポドール。
961吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 22:51:54
このバラードは、ガッリよ、あなたへ贈呈する。
勝手気侭な想像力のせいで
あなたの天稟についての詩とはならなかった。
ぼくはこの詩に書いたすべてを見た。
記憶にとどめて、叩き売りはすまい。
真夜中のマチョーラの花吹雪。
演奏会と断崖の上の公園。
不動のドニェプル河、夜のポドールを。
962吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 22:59:16
かなり押し詰まってきましたが、次スレどうしましょう。
詩板にも同趣旨のスレがありますし、書き手さん中心の板らしく、
歌詞なんかも幅広く受け入れてくれるようです。
合流でもいいかな、と思うのですが、見てるだけになっちゃった人も
980までに意見ください。一応、次スレテンプレ↓ 1の詩は適宜入れ替えってことでよろ。
963次スレテンプレ(1/2):2007/07/25(水) 23:00:59
さながらに 紅の林檎の、
  色づいて みづ枝に高く、
いと高い 梢に高く。
  摘む人の はて見おとしか、
いや見落とせばこそ、かひなとどかぬ
  その紅りんご。

【前スレ】
詩を脈絡なく終りなく引用しつづけるスレ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/book/1090849288/
964次スレテンプレ(2/2):2007/07/25(水) 23:03:33

          || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
          || 張り子の誓い      ||
          ||  威張らない      ||
          ||  貶さない  。   Λ_Λ  いいですね。
          ||  泣かない  \ (゚ー゚*)
          ||________⊂⊂ |
  ∧ ∧    ∧ ∧    ∧ ∧    | ̄ ̄ ̄ ̄|
  (  ∧ ∧ (   ∧ ∧ (  ∧ ∧ |      |
〜(_(  ∧ ∧ __(  ∧ ∧__(   ∧ ∧ ̄ ̄ ̄
  〜(_(  ∧ ∧_(  ∧ ∧_(   ∧ ∧  は〜い。
    〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)
      〜(___ノ  〜(___ノ   〜(___ノ


ではどうぞ。
965吾輩は名無しである:2007/07/25(水) 23:09:40
あー、>>964微修正。申し訳ない。

×張り子
○貼り子
966吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 18:22:35
閑花は是ただ閑中にて見るべし
一折して帰り見れば即ち鮮やかならず

引用だけなら、もうこの辺で、いいんじゃない?
967吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 21:17:35
>>956
ものすごい自演を見た
968吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 22:04:33
>詩板にも同趣旨のスレがありますし、書き手さん中心の板らしく、
>歌詞なんかも幅広く受け入れてくれるようです。
>合流でもいいかな、と思うのですが

たのむから詩とラノベとSFとかとこの板をつながないでくれさい。
969吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 22:25:54
>>968
で、あなたの意見は「終結」ってことでいい?
まだ貼りたい人はこちら、って詩板のスレへ誘導すればいいかなと思ってるのですが……
970吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 22:28:32
はや
ひんやりした裸の石の上に置かれる最初の壜の音が 通り全体を目覚めさせた。
そして小さな車が通りの角を曲がりきらないうちに
牛乳はみんな姿を消すだろう。

そして通りは静寂にかえるだろう。

が とある台所の窓から
まだ幼い声が飛び立つだろう
うっかり開けたままの鳥籠からの
悲しくまた喜びにわれを忘れた小鳥のように。

そして秋は冬を待っていた
春は夏を待っていた
夜は昼を待っていた
お茶はミルクを待っていた
愛は愛を待っていた
そしてあたしはひとり 泣いていた

飛ぶことを知らなかった小鳥が樹にぶつかり森のはずれで死ぬように
生まれたばかりでもう悲しさいっぱいのこの声は
みどりの明け方のつかのまの光のなかに
やはり 消えてしまうだろう。
971吾輩は名無しである:2007/07/26(木) 22:40:24
>>969
この板独自で淡々とやっとればいいんじゃないということです。
2スレよろ。
972吾輩は名無しである:2007/07/27(金) 02:01:42
ほぼ俺様で1000いってやる

http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1185302642/
973吾輩は名無しである:2007/07/27(金) 02:02:32
ほぼ俺様で1000いってやる

http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1185302642/
974吾輩は名無しである:2007/07/28(土) 00:43:02
脈絡なく終わりなくなら、忖度の必要無し。
浜の真砂は尽きるとも、で一生貼り続けるように。
立てた人間は、責任負えばいいだけの話、さあどうぞ。
俺は適当に、書き込むかROMるかします。
書き込むかちゃちゃ入れるかしますよ。
975吾輩は名無しである:2007/07/28(土) 00:59:40
責任って、なに?
次スレは、まだこの板で詩を貼りたい人が居るなら立ててもいいかなと。
でもわたしは、次スレからはもう毎日は貼らないと思いますよ。
976吾輩は名無しである:2007/07/28(土) 01:00:23
もうすこし先に行けば見えるよ。
ハタンキョウの花が咲き、
日の光の中で大理石がかがやき、
海が砕けて波と散るところが――。

もう少しの先だから
ちょっと背伸びしていい?
977吾輩は名無しである:2007/07/28(土) 03:09:58
引用だけだとつまらない。
会話になれば、スノッブだと横槍が入る。
他スレみたいに、「わたくしは、フランスの王妃、おだまり!」
位に仕切るなら、どうぞ。突かれて萎むくらいなら、やめな。
978吾輩は名無しである:2007/07/28(土) 22:33:34
わが声は 君ゆえに ものわび やわらぎて
ふけゆく夜のしじまを乱す。
わがふしどのかたえに ろうそく一つあわき光を放ち
わが歌のひびきはひたすら君の思いにみたされ
流れ合いて 愛の泉のごとく さざめく。
君がまなこはわが前の闇ぬちに
はつかなる笑みをたたえてかがやき
われは聞く かそけき君のことばを――
なれをこそわれはいとおしむ われはながものと。
979吾輩は名無しである
んー、次スレですけど、強く否定する意見もなし、とりあえず立てときますね。
またいづれ誰か奇特な人がきて、盛り上がることもあるでしょう。では、いってきます。