200文字で完結させる小説

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605吾輩は名無しである
わからない


「実のところ僕には君がわからないんだよ」
 と、男はいった。
「僕は君に何不自由ない生活をさせてきたつもりだ。そのうえ浮気だって
したことないんだぜ。僕には君が何を考えてこんな事を言い出したのかわ
からないよ」
「……本当にわからないの?」
 黙って聞いていた女が口を開いた。
「そう、あなたは何もわからないのよね。わかろうともしないんだわ。だ
から私はあなたと離婚したいのよ」
 男には最後まで女の言っていることがわからなかった。
606605:2005/03/26(土) 18:27:00
すまん、>>605だが、冒頭の大事な一文を忘れていた。無粋を承知で訂正。


わからない [訂正]

 テーブルの上には一枚の離婚届があった、
「実のところ僕には君がわからないんだよ」
 と、男はいった。
「僕は君に何不自由ない生活をさせてきたつもりだ。そのうえ浮気だって
したことないんだぜ。僕には君が何を考えてこんな事を言い出したのかわ
からないよ」
「……本当にわからないの?」
 黙って聞いていた女が口を開いた。
「そう、あなたは何もわからないのよね。わかろうともしないんだわ。だ
から私はあなたと離婚したいんです」
 男には最後まで女の言っていることがわからなかった。
607吾輩は名無しである:2005/03/26(土) 21:10:51
>>605-606

会話に少し無駄が多いけど、わたしは好きですね。心当たりのある女の人は、共感すると思う。
ところで、605で入れ忘れたという冒頭の一行は、冒頭じゃないほうがいいと思う。
次のように直してみてはどうだろうか(いくつかの言葉を削除してあります。すっきりするので)。




「実のところ僕には君がわからないんだよ」
 男はいった。
「君には何不自由ない生活をさせてきたつもりだ。そのうえ浮気だって
したことないんだぜ。君が何を考えてこんな事を言い出したのかわから
ないよ」
「……本当にわからないの?」
 黙って聞いていた女が口を開いた。
「そう。あなたは何もわからないのよね。わかろうともしないんだわ。
だから私はあなたと別れたいんです」
 テーブルの上には離婚届があった。
 男には最後まで女の言っていることがわからなかった。


608605:2005/03/26(土) 22:28:46
>>607
あー……、なんかちょっと感動した。2chのレスでこんなに嬉しかったのはじめてかもしれん。
丁寧な修正してくれてありがとう。冒頭の一行の位置には心から納得しました。
ところで「僕は〜」「僕には〜」が削られていたんだけれど、
男の台詞には自我の強さを出すためにわざと繰り返させた部分もあったんだよね。
でも、やっぱりうるさかったみたいだね。これからの参考にします。
609607:2005/03/27(日) 00:37:20
>>608
あーなるほど。自我の強さか。
でも「僕」とは言わないで「君が」「君が」と押しつけてるほうがよいかな、と思いました。
610吾輩は名無しである:2005/03/27(日) 22:13:28
むしろ離婚届の一文自体無くていいと思う。
611吾輩は名無しである:2005/03/28(月) 00:37:02
離婚届の一文を無くすと切実感が半減されるような気もするが
自分はあったほうがいいと思う
612吾輩は名無しである:2005/03/28(月) 03:37:28
離婚届の一文があるかどうかで、
この別れ話が「恋人同士」のものか「夫婦」のものかがわかる。
ほかに入れる場所がない以上、作家が「離婚」を前提とした話として造ってるのであるならば、
この一文は必要である。

むしろ、もの書き志望の我等としては
「離婚届」という記号表現シニフィアンから、どのような記号内容シニフィエを取り出すか、
または作り出すか、ということが大事だ。
613605:2005/03/28(月) 04:20:01
>>609->>612 どうも。色々と参考になります。
新らしいものを書いてみました。どんなもんでしょう。


こわいもの

「誰にでもね」と、彼女は続けた。「怖いものってあるで
しょう? たとえば高所恐怖症。何が怖いのかさっぱりだ
けど、本当に怖がっているのは理解できるわ。ふふ、高い
所でその人の背中にぽんと触れたらどうなるのかしら。ね
え、考えただけでぞくぞくしない?」
 彼女は僕を見ていたずらっぽく微笑んだ。
「……で、あんたは何が怖いの?」
 僕はいまだ彼女とどこにもデートをすることができない
でいる。
614吾輩は名無しである:2005/03/28(月) 10:09:48
前作と同工異曲ですねえ。悪くは無いけど新味も無い。

構造的に、

・語り手は、主人公であり、視点は内的一人称。
・構造は、彼女の行動→主人公の混乱。

ただ、ストーリーの一部ではなくて、ちゃんと終わらせようとしてるところは好感。
終わらせるって意味がわかってない投稿が多いからさ(詩的終了は小説的終了ではないってこと)。

今度は、三人称で、会話無しってのをしてみてはどうでしょうか。

615605:2005/03/28(月) 22:30:45
>>614
うは、リストしてくれた構造とほとんど同じものが自分のテキストエディタにメモしてあります。
改行や人称を変えてごまかしたんだけれど、やっぱりバレバレなんだな。反省。

詩的終了と小説的終了に関してですが、実のところ私には小説的終了しか
書けない思っています。恥ずかしながら詩を理解できないんですよ。
理解できないから書けない。結果、どんな文章にでも“オチ”をつけてしまう。
狙ってそうしているのではなく、そうすることしかできない。これは自分では短所だと考えています。
でも、好感を持っていただけたのは素直に嬉しいです。

次は、会話なし三人称に挑戦してみます。よろしかったらまた読んでやってください。
616吾輩は名無しである:2005/03/29(火) 03:18:30
楽しみにしてます。
617605:2005/03/29(火) 18:18:59
会話なし三人称。結構、本気汁出して書いた。


あくび

 午前四時には誰もが寝ている。
 男はひとり、あくびをかみ殺した。目の前の履歴書と睨めっこをして何時間経ったことか。
大部分は文字で埋まっていたが、「趣味」の欄だけが未記入だった。
 ――この歳でリストラされたあげく趣味のひとつもありゃしない、なんとつまらん人生だ。
 つくづくそう思う。考えあぐねながら、ふと、幾度目かのあくびを吐いている自分に気が
付いた。
 男は含み笑いとともに、
 あくび
 と、大きな字を空白に躍らせた。
618607:2005/03/29(火) 22:04:36
諧謔味がありますね。すげぇいい!ではなくて、悪くない、という感じ。

「大部分は文字で埋まっていたが、」はいらないように思います。これだと「趣味」の欄以外にも空白があることを感じさせてしまう。そうすると自文中で矛盾するでしょ。
また「〜〜いたが、」というのは理由づけで、たいていこういう部分は作者が書くときになんとなく出てくる部分。削ってもかまわないし削ったほうが、その理由のあとに出てくるほんとうに言いたいことのほうが強くなります。
それに、ここで「文字」と出ないほうが、最後の文の「大きな字」が生きると思います。

「この歳で」という部分、ぼかすより「○○歳」としたほうが切迫感は出るかも。

「考えあぐねながら」は言葉としてはちょっと変。「あぐねる」というのがすでに「経過」を表す言葉だからです。「あぐねて」でいいと思う。

「自分に気が付いた」は慣用句的です。手垢がついたものなので、もっと別の言い方にしてみてはどうでしょうか。

でも、以上は瑕瑾(わずかなきず)です。

「空白に踊らせた。」というところがいいですね。
実際に「書いた」ことと、その書いた「心もち」と両方が一度に出ている。
説明ではなく描写がちゃんとできているってことですね。

619605:2005/03/30(水) 01:06:07
607さん、丁寧なアドバイスありがとうございます。ご指摘を参考にして以下のように直してみました。

 午前四時には誰もが寝ている。
 男はひとり、あくびをかみ殺した。目の前の履歴書と睨めっこをして何時間が経ったことか。
いまだ「趣味」の欄だけが未記入だった。
 ――この歳でリストラされたあげく趣味のひとつもありゃしない、なんとつまらん人生だ。
 つくづくそう思う。考えあぐねて、ふと気付くと、幾度目かのあくびを吐いていた。
 男はにやりと口元を歪ませた。そうして含み笑いとともに、
 あくび
 と、大きな字を空白に躍らせた。

「この歳で」のところも具体的な年齢に直したかったのですが、私は就労経験のない学生でして、
一体いくつぐらいが適当なのか判断がつきませんでした。一往「男」は35歳程度と設定していました。
その年代でリストラとかありえるのかしら、と今になって不安に思います。

ところで、私の小説の投稿はこれでひとまず終わりにします。
投稿したものも含めて20作程度を書いてみたところ、表面は違えども形式は同じようなものばかりになりました。
似たような作品の投稿は読む方が面白くないでしょうから、しばらくは自分一人で練習をしてみたいと思います。
自分の小説を他人に読んでもらって(まともな)意見をいただく、ということが正直初めての経験でしたので、
非常に嬉しく、また参考になりました。2chでこのようなやりとりができるとは考えていなかったです。
ありがとうございました。
620607:2005/03/30(水) 03:24:23
>一往「男」は35歳程度と設定していました。
ぐはっ。私だ(w。
この歳でリストラってのはありうるけど、「趣味のひとつも無いとは」とは思わない年頃だと思う。
ぼんやりとでも時間をすごせるものは持ってる年齢層ですね、30代は。50代以降だと思われます。

直された文章で「口元を歪ませた」は「含み笑い」と重なるので、元のでいいかと思います。

さて、投稿これで最後とのこと。ご苦労様でした。愉しませてもらいました。
ぜひ長い作品にチャレンジして、どこかの賞へ投稿されてみてはどうでしょうか。
お勧めは6月に「坊っちゃん文学賞」というのがあります。
学生さんに有利な賞と思いますし、下世話ですが賞金が魅力的です(w。
(もちろん、おもしろい作品じゃないと通りにくいですけどね)。

こちらの世界でお待ちしております。
621605:2005/03/30(水) 15:55:44
わわ。実は、607さんが編集者さんや作家さんだったらどうしよう……、
と、ずっとドキドキしていました。これだから2chは恐ろしいw

お勧めしてくださった「坊っちゃん文学賞」のサイトを拝見しました。
この賞が求めているような小説を今の私に書けるのかなあ、というのが正直な感想です。

私は、文学と何の関係もない分野を専攻する大学院生です。
このままいけば、社会に出ることなく、大学という狭い世界で過ごすことになりそうです。
そのような私には、自分と同姓で同年代、同環境の人物しか書けないのではないかと思います。
当スレでの投稿作のように短いものだったら誤魔化しもきくかもしれませんが、
長い小説だと経験不足ゆえの拙さを露呈してしまいそうです。

いつか、多くの経験を積み、山ほどの本を読みまくり、自信がついてから、
そちらの素適な世界のことを考えてみたいと思います。
(でも、賞金にほんの少し【いえ、かなりw】心動かされたことを告白します)

長文の私事、失礼しました。
短い間でしたが、お忙しいと思われるなか、お相手していただいて嬉しかったです。

それと住人の皆さん、(すっかり過疎スレですが)スレを独占してしまってすみませんでした。