蓮実重彦の文体

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226もし蓮實が衰退スレに書き込んだら
文学が衰退したかどうかをここで説話論的に安易に語ってしまうことが
文学における重要な問題だというわけではなく、また文学の衰退を
社会現象の中で捉える事がさらに重要だというわけでも勿論なく、
様々な文学が様々な次元において衰退も興隆もしていると、ことさらに
ここで述べてしまうこともまた凡庸な物語の風景に収まってしまうのであれば、
これらすべての言説には何らの「愚鈍さ」も「事件」もないのであって、
いわば事件性のない説話論的磁場の中にからめとられてしまっているのが
我々の「今ここ」におけるいたって「凡庸な」状況であるのだが、さて、
事件性なき事件という逆説的表現をあえてここで言ってのけることもまた
凡庸な物語の「風景」の中に予定調和的に配置されてしまうのであり、
そうした言説自体がとりたてて事件となるわけのものでもあるまい。
それでは説話論的磁場を回避する「愚鈍さ」や「事件」はどこにあるのか?
しかしながら、この「どこに?」という場所を問うこと自体が既にして
物語であってみれば、むしろそれは場所ならぬ場所としての「陥没地帯」
とでも名づけておくべき不可能性なトポスであろうし、そして/あるいは、
表層において饗宴すべきオペラシオネルなオペラ劇場なのであると、
とりあえず言い放っておくことは、説話論的配置の罠にかからないための
ひとつの愚鈍なエクリチュールだとしても罪悪になるわけではなかろう。