大西巨人 第三楽章

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435まいぺーす
 昨日、5月16日は、HOWS戦後文学ゼミで「『大西巨人』深淵のラディカリズム」と
題する討論会がありました。コーディネーターの山口直孝がまず、「歴史偽造の罪」
という主題とストーリー・表現とをいかに結び付けるべきかを問題提起として提出し、
例えば、容貌描写がないこと・「款談」の場面が執拗に取り上げられること・冤罪
被害者橋本勇二の声がまったく聞かれないことなどの処置が、常識的な小説の論理を
裏切り、異化するものであるという見方を示しました。討論では、すが秀実氏の指摘
で登場人物が「アッパーミドル」に限られ、なおかつ善良で高潔な人たちで占められる
ことの当否や、事例を挙げることなくスターリニズム批判がなされていることは、かえって
共産主義圏崩壊後のマルクス主義否定の潮流に勢いを与えることにならないかという懸念
などが話題となりました。運動論の視点を持った人の率直な意見には、聴くべきところも
多く、勉強になりました。