石坂洋次郎は?

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1ぽっぽ:01/10/12 18:38
 戦前は「若い人」、戦後は「青い山脈」と国民的ベストセラーを飛ばした
石坂洋次郎。しかし、今は評価する人も少ないようです。果たして、本当に
過去の人なんでしょうか。
2ぽっぽ:01/10/12 18:40
 読んだ事ないでしょ。
3吾輩は名無しである:01/10/12 22:21
石原裕次郎
4722:01/10/12 22:22
ない。過去の人だ。
5吾輩は名無しである:01/10/12 22:23
女学生の読み物って感じがするよ。
6吾輩は名無しである:01/10/12 22:29
「リヤカアを曳く−死−」とかね。
あんなのが毒だったんだ、いい時代だね。
7名無しさん:01/10/12 23:44
昭和20年代に「石中先生行状記」が猥褻罪で起訴猶予になったとかいう話を聞いたので読んでみたら、びっくり仰天。
この程度の描写で問題にされるんだったら、今の少年誌に連載してる漫画家たちはことごとく懲役だよ…
8ぽっぽ:01/10/13 19:05
>>7様へ
 始めて聞きましたよ。
9吾輩は名無しである:01/10/13 23:52
読んだことあるのは「若い人」と「河のほとりで」? くらいだ。
「石中先生行状記」も一部だけ読んだ。自分の奥さんと映画館で
会って、とかいうあたりが猥褻罪なんだろうか。
10ぽっぽ:01/10/14 17:59
 「石中先生行状記」いいよ。これ知らない人は人生で損してる。先人の愛を
知らない。
11ぽっぽ:01/10/16 20:57
 確かに、「若い人」「青い山脈」は古いですよ。しかし、「石中先生行状記」に
関しては、三島由紀夫の「潮騒」や、川端康成の「古都」と比肩されるべき、後世に
伝えるべき優れた業績だと思うんですよ。
 三島や川端だって傑作ぞろいって訳じゃないでしょう。金の為に書いたような、
雑でマンネリな作品だって多いじゃないですか。しかし、一方では古典的作家として
評価されている。石坂洋次郎も、青春物の流行作家という印象が強いですけれど、
「石中先生行状記」だけは、次代に誇りうる古典として評価すべきだと思うんですよ。
12吾輩は名無しである:01/10/16 21:00
「石中先生行状記」
これ、これ、読みたかったんだけど作者もタイトルもわかんなかったんだ!
よかった。
13ぽっぽ:01/10/17 19:47
 どこかで聴いた事あるんだけど曲目が判らない。ある種のバロック音楽や
映画音楽のような珠玉の名編集、それが「石中先生行状記」なんです。
14ぽっぽ:01/10/19 19:49
 むかしの日本人は幸せでした。石坂洋次郎から愛されていたのですから。
今の日本人は不幸です。誰からも愛されていないのですから。
15ぽっぽ:01/10/20 20:23
 だから、石坂洋次郎は?
16ぽっぽ:01/10/21 20:55
 なんで内田百間で盛り上がるかな―。それなりに面白いのは判るけど、前半は漱石の
「夢十夜」の影響ありありだし、後半は志賀直哉の影響か文章が簡潔になっているけど、
語り倒したいほどのもんかなぁー。才能は「中の上」で、性格は「下の中」ってくらい
のもんでしょうが。そこへ行くと、われらが石坂洋次郎先生は、才能は中くらいでも、
性格、人格、愛情が「上の中」なんですよ。これこそ、語り倒すべきものです。
17吾輩は名無しである:01/10/21 21:33
人格と作品は関係なし。
わからぬ16逝ってよし。
18吾輩は名無しである:01/10/22 00:11
話ずらすようで悪いんですが
石坂洋次郎のような「青春のすがすがしさ」みたいなのはないのですが
似たような通俗作家で、かつ映画原作者、そして直木賞作家でもある、

藤原審爾
ってどう思われますか?ちょっと安っぽすぎますかね?
私、『秋津温泉』ていうのが好きなんですが
19名無しさん:01/10/22 00:22
藤原審爾か。あの男の遺伝子から、藤真利子みたいな美女がよく出てきたものだ。
20吾輩は名無しである:01/10/22 00:47
>>19
そうだったのか!!
「泥だらけの純情」(吉永小百合ヴァージョンと山口百恵
ヴァージョンとがある)とか、
「赤い殺意」とか、「花嫁は十五才」(主演はなぜか和泉雅子)
とか、めちゃ懐かしいですよ。
(つか、リアルタイムは知らんのですが。いやマジで)
21ぽっぽ:01/10/22 21:47
 わ、わ、皆さん、よく御存知ですね。せっかくなんですけど、私の言ってるのは、
「若い〜」「青い〜」系ではなく、後世に伝えるべくして書かれた野心作「石中先生
行状記」なんですよ。

 ああ、でも、「花嫁は十五才」なんて良いですねえ。別な意味でねえ。
 「秋津温泉」ですか、よさそうな題名ですね。いつか暇があったら読んでみたい
ですね。
22ぽっぽ:01/10/23 18:37
 人格と才能という話が出ましたけど、やっぱり関係あるんじゃないでしょうか。

 たとえば井上靖なんて人はですね、かつては志す人の少なかった古典や中国の代表格で、
黙っていれば国民的大作家になれたんですよ。それが女性スキャンダルによって失墜した。
しかし、中華系作家の台頭や、酒見賢一や宮城谷昌光のような独創的・良心的な作家と比
べると、井上靖の独創性なんて無いに等しいんですよ。とすれば、井上靖はスキャンダル
によって失墜したと言うよりは、もともと大した事なかったのが、スキャンダルによって
化けの皮が剥がれたと言うべきではありませんか。やっぱり人格と才能は関係あるんですよ。
かつては骨太に見えた相貌も、女喰ったあとは爪楊枝つかってシーシー、ってやってそうに
見えますからね。

 偽善というのが、一番いけないんですよ。同じ女好きでも、永井荷風はどうです。
生前は好色漢・猥褻文学との非難を敢然と受けながら、戦中は翼賛体制になびかず断腸の
思いで孤高を保つ。たいへんな人格者ですよ。だからこそ才能もある。ここで言う人格者
とは、世間の非難に関わらず、どこか一本筋を通しているかどうかという事です。例に
引いた内田百間も、たいへん我がままだけど、裏表のない人格者であると言えます。

 そこへ行くと、石坂洋次郎はどうです。出版社の依頼を断り切れず、生活不安も手伝って、
手に余るほどの仕事を引き受けてしまう。作品の内容が薄くなり、読者の期待を裏切るのは
百も承知で、それを止める事ができない。はっきり言って、商売人ですよ。誰にでもぺこぺこ
頭を下げて回る商売人。質の良い仕事をしよう、読者を裏切るまいという観点からすれば、
永井荷風、内田百間にも劣る偽善者ですよ。しかし、「石中先生行状記」だけは違うのです。
四方八方に頭を下げて回り、言われれば何でもするプライドのない商売人が、何故か、
親に似ぬ、たいへん美しい娘を育てていた。この娘だけは、玉の輿に載せて上げなけりゃ
ならない。そういうものです。「石中先生行状記」とは、それほどの作品なんです。
23名無しさん:01/10/23 18:50
井上靖の女性スキャンダルって聞いたことないな。どんな話だったのか、よければ教えてください。
24吾輩は名無しである:01/10/23 22:02
つまり、井上靖には「石中先生行状記」が書けなかったという事か。
ついでにいうと、宮本輝にも書けそうにないような…。
25吾輩は名無しである:01/10/23 23:43
「陽の当たる坂道」「あいつと私」「霧の中の少女」
高校生のころ読みふけったのは秘密です。
高2の夏休み「霧の中の少女」に憬れてみちのくぶらり旅を自作自演したイタイおいらでした。
26ぽっぽ:01/10/25 21:19
>>23
 えーと、なに、交際のあった女性編集者が堕胎を強要されたとか。それも、
外聞を慮って。
>>25
 イタくないですよお。
27ぽっぽ:01/11/04 21:20
 テレビ東京が無理無体に寅さんブームを煽ってるけど、石坂洋次郎の方が無理がないと
思うなあ。似たようなもんなんですよ。
 て言うか、「石中先生行状記」の中の「祭禮の巻」に出て来るテキ屋の竹さんというのが
寅さんそっくりなんですよ。服装と言い、重實散というインチキ薬を売り付けるエピソード
と言い、義理堅い性格までそっくり。これが寅さんの元ネタであると、徹底検証したい
くらいです。寅さんブームよりも、石坂洋次郎ブームの方が生産的だと思うんだけどなあ。
東芝日曜劇場あたりで、石坂洋次郎特集でもやってくれないかなあ。
28ぽっぽ:01/11/26 19:18
 ええい、みんな、これを読むんだ。


〜干草ぐるまの巻〜 「石中先生行状記」より

 町の病院へ姉の見舞いを言いつかったヨシ子、母に駄賃をねだる。病院、映画
を二つ、デパートで買い物と胸算用して、朝六時に出発。
 道の右手には崖の新緑、左手には岩を噛む青い渓流、爽やかな音を立てて町の
方へ流れる。ヨシ子も同じ町へ。
 やがて渓流は、淵となりせせらぎとなり、しだいに川幅を広くして、ヨシ子の
歩く道とついたり離れたりしながら町へ流れる。やがてひらける田園地帯。山懐
の狭苦しい環境で育ったヨシ子、かすかな興奮。
 大きな流れとなった岩木川は津軽平野へ、町へ入る前にコンクリートの橋を渡
るヨシ子。二時間半の道程。
 病院、姉のカツ子は居ない。水を飲み、汗を拭き、笑い声の聞こえる方へ。相
川さんに手相みて貰えと勧める姉。五十年輩の相川、今日明日中にも一生の相手
とめぐり会う。
 部屋に帰る姉妹。女らしい体になったと褒める姉、小遣いをねだる妹。そこへ
夫の清次郎、すねる姉、気前よく二百円くれる清次郎。邪魔にならないように帰
る、夕方また来るとの事。
 映画ふたつ、デパート、食事、夕方また病院へ。寝ている姉、身の振り方の決
まった女の安心しきった寝顔。みやげのアイスキャンデーを置く。
 帰路、肺病やみの手相見を毒づく。干し草を積んだ荷車が通りかかる、同じ部
落の太吉という年寄り。乗せて貰うヨシ子、荷車の上で赤いパラソル。姉を羨み、
もっと仲良く、うんと働いてと、目算。
 澤田村の茶店、ここで休憩。この先で道が二股に分かれる。同じような荷車が
多数、なかなか帰らぬ年寄り。退屈したヨシ子、煎餅を買い喰い。一日の疲れが
出て、釘抜きで挟まれたように眠くなったヨシ子、干し草の上に這って眠る。
 やがて出発する荷車、違う方向。愛宕部落の若い貞作、茶店で引っかけた酒の
ほてりを風で冷まし、干し草の上の荷物にはとんと気付かず。
 夕焼けも薄れて、星が二つ、三つ。家に着いた貞作、夕餉の匂い。縄を解くた
め車輪に上がると、パラソルと下駄を抱えた娘が干し草の上に。
 ヨシ子の夢、占いが気になる。いま眼を開けば、生涯の男がいる筈という思い。
優しい微笑みを浮かべて、ぱっちりと眼を開くと、そこに貞作の大きい顔。ふた
り一緒に、「お前、誰だや?」
 岩木村へ帰るというヨシ子。聞き付けた母親、手を拭きながら、飯も、風呂も
ある、今日は泊まれと勧める。安心できる様子、同意。
 荷車の世話をする貞作、すでに家の中からヨシ子の弾けるような笑い声。食事、
母を相手によく喋べるヨシ子。父と弟、居心地良く、歓迎されている感じ。長く
女っ気を欠いていた家庭。風呂で背中を流す母、唖みたいに口を利かない男だが、
親は大切にする良い息子。
 翌朝、水汲みや炊事を手伝うヨシ子。家柄は釣り合う。ヨシ子と眼が合うと、
笑うようになった貞作。もう良い時間なのに、出かけない二人。貞作の手相を見
て、無口だが、性格は良いと占うヨシ子。巡査を連れた母親、お前の身に間違い
がなかったと一筆書いて貰う。質問の後、誤って同乗、処女に相異なしと記す。
 土産を持たせて再び荷車で出発、生卵二つをヨシ子に食べさせる貞作。干し草
の上で生卵を飲んで、お姫様みたいだと言うヨシ子。茶店で別れる二人。
 帰宅するヨシ子、感情の激しい母親を警戒して説明する。素早く捕まえて、殴
るよりも泣き崩れる母親。巫女にまで見て貰った。巡査の説明書を読んで聞かせ
るヨシ子、納得する母親。いきさつを話すヨシ子、若い娘のほのかな興奮があっ
て歌でも聞いているかのよう。明日、お前をつれて愛宕へ礼に行くという母親。
 仲人は巡査。巡査を訪ねた石中、お腹の大きくなったヨシ子が通りがかる。
29吾輩は名無しである:01/11/26 23:58
>ぽっぽさん
 あなたは何歳ですか? ま、中年以上ですよね。
 石坂洋次郎、なかなかいいですね 〜
「石中先生行状記」は、まだ読んでないんですけど、
「陽の当たる坂道」とか「山と川のある町」、「だれの椅子?」
、「霧の中の少女」みたいな短編もいいなあ 〜

 映画「水で書かれた物語」は、藤原審爾の「秋津温泉」と同じく、
吉田喜重&岡田茉莉子のコンビの作品で、お気にです(ちょっと深刻な話ですが)。
なにげに「若い人」とか、「陽の当たる坂道」「あいつと私」などをTVで
「石坂洋次郎・映画祭」とかと銘打ってやってくれると面白いでしょうねぇ、、、

 あと石坂洋次郎、と言うと、なんかすぐ「性描写」とか言われるようですが、
今読むと、「これのどこが性描写じゃー!!」てな感じでホント愕然とします。
 健康的で、素朴なお色気ですよね? こういう雰囲気、ぼく結構嫌いじゃないですけど。作品自体、素朴で力強い感じがするし、、、
ちなみに私の気に入りの一冊は、「金の糸・銀の糸」ですかね・・・ 凡作ですけどね。(これにも温泉がでてきた・・・)
30ぽっぽ:01/11/27 21:40
 ありがとうございます。「石中先生」ばかり勧めてすみませんでした。
「陽の当たる坂道」「山と川のある町」「だれの椅子?」「霧の中の少女」「金の糸・
銀の糸」ですか。ぜひ読んでみたいと思います。
 八十年代バブルからこっち、若者というと商業社会のカモになれと言わんばかりで
しょう。若い男女に優しい眼を注ぐ石坂洋次郎の姿勢は、これからの日本が取り戻す
べきものだと思うんですよ。
31↑28:01/12/02 20:42
 素晴らしい、素晴らし過ぎる。
32↑↑28
 素晴らしい、素晴らし過ぎる。