154 :
吾輩は名無しである:02/08/30 11:29
146 名前:工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/08/30 10:45
『読書感想文』
明日の課題書の読破と読書感想文の書き上げのための英気を養うべく、
とりあえず新宿紀伊国屋あたりで話題の名作を30冊あまり、萌え声の
スレンダーノーメイク系女性店員さんみつくろってもらい、意外と重い
単行本30冊入りの紀伊国屋オリジナル紙袋を持ったまま、ビルドアップの
意味合いも込めて前方から現れた女性と目があったら向こうが目をそらす
まで断固として凝視することによって女性恐怖症を克服すべく数時間の美女
ウォッチングを試験的に断行しつつ都内をさ迷い歩き、そろそろ腹も減って
きたかなと感じてもその後1時間くらいはあえて我慢して飢餓感の芽生えに
よって大量放出される唾液の喉ごしの爽快と腹の虫の豪快かつ健康的な響き
にひとしお心ときめかしてみたりなんかして、もはやこれ以上いっさいの
猶予も出来かねるとの焦燥感を胸に歌舞伎町にある1500円でサイコロステーキ
食べ放題のお店に飛び込むなり、にんにくとバターの香りが立ち込める出来立て
あつあつの安肉サイコロステーキを汗を垂れ流しながら猛烈に5皿位はぺろりと
平らげておき、すっかり胃が膨張しすぎてきつくなってしまった腰のベルトの
穴の位置を変えて席を立つなりすぐさまその足で熱帯夜の都会を新大久保の銭湯
まで全力疾走してさらに汗だくになったところを、ひとっ風呂あびてすべての汗
と汚れをきれいに洗い流し、電車に乗って自宅の最寄り駅まで着いたら酒屋で
缶ビールを買っておうちに帰り、自室で一番落ち着くいつもの場所に鎮座ましまし
てごきゅごきゅとのどを鳴らしつつビールをあおったなら、炭酸による心地よい
呼吸困難を越えた後のこれまたはつらつとしたゲップを一発かますやいなや間髪
いれずに、「この一杯のために生きてるんだな〜!」という声を出して読みたい
日本語の王道的せりふをいなせにかまし、枕もとの目覚まし時計を早朝4時45分に
セットして、深夜12時前には床に就こう。
>>146 冗談抜きでいい作品だね これに似たのを出した友達がいたよ
ただし、後の方の「おうち」という表現は減点の対象だね
156 :
吾輩は名無しである:02/08/30 12:31
マジレス!
どなたか金城一紀さんのGoの読書感想文かいてください!
原稿用紙5枚で明日までにださなきゃいけないんです!
どなたかおねがいします!
157 :
吾輩は名無しである:02/08/30 12:32
158 :
吾輩は名無しである:02/09/01 16:28
どなたか「あぁ、無情」の感想文を
原稿用紙三枚程度でお願いします。
弟(中一)の宿題なのですが、文才ゼロのため
私が代わりに書けと言われてしまって…
私も文才があるほうではないので自分で手いっぱいでニガ
159 :
吾輩は名無しである:02/09/01 16:30
>>158 それ、おもいっきりバレますよ。代筆こんなとこで頼んだら。
では、あらすじと要点だけでもお願いします。
それを元に私が書いてみよようかと
161 :
吾輩は名無しである:02/09/01 23:12
「読書感想文おたすけクラブ」って、覗いた?
「ポケモン」でよければそのまま使ってもいいらしいよ。
162 :
吾輩は名無しである:02/09/14 22:47
ほぜんあげ
163 :
吾輩は名無しである:02/09/14 23:42
>>158 私は、2ちゃんねるにて読書感想文のアイデアを乞いました。
しかし、住人どもはまともに相手してくれません。私が
こんなにもお願いしているというのに。
なんと世間は無情なのでしょう。
164 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:16
>>158 「ああ無情」を読めなかった夏休み@】工藤 伸一
クラスメイト全員への夏休みの共通課題として「ああ無情」の感想文の提出
を義務づけられたものの、中卒のトラック運転手の父と中学中退の母に育て
られた僕の家にはそんな高尚な本があるわけもないので、学校の図書室で借
りて読もうと思って授業の後にすぐさま図書室に行ってみたところ、当然の
ことながら図書室には同じ本が何冊も置かれているわけもなく、クラスで一
番足の速い黒澤君が夏休みの長期貸出の手続きを済ませて借りてしまった後
だった。こうなったら後は本屋さんで身銭を切って購入するかもしくはどこ
かから借りて読むしかないわけだが、あいにく僕には本の貸し借りを出来る
ような仲のいい友人は一人もなく、ここは田舎町だから学校の図書室以外に
は図書館なんて気の効いた施設もないので、買うしか方法がなくなってしま
った。そこで家に帰るなり母に本を買うためのお金をもらおうと交渉してみ
たが、「本だって?今日の夕食のおかずを買うのもやっとのこの家に、そん
なぜいたくなものを買う余裕があるわけないだろ?」と一蹴されてしまった。
こうなったら後はもう、万引きするしかない。
165 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:19
「ああ無情」を読めなかった夏休みA】工藤 伸一
万引きはこれまえにも何度か 経験があったので、ちょろいもんだ。
クラスのみんなが持っているゲームボーイ も親に買ってもらえなかったので
万引きで手に入れたし、家にあるマンガの 単行本も万引きしたものだ。
こうやって少しでもクラスメイトと話を出来るきっかけを作っておけば
僕にも友達が出来るかもしれないと思ってのことだったが、あいにく僕は
無口だし、隣町の中学生と喧嘩して死んだ兄のおさがりのつぎはぎだらけの
みすぼらしい制服を着ているということもあって、なかなか友達を作ること
ができないでいるのだ。でも僕は独りでいることが多い分、図書館で時間を
つぶしてきたから文章を書いたりすることは得意なほうなのだ。
残念ながら「ああ無情」はまだ読んでなかったけれど、シェイクスピア全集
なら全部読みきっている。漱石と太宰の全集も読みきった。僕の他にはクラスに
こんなに本を読んでいる奴は一人もいないから、僕が一番、文学のことをよく
わかっていることは明らかだ。万引きに罪悪感を覚えることもないことはないが、
そもそもこれは勉強のための必要悪ともいえる行為だし、貧乏なのは僕が悪いんじゃない。
クラスメイトの殆どが何の代償も払わずに当たり前のようにして親にゲームや漫画を
買ってもらっているなかで、みんなと同じことが許されない僕がしょうがなく
万引きをすることででみんなと同じになろうとして何が悪いというのだ。
そんなことを考えながら僕は、これまでにも何度か万引きをしたことのある駅前の本屋にやってきた。
166 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:21
【「ああ無情」を読めなかった夏休みB】工藤 伸一
いつものように店番のおっちゃんは居眠りをしている。これなら簡単だ。文芸書の
棚の一番上に「ああ無情」とかかれた背表紙を見つけたので、僕は何のためらい
もなくその本を手にとってカバンに忍び込ませ店を出た。しかしうまくいった
なと思ったのもつかのま、急に後ろから「君、ちょっと待ちなさい!」という
大人の野太い声がするとともに誰かが僕の肩につかみかかってきたのだ。僕は
冷や汗が流れ出るのを感じながらもできるだけ平静さをよそおって後ろを振り
向いた。そこにいたのは学校の国語の先生だった。心の狼狽をひた隠しながら
「先生、こんにちは。どうしたんですか?」と聞くと、先生は僕の耳元でこう
ささやきかけた。「先生はね、君が万引きするところを見てしまったんだよ」
見られてしまっていてはもう観念するしかないと思い、僕は先生に思いの丈を
ぶちまけることにした。「先生、どうかこの件は見逃してください!僕はどう
しても読書感想文で一位をとってクラスのみんなを見返してやりたいんです!
でも僕の家はは貧乏だから、本を買うお金がないのです!」すると先生は僕に
「わかった。君の家庭事情を知らずにいた私にも責任がある。しかしな、聖職者
たる私が犯罪を見逃すわけにはいかない。私がお店の方に事情を説明して代金を
払ってくるから、本を渡しなさい」と言ってくれた。帰り際に先生は「今日の
ことは誰にも内緒にしておくから、そのかわり絶対にいい感想文を書くんだよ。
そして君がクラスメイトに尊敬されるような立派な生徒になってくれたら、先生
はうれしいぞ」と言い残した。僕は帰宅するなりさっそく本を読みはじめた。
ところがその時になって僕は大きな過ちを犯していたことに気が付いて呆然としてしまった。
167 :
吾輩は名無しである:02/09/15 00:21
Piano Trio in B flat major,"Archduke",Op.97
工藤へ
わかる?
168 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:24
【「ああ無情」を読めなかった夏休みC】工藤 伸一
「・・・これって原書じゃん」
そうだったのだ。その本は表紙に書かれていたタイトルこそ日本語だったものの、
中身はフランス語だったのだ。 それにしても先生も国語教師ならそれくらい
気がつけよとも思ったが、後の祭りだった。事情を説明すれば後でまたもう一度
買い直してくれるかもとも思ったが、それも何だか悪いので、やっぱりまたさっきの
本屋に戻って今度は翻訳版を万引きしてこようと思い、再び本屋にやってきた。
そして僕はいつものように万引きをして本屋を後にしようとした。
ところが今日は色々あって気が動転していたのか、うっかりして店のおっちゃんが
寝ているものと思い込んでしまっていたが運悪く おっちゃんが起きていたのだ。
僕はカバンに本をしまいこんだ直後に、おっちゃんが ずっと僕の行動を見ていたことに気がついた。
そんなわけで僕は万引きのかどで補導され、本も取りあげられてしまった。僕はおまわりさんに
問い詰められたあげくにこれまでの万引きの余罪も白状することとなり、もはやこれは
少年院行きの措置をとらざるを得ないと言われた。おまわりさんに呼ばれてきた父に
思い切り拳骨で殴られた。先生もやってきてくれたが、「君には失望したよ」といってあきれられてしまった。
こうして僕は読書感想文を書き上げることもできないままに少年院の中で夏の時間を
すごすはめになってしまった。ああ無情、とはこんな状態のことをしめすのだろうか。了
169 :
吾輩は名無しである:02/09/15 00:28
↑頑張ったな。
でも、暇なんだね。
驚いたよ。これも、メタファーかもしれない。
170 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:29
>>167 ベートーベンのピアノ三重奏曲第7番 「大公」?
それが何か?
171 :
吾輩は名無しである:02/09/15 00:32
>>170 いやなんとなく。春樹の新刊読んでて、
面白かったから。読んだ?春樹の新刊。
172 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:35
>>171 そうなんですか。新刊を買う余裕がないもので、まだ読んでないです。
でもそのうち読むと思います。
173 :
吾輩は名無しである:02/09/15 00:39
>>172 面白いですよ〜。
ブックオフとかでもいいから読むべきですね。
そして、彼にメール送ってあげてください。
174 :
美香 ◆5qBZxQnw :02/09/15 00:42
>>168 ぐでんぐてんに酔っているわたしに全部読ませたその筆力には感心!
独創性は錯覚と同義と知りつつもやはり「ありがち」な物語かもしれない。
これを書かせた工藤さんの動機とは何か。ただそれだけを知りたい。
明日また来ます。それでは・・・・・・・・・・
175 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 00:54
>>173 彼にメールってどういうことでしょうか?
>>174 動機は「単なる思い付き」&「読書感想文への反抗心」です。
176 :
美香 ◆5qBZxQnw :02/09/15 01:06
いま貧乏って流行らないよね、
という言説それ自身に含まれている、
やるせない自棄の観念をどう処理すればいいのだろうか、
などと考えるわたしは酒を飲むしかない。
177 :
吾輩は名無しである:02/09/15 01:09
「あゝ無情」について、あえて批評すると、
1 そんな田舎町に、日本語題のフランス語原書があるのかよ(古本屋?)
2 万引きで少年院はないよな(ネタか…)
3 今は殆ど「レ・ミゼラブル」って題だよな(工藤のせいじゃない)、
その題の本って売ってないんじゃないかな
4 ゲームボーイって、普通箱は空で、カウンターの奥に現物があるから、
かなり万引きは困難じゃないんか?まあ、これはいいや。
5 ゲームボーイのカセットってどうしたんだ?それも万引き?
6 教師って聖職者だっけ?
7 子供が万引き=物が増える=親が気づけよ!って思うけど…
8 一人称で、文体もまとまっているし、テンポよく読める。
9 現代の金のない少年の、実情を生き生きと表現している。
10 ゲームボーイじゃなくて、本を万引きしたところが見つかったわけで、
それって、それだけ見ると、悪い少年じゃなく聞こえる罠
11 家の貧乏、兄の死、友達の不在、親の無理解、無能な教師という、負の部分
を抱えつつ、ちょっと責任転嫁するところに、多感な少年の心理を的確に描いている。
12 結構面白かった。
13 以上
178 :
美香 ◆5qBZxQnw :02/09/15 01:12
「あゝ無情」って「レ・ミゼラブル」だったの?
わたしが次に読もうと思っている小説じゃん・・・
というか、ここばかりではなくシェイクスピア・スレッドに
わたしも長文レスを書き込んでいるので、どうぞぜひ
そちらにもレスしてくださいませ(w
179 :
吾輩は名無しである:02/09/15 01:13
180 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 01:41
もう寝るところですが、最後にレスしておきます。
>>177 僕も自分で読み返してみて確かにご指摘の点には無理があると思いました。
そのあたりはつっこまれないように作中で説明をしておく必要があったかも
しれませんが、なにぶんついさっきいきおいで書いたものなのでそこまで
考えていませんでした。しかし11番目に書かれているような主人公の抱える
バックグラウンドのことに触れていてくれているのは正直言ってうれしいです。
>>178でも言われているように最近は「レ・ミゼラブル」ですけど、子供向けの
翻訳本などでは「ああ無情」だったりするものもありますよね。洋書のタイトルが
「ああ無情」なんてことがありうるかどうかはわかりませんけど。
181 :
工藤伸一 ◆j1HkWi6c :02/09/15 01:45
>>180 そのページを見てみましたが、村上春樹氏のインタビューが面白かったです。
毎朝4時から9時までの5時間に400字詰め1枚30分ペースで一日10枚という執筆
パターンを一年間きっかり行っていることに驚きました。それで1年間で1800枚。
それをさらに短めに書き直して1600枚なんですね。それを「ゲームのルール」
とたとえることで別に立派なことではないかのように謙遜して答えている様に
好感を覚えました。「海辺のカフカ」というタイトルも意味深で、早く読みたいです。
182 :
吾輩は名無しである:02/09/15 01:47
>>181 面白いから読んでみてください。
そして、専用スレあたりで、書き込んでくださいね。
183 :
吾輩は名無しである:02/09/15 01:51
>>180 工藤って結構まともなこといってるし、
悪い印象無いから、頑張ってね。
作家になれるかもよ。
工藤さんってほんといいひとだね♪
185 :
吾輩は名無しである:02/09/21 08:40
にゃはっ
186 :
我輩は工藤ではない。:02/09/21 12:52
我輩は猫である。をよんで。
例えばそこに猫がいたとしよう。それは河原だ。ニャーニャー鳴いている。
可愛いじゃないか。しかも子猫。昨今不景気で、一家の大黒柱の収入も減り、
一概に捨て猫を飼おうという粋狂な人も減ってきた。だが、大概の人は、捨て猫
なる、最も弱い状態に置かれた子猫を捨て置くことは良心が許すまい。勿論、
ペット嫌い板の住人は別だ。彼らも彼らなりの主張、意見があろう。此処ではあえて
言及すまい。しかるに、明治の学生諸子である。彼らは如何なる傍若か!
猫を鍋に処すとは、如何にも下劣ではないか?それは、下賎なるチョソと変わらぬ、
蛮行である。にもかかわらず、猫中で専らの噂。此れは如何にも、日本の恥部も一面であろう。
187 :
我輩は工藤ではない。:02/09/21 13:01
以下続
仕様も無いのはクシャミである。あれは遺憾だ。如何にも猫を馬鹿にしておる。
勿論、彼の家の餓鬼は論外ではあるのだが…
まぁ、それは好い。我等の同胞である、猫諸君の同意は如何にも簡単に付けられるのだ。
非常に遺憾ながら、明治、大正、昭和初期に於いて、猫諸君は比較的人間諸君とも良好
な関係を保って来たと言って好いだろう。何せ、恐ろしいペストの元を退治てくれるのだ。
その地位は、彼のクシャミ家は例外にして、高い地位にすらあったのだ。
我々は猫諸君を現在如何に見ているだろうか?
ただのペットとしてではなかったか?
それは大いに反省すべき点だ。そのような汚点を持つ限り、ペットとして処遇しか獲られない、
猫諸君は、ペットは差して可愛くないと公言してはばからない、ピラノの元に、
蔑まれる道を歩まねばならない。
前に進め!逝けば解るさ!
猫をよみ、改めて感じ入った次第である。了
188 :
吾輩は名無しである:02/09/21 16:53
工藤伸一、現在36歳。四大に一浪して入るが遊び呆けて8年丸々行き中退。
その後半年程会社勤めをしたが「社長がバカで付き合いきれない」と退社。
現在に至まで親の仕送りで学生時代からの安アパートに生息。
日々ネットとゲームの日々を送っている。
これは創作の為の勉強で自分への先行投資だと言い張っている。
親子共々カルト新興宗教『S如苑』の熱心な信者で、その教義によれば
「人は就きたい仕事には必ず就ける」とあるそうで。
「俺は流行作家になる。」が口癖で本気でそう信じている。
親は「子供に指図してはいけない。」の教義に従い年金より仕送り。
ご馳走はから揚げ弁当か松屋の牛めし・カレー。
生活費以外は全てゲームと本につぎ込み、(本人曰く)日々修行中。
189 :
吾輩は名無しである:02/09/21 17:31
↑ 本当でつか?
からあげ弁当は俺も好きだな。
弁当何にするかっつったら、からあげか鳥の南蛮ソース。
191 :
吾輩は名無しである:02/09/21 20:58
チキン南蛮弁当はわたしにとって文学そのものだ。
「臨界の先」読書感想文
2年5組3番 因襲院 静香
一般的な国語辞典程はあろうかという厚さの「臨界の先」を前に、私は最初、
一ページすらも読みたいとは思わなかった。どのようなことであれ、始まりには
多大な決心と労力が必要だからだ。特に私は去年の冬に野球部からサッカー部に
移籍した経緯もあってか、その思いを一層強く抱いていた。
しかし、指定図書の感想文提出という非民主主義的な鬼の規則に脅かされ、
恐る恐る(という表現が最も適切だと思う)赤紫色の表紙をめくり、目次に目を通し、
いざ最初の一文を目にした瞬間、それまでの不安や倦怠感は何処かへ吹き飛んでいった。
「エタ―ニャ婦人は人間以上に人間らしく、だから彼女は人間ではなかった」
刹那、私の脳裏にはエタ―ニャ婦人なる者の人物像が描かれた。きっと彼女は善良な
性格の持ち主で、おおよその人間に潜む包み隠された暗部の欠片もないような聖人であり、
作者はそのような彼女と俗者との比較によって現代社会の闇を描こうとしているのだ……。
私は始め、そう思っていた。だが読み進めるに従い、それは単なる誤解であることが
わかった。むしろ私が思い描いた人物像とは全く正反対の人間であった。二十年間で
六人の男と結婚し、合計で十一人の子供を持ち、四匹の猫と二匹の犬、更には手乗り文鳥と
蛙を飼っていた婦人が綿密な計画によってその全てを不幸に陥れ、遂には己の両親にまで
手をかけるという、ある種の病的な犯罪者を題材とした作品であったのだ。婦人の
行動ひとつひとつに妄想と被害者意識による内面との葛藤があり、だが結局彼女は明確な
答えが見つからぬまま破壊衝動に身を任せた。私はその描写に人間の身勝手さと曖昧な
境界線を見た。つまり、人は誰しも己が一番であり、正常と異常を分け隔てる線は
あまりにも薄く、細いということだ。その証拠に、婦人の凶行に唯一気付きかけた
隣人夫婦(天気のよい日はバスケットにアップルパイを忍ばせて近所の公園で雑談を
交わすような朗らかな老夫婦だ)の警察への相談も虚しく、やがて彼らも婦人の天才的な
トリックによって死に至らしめられた。老婦人を軒先で燃す最中に放った婦人の言葉は、
二日前に読了した私の脳裏に今もこびりついて離れない。
「恨むのなら私という人間を創造した神を恨め」
私は果たして婦人のような人間になる可能性があるのだろうか? いや、既に
そうなのかもしれない。そしてそれは、私に限らず全ての人間に当てはまるのかもしれない。
罪深き人類を戒める意味を込めて作者が残したであろう最後の文を、私は今後も忘れない。
「友人知人、隣人からペットまでをも恨みぬいたエタ―ニャは、やがて自分が人間で
あることさえにも腹を立てた。湧き上がる苛立ちを静める方法は部屋の壁に飾られた
猟銃によって端的に出されていた。猟銃を口に咥え、右足の親指を引き金にあてがった
エタ―ニャの顔は、最初で最後の安らぎに満ちていた」
195 :
吾輩は名無しである:02/09/22 14:08
↑逝ってよし!
196 :
吾輩は名無しである:02/09/22 14:52
197 :
吾輩は名無しである:02/09/22 18:32
↑逝ってよし!
やって欲しいんやろ? しゃーねーなー。
>>197 氏ね
199 :
吾輩は名無しである:02/09/26 00:17
伸一って名前、なぜか工藤姓に多い(?)のか?知り合いに同姓同名がいるのだが。
200 :
吾輩は名無しである:02/09/26 00:27
同一人物だよそれは
『旧約聖書』感想文
君子は怪力乱神を語らず。
202 :
吾輩は名無しである:02/09/27 00:25
やって欲しいんやろ? しゃーねーなー。
>>198 氏ね
203 :
吾輩は名無しである:
あとがきと解説を読んで読書感想文を書くのは当然
細かいエピソードの話されたって(゚ε゚)キニシナイ!!