平成18年度厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究
公開報告会
●日時 平成19年3月3日(土) 10:00-17:00?
●会場 経団連会館(14Fホール)
住所:東京都千代田区大手町1-9-4
●事務局 財団法人 ウイルス肝炎研究財団
住所:東京都文京区本郷3-2-15
Tel:03-3813-4077/Fax:03-3813-4796
http://www.vhfj.or.jp/
324 :
323:2007/02/09(金) 19:40:11 ID:dDjXcxgN
2003年の2月22日に >323 の報告会に参加しました。(参加費は無料でした
が、所属機関と氏名の記帳が必要でした。飯野先生、熊田先生、吉澤先生等、
よく本でみかける著名な先生方の話が直接きけます。そのときの話しのメモから
「C形肝炎ウィルスがいったい何個はいれば感染するか?」吉澤先生 2002.2.22
NAT(核酸増幅検査)が1999年に日赤に導入されて以降、日本の社会では輸
血後のC型肝炎は絶無というぐらいに激減している。ただ、たまたま偶然に、感
染して早期にウィルスが増殖していくプロセスで、NATの検出限界未満の時
(window期)の血液に遭遇した場合は、感染は避けようがない。
どれくらいのウィルス量で感染するのかをチンパンジーを使って実験した。
担当者は日赤、広島大学、赤十字血液センター、三和化学等からの13名で
1年半かかった、かなり大規模な実験であった。
最初 window期の血液(1b型,10の7乗copy/ml、抗体陰性)をつかった。こ
れはFresh Frozen Plasma (FFP)で、人間に接種可能な使用期限内のもの。当初
の予想はウィルスの総数としては 100 copy から 1000 copyぐらい入れば感染
が成立すると想定して実験を開始した。 最初に用いた血液は、サンプルを得る
ために、(通常とは異なる)-30度以下で凍結、37度で融解、-80度で再凍結、
37度で融解した血漿を用いた。そのため、感染性の減弱が起きたため、1万copy
でも感染は不成立だった。(FFPは、通常は採血後、-30度以下で凍結、それを
溶解して患者に接種する)
325 :
323:2007/02/09(金) 19:40:54 ID:dDjXcxgN
(上の続き)
つぎに、(通常のFFPの使用と同じ条件にするため)、この血液をチンパン
ジーにoverdoseで投与して、感染成立させ、その血液を採血のち、すぐに1cc
ごとに分抽し、それをすぐに液体窒素で瞬間凍結させ、それをそのまま保存し、
ウィルス量を測定し、自己血清で希釈して実験に使用した。
ウィルス量が10 copy/mlの血液を1ml(ウィルスの総数 10 copy)いれた場
合は、1週間後に血液中にHCV-RNAが見られた。1 copy/mlの血液を1ml (ウィ
ルスの総数 1 copy)をいれたものは、6-8週後でも感染不成立であった。この感
染不成立のものに、10 copy 相当のものをもう1度いれると、2週後に血液値
中にHCV-RNAがみられた。
これはWindow期のC型肝炎の血液で、まだHCV抗体が存在しない血液を
安定な状態で接種した場合、10 copy相当で感染が成立することを意味して
いる。現実ではNATの検出限界は100 copy/ml 程度で、この実験でわかった
感染成立の閾値はウィルスの個数で 10 copyで、ここには10倍の差がある。
さらにこの血液が輸血に使われる場合は、通常は200cc以上使われる。(ウィ
ルスの実数としてはさらに200倍となる)すなわち、たまたまこのような状況
に遭遇した場合、現在のNATの検出限界の 1/1000 以下のところで、感染は起
こりえる、ということを意味している。
これは、NATの検出感度を今後いかに磨いたとしても、(すでにぎりぎり
まで感度を磨いている)現在の感度より10の3乗ないし10の4乗も向上する
のは技術的にどう考えても難しい。勿論現在のNATの感度をさらに向上し、
質をあげることは大事なことではあるが、万が1のことを考えると、献血者
に検査目的の献血をしない、といった社会教育をあわせてやっていかなければ
いけなんではないかと思う。
326 :
323:2007/02/09(金) 19:44:51 ID:dDjXcxgN
2003年の2月22日に >323 の報告会より
透析での感染 吉澤先生 2002.2.22
C型肝炎ウィルスの新たな感染は、通常の社会生活をしている日本では10万人年
あたり2から3ぐらいで、感染がこの社会ではほとんど止っているが、特定のとこ
ろでは、まだ現在進行形で感染が起っている。
全世界でのアンケート調査(定点調査)の集計では、日本の透析現場の抗体陽
性率(キャリア率ではなく)は世界第3位で 19% 。これだけ感染者がいるとこ
ろで、週3回、定期的な間欠的処理をするので、感染防御は通常の院内感染防御
と同じようなやりかたでは、おいつかないということが当然考えられる。
新な感染率を抗体陽転率を世界で比べると日本は第2位で、100人年あたり
3.6で、かなりの頻度で感染が起っているというアンケート調査結果がある。
2年半前から実体の把握のため、広島県内9ヵ所の透析施設で血清学的検査、
ウィルス学的検査を行なってきた。(3ヵ月に1度の全数採血、追跡率は96%)。
全例の2524例のうち、透析開始時に抗体陽性であった人は457名(18.1%)
で、日本の平均抗体陽性率とほぼ同じ。
そのうちのほぼ7割がキャリアだと想定される。開始時に抗体が陰性でしかも
3ヵ月以上追跡できた 1819例を見ると、あらたな感染発生、キャリア化が13例
みつかっている。年率に直すと 100年人 あたり0.37で、先のアンケート調査の
1/10で、非常に良く押えられているがまだ止っているわけではない。
感染した人の特徴は、13例の経過をすべてみてみると、あらたに感染し
た人のすべてが抗体力価が上がり通常のキャリアと同じパターンになっている。
昔からいわれていた、透析を受けている人は免疫に異常があるから、抗体が陰性
ないし上がりにくい、というのは誤りで、これまで透析の所で「抗体が低くて
ウィルスがいる」と認定した人はwindow期(感染初期の期間)をみていたにすぎ
ない、ということがこれで分かった。
327 :
323:2007/02/09(金) 19:45:40 ID:dDjXcxgN
(上の続き)
このキャリアの人全例について、ウィルスの量をコアの抗原蛋白の定量で追いか
けてみると、多くは落ち着いているが、経過中にウィルスの量が変動するのが見
える。特徴をとらえるために年齢ごとにみてみると、男性について40才を過ぎ
るあたりから、ウィルス量の変動がはじまり、これは通常のC型慢性肝炎、ある
いはキャリアの人と同じ。女性は、男性にくらべて変動の幅は狭いがやはり同様
に動いている。
B型肝炎の透析現場のところで肝炎ウィルスの予防を考えるとき、E抗原陽性
の患者とE抗原陰性の患者で予防のシフトの引き方を違えて防御処置が行なわれ
ているのは周知のことだが、C型肝炎の人については定期的にチェックをして
ウィルスの量が多い時と少ない時を認識した上で、防御のシフトを引く必要が
あることがわかってきた。
今後は透析のプロセス全てを見て、感染、汚染のおこる可能性のあるルートの
全てを遮断した上、そこを起点にして1年以上、新たな感染がない、ということ
の確認作業にこの4月から入りたいと考えている。それによって、透析という現
場でのC型肝炎の感染のあらたに防げると考えている。
328 :
323:2007/02/09(金) 19:47:28 ID:dDjXcxgN
2003年の2月22日に
>>323 の報告会より
HCV抗体による治療(治療用ヒト型抗体の開発) 松浦善治先生 2003.2.22
これまで、HCVの2つあるエンベロープ蛋白のうちのE2が、ヒトCD81に
特異的に結合し、そしてその結合をブロックする抗体(NOB抗体)は中和抗
体ではないかといわれている。これまでNOB抗体は、(1) 感染防御が認められ
たチンパンチーに検出され、(2) 慢性C型肝炎の自然治癒例でのみ高率に検出
され、(3) HCVの生体からの排除に重要だといわれており、NOB活性を保持
したヒト型抗体が作りだせるのならば、それは慢性C型肝炎の有効な治療薬と
しても使えるかもしれない。
慢性C型肝炎の自然治癒例のリンパ球から、ファージディスプレイ法でまず
単鎖抗体を作った。それを元にして、完全なヒト型抗体(完全ヒトIgG)を作っ
た。この抗体は生成したE2に結合し、その生成したE2はCD81に結合するの
をブロックする。
その抗体を用いて、チンパンジー4頭に、3ないし10mg/kg(各2頭)の量
を静脈注射(週1回、計9回、2ヵ月間)し、その後1ヵ月間、血中HCV RNA
量、肝機能(ALT,γ-GTP etc)、薬物動態(血中抗E2抗体濃度)抗ヒト抗体(CAHA)等を調べました。
329 :
323:2007/02/09(金) 19:48:30 ID:dDjXcxgN
(上の続き)
抗E2ヒト型(NOB)抗体のチンパンジー4頭投与に対するまとめは以下の通り。
血中HCVRNA量
抗体投与直後に、ウィルスの一過性上昇が認められ3日後には減少する傾向
が認められた。特に、ロマンはその傾向が顕著であった。しかしながら、1週
間後には元のウィルス量にもどった。
肝機能
4頭中2頭(ロマンとサイ)で肝機能の改善傾向が見られた。
用量相関性
3mg/kgと10mg.kg投与郡で差はみとめられなかった。
体内動態
これまでの、抗体医薬で示された一般的な体内動態を示した。
抗ヒト抗体の算出
(幸い)接種されたチンパンジーに、抗ヒト抗体の算出されなかった。
今報告したNOB抗体は、生成したE2がCD81に結合するのをブロックする
抗体であるが、このCD81はC型肝炎のレセプターではない、というのが現実
で、これがウィルスのエントリーにまず関係していないく、治療効果はない
という感じがあった。
330 :
323:2007/02/09(金) 19:49:46 ID:dDjXcxgN
(上の続き)
以上の例はヒトの自然治癒例のリンパ球からつくった抗E2抗体であるが、
我々はそれ以外にヒト抗体をつくれるゼノマウスを免疫して、E1、E2に対す
るヒト型抗体を作っています。
我々は上記とは別個にC型肝炎ウィルスのエンベロープと感受性をもった細
胞が、ウィルスと細胞融合をおこす系を作った。これをC型肝炎ウィルスのエ
ンベロープとおそらくhep-g2上にあるレセプターが細胞融合するのをブロック
するような、抗E1抗E2細胞融合阻止のヒト型抗体を作った。
それが現在5個のクローンがあり、この抗E2抗体は先ほどのE2抗体とは異
なり、NOB活性がないが、細胞融合を阻害する。とくに興味がるのは、今ま
で注目されていなかったE1抗体に細胞融合を阻害する活性がある、という答
えがたくさんでてきて、そのうちの2種類(#70,#80)を生成して、今年の春か
らチンパンジーで試験をしたいと考えています。(以上)
すべて、専門的な講演ですが、ご関心のあるかたは
>>323 へ是非どうぞ。
331 :
323:2007/02/09(金) 19:56:19 ID:dDjXcxgN
2003年の2月22日に
>>323 の報告会の個人メモより
「血液透析施設」 山崎先生
●現在、医療現場で集団でC型肝炎の感染が発生するのは「透析」以外にない
といわれており、今回の研究を契機にC型肝炎の新規感染を防ぎたい。
●透析患者とHCV抗体の陽性頻度の比較結果は全体的に若干減少傾向だが、
平均として20%ぐらいある。
●さきの吉澤先生の報告に関しては、集団発生した肝炎に関連して過去を振り
返って調査すると年間100人につき2.5件の発生率だが、前向きに調査すると
0.55人に減っている。
●輸血のリピーターの新規発生率にくらべると、透析での発生率は多いが、
(医療機関によって)差がある、というのが個人的な印象で、推定で「感染
が多い施設」で感染率が非常に高いと考えている。
●透析施設でHCV抗体陽性頻度が高い理由
・過去の輸血の問題で、1990年にはじまった輸血のスクリーニングに関連し、
それ以降は減っている。
・繰り返す間歇的な体外循環治療なので、血液に接触しやすい。
・間歇的な治療だが、患者さんは複数、スタップも複数なので、同じ場所で同時
に複数の処置を行うので、感染が高くなる可能性がある。
332 :
323:2007/02/09(金) 19:57:21 ID:dDjXcxgN
(上の続き)
●これまで発生した集団感染の発生の調査の中で、原因が推測されているもの
・(過去に発生したB型肝炎の爆発的な院内発生は)抗凝固材としてもちいたヘ
パリン生食が、共同で作られたものを共有したためではないかと考えている。
・(東京都のB型劇症肝炎については)エリスロコエチン製剤(?)を溶解するため
に用いられた、薬剤、その溶解のために使われた注射針、注射器が汚染してい
たためではないだろうかという推測になっている。
・(兵庫県のB型劇症肝炎については)体外循環している血液を最後に回収す
るときに、生理食塩水を共有したことがあったのではないか、と推測している。
・(静岡県のC型肝炎については)共通に使った生理食塩水か抗凝固材のヘパ
リンを解かしたものだと責任者が述べている。
・(福岡県のC型肝炎については)共通に使われたヘパリン生食である、という
ことになっている。
●集団感染を予防するためには共有薬剤をなくすことだと思っている。ただ、
今日の発表のなかで「手から手へという散発的なものがある」ということに
なっているので、CDCの勧告では透析時にC型肝炎についてはベッドの固定、
隔離は不要になっているが、このようなことも大事ではないかと思っている。
●安全を考えた施設の基準、安全を考えたスタップの配置等を班研究でやって
いくべきことではないかと考えている。できれば地域での取り組みで、新規発
生を警戒しながら、指導できるようなシステムが望ましいと考えている。(以上)
すべて、専門的な講演ですが、ご関心のあるかたは
>>323 の報告会へ是非どうぞ。
333 :
323:2007/02/09(金) 20:02:52 ID:dDjXcxgN
以上
>>324-332 は 2002年のときの報告会の個人メモからです。
「C型肝炎の治療の標準化」の話しも熊田先生からありましたが、当時は
ペグインターフェロンがまだ認可されていなかった時代ですので、それは
割愛します。今年の報告会は
>>323にも書いていますが、念のため再掲します。
平成18年度厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究
公開報告会
●日時 平成19年3月3日(土) 10:00-17:00?
●会場 経団連会館(14Fホール)
住所:東京都千代田区大手町1-9-4
●事務局 財団法人 ウイルス肝炎研究財団
住所:東京都文京区本郷3-2-15
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