水鳥寛樹は四十過ぎで独身、商事会社に勤め、横浜の高層マンションで暮らし、ベランダでは植物を育てている。
会社の同僚女性から勧められ、植物診断なるものを受けてみた。
植物に囲まれ、光ファイバー等のデコレイションがなされた室内で、診断師の誘導に誘われて、まるで自分が太古へ行き、樹木になったかのような体験を味わう。
寛樹が実家を訪れると、いつも母から結婚の話を促される。
寛樹の妹はすでに結婚していて、娘をもうけているのだが、やたら寛樹になつく。寛樹は子供全般からとても好かれる体質だった。
学校教師をしている妹の夫から、会ってほしい女性がいるのだと寛樹に誘いがあった。
その女性は山葉幹子といい、同じく学校教師であり、最近離婚が成立したばかりで、幼い男の子と赤ちゃんの女の子を抱えて暮らしていた。
幹子は夫の暴力や恫喝に疲れ果て、それでも子供達には男の大人が接してやる必要があると感じていた。
幹子の息子はすぐに寛樹になつき、寛樹の趣味である当てのない散歩を楽しんだ。
しばらくその関係はうまくいった。
幹子の元夫は裁判により月に一度だけ子供達に会う権利が与えられていたが、それを超えて会えるように仕組み始め、機嫌の悪くなったピークの幹子と、寛樹がついに喧嘩してしまう。寛樹は去った。
もう幹子親子とも二度と会わないだろうと、植物診断になぞって落胆していた寛樹のもとに、幹子から電話があり、それはまた会いましょうという好意的なものだった。
明るく電話に答え、もう植物診断などやるまいと寛樹は誓った。(了)