食物繊維と腸内細菌 (
>>252の続き)
「米のメシをたらふく食って死にたい」――これが昭和13年当時の棡原の農民の唯一の悲願だった。
それまでは米のメシは盆と正月しか食べられなかったからだ。しかしこの悲願が戦後達せられた時、
そこには中年層の短命化という大きな落とし穴があった。
これは裏返せば、食物繊維の減少を意味する。私は決して米を否定するものではない。
米の唯一最大の欠点は美味しすぎることだとは川島四郎先生の名言だ。つい量をすごすことである。
そこで私は麦米半々こそ日本人の成人病の予防食として提唱したい。
少なくとも麦米の比を3対7とし長短相補うべきと考え、私自身麦米半々を実行している。
鷹觜テル教授の棡原の調査でも戦前と戦後では、麦、芋類、穀類の摂取量が戦後大幅に減少し、
食物繊維もまた昔の一日70gから30gに半減した。
しかし現在の一般農家の15gと都市の2〜8g、アメリカの2〜3gよりは多い。
一億総便秘の上、大腸ガンが激増する現在、麦、芋類、穀類、野菜こそ第一の予防食と思う。
食物繊維を多くとることは同時に腸内細菌のバランスにも大きく影響する。
五年前、東大の光岡知足教授が棡原老人の腸内細菌を調査した処、善玉のビフィズス菌が多く、
悪玉のウェルシュ菌が少ないことが判明した。老人には珍しいことだが、
ここに棡原老人の健康長寿と若々しさの大きな秘密があることがわかった。
「人間の寿命はその人が一生の間に食べた野菜の量に比例する。 豊甫」
(おわり 以上全356ページ中29〜42ページの抜粋)