アンチドストエフスキー総合スレッド

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224吾輩は名無しである
1883年11月28日付けのドストエフスキーの長年の友人であり、彼の伝記の著者でも
あったストラーホフから、レフ・トルストイ伯爵にあてた手紙の抜粋。

「敬愛してやないレフ・ニコラーエヴィチ、書くテーマは山ほどあるのですが、簡単なお手紙を
さしあげることにいたします。…あなたはもうきっと、ドストエフスキー伝をお受け取りくださった
ことと思います。どうかご注目、ご好意をたまわるよう、そして感想をおきかせくださるよう
お願いいたします。わたしはこの機会に打ちあけて申しあげたいと思います。あれを書いている
あいだ、ずっとわたしはたたかいつづけてきました。こみあげてくる嫌悪の情とたたかい、この
不快な感情をこらえようとしたのです。そこからの出口を見つけるのに手をおかしくださるよう。
わたしはドストエフスキーをいい人間とも幸せな人間とも(本来は、それは一致するものですが)
見なすことができません。彼は、意地悪く、ねたみぶかく、みだらで生涯を非常に興奮して
過ごしました。もし彼があれほど意地が悪く、利巧でなかったとしら、ああいう興奮は彼を
みじめにし、滑稽にさえしたことでしょう。彼自身は、ルソーのように、自分の事を、最も
すぐれた最も幸福な人間だと見なしていました。伝記を書くにあたって、わたしはこれらの
特徴をまざまざと思い出しました。スイスでは、わたしの目のまえで、彼が給仕をあまりに
虐待したので、相手は腹を立ててこう言ったくらいです。『わたしだって人間です!』。わたしは
そのとき、それが人間性の説教者にむかって発せられ、自由なスイスの人権についての考えが
込められているのに驚いたことをおぼえています。」
(続く)