“精神的貴族”�ｓc恆存について

は何者ですか？

福田恆存と宮台とは漏れには対極的な存在に思えるけどなあ。
宮台は確か信奉者の青年が自殺したことにショックを受けてしばらく
うつ状態だったことがあるそうだけど、福田がそうなることは考えられ
ない。まあ20代の頃の福田ならあったかもしれないが。

福田はずうずうしいほどたくましい精神力を持っていた。

左傾化した文学座を脱退して自分の劇団を立ち上げるとき、政治的に
は立場を同じくする三島由紀夫には声をかけずに最後まで黙っていた。
三島由紀夫と福田恆存とでは劇作家としての才能の違いが歴然として
いるから三島由紀夫を誘えば福田はトップにはなれないので三島由紀夫を
排除したのだ。なんやかんやいって世間ずれしてない三島由紀夫は
すごいショックを受けたらしい。そういう政治が平気で出来る神経のず
ぶとさがよくも悪くも福田恆存の真骨頂、

戦争を経た人間は強い、というわけではないだろうけど（ｗ

福田センセはロマンティックな女性観をお持ちなようで、
そこをナンパ1000人斬りwを誇る宮台に突かれたら、さすがの恆存さんも・・・
いつからこんな時代になったのかね。ババアだ、わたし。

くだらない奴らがしばらく見ない内にのさばるようになってきたな。

女の名前を冠さないと発言できないって寂しいよな・・・

（´-`）.｡оΟ（何かと美香に絡んでしまうﾔｼこそ寂しいだろ…。）

>>497
宮台さんはウブなそれはそれはＤ．Ｔ的な女性観をお持ちなんですよ。
成宮観音に求婚するぐらいにね。

劇作家としての福田恆存の評価とはどんなものですか？

おれの持ってる副ダッチの戯曲（新潮文庫）に三島が解説書いてるよ

>>503
三島の評価はどのようなものでした？

俺の持っている昔の角川書店版日本近代文学全集に
掲載されている「芸術とは何か」「龍を撫でた男」の
解説も三島が書いてある。
ベタ誉めの内容だった。

劇団・昴ではあまり福田の作品を上演しないみたいだけどね。

劇団も企業である事にはかわりないからなあ。
福田が生存中から昴は福田の作品をほとんど上演しなかった。
やっても２週間くらいとかの短期公演だった。
まあ福田自身も自分の作品があまり売れない事をよくわかってたんだろうね。

今後も売れないだろうし。
むしろ「劇作家経験を持つ批評家」としてのみ生き延びる。

>>508
そうだね。劇作家としは福田は才能は三島と比べたら
才能はそれほど大したものじゃないってことだね。

�ｓc恆存は批評家なんだからいいんでないの。
本人も自分のことを芸術家とは思ってないんだから

保全措置

保田の非転向を讃美する人たちから見れば、上のカキコにも出てきた吉川英治や獅
子文六などの文学者や「近代文学」の作家や批評家などは、箸にも棒にもかからな
い連中なのだろうが、それらの人たちはそれぞれ優れた仕事を残した。「転向」や
「変身」にこだわると、大事なものを見落とすことになる。

戦後、長く保田が「文壇」において不遇だったのは、確かに強力な擁護者や後継者
がいなかったことも一因にあるのかもしれない。しかし何より、時代の変遷を超え
て生き続けるものがその思想や言説になかったからではないのか。こう書くと、こ
のスレの熱狂的な人たちは激怒して罵詈雑言を浴びせてくるのかもしれないが、小
林秀雄や太宰治が戦前、保田同様、一国民として戦時下を生きたにもかかわらず、
「無常といふこと」や「実朝」、「右大臣実朝」などの作品が戦後も長く命脈を保
ったことの理由について一考するのは決して無駄なことではないはずだ。

同じ日本浪曼派だった保田と太宰の差異を考える時、決して無視できないのが、弱
者へのまなざしという、文学に決して欠かせないものが保田の戦争中の思想や言説
には全く見あたらないという点だろう。これは保田の致命的な欠点だ。

現在新学社から刊行中の文庫は、日本の伝統や古典への愛情や愛着を自分の言葉で
語る保田の長所をコンパクトに各巻にまとめて、若い読者には格好の入門書と思わ
れるが、その前に出た４５巻全集には収録されていたすさまじい戦争讃美の文章が
果たして「文学」と今後も呼びうるものなのかについては絶対に批判はなくならな
いだろうし、保田の思想や言説をセリーヌやハイデッガーのそれと比較するのは意
味のないこととは言えないまでも、その思想や言説が世界的に広く理解を得ること
はありえないと考えざるを得ない。

じゃあ福田の戯曲の文庫化はもうなさそうだね。
でも文芸評論の文庫化はして欲しいな。

age

きのう買っておいた「私の幸福論」を読む。
なーんか鬱になったよ。なぜかって「ひとは生きるもの」
という前提で書かれていたから。わたしなんてまともに
結婚できるとも、子が産めるとも思っていないからさ。
ふうん。こういうのを読んで「幸福」を目指すひとっているんだ。
ずいぶんとそういう地点から現在の自分は離れたものだと感慨深し・・・

山田太一さんのご推薦だったから読んだのですけどね。
ひとに教えることばかりを続けてきたひとはどうもダメ。
それとあの顔で恋愛論をぶつのはいかがなものか？
「私はすべての女性に性欲を感じます」って、おいおい！
そんなにモテないだろ、オッサンは（ｗ
論調は、恵まれた人間が高みから下界を見下ろしているという感じ。
婦女子を自分が導かなければならないとか思っていそうでナンセンス。
「日本への遺言」は夢中になって読んだけれども、うーん・・・

>>515
完全に誤読してるよ。
>「ひとは生きるもの」という前提で書かれていたから。
「ひとは生きるべきでない」という前提で書かれた幸福論ってあんの？
>わたしなんてまともに 結婚できるとも、子が産めるとも思っていないからさ。
「女は結婚して家にあり、妻として、母として生きるべきだといっても、
そういう私の言葉を文字通りに受け取らなくてもいいのです。」と
あとがきに書いてある。
>それとあの顔で恋愛論をぶつのはいかがなものか？
通俗的な恋愛論じゃなくて、恋愛のあり方、その男女の関係や心理、恋愛論が
なぜはやるかということ言ってるじゃないか！！
>「私はすべての女性に性欲を感じます」
どこにそんなこと書いてあるの？
>論調は、恵まれた人間が高みから下界を見下ろしているという感じ。
頭のいい人間の書いたものを読むと馬鹿はそう思うんだね。
>婦女子を自分が導かなければならないとか思っていそうでナンセンス。
あとがきを読め！「失敗したら失敗したで、不幸なら不幸で、またそこに
生きる道がある。その一言を言いたいために、私はこの本を書いたのです」
とあるじゃないか。
解説の中野梓が「唯一あるべき幸福論は、（中略）不幸にたへる術を伝授する
ものだ。」と『否定の精神』からの抜粋がある。
とにかく、もう一度最初からあとがきまでしっかり読んで欲しい。

>>515さん

「幸福の手帖」に限らず、彼のあらゆる文学論は、
あなたも別スレで問題提起されていた、
「耐え難い理不尽の前に、文学が何で有り得るか」
という根源的な問いの前で、書かれていると思います。

ヒューマニズムに期待すること、
その裏返しで、すっぱい葡萄的ニヒリズムを言い立てること。
人は往々にしてそうなりがちな、弱いものではあるけれど、
弱いものだからからこそ、それを美化しない冷静な言葉も必要になる。
それが、期待する者にとっては、時に酷薄に映ったとしても
そこに救いが無いこと（そういう形での救いはどこにもないこと）
を認識する意志、受け入れる矜持を持つことを
誇りとし、自分を支え律することが必要なこともある。
そうすることが、必要な人もいる。
それが、「全でもないが、無でもない」生を生きる、
「期待に溺れないが 希望を捨てない」態度を可能にもする。

勿論、充分に疑い逆らい、戦うことも大切で、
結論へと早あがりし、教え、振りかざすことを目的化するようなことは、
正に、本末転倒でしか無いと思う。
だから、分別臭く聞こえるかもしれないけれど、
私自身は、そういうふうに彼の言葉を読み、
確実に私が生き伸びるための力になった、
とは、言ってみたいです。

>>516
即レスしてくれたのに返事が遅くなってしまってごめんなさい。
わたしは誤読女王ですので（ｗ　どこの作家別スレッドでも
たいがいは誤読とたたかれる。では誤読ではない正読なるものを
教えてくれと頼むと、どこかの解説から引用したようなつまらない
＝そのひとを感じさせない紋切り型の説明に終始。
文庫版「私の幸福論」84ページに福田さんの読書法が書いてありますが、
わたしは本なぞどのように読んでもよいと考えています。彼はわたしではない、
わたしは彼ではないからです。仮に誤読という行為が存在しえたとして、
さらにそれが「悪」だとしても、だれに迷惑をかけるでもなし、
わたしはわたくし、誤読を愉しみたいと思うのです。

＞「ひとは生きるべきでない」という前提で書かれた幸福論ってあんの？
寺山修司の「幸福論」はそうかもしれません。

>「私はすべての女性に性欲を感じます」
＞どこにそんなこと書いてあるの？
文庫版170ページです。「ふたたび恋愛について」の終わり。

バカうんぬんは516さんの�ｓc恆存氏への思い入れからでたことば
なのでしょう。わたしも氏が好きなのです。ただ古いと。
「古い」と「好き」のあいだには逆説も順接もありません。
解説でもふれていましたが、氏があの「援交」ブームを知ったら、
とてもではないけど「恋に恋する青年」のくだりは削除しなければ
ならなくなります。

つんく「LOVE論」の時代
文学青年は唖（おし）以外の何者へ？

>>516
5郎さんが�ｓc恆存氏のことばを指針に、あるいは糧として、
ときには故郷のような支えとして、読みかつ生きてきたことが
よくわかりました。自身の生きかたに誠実であったことが。

きのうは寺山修司の「両手いっぱいの言葉」を読みました。
これは寺山版の「日本への遺言」とでもいうべき本で、
寺山全作品から名言をピックアップしたものです。
読んでいて�ｓc的な窮屈さから解放される喜びといったら！
両者を比較した評論はあるのでしょうか？　おなじ劇作家ということで。
どちらも言葉は所詮は言葉にすぎないという意識が発言の前提にあります。
しかし、そこからがちがう。いささか比喩的になりますが、
�ｓcは言葉で生きようとし寺山は言葉で死のうとしたと思うのです。
そこに含意されることは、かならずしも両者の寿命のみにとどまらない。
花火があるとします。するとふたつの人生ができる。
可憐に花火のような一瞬の輝きに生きる人生と（寺山）、
花火の美しさをこころに残し家に帰って風呂に入り床につき
花火の思い出をかみしめながら明日を待つ人生（�ｓc）。
ここでの花火はときとして悲劇と同義になるかもしれません。
余談ですが、�ｓc氏の幸福論を虚構化したら、
寺山の大学時代の学友・山田太一の世界になるというのは
なんとも不思議なことです。

人生が劇場、私達それぞれが主役をねらう役者だとしたらば、
幸福論とは、とどつまり演技論ということになる――。
寺山修司のこの指摘に思わず青空を見上げてしまった今日なのです。

とどつまり→とどのつまり

ひええ。かっこよくキメタつもりだったのに・・・

>>519（美香さん）
私も、ちょっと乱暴、大雑把な比喩でお返ししてみます。
寺山、とどのつまり「面白ければいい」「いいかげんでいい」
という姿勢で生ききった人だと思うんですね。
瞬間、刹那の一回性に賭け、逃げ切ろうとすること。
辛気臭い忍従や受容の姿勢に比べ何とも抜けが良くって、清清しい。
「作り替えのきかない記憶はない」と、ひたすら自由に、軽くなろうとする姿勢。
宿命に逆らい、ずらし、誤魔化し煙に巻き、どこまでも逃げ切ろうとすること。
寺山、素晴らしい才気と膂力だったと思います。
けれど同時に、そこまで破壊と撹乱に執着する彼の姿勢に、
やはり宿命のようなものを見てしまう。
そして、その姿勢をドグマのように信奉して、
自由や解放を窮屈なものにしてしまうのは、つまらないことだとも思う。

つまるところ、物事は思うようにはならないし、どちらだっていい。
そういう明るいニヒリズムに裏打ちされたタフなオプティミズムが、実は福田氏にはあった。
ただ、「面白く」「いいかげん」であることの頼りなさを生きることよりも、
伝統、常識に依拠しつつ考え、生きることを選んだ。
（彼は、人は生きるもの、という前提に立っているのではなく、
生きてしまうのならば、生きていくことを選ぶならば、という話をしていると思う。
つまり、彼の幸福論は、青春の終わりから始まっている）
という私の説明も、実は杜撰な二元論にすぎなくて、
寺山にしろ、膨大な過去の言葉に依拠しなければ、
その相対的な視野や指向の広がりは、到底得られなかった。
少なくとも、私にとってはこの二つの立場、
対立し、優劣を測らなければならないようなものじゃない。
彼らの資質、宿命から出た姿勢を、イデオロギーのように信奉するのは
どちらにしろ窮屈な事だと思う。

青春が永遠に続くならば、それは無残なことだ。と、坂口安吾は明晰に言った。
そして彼は、正に永遠の青春の宿命を、転げるように生ききった。
いずれにしろ、人生は自由にならない。
それでも足掻く。うろうろと。
そんな人間が好きだ（好きでいたい）。分別臭い物言い、恥ずかしいけれど。

>>521
感服しました。まさか２ちゃんにここまでのひとがいるとは！
＞つまり、彼（�ｓc）の幸福論は、青春の終わりから始まっている
この一文をレス全体の核として�ｓcと寺山を見事なまでに比較して
（目からうろこがぽろ×２でした）、しかし両者は
＞対立し、優劣を測らなければならないようなものじゃない。
なぜなら、
＞彼らの資質、宿命から出た姿勢を、イデオロギーのように信奉するのは
＞どちらにしろ窮屈な事だ
からである、と結論づける。おバカなわたしでもよくわかりました。
たいがい２ちゃんの長文レスというのは（わたしのレスも含めて）相手に意味が
うまく伝わらないことが多いのですけれども、5郎さんのはすんごいよくわかりました。
こういう第三者に説明するというのは、よほど深く理解していないとできないこと。
おかげさまで勉強になりました。ありがとうございました。

>>522
5郎さんは「寺山＝青春現在進行形、�ｓc＝青春以後」と比較されました。
これを読んで寺山が自分ことを「青春煽動業」と自嘲していたことを思い出す。
するとじつにうまく両者の相違が照らし出されます。

さて、�ｓc氏の文章をわたしがはじめて読んだのは「ハムレット」の翻訳でした。
氏はハムレットの有名なセリフ「To be, or not to be, that is the question」
を「生か、死か、それが疑問だ」と訳しました。このセリフを口にするとき、
ハムレットは迷っている。国王であった父は叔父に暗殺された。それなのに母は、
その新国王たる叔父と再婚するというではないか。
「たわいのない、それが女というものか！」
ハムレットには生きるか死ぬか、その二つしかない。死ねばすべてが終わり。
この恨みも苦悩もきれいさっぱり消えてなくなる。だが、生きるとするなら、
あの憎き叔父に復讐をはたす他はない。
なかなか行動に移せないハムレットも最後には叔父を殺し自らも死ぬ。
この「ハムレット」という演劇にたいして観客も二つの選択を迫られるのです。
「ハムレットを観る（だけな）のか、ハムレットを生きるのか、それが（青春の）疑問だ」

寺山はハムレットを生きようとした。ハムレットは私である。ならばハムレットの
ごとく血縁をひきちぎれとばかりに「家出のすすめ」を主張する。「言葉、言葉、
言葉」でしかない「書を捨てよ、町へ出よう」！　町に劇場をつくり、そこに上がろう。
一点豪華主義。ああ、たとえ一瞬でも生の昂揚が味わえるのなら、
それで死しても文句など決して言わぬ。

�ｓcはハムレットを観ようとした。ハムレットから学習する。生と死という、
その二者選択はまちがえているのではないか？　生と死はたしかに矛盾する。
しかしなぜ矛盾してはいけないのか。生と死、背反する二律をあわせもつのが
人間というもの。ときには死の一歩手前まで近づき、またべつのときには
生を謳歌する。しかしどちらも演技である。演技とは劇場にあがって行なうもの
ではなく、いまその地点で私達がしているものであるのだから。

ここでわたしは気づくのです。
「ハムレットを観るのか生きのるか」という二者選択が無効であることに。

いいスレだなぁ〜。
いや、本当に。

あげ。

>>525
全く同意です。

「辛気臭い忍従や受容」という言い方を私はしたけれど、
やはり、これは福田の姿勢には当たらない。
彼は所謂ロマン主義者ではないけれど、現実主義者でもない。
血縁、資質、容姿、環境。我々は取り替えの効かない、多くの宿命によって規定されている。
それに対し自覚的であろうとする意思とスタイル（演技）が、そのまま「自然」「なしくずしの生」に抗することだった。
その意志があまりにも徹底していたこと、隙が無いことが、
ある種の窮屈さにも繋がり、偶然のはずみや退廃という自然から生まれる享楽を
抑圧していたところはあったけれど、自身はそこで無い物ねだりになることなく己を全うしつつ、
自分に欠けている「自然の力」に対しても、謙虚でフェアだった。
それが、タフなオプティミズムを支える、しぶとい「強さ」の根だったと思う。

>>527
同感です。
福田は「幸不幸の彼岸」に生きようとし、寺山は「幸不幸の彼岸」に生きざるえない
人だったのかなと思うます。
それには常人なかなか持てない「強さ」がいるんでしょうけど。

馬鹿いえｗ
な〜にをおためごかしな独り善がりをやり合ってんのｗ
寺山は、おっ母の掌の上で踊り狂って死ぬしかなかった阿修羅だよん、
どれだけ思い入れ深くフレームアップしたって、
剽窃に限りなく近いパクリ技を得意とし、堂々とそれを晒しては
文句あっか？と世に突きつけながら尻まくってみせた。
尻尾をおっ母につかまれてたから、安心して尻がまくれたわけだ。
ちったぁ、わかれや

>>529
寺山がそういう奴だったのは知ってるよ。
おっ母の掌の上で踊り狂って死ぬしかなかった阿修羅でも。
詐欺師でも。
そんな奴はそうはいないよ。そんな奴が書いたものでも読む人には無関係なく読めばいい。
君は高校の倫理の教科書でも読んでな。

＞おっ母の掌の上で踊り狂って死ぬしかなかった阿修羅でも。
＞詐欺師でも。

そう。膨大な文学的営為のデータベースからのパッチワークのような
寺山の言葉が、挑発が、完全に寺山を解放することが無かったとしても、
（大体、完全な解放などというものが有り得るのだろうか、、、）
そしてそれが、思想として普遍性と力を持ち得なかったとしても、
それをそのまま文学としての低さだと、私は思わない。

母との関係をはじめ、大きく状況に規定され、
それを大きな動機として横紙破り的な言動に出る。
想像力と動機の苗床である原風景にこだわり続け、
繰り返し語り、虚構化することで自由になる。
けれど、それは不感症であると同時に淫乱症でもあるような自由。
それを生ききる寺山に、人の幅の一つの局相を見るし、
それは、とても文学的なことだと私は思う。

ただ、寺山は自然、偶然を泳ぐ力にめぐまれていただけ、
それと馴れ合おうとしたし、その中で無意識に美化し、
（半ば無意識の処世術として）厳しい認識を怠っていたところはあると思う。
だから、寺山は「自分」を越えて続いていくものを信じ、
普遍を目指す強さの方へは向かえなかったし向かわなかった。
そして、その寺山の、（無自覚に）自然に流され、刹那と馴れ合う姿勢が、
そのまま大衆と結託する「華」であり、いかがわしさだった。

ただ、「正しさ」を指向することは貧しいことだと思う。
そして、同時にそういう「自己本意」に対して無自覚な、傲慢なことだとも思う。
「自己本意」の通用しない自然の大きさに対して、「自覚」への意志で抗するダンディズム。
それが、福田の姿勢だった。だから、彼には「書くこと」がそのまま「生きること」だった。

>>531
またまた勉強になります。
でも今回の5郎さんにレスをつけようとすると、
わたしの狭い言語領域を越えてしまうので・・・
>>524-525程度のレスでさえ頭を使い切った感がありまして（ｗ

寺山の「幸福論」はかなり以前に読んだのですが、読み返そうと
本棚をさがしたら・・・ない、どこにもない！　本屋にもない。
もう絶版なんですかね。ちょっと前は角川文庫でずらっと並んで
いたイメージがあったんですけど。残念です。

寺山についてなんですけど、以前にどこかで読んだのですが、
性的な障害をかかえていたとか・・・　天才の欠点を見つけて
安心する俗人根性丸だしで恥ずかしいです。もちろんコンプレックスに
天才の天才たる理由を押しつけようという気は毛頭ありません。
でもどなたかご存知でしたら教えていただけませんでしょうか。
たしか立ち読みした本で知ったような気がするのですが。
スレちがいでごめんなさい。

ここ福田恆存スレなんだから、寺山スレでやったら？

福田恒存に人生の救いをもとめるなよな。

>>534さん

「人生の救い」って何なんでしょうね。
あなたは、福田恒存の言葉を、何を求めて読まれているのでしょうか。
ただ、「救いを求めるな」という言い方も、
「救い」という言葉に、安直な結論を求めるような平板な姿勢と
実は裏表なのではないでしょうか。
反宗教という態度が、実はとても宗教的であるように。
性急な達観が、青さの裏返しであるように。

「思想の言葉」は、どんなものであれ、
どういう状態をよしとするのか、という納得を得る為に発せられているし、
そこに力が宿り、価値が測られるものだと思う。
それが「救い」だと、私は思います。

勿論、言葉を発する我々は、普遍の神などではなく、
地上の生存競争の当事者だ。
だから、言葉によって、無意識の処世もやる。
マイナス面を厳しく揶揄し、突き放す言い方もすれば、
そういう人間として、どうあれるのか、という相手本意の提言をすることもある。
そして、そこにはしばしば、
「本当は、他人に甘い汁を吸って欲しくない」という嫉妬心や、
気に入られ、受け入れられたいが故の、取り入りの感情、
無意識の処世が混じってくる。
だから、容易くは信じられない。

そんな処世まじりの言動に、「だまされた人間が間抜けなのだ」と、
達観し、厭世し、開き直るような態度は、なし崩しの自然に屈服した
「弱い」態度だと思うし、「かのように振る舞え」と言った福田氏の姿勢から
最も遠いものだと思います。
厳しい「演技」のダンディズムに支えられて、はじめて「信頼」は成立する。

>>533さん

おっしゃる通りですね。失礼いたしました。

>>532（美香さん）

拙く、堅い文書で申し訳ありません。
福田氏の文章については、難しいというよりも、
というか、私の場合難しく感じる時っていうのは、
まだ、自分が納得したくない時なんですね。
まだ機が熟していないというか。

寺山、昔、集中して読み込んだ時期があったんですが、
彼自身についての細かいディティールとか、もうほとんど忘れちゃってます。
病気に付いても、若くしてカリエスで長患いしてたことくらいしか、、、
時間があったら、少し調べてみます。
もし何かあれば、今度は寺山スレの方で振ってみて下さい。

石田健夫『戦後文壇畸人列伝』より、福田氏のエピソード。

　面白いのは、自宅の庭に防空壕を掘ったときの話である。｢痩腕に精一杯の
力をこめ」て、それを掘ったのは太平洋戦争末期の昭和二十(一九四五)年三月、
それも「戦争は年内で終わると見た｣からだ、とある。間もなく戦争が終わると
考えれば、防空壕など作る気にもならないのが普通だろうが、そうならなかった
ところに、彼のユニークさがうかがわれる。

　防空壕は二つ掘った。一つは家族の退避用だったというのは、
まあ、当たり前のことである。感心させられたのは、もう一つの方の
用途である。そこに｢退避｣させたのは書物と文房具で、文房具としては
万年筆、鉛筆、消しゴムなど「どんな零細なものも見逃さず、びっしり
詰めこんで」おいた。しかも、本が蒸れることを恐れて、一ヵ所だけ
一尺四方の穴をあけ、天気によってそのふたを開閉できるようにしたという。
明らかに戦後の文筆活動再開への備えである。消しゴムなどは、戦後に五年間も
使えるほどあったそうだ。プロの物書きを志した者として、これほど周到な
用意はあるまい。そこには「文筆職人」としての覚悟がうかがわれる。(引用終）

既出だったらすいません。

age

保守

あげます。

>>537
上陸前の地ならし大空襲が畳みかけるように来ると思ったからでは。
まあ実際そうだったんだけど。
奇人の証拠というよりは冷静な行動かと思う。

かの風流夢譚事件の時、フィクサーの田中清玄氏に右翼を押さえるよう福田が頼んだ
らしいです。

＞５４３
　それはあり得る話しだな。深沢一郎は福田の文学観を評価していたからな。