■■小説現代新人賞■■

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歌ちゃんは生まれて以来ずっと大阪で暮らしている、二十代後半の女性。
勤めている会社が倒産し、喫茶店でウェイトレスのバイトをしているが、今だに両親のマンションで一緒に暮らしているので、金銭的には困っていない。
趣味は大阪の昔の写真を集めること。今と昔の風景を見比べたり、当時の人たちの生活を思って楽しむ。
歌ちゃんは、他にも付き合っている女性がいる男性とばかり恋愛してきてしまい、三十を前にして独り身だ。
これではいかんと、最近は合コンに積極的に参加するようになった。
合コンがうまくいかなかった帰り道、ライブハウスに寄り、そこで三歳年下の良太郎と知り合う。
良太郎はフリーターで消費者金融の取立てをやっていた。歌ちゃんの趣味である昔の大阪の写真集めに共感し、良太郎も写真やフィルムを集めたりした。
二人は一緒にご飯を食べたりして親交を深めていく。
歌ちゃんのバイトする喫茶店に訪れる、大阪で生きる人々の息吹。
歌ちゃんは、すでに家族のいる昔付き合った男に声をかけられたり、女友達に彼氏ができたりと、大阪ライフを過ごしていく。
歌ちゃんはだんだん深い間になっていく良太郎や、声をかけられた昔の男のことを考えながら、今も昔も、大阪で暮らす人々を、この大阪の街を愛するのだった。(了)