読了報告スレッド

このエントリーをはてなブックマークに追加
362美香 ◆FE5qBZxQnw
「幽霊はここにいる・どれい狩り」(安部公房/新潮文庫)絶版
→戯曲。収録作品は三つ。最初の「征服」は安部公房のいわば習作。
次の「どれい狩り」にはびっくり。日本人にもこんなおもしろい戯曲が書けたのか。
レイ・クーニーの笑劇よりも笑える。戯曲を読んでこんなに笑ったのは初めて。
わたしが今まで読んだ中でいちばん笑えた戯曲。こんな天才が日本にいたとは。
舞台はある成金の家。妻に先立たれ、息子も交通事故死で傷心の主人。
しかし保険金がたくさん入って大金持ちになっている。
それを詐欺師たちが見逃すはずもない。主人にすすめるのは高額の動物療法。
まずはライオン。ライオンの目をじっと見詰めれば精気が伝わり元気になると。
それでも効かないということで、次に出してきたのは新生物「ウエー」。
どこから見ても人間だが、詐欺師たちは太平洋の孤島で発見された新生物だと言い張る。
そこに「ご主人、だまされちゃいけませんよ」と登場する娘、女子大学生。
亡くなった息子の家庭教師をするつもりで来たが詐欺師たちを見てあきれかえる。
さあ、詐欺師と彼女が繰り広げる笑いの世界をとくとごらんあれ! 大傑作です。
三つ目の戯曲「幽霊はここにいる」は、なぜか幽霊と会話ができる男が巻き起こす
騒動を描く。「どれい狩り」ほどおもしろくはない。一回も笑わなかったです。
363美香 ◆FE5qBZxQnw :04/01/02 08:38
「友達・棒になった男」(安部公房/新潮文庫)
→戯曲。収録作品は三つ。期待していたらどれも肩透かし。とほほ。
「友達」は大都会に住むふつーの独身男性のおはなし。
まあまあの会社に務め、ほどほどの婚約者がいる。
そこに登場するのは九人の大家族。九人そろって彼の部屋に乗り込む。
あなた孤独じゃないですか、かわいそうですね、大丈夫、私たちが一緒に住んであげるから。
友達、友達、安心ねと言いながら台所を食い散らかし、彼の給料は横取りする。
おもしろそうでしょ? 実際、おもしろく読み進めたら最後のほうでストーリーが破綻する。
安部公房ファンにはいかにも彼らしいとなるのだろうけど、わたしには「はあ?」。
ひとこと「残念」。
「棒になった男」はいわゆる前衛作品。だからもちろんつまらない。
前衛がおもしろかったらまずいのです。
つまらないのを読者(観客)があれこれ意味付けしながら鑑賞するのが前衛作品。
三つ目の戯曲「榎本武楊」も失敗作。自らの歴史観を伝えるために戯曲を
書くのはおやめなさい。戯曲は観客を楽しませるために書くものです。
なんて偉そう(w ごめんなさいです。

ちなみに安部公房の小説は「砂の女」「箱男」しか読んでいません。