この点からも私は今後、日本人の健康長寿の上からも穀菜食と魚食
とくに小魚をまるごと食べることを再度、見直す必要があると考える。
私は棡原の戦前の穀菜食を基盤にして、その上に年齢に応じた各栄養素を上のせした
バランスのとれた献立を新たに組み立てる必要があると思う。
つまり動物性蛋白の過剰摂取を戒め、これと植物性蛋白の比率を1対1または1対2と
加齢とともに後者を増やして行くべきと考える。
ところが自然気胸患者の母親から聞いてみると、ハム、ソーセージ、牛乳ばかりで野菜はおろか、
納豆、豆腐、油揚げなど全く見向きもしないという。
メザシ、イワシ等の骨は除いて食べるというほどのカルシウム不足の食生活をしている。
私が母親たちに食生活の話をすると彼女たちは皆、「ああしまった」という表情をする。
最近、私は東京女子医大・糖尿病センター所長の平田幸正教授より興味深いお話を伺った。
それは百年前、フランス人医師、レミーが日本に来て、日本女性の多乳ぶりを
アメリカの雑誌『JAMA』に記載していることである。
それは当時の日本婦人は小柄だが、穀菜食で一人一日約11.5パイントという
信じられないほどの大量の母乳を分泌しているとある。1パイントは約0.5リットル弱である。
思えば戦後、容色を気にしてわが子に母乳を与えなかった日本の母親たちは大きな罪を犯していたことになる。