過去を現在で描くための法則

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1吾輩は名無しである
「日本語のすばらしいところは過去の事柄も現在であらわせる」
三島由紀夫がこんなこと言ってました。
確かにそうなんですが、
実際過去と現在の使い分けに何かしらの法則ってあるんでしょうか?
例えば、
「爆音が静けさの中に木霊する。疾走するトラックは風を切り裂き、
快調に無尽のハイウェイを爆走する。室内に立ち込めた思い空気の中で
2人の男が黙止する。1人は痩せ細った身形の貧しい旅行者、
もう1人は屈強な体躯をした白髪交じりの初老の男。まさか、
バスの代わりが4トントラックだとは思いもしなかった」
これは僕が書いた文章ですが、
最後だけ過去形にすることでこの状況がより生々しく感じませんか?
でも実際、現在と過去が不規則に並べられた文章も多くあります。
例えば、
「友達からペンを借りる。使ってみると、とても書きやすいペンだった。
しかし、すぐにインクが切れた。僕は仕方なく文房具店へと向かう。
そこにはたくさんのペンがあった。いくつか紙に試し書きをしてみる。
その中で赤と青のペンを買うことにした」
これは現在と過去がごちゃ混ぜに入り込んでいますよね。
これってやっぱりおかしいんですか?
創作板より文学板の方が明らかに本を読んでいる方が多そうなので、
ちょっと疑問に思い訊いてみました。
2好奇心:01/11/25 16:02
手紙なんて、過去を現在で書くためには便利ですね。
同じようなもので、日記。
ちょっと>>1さんの考えていることとは違うようですけど。
3吾輩は名無しである:01/11/25 16:04
「現在形で書かれた小説なんてものは無いんです」
by ハスミン
4吾輩は名無しである:01/11/25 17:05
自由間接話法
5吾輩は名無しである:01/11/25 17:10
「た」←過去ではなく「叙述」の「た」。
6吾輩は名無しである:01/11/25 17:29
虚辞の「ぬ」
71:01/11/25 19:05
確かに、手紙って現在ですよね。
でもその場合は現在形って言った方がいいのかなあ。
「お元気ですか?私も元気です。最近は法律学の授業が難しくて
ほとほと疲れております。今度の土曜日はお暇ですか?
私は暇です。もしよければいっしょにお食事でもしましょう。
お返事ください。待っています」みたいな。

叙述の「た」って何かすごく分かります。
ただ、どうしても知りたいのが過去(叙述)と現在との使い分けです。
3さんが言っていることは分かります。
小説を見ると、たいてい過去で述べられています。
特にヘミングウェイなんかは過去で語ることで文章を非常に簡潔に
まとめていますよね。
それに比べてノンフィクションの場合は過去と現在が混合している
ことがすごく多いです。
あと風景描写なんかはなぜか現在で書いた方が臨場感が出るような
気がします。たぶん風景はそれだけで1つの塊だからだと思います。
例えば、
「山の端には、父の枕経のあいだに、私が目のはじに感じたような、
いかめしい夏雲が聳えている。それを鬱積した光りを称え、この繊細
な建築を見下ろしている。金閣はこんなに強い晩夏の日差しの下では、
細部の趣を失って、内に暗い冷ややかな闇を包んだまま、ただその神秘
な輪郭で、ぎらぎらした周囲の世界を拒んでいるように見える。そして
頂きの鳳凰だけは、太陽によろめくまいとして、鋭い爪を立てて、
台座にしっかりとつかまっている」(三島由紀夫「金閣寺」)
このような風景描写では現在を使ってこの文章が1つの塊である気がします。
風景描写に過去を取り入れると、そこで文章が途切れるので、
風景が断片的に描き出され、臨場感が損なわれる気がします。
8吾輩は名無しである:01/11/25 21:49
タイムマシ―ンに乗って、書くのことよ〜(涎
9吾輩は名無しである:01/11/25 21:53
8をみんなで無視しようよヽ(´ー`)ノ
10JPB@改:01/11/25 22:06
>1さん
>「友達からペンを借りる。使ってみると、とても書きやすいペンだった。
しかし、すぐにインクが切れた。僕は仕方なく文房具店へと向かう。
そこにはたくさんのペンがあった。いくつか紙に試し書きをしてみる。
その中で赤と青のペンを買うことにした」
これは現在と過去がごちゃ混ぜに入り込んでいますよね。

この文章だけだと、そんなに違和感ないのは、現在の文も頭の中で過去
の事態として理解しちゃうからですかね。
118:01/11/25 23:39
ふん、だ。
12吾輩は名無しである:01/11/25 23:47
きみはSF板に欠かせない人材と思う。
こんなとこにくすぶってるのは即止めたまえ。
13吾輩は名無しである:01/11/26 00:23
要するに日本語には英仏語のような厳格な文法がなく、随意に書いてもそれなりに
意味が通ればそれでよし、ということだよ。
あとは効果とそのねらいが問題。特に文学の場合はそう。
「友達からペンを借りる。使ってみると、とても書きやすいペンだった」は
「ペン」という単語が重複されている以外、特に気になる箇所はないようでもあるが
あえて言えば前半と後半でテンスを変えてあるねらいが、いまいちハッキリしない
ところが気になり、それは以後の文章を読んでいくにつれて、さらに目立ってくる。
もしそこに何の狙いもないのであれば、できるだけテンスを統一したほうが、
より良い文章(文学的にも)という印象を読者に与えるのではないか。
(もちろん上記の例文がある目的の為に作られたことは分かっている)
14三流ライターですが…:01/11/26 01:26
これはね、ものを書こうとすると誰もがぶつかること。
小説で現在形を使う場合は、臨場感を出したい、読者をその場に引き込みたい
という狙いがあるのかもしれないが、でもまあ
実はそれほど効果をだしている例は少ないと思う。
それより、描写や解説をするとき、どうしても「た。た。た。」って
続くじゃない?それをさけるために、いろいろまぜてるほうが多い。
筆者の「考え」や「感想」(である。とか)を入れずにできるだけ
たんたんと描写・解説しようとするとやっぱり
短調にならざるおえないのが日本語。
じゃあどうするか?
これね、意外と簡単。文章力がついてくれば、
「た。」がある程度連続しようがさほど気にならないのよ。
「友達から…」の場合、俺ならぜんぶ「た。」でしめるかもしれない。
いや、ある程度言葉を補充しながらセンテンスをつなげて、
違和感をなくす努力はするかな。
君が作家志望ならある程度独学でやるのもよし。
ライターと違って、「雑」に書くことが
個性にならないとも限らないしね。

参考まで。
15吾輩は名無しである:01/11/26 01:33
そんな当たり前のことを参考に、といわれても。。
16吾輩は名無しである:01/11/26 01:48
>>15
当たり前?
1は自分をさらけ出してるから、レスしたまでよ。

じゃあオマエ、「贅肉」がなく「舌足らず」にもならない
完成度のあるものなんでもいいから書いてみろよ。
くだらない一言レスじゃないやつを。
俺はオマエみたいないやらしい
言い逃げ野郎が大嫌いなんだよ。
17吾輩は名無しである:01/11/26 04:53
「短調にならざるおえない」ような、個性あふれる
完成度高い文章なんて、ちょっと荷が重いような気がするわ。
どうやらプロの方に喧嘩売ってしまったみたいで・・・。
ごめんなさいね。
18吾輩は名無しである:01/11/26 08:30
短調なのか、単調なのか。
19吾輩は名無しである:01/11/26 10:32
>>18
>>14の説によると「短調」
20吾輩は名無しである:01/11/26 10:44
お元気でしたか?私も元気でした。最近は法律学の授業が難しくて
ほとほと疲れておりました。今度の土曜日はお暇でしたか?
私は暇でした。もしよければいっしょにお食事でもしましょう。
お返事ください。待っていました。
21吾輩は名無しである:01/11/26 10:48
二点。
22吾輩は名無しである:01/11/26 12:24
20って、なんなんだ?
>>16に対する答えなのか? それとも過去形と現在形を使った実験のつもりなのか?

それにしても>>16のつっこみには同意するな。>>15みたいなのを「鳥の糞レス」
と呼ぶ。空からぼっとん、といきなり降ってきて、「なんだ、このウンコ」
みたいなもんよ。仮にも文学板なんだから煽る場合でも5行、いや2行譲って
3行くらいカキコしてみろな。他のスレでもそうだけどな。でも、「文学板では
3行以上のカキコ限定」ってしたらとたんに人口が減るだろうな。あはははは。
23吾輩は名無しである:01/11/26 13:17
三流ライターですが…=22さん。板杉升。
24吾輩は名無しである:01/11/26 14:03
あはははは。
25埼玉の中学生:01/11/26 15:01
>>14

> 短調にならざるおえない

⇒単調にならざるを得ない

それでライターやってけるんですか?
いいですね、いい加減な職種で。
26吾輩は名無しである:01/11/26 15:09
>>25 だめだめ、2chにおいてはそういう打ち間違い系の間違いは突っ込みにな
らないんだよ。
これも「鳥の糞レス」の類だなあ。厨房か・・・まあ、仕方がないか。
27吾輩は名無しである:01/11/26 15:24
同意。煽る場合でも、読んで面白い煽りぢゃなきゃね。そういう意味で、
20のカキコはざっと書いた風に見えて、けっこうしっかり構成されている
というか、読みやすいだろ。するっと読めるだろ。それはただ、口語を使って
いるってだけじゃないんだ。わかるか?
>>14のライターさんの文章もそうだ。>>25も14や20を見習って、文学板
らしい煽りレスをつけような、わかったか?

よし、わかったら、手を洗ってこい。いっしょにおやつ食べような。
わかった、わかった、泣かなくてもいいよ。文才のないのはお前のせいじゃ
ないよ、本を買ってくれなかったお父さんやお母さんが悪いんだよ。
一度お母さんに会わせてくれないか。お父さんのいないときにな、うん?
そうだ、お父さんの出張はいつだ? ほら、口のまわりがアンコだらけじゃな
いか。犬みたいにがつがつ食うなよ、手使えよ、手を! 何のために手を洗ったのか
わかってんのか? まったくもう。

ってこれくらい書け!!
28吾輩は名無しである:01/11/26 15:50
中国語って時制がないってホントですか?
29三流ライダー:01/11/26 15:54
>>25
編集者は神です。
時には凡人もおりますが、大抵は神として立派に成長します。
神は寛容であり、「打ち間違い系の間違い」などは、
何ごともなかったかのように赦してくれます。
間違いは誰にでもあることですし、
何といっても、赦すのが神の仕事なのですから。
30吾輩は名無しである:01/11/26 16:02
>>27
君の場合文才以前だな。
31吾輩は名無しである:01/11/26 16:06
>>27
汝、煽るなかれ、騙るなかれ、ジサクジエンするなかれ。
アーボン。
32吾輩は名無しである:01/11/26 16:08
2chという便所の落書きで能書きたれるなよ。
ヴァカとか糞とか、そんな言葉で十分だ。
クズしかいねーんだから。
33吾輩は名無しである:01/11/26 16:21
>>25よ、>>29の言うとおりだぞ。

まあお前のような厨房を出版社や編集者が構うことは永遠にないだろうが
・・・参考までに教えてあげよう。スティーブン・キングもこう書いているぞ、
冗談半分だろうがな。

「本書中、ほかのどこにも直接は触れていない鉄則がある。「編集者は
常に正しい」ということである。ただし、完全無欠な人間はいないから、
当然ながら、作家は何から何まで編集者の言葉に従うわけではない。
これを言い換えれば、書くのは人の常、編集は神の業である」
(「小説作法」より)

どうだ、わかったか。わかったら風呂入ってこい。
うわ、きたねえ風呂だなあ。お、これは誰の毛だ? お母さんのか、
それともお父さんのか? どっちだ。わからないって、家族だろう。
まさか、お前のぢゃないだろうな。おら、見せてみろ。いいから見せ
てみろって、別に変なことするわけぢゃないって。先生に見せろと
言っているのがわからんのか? おら!
泣くな、泣くなよ。あとでラムネ買ってやるからな。ああ、ああ、
ビー玉入っているやつだよ。言えるか、「びーだま」って。おら、
言ってみろ、「びーだま」。違う! 「いいあま」じゃない。「びーだま」だ!。
まあ、いいや、とにかく見せてみろ。男どうしぢゃないか、お前だってもう生えて
るんだろう、おら。おい・・・お前、これって・・・ちょっと、待ってろ。
カメラ持ってくるから。そのまま待ってろよ!!
34吾輩は名無しである:01/11/26 16:29
>>30 ぢゃあお前もなんかカキコしてみろ、3行以上で。
ちゃんとオチもつけてな。できるもんならやってみろ。
そうそう、同じ内容で文体変えて2つほどageてくれるとうれしいな。

って、なんか荒らしになってるので去ります。ごめんね、1や他の
真面目なみなさん。バイビー!!

でも>>30はちゃんと落とし前つけよろ。わかったか?
35編集者:01/11/26 16:30
>>34
「つけよろ」→「つけろよ」
36成る程:01/11/26 16:32
見事に時勢を表現したレスがついたね。
>>15 オナニー後
>>14,16 オナニー前

まあ落ち着きたまえカスども。
37埼玉の中学生:01/11/26 16:38
>>33
おかげさまで勉強になりました。毛は小5のとき生えました。
母は38です。今後ともよろしく。

>>1
たとえ現在進行形の物語でも、読みつつあるそばから過去になっていくので、
時制の「た」と叙述の「た」はやはり別物と考えたほうがいいんじゃないかと
思いますが、どうでしょうか。
38吾輩は名無しである:01/11/26 16:39
はーい!
39吾輩は名無しである:01/11/26 16:41
>>37 ん? なんだ、意外といいやつぢゃないか。先生見なおしたぞ。
がんばるんだぞ。お母さんは38歳か・・・いいな。お前には
まだわからんかもしれないがな。じゃな。
40吾輩は名無しである:01/11/26 17:02
>>37
そのへんのことはね、言語学板の質問コーナーあたりで
聞くのが妥当だと思うよ。
烏合の衆である「文学」的には絶対といえるような法則はないと思う。
あるのは山のような用例だけ。
理論から入るか実践から入るか、きめるのはキミだよ。
41埼玉の中学生:01/11/26 17:09
あのー、ぼくは答えただけで、質問した人は別なんですけど・・・
42吾輩は名無しである:01/11/26 17:14
なんで中学生だとアピールするんだ、ヴァカなのか?
431:01/11/26 18:25
>14さん、
確かにものを書いてみて初めて過去、現在、叙述などの使い方に
頭を悩ましました。それまでは全然気にならなかったのに。
案外、読者側からすればそんなのどうでもいいかも。
14さんの意見からすると、やっぱり主観的(作者の考え)で
過去、現在などは使い分ければいいんですね。
だったら、何か安心しました。
ただ過去が続くと、やっぱり文章が単調に見えます。
なんていうか、リズムがないっていうか。

>埼玉の中学生さん、
そうですね。過去と叙述は区別しないと駄目ですね。
ただちょっと叙述と過去の判断って難しくないですか?
例えば、
「(僕はドアを開けた。室内は真っ暗闇だった。10分ほどが経過した。
次第に目が慣れてきた。すると、数メートル先に大きな人影が見えた。
髪は短く、背は高かった。僕は男に一歩一歩近づいた。
なんと男は数日前に僕に話し掛けた)大学生だった」
この文章の場合、()のところが叙述となるのでしょうか?
そして最後の「大学生だった」が過去ってこと?
あと「男は数日前に僕に話し掛けた大学生だった」。
この部分だけ見ると、「男は数日前に僕に話し掛けた」
ここは明らかに現在から見て過去ですよね。
でも「大学生だった」この事実を入れることで、
大学生であることが最も確実な事実ですよね。
となるとこれは叙述的用法になるのかな。
叙述と過去の判断も何か曖昧なんですよ。
やばいかも。。。
44吾輩は名無しである:01/11/26 18:40
板違いをあえて文学板で尋ねると、ろくなことにはならん、
という見本みたいなスレだ。
45埼玉の中学生:01/11/26 19:06
>>1さんへ

>>43ですが、この場合、現在形にしても意味が変化しない文が
叙述にあたるんじゃないかと思います。

「僕はドアを開けた。(室内は真っ暗闇だ。)10分ほどが経過した。
次第に目が慣れてきた。すると、数メートル先に大きな人影が見えた。
(髪は短く、背は高い。)僕は男に一歩一歩近づいた。
(なんと男は数日前に僕に話し掛けた大学生だ)」

つまり( )内が叙述となるんじゃないかと思うんですが、
そんなに自信はありません。
46吾輩は名無しである:01/11/26 19:06
そうだ、そうだ! 年がら年中「あいうえお」の研究をしている言語学
板にいったほうがいいよ。
4746:01/11/26 19:10
>>46>>40>>44へ賛同するレスだよん。間違えないでね。
「あ、い、う、え、お」の「お」、でジャンプだよ!
みんなで言語学板に逝って、「あいうえお」体操や「あいうえお」
クイズに強くなろう!
48吾輩は名無しである:01/11/26 19:15
「あいうえお」の研究・・・あまり藁わすな、お前。
49Tango:01/11/27 04:05
する→した→したのだ(であ)った
3番目のが効果的かつ自然に使われていたりすると何故か嬉しかったりする。

あと、いま思いつくのだと、石川達三の「ぼくたちの失敗」はほぼ完全な一人称現在で
書かれた小説だと言えるのじゃないかと思います。
(多分、意識的にやってるんだろうな。それはそれですごいことだ)
50吾輩は名無しである:01/11/28 00:50
1はどうした?
51受験生:01/11/28 01:05
晩年の谷崎潤一郎はそれを上手く使っていると思うのですが…
どうですか?
52吾輩は名無しである:01/11/28 01:36
>>50
あいうえおの特訓中?
53吾輩は名無しである:01/11/28 14:46
1さん、おーい!
54:01/11/28 16:14
なんだよ
55吾輩は名無しである:01/11/28 17:49
なんだよって、怖いなぁ。
疑問は解決したのかな〜って思っただけですよ。
561:01/11/28 21:59
>埼玉の中学生
そうかあ。そうだよね。
でも僕が思ったのが、
「僕はドアを開けた。室内は真っ暗闇だった。10分ほどが経過した。
次第に目が慣れてきた。すると、数メートル先に大きな人影が見えた。
髪は短く、背は高かった。僕は男に一歩一歩近づいた。
なんと男は数日前に僕に話し掛けた大学生だった」
この文がありますよね。この最後の部分「大学生だった」ここを過去として
捉えて、つまり、大学生と気がつく前提部分、
「僕は〜話し掛けた」までは大きくくくって叙述として捉えられるんじゃない
かなあ〜って思ったんです。だけど、この「大学生だった」は過去として
考えられるかというと、これは叙述として捉えるのが一般的な気もします。
やっぱり、埼玉の中学生さんのが正しいと思います。

>Tangoさん、
石川達三さんの作品は読んだことがありませんが、
全て現在で書かれた作品ってあるんですか。
ちょっと驚きです。
「する→した→したのだ(であ)った」って
もう少し具体的な例はないでしょうか?

疑問は解決していませんが、
言語学板にスレッドを立てるほど頭を悩ましてもいません。
571:01/11/28 22:00
それでもう1人。
「旅館のすぐ前に川が流れ、木立に囲まれた寺院がある。いつ見ても川は灰黄色に
淀み、数知れない小穴をうがたれ、寺院の屋根の怪獣は濡れしょびれている。咆哮
しようとして口をあけた瞬間に凝視を浴びせられた姿勢で怪獣は凍り付いている。
私はベッドに腰をおろしてウォッカをすすりつつ黄いろい川に輪を広がっては消え、
消えては現れるのを眺めた。じっと見つめているとやがて無数の菌糸が消えて、
たった1滴の雨が降っているように見えてくる。それをあきると毛布にくるまって
眠りこける。さめるとパンやハムを買いに外出し、本屋にも映画館にもよらないで
帰り、ベッドの中でまた眠る。窓のカーテンはしめたままなので、赤の闇がたちこ
めるほかは、朝とも夜ともけじめがつかない。私は形を失い、脳がとろけかかって
いるらしく、いくら眠ってもつぎまた眠れた」(開高健「夏の闇」)
長いですが、ここで1つ気がつくのが、「私は」の部分です。この部分だけ、
過去が使われています。現在で全て書くと文章が非常に単調で軽くなるん
だと思います。かといって所々に現在と過去を混同するとまとまりのない、
断片的な文章になる。そこで彼は途中で一端「私は」で過去を挿入する。
この「私は」といれることで現在と過去の意味合いが強調されると思います。
あと最初に出てくる「私は」の前部は風景が描写されています。
それに比べて後部は著者自身の描写が書かれています。
つまり前部と後部との表現の違いを途中に「私は〜眺めた」をいれることで
区別しています。それと、前部は「静」で後部は「動」です。
このような役割もあるように思えます。考え過ぎだと思いますが。
58埼玉の中学生:01/11/28 23:34
1さん、すごくよくわかります。
「静」と「動」の真ん中に「私は〜眺めた」を入れることで、
毎日毎日窓の外の風景を眺めながらベッドで眠る主人公の生活や、
省略された時間の流れが強調されるんですね、きっと。

それで、tangoさんの言う、「する→した→したのだ(であ)った」ですが、
この開高健の小説でいうと、最後の部分が
「私は形を失い、脳がとろけかかっているらしく、
いくら眠ってもつぎまた眠れたのだった」になるわけですよね。
開高健は文章をずいぶん推敲した作家らしいので、
「眠れた」か「眠れたのだった」のどちらにしようか、
悩んだ末に、「眠れた」にしたんじゃないかと、いま考えました。
「眠れたのだった」にすると、私が「形を失い、脳がとろけかかって」いたのは
もう昔のことで、いまはシャキッとしてます、っていう感じになっちゃいますから。
だから「眠れた」と過去形で書いても、それはまだ現在とつながっている過去なんだと
思います。

そんな意味で考えるとと、
tangoさんの言う、「したのだ(であ)った」というのは、
すでに終わった物語を、なんていうか、ゆったりした立場から書いた文章で、
そういう語りにも、ぼくは魅力を感じます。

わかりにくかったら、すみません。
59吾輩は名無しである:01/12/02 01:27
いいスレだけど、だめだめですねー
60吾輩は名無しである:01/12/02 01:52
>いいスレだけど、だめだめですねー

だめってこともないよ。
テンスとアスペクトの文法的な解説は本で幾らでも読めるけど
このスレのように、実作に即してまた〜りと語ってるのを読むというのも
なかなか良いです。
創作文芸板や言語学板ではできないようなこの辺りの話は全部ここで回収して
是非とも続けてほしい。
61吾輩は名無しである:01/12/06 00:27
また〜り逝こうよ。いいスレなのでage
62吾輩は名無しである:01/12/06 00:57
読み比べて欲しい。


墓地への道で赤い花を買った。
名前は知らないが、思い出がある。
昔、女に贈った花だ。


墓地への道で赤い花を買った。
名前を知らないが、思い出はある。
昔、女に贈った花だ。


墓地への道で赤い花を買った。
名前は知らないが、思い出もある。
昔、女に贈った花だ。

どれも短編小説の冒頭に使いやすい文章になっています。
1、2、には意図があり、
3は失敗例として作りました。
板違いかもしれませんが先ずは
この3つをマッタリと読んでみて下さい。
63吾輩は名無しである:01/12/06 01:14
追記です。

奢った書き方で申し訳ありませんが、
読み比べたらこの1、2、3それぞれの抱える
欠陥を指摘してみて下さい。

見比べていると
なーにかが見えてくるかもしれないし
「ハァ?低レベルな話してんじゃねぇよボケ!」
と言いたくなるかもしれない。
そうなったら許してくれ(笑)
64吾輩は名無しである:01/12/06 04:13
3はラリってるのかなと思いました。
65吾輩は名無しである:01/12/06 04:40
1は素敵な文章だと思いました。
66吾輩は名無しである:01/12/06 06:37
女は死んだのかなと思いました。
67 ◆39URJlJo :01/12/06 10:46
2は人物が花の名前を知りたがっている、と思いました
68吾輩は名無しである:01/12/06 12:17
サッチーが逮捕されました
69埼玉の中学生:01/12/06 12:42
2は>>67さんと同じ意見。花の名前を知りたがってる。
1は問題ないようだけど、やっぱり少し名前にこだわってる。

4 名前も知らないが、思い出がある。

って書くのが、自然でしょうね。

5 名前も知らないが、思い出はある。

って書くと、ちょっと思わせぶりな感じ。
70吾輩は名無しである:01/12/06 17:04
6 名前こそしらないが、思い出ぎある。
7162:01/12/08 18:58
>64
3がラリってるのは正解(笑)

>67、69
鋭いご指摘。
ネタばらし行きます。

2は助詞の関係で「名前を知らないこと」と「思い出」
が密接に関わっています。
じっくり読まれた方は
「名前を知らないが思い出がある」等と
ひねくれた言い回しにするのか疑問に思ったはずです。
その上、次の文でも、この疑問は解消されないでしょう。
これが文章として抱える2の欠陥です。

実を言うと、1にはさほどの欠陥はありません。
「名前」と「思い出」に強い関わりが無いため
3つの文としての流れはそれなりに整っているはずです。
7262:01/12/08 19:21
じゃあ、
何故「1の抱える欠陥を指摘しろ」等と言ったのか
お思いになるかもしれません。
一番書きたかったのは、そこです。

1は小説の書き出しとして、
2よりも完成度が高いことが欠陥です。
逆説のように聞こえるかもしれませんが、
これは確かに欠陥でもあるのです。
1は「長編小説」になる可能性を自ら削いでいるのです。

と言うわけで、終了。
長々とうざくても、まぁ、温かくしてくれ。


・・・しかし、こういった理屈は
あまり役に立たないかな。

>65
ありがとう。
73吾輩は名無しである:02/01/03 15:51
おもしろいのでage
74吾輩は名無しである:02/01/28 05:26
保全あげ。
75吾輩は名無しである:02/02/11 02:19
age
76吾輩は名無しである:02/02/22 13:20
分裂病になれば、きっとできるだろう。
77吾輩は名無しである:02/02/22 17:53
「エデン・エデン・エデン」はどうだ?
78Tango:02/02/22 18:36
>>77
あれは「物語体の現在」と解釈して、翻訳では過去形(つまり、文末
を「〜た」で、どこまでも押し通す)にした方が良かったのじゃないかと
思います。
三人称小説の場合、現在形を執拗に用いると、読者に一種の気持ち
悪さを引き起こすものですが、「エデン・エデン・エデン」は小説としての
人称がずっとはっきりしないので、あれでは、なんの効果もありません。
過去形なら、同じ文末を避けようとする日本語ならではの効果が生まれた
かも知れないという気がします。
7977:02/02/22 19:57
>>78
叙述の「た」で押し通せというのは全く同意。
実はおいらも同じことを考えた。
でも「エデン・エデン・エデン」は三人称でしょ?
三人称小説の場合云々のところがちょっと意味不明。
80Tango:02/02/22 21:28
なるほど、上手いこと言いますね<叙述の「た」

>三人称小説の場合云々のところがちょっと意味不明。

えーっと。手近の三人称小説を、頭の中で現在形に変換しながら
読んでみてもらえますか? その際、主要人物(大抵は主人公に
なると思いますが)がなるべく速やかに登場して、その人を中心に
描写が展開する話がいいです。気持ち悪くならないでしょうか?

逆に、主要人物がなかなかはっきりしない三人称小説は、語り手が
いつ登場してもおかしくないような不安定な状態になると思います。
『エデン〜』は、この点で不安定感はあると言えなくもないですが、
それは、「叙述のた」に直しても、おそらく同じ事。"繰り返しのグラン
ド・ビート"とは無関係です。
舌足らずで申し訳ありませんが、お分かりになるでしょうか?
8177:02/02/22 23:23
>>80
オッケー。理解したよ。
82吾輩は名無しである:02/02/25 14:52
>>77さん
すみませんが、過去形の「た」と、叙述の「た」の違いを教えてください。
非常に興味があります。
83ixion:02/02/25 15:22
これ、面白いね。
ギュヨタ読んでないから『エデン・エデン・エデン』のことは分からないけど、
例えばC・モーリアック『忘却』なんかの翻訳の〈止め方〉も、ちょっと
面白い。確かに「気持悪い」かもしれないが、いかにも実験的な引き込み方
としての現在形、体言止め、助詞止めなどに新聞の見出し文体を絡める冒頭
は、かえって「〜た」では味が薄れてしまうような気がする:

「湯気で曇った窓ガラスのうえに、一本の指が書く、
忘 却、 と。

長椅子のうえでひとりの男が眠っている、1966年8月4日木曜日付の
開いた新聞にかこまれて。そのうちの一枚は、一面の幅いっぱいに、大文字の
見出しが《5人のスターのハートを襲う嵐》。ほかの新聞には、またほかの
見出し――悪天候のため観光客一斉に紺碧海岸に引き返す。――モンブラン
山塊に嵐。イギリスの登山家2人、疲労のため死亡。ハイフォン近郊爆撃さる。
――ソフィア・ローレン邸に強盗。――米空軍フランスより6飛行中隊引き
上げ、3中隊はヨーロッパに残留。――ナポリ湾に鮫警報。――ウィルソン
首相の引き締め政策、新段階へ。――エアハルト首相は経済安定策緩和を
計画中。

 開いた窓のガラスがちらっと反射する。からっぽの空にかがみこんでいる男
の背中。見知らぬ男が5階のバルコニーからひとりの通行人を眺めているの
だが、もうひとりの人物が、それと気付かないよう用心しながら、歩道を
かえて、つくでもなく離れるでもなく、その通行人のあとをつけている。

 湿っぽくて寒かったこの1日の終わりに、パッシー通りをラ・ミュエット
のほうにニコラはおりて行く。彼はゆっくり歩いている。心配事でもありそう
な顔で。見捨てられたパリにはほとんど誰もいない。開いている店を探し
まわる家政婦が何人か。」(岩崎力 訳)
84ixion:02/02/25 15:39
あと、ギュヨタは榊原晃三訳ですが、同じ訳者でもM・トゥルニエの
『フライデーあるいは太平洋の冥界』では、航海日誌の部分や、一部
で「「〜」と…が言う。」のような挿入に現在形を用いる以外は、
描写を「〜た」で統一しているのが、後半のある部分では現在形に
なることで非常に良い効果をあげています(原文ではどうか分かりま
せんので、そこは他の方にお任せ^^;):

「さて、彼は両足を揃え、手を合わせて、もう一度机の前に立っている。
彼は〈聖霊〉の霊感を待っている。自分の怒りを高め、この怒りにもっと
純粋でもっと崇高な調子をあたえることが大切だ。彼は聖書を行きあたり
ばったりに開く。開いたのは〈ホセア書〉である、預言者の言葉は白い
ページのうえで黒い記号となって捻じれ、それからロビンソンの声で響き
のよい波となってはじけとぶ」

ここでは、物語への〈同調〉を誘うようにして現在形の叙述が表れていて、
それが「本を開き、文字を見て、音にする」という行為と一致しているが
故に効果がある書き方だと思われます。
85Tango:02/02/26 17:25
「ヘルメットをかぶり、両脚を開いた兵士たちが、筋肉をこわばらせ、深紅色
や紫色のショールにくるまった新しく生まれた嬰児たちを踏みつけている。G
MCの機銃掃射を受けて穴だらけになった、薄い鉄板の上に蹲っている女たち
の腕から、嬰児たちが外に転げ出る。運転手が運転室に投げ込まれた一匹の山
羊を、あいている片手の拳で外へ押し戻そうとしている。
 フェルクール峠では、リマの一小隊がにわか造りの道路を越えている。何台
ものトラックから兵士が飛び降りる。リマの男たちは、珪石や蕀で穴だらけに
なったタイヤに頭をもたせかけて、砂混じりの泥灰土の上に横たわり、タイヤ
の泥よけの陰で上半身を裸にする。女たちは赤ん坊を胸に当てがって揺する。
揺するたびに、彼女たちのみすぼらしい衣服や、体毛や、皮膚に浸みこんでい
る香料──油、丁子、バター、藍、硫化アンチモン──が、火事にあってぽた
ぽたたれる汗のために、一層強められて流れ出す。……」


これが、ピエール・ギュヨタ『エデン・エデン・エデン』の冒頭です。
本多勝一のルポと言われても、思わず納得してしまいそうな書き出しですね。
実際、ルポルタージュの手法に近いかも知れません。
今ちょっと読み返しただけでも、この情景を観察する何者かの存在──その強
烈で冷徹な視線の存在がひしひしと感じられて、一気に引き込まれます。
読み進めるうちに、あたかも自分の眼が、その者に乗っ取られたかのような錯
覚に陥ります。
86Tango:02/02/26 17:25
と、この辺りまでは、"現在形に徹した筆写法のなせる効果"で話は終わりです。
先回りして内容的(と言うより寧ろ「見かけ上」と言うべきなのでしょうが)
な事に触れるなら、全編、「戦争状態の中に放り込まれた人間の果てしのない
性と暴力」といったものの描写で、徹頭徹尾、貫かれており、これが単なるル
ポであるにしても、それだけで充分に破格なものだということになるのでしょ
うが、しかし、実際に読んでいくとなれば、その程度では済まない状況──ル
ポ形式であるとか以前に、読者が無意識に行うあらゆる予測を全く無効にして
しまうような状況に、直ちに突き当ることになります。

まず気づくのは、筆者に何かを物語ろうという気がまるでない、ということです。
ただ状況だけが延々とそこにある。(*註
いま一つは、時折、何の脈絡もなく括弧つきで挿入される咒詛のような繰り言。
これは、明らかに登場人物の台詞である場合もあれば、そうではない、まるで
無言のモノローグか何かであるように感じられる場合もあります。少なくとも
地の文、会話文といった旧来の文章作法とは完全に決別した、新しい形式が創
出されている、と言えます。(実は、括弧も「」と《》とが使い分けられてい
るんですが、長くなるので詳述しません)
そして、行ども行けども万便なく一様な現在形である、ということ。

さて、ここまで書いてくると、どうやら「物語」を効果的に喚起させる為の対
比的に用いられた現在形ではなさそうだ、ということがお解りいただけるのじゃ
ないかと思います。

ともあれ、これが邦訳版の『エデン・エデン・エデン』です。

-----------------------------------------------------------------------
*)この点に関しては、M・レリスが「序文」で触れていますので、引用します。
「もっとも厳格な読者は、何度もひつっこく思うであろう──この著者は己の思
考を追っているのだ、あるいはむしろある果てしのない文章の中に徹底的に没入
しているのだ、その文章は何ものも明示しようとしない。〈物語ろう〉としない。
ただ単に示すことだけを目ざしている。あるいはより正確に言えば、一つの綿密
な報告という手段で読者を罠にかけることを目ざしている」ちなみに、この本に
は他に、R・バルトとPh・ソレルスも序文を寄せています。
87Tango:02/02/26 17:28
ここから先は、日本語の文章とは直接の関係はないのですが。。

原文の『エデン・エデン・エデン』には、時制として直説法現在のみが使われて
るという点(「訳者あとがき」より)に、ぜひとも注目してみなければいけません。。
どうも聞くところによると、仏語の動詞は、90%は規則的な活用をするらしいん
ですね。勿論、この数字がそのまま使用頻度になるわけではないでしょうが、規
則動詞の活用語尾は、同じ時制なら同じになるようです。そこで、帯の煽り文句
を見ると、「くりかえし、くりかえされる言葉が惹き起こす強烈なグラウンド・
ビート」、「まったく稀有なことだが、その文章は幻覚をおこさせる力を持って
いる……ミシェル・レリス」などの文章が否応なく目に飛び込んできます。
しかしながら、本文中では同じ言葉がひつっこく繰り返されるという箇所は殆ど
ないのですね。
てことで、過去形の「た」云々かんぬんのところは、全て、このことを受けて書
きました、というわけなんです。
88Tango:02/02/26 17:28
あと、ついでに「気持ち悪い」の例を一つ。

 六月のある水曜日、午前八時、快晴。
 すでにかなり気温が上がっている様子の、外の景色を時おり横目で眺めながら、
娘がひとり、ホテルの一室で荷物をまとめている。
……(中略)……
 ストッキングの包装紙を片手に、娘は周囲を見回す。ナイトスタンドの脇に金
色の腕時計を見つけて、左手に巻く。ベッドの足元に、ピンク色のヘアカーラー
が一個落ちている。拾いあげて、無造作にスーツケースに投げ込むと、もう一度
化粧台の屑籠へと歩いていく。まだ靴を履く気はないらしく、ストッキングだけ
の足はカーペットを踏んで歩いても足音を立てない。
 包装紙を屑入れのせまい口に押しこもうとすると、透明な紙はばりばり音をた
てる。その音にびくっとしたように──娘は手を止めて、包装紙をそのまま屑籠
に軽く載せる。
 隣の部屋に消えていった娘は、すぐに戻ってくる。軽いサマージャケットを腕
にかけ、一方の手に今朝の新聞を持っている。ベッドのスーツケースの脇にジャ
ケットを投げだすと、新聞を小脇にかかえ直し、今度は通りがかりのついでのよ
うに洋服だんすを覗きこむ。下の段からネッカチーフを一枚すくいあげて、扉を
締め、スーツケースの前へと戻ってくる。
 ケースの口からあふれそうになっている荷物の上に、ネッカチーフを押さえつ
けると、次に娘は、からだ全体でのしかかるように蓋を締めようとしはじめる。
脇にはみだした布を何度か中に押しこむと、蓋はようやく正しく閉じて、ぱちり
と錠のかかる音がする。──と同時に、窓の外で、激しい水繁吹の音が起きる。
(山尾悠子「夏への一日」)
89Tango:02/02/26 18:32
>>86にもう一個入れ忘れた。
『エデン〜』には、どうも主人公というものがないようです。
(いま、ざっと読み返したところ、です。実は殆ど忘れてるので<笑)
登場人物たちは、主に、男、女、兵士、少年、淫売宿の主人、娼婦などと
表記されていて、中には気紛れに(としか思えない)名前を与えられてい
る者もいますが、名前があるから重要というわけでもなさそうで、この辺も
物語る気がなさそうだと感じる一因になっていると思います。
90ixion:02/02/27 15:52
俺はフランス語は分からんから、かろうじて分かる(ということがどういう
ことかかすかに分かっている程度の)言語であろう日本語と英語で考えてみると、
現在形というのは特に自分の身近な出来事やいつも行なうこと、また一般的な
法則や原則を語るもので、個人的な回想としての「ものを語る」という行為と
合わないから、そのような「気持悪さ」であるとか、「物語の希薄さ、もしくは
出来事の過剰」が生まれてくるのではないだろうか?

「両脚を開いた兵士たちが新しく生まれた嬰児たちを踏みつけている」
は、
(1)人称を剥ぎ取られている
(2)現在形として出来事を叙述する
という2点から、ある意味で突き放した客観的な出来事描写になっています。
なんとなーく「現場リポート」ですよね、現在形の「現場」性。
(注:ただし、主人公が自らの回想に「没入」するあまり、まるで自分を
その「現場」においているように語っている、という自分を自分がカメラ・
アイ的に見つめる現在形もあるのですが、そりゃまた別の話ってことで^^;)
91ixion:02/02/27 15:53
それに対し、
「両脚を開いた兵士たちが新しく生まれた嬰児たちを踏みつけていた」
は、
(1)人称を剥ぎ取られている
(2)過去形として出来事を叙述もしくは回想する
わけで、この(2)において読者が何らかの主観性を感じた場合(つまり、
「あーこれはこの主人公が目にしている光景なんだなー」と期待したとき)には、
「新しく生まれた嬰児たちを踏みつけていた…」
の(…)の部分に読者が何かを読み取ってしまう(例:「なんてことだ」
「汚らわしい」「驚くべきことだ」「こうしたことも世の道理だ」)のでは
ないだろうか?

「バスが来る」と「バスが来た」を比べた場合、この時制による主観性の感じ方
(前者はカメラ・アイを、後者は主人公の眼を感じさせる)の違いってのは、
はっきりしてくると思うんだけど。レリスは頭良いから、すっきり「物語」と
「報告」を区別して、さらに上述の(注)で書いた「没入」にまで論を進めて
いるんじゃねーかな、と、勝手に想像してみる。

やばいアゲてしまった、興味ない人々スマソ^^;
92ixion:02/02/27 15:56
あと、上の「人称をうんぬん」ってのは、普通名詞=当事者性を剥ぎ取ら
れたもの、と考えて、「私が」や「あなたが」とは違って、「兵士が」
と書いただけで、人称的なベタツキから離れている、っていう程度の
意味です。
私「は」と、私「が」だけでもこのベタツキから離れられる、ってのは
渡部某がよく言うことだけどね。
93ガイシュツ?:02/02/27 16:08
れきし-てきげんざい 【歴史的現在】

過去に起こったことを生き生きと描写するために、
今、目の前で行われているかのように現在の時制で書き表す表現法。

これは辞書の記述。
文法書も読んで見て下さいね。
(と自分も読んでいないのに言ってみる。)

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/3739/classes/memo/10_tense.htm
94ガイシュツ?:02/02/27 16:13
日本語においては西欧語におけるような
過去形というものはそもそも存在しないといえる。
>>1の三島由紀夫の発言も日本語文法に関する勘違い
から生じた誤解であるとする見方もある。
95ixion:02/02/27 16:25
>れきし-てきげんざい 【歴史的現在】

>過去に起こったことを生き生きと描写するために、
>今、目の前で行われているかのように現在の時制で書き表す表現法。

現在形の「現場」性って、こういう用語があるのね。しってりゃ
すっきり言えるんじゃん>俺(恥)
英語だとpresent tenseですから、present(何かがそこにある・いる)
ということから分かる感覚なんだけどね。

日本語文法における過去形の扱い、ってのはどうなん?
96吾輩は名無しである:02/02/27 16:38

けり
97ixion:02/02/27 16:54
おいっ(ビシッ)>96

つ・ぬ・たり・り 完了
けむ 過去推量
9896:02/02/27 17:37
イヤシカシサ、中国語モシクハ漢文ニオイテ、
過去形ヤ未来形トイウモノガ無イコトト
関連ハアリマセヌカ?
ツマリ訓読トシテノ過去形トカナントカ。
愚問デアレバゴメンヨ
9993:02/02/27 17:48
「完了」は過去形ではない
英語に現在完了、過去完了ってあるでしょ

「過去推量」というのも過去の推量であって過去形ではない
(多分……) 
100吾輩は名無しである:02/02/27 18:27
>>78で【物語体の現在】としてガイシュツだね<【歴史的現在】

例えば、日本語に逐語訳したときに次のようになるフラ語の文章があったとする。
「先週私は休暇から戻る。私は私のアパートが空き巣に入られているのを発見する。」
これが物語の中で用いられていた場合の自然な日本語訳はこうなる。
「先週休暇から戻るとアパートが空き巣に入られていた。」

と書いてみたものの、それが実作の中で、どのような規則性をもって用いられているか、などということまでは知る由もない。

>>91「人称を剥ぎ取られている」らへんからの流れからいって、話を日本語に限定すべきなのだろうが、一応。
101Tango:02/02/27 23:19
スレを浪費するだけの駄レスはすっかり回ったみたいですね。

あ・・・えー、『エデン・エデン・エデン』の場合、作者がどうやら物語る気がなさ
そうだということも、現在形で押し通すことをわざと課しているらしいということも、
途中でみえてしまうんですよ。んですんで、こちらも身構えてしまって、どうも
効果が薄い、と・・・あ、これは日本語で書かれた小説として、ということですね。
(原文では他にも、韻を踏みまくったりと、なかなか凝った趣向になってるようです)

普通の小説を書く上で、最大限の効果を目指す為の研究材料としては、『エデ
ン・エデン・エデン』は、ちょっと異例過ぎたようです。ので、この小説からは一旦、
離れて頂いた方が良いかも知れません。

「現在形」云々については、もっと予習して来なければ、と痛感しています。
「〜た」一辺倒でも一先ず「ルポ」は成立しそうだな、というのは解りましたが、
なるほど! 「現場リポート」にはなりそうもないですねぇ。現場性は極めて薄い
です。あと、ドキュメンタリーとフィクションの違いについて考えさせられました。
特に読む方。ドキュメンタリーとフィクションでは、読み始めるときの心構えという
ものに、やはり違いがあるのではないか、と。

それと、思うところあって『ブルックリン最終出口』を段ボールから引き出して来ま
した。こちらも例によって研究材料としては不的確なんですが(笑)、まあ、一風変
わった文体がお好みの方には一興を提供してくれるかも知れません。
102ixion:02/02/28 01:17
>「完了」は過去形ではない
>英語に現在完了、過去完了ってあるでしょ
>「過去推量」というのも過去の推量であって過去形ではない
>(多分……) 

あ、ごめんマジレス返されたけど、それは分かってます、一応^^;
単に遊びで古文の知識並べただけね>93 って、書くまでもないけど。

俺も英語の現在形をいろいろ眺めてるんだけど、present tenseの「近さ」
を「現場」性と「カメラ・アイ」という言葉以外で切る術が浮かばない。
日本語の方は、英語よりもっと複雑そうだなぁ>tangoさん

何か浮かびましたら、実例挙げて教えてください。お願いします。
103Tango:02/03/01 23:02
なるほど、「近さ」か・・それで、ようやく解りました。

そういうことでしたら、>>85をもう一度蒸し返しましょう。
あの引用を、一先ずギュヨタから独立させて、何でもいいから、
ああいう書き出しの小説があったとします。
かなり「近い」ですね。
それと、やはり人称がはっきりしないので不安定な感じがします。

一方、>>88は、全くと言っていいほど近くない。
そして(少し考えを後退させて原因は保留することにしますが)、気持ち悪いです。
この気持ち悪さは、短い引用の中では解りづらいかもしれませんが、
よく読むと気づくと思います。

これ以上は、もう少し時間をかけて検討せねば、です。
今日のところは確認までm(_ _)m
10477:02/03/08 21:59
このスレ終わったのか?(苦笑
カメラアイで一つ思ったんだが、一人称の映画ってあるのだろうか?
もしくはは非人称映画。
文学と映画の比較で人称の取り扱いについて考えてみるのも面白い。
ま、時制とは関係ないか。
105偽イタロ・カルヴィーノ:02/03/10 13:43
映画は基本的に非人称なんじゃないかな。
あと、一人称映画って、つまり主人公の顔が映らない
映画って意味で言ってるわけだよね。
そーゆーのなら寺山修司が作ってたよ。
スクリーンの上部に突然、髪がふわーっと映し出されて、
あ、手持ちカメラのレンズに髪の毛がかぶさっちゃのね、
みたいなことに気づかされるやつ。
でもそんな昔のことを思い出さなくても、
ハメ撮りのエッチビデオはぜんぶ一人称映画だよね(笑)
106吾輩は名無しである:02/03/17 18:30
アフォですんません。非人称ってなんすか?
107吾輩は名無しである:02/03/21 18:49
俺も知りたい
108Tango:02/03/24 13:58
あ゛?

なるほど「カメラ・アイ」かぁ。肝心なのをすっかり忘れてた。
109吾輩は名無しである:02/04/02 11:13
age
110fkr:02/04/02 12:01
同じ現在形を使った叙述でも、人称が未定だと「近い」叙述になり、はっきりした三人称だと「気持ち悪い」叙述になるということですね?人称と時制の関係をもっと知りたい。
111吾輩は名無しである:02/04/03 12:07
ゴダールの映画は「三人称現在形」のような気がするが。
112吾輩は名無しである:02/04/22 02:10
age
113吾輩は名無しである:02/04/22 02:17
『愛の世紀』でも、ベルクソンを引用しつつ時制を混乱させていた。
「三人称現在形」というのは暴力的じゃないかな
114吾輩は名無しである:02/05/10 16:28
ageてみる
115 ◆YejoOYtk :02/05/10 22:21
まず日本語に過去形なんてもんがあるのかが課題
116吾輩は名無しである:02/05/30 21:24
117吾輩は名無しである:02/06/02 21:25
age
118吾輩は名無しである:02/06/02 21:28
「おなかがすいた」のは今?
119吾輩は名無しである :02/06/03 04:17
「やられた」のは過去だけ?
120吾輩は名無しである:02/06/03 04:38
マターリ            マターリ
゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*
ぃょぅ(=゜ω゜)人(´ω`=) ぃょぅ
   *・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*
マターリ            マターリ
121吾輩は名無しである:02/06/03 04:40
いや、あのう…教えてくんないか?
122吾輩は名無しである:02/06/03 05:14
あげとくね!
123吾輩は名無しである:02/06/15 23:47
あんまり期待できないが、
落とすにはもったいないので、あげ。

乱暴な言い方かもしれないけど、
主人公の視点=カメラとすれば一人称映像はけっこうあるだろうし
二人称映像もインタビューの形式を考えれば多々あるだろう。
三人称映像なんて、視点の位置だけでものを考えれば、
普通の映画(映像)のことを指してるわけだ。

映像に関しては人称と時制っていうのは
そこまで複雑な問題ではないように思う。

むしろ語り手と聞き手という関係を
規定されている文学において
考えるべき問題だろう。


ーと言いたいが、反論あるか?
124吾輩は名無しである:02/06/23 15:04
人称なんか表面的な問題だよ。文学論文書きたいヤシにしか意味ない
125吾輩は名無しである:02/07/07 20:57
保守しときましょう。
126吾輩は名無しである:02/07/16 01:40
age
127吾輩は名無しである:02/07/31 01:21
       γ'',, '''…、
      〆.'  ' ̄'' ヽヽ
     . i;;i'       'i;i
     .i;;;i'  u     .i;
     .i;:/ ..二_ヽ '_二`,::
     l''l~.{..-‐ }- {.¬....}l'l
     ヽ| .`ー '.  `ー ´|/
      |   ノ、l |,ヽ .ノ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       ヽ~(、___, )ノ  <   過去、忘れてしもたがな
       /|.ヽ..__ ___/|    \___________
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       ヽ \/ /
        \/▽ヽ

128吾輩は名無しである
       γ'',, '''…、
      〆.'  ' ̄'' ヽヽ
     . i;;i'       'i;i
     .i;;;i'  u     .i;
     .i;:/ ..二_ヽ '_二`,::
     l''l~.{..-‐ }- {.¬....}l'l
     ヽ| .`ー '.  `ー ´|/
      |   ノ、l |,ヽ .ノ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       ヽ~(、___, )ノ  <   誰か、つっこんでくれなはれ
       /|.ヽ..__ ___/|    \___________
     /l \  //l\
       ヽ \/ /
        \/▽ヽ