■■小説現代新人賞■■

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617青山七恵「ひとり日和」250枚
知寿(ちさ)は二十一歳のフリーター。埼玉の母子家庭に育ったが、母が仕事で中国で暮らすことになり、知寿は上京することにした。
東京には親戚で、上京する娘の面倒をよく見ているおばあさんがいて、独身で一人暮らしの71歳、吟子さんというのだが、知寿は駅のプラットホームに面した吟子さんの一軒家に住み始めた。春だった。
知寿はコンパニオンのバイトをしていたが、バイト前に電車を乗り継いで、埼玉の彼氏の部屋に行くと、下着姿の女性がいて、失恋を味わう。
夏になり、知寿は笹塚駅のプラットホームにある売店でバイトを始めた。
駅員バイトの男の子と仲良くなり、下宿している吟子さん宅に彼を連れ込み、セックスするのも当たり前になった。
吟子さんは彼のご飯も作って世話してくれる。
また吟子さんにもダンス教室で知り合った彼氏のおじいさんができ、そのおじいさんはよく家に遊びに来て、知寿も交えて三人で過ごした。
秋になり、男ばかりの駅員バイトに女の子が入り、彼女と知寿と彼氏の三人でスケートに行ったりして遊ぶようになる。
しばらくして彼氏から別れを告げられ、知寿は失恋した。
冬になり、中国から一時的に帰国した母に知寿は会い、母が現地の男性と結婚するかもしれないと聞かされる。
知寿は浄水器販売会社の事務バイトをするようになったが、正社員にならないかと持ちかけられる。
春、知寿は会社の寮に入り、一年間に渡った吟子さん宅での下宿生活が終了した。
今度は会社で不倫を始めた知寿は、電車から吟子さん宅を眺め物思いにふけた。(了)