136 :
病弱名無しさん:
中村天風・3分間伝記
中村三郎は軍事工作員として日露戦争時代にロシア兵や馬賊と戦い、
"人斬り天風"と称される命知らずの猛者でありました。
後年、天風師は言います。
「軍事工作員てえのは華やかな仕事じゃありませんぜ。あなたがたの知ってるスパイ映画あれはね映画のお話。
乞食のフリをして、詐欺、泥棒、人殺し、これが仕事なんです。」
人を殺めた天罰はあるのでしょう。中村三郎は30歳で結核にかかり、強度のノイローゼになり、
有名な北里柴三郎博士の治療を受けます。
結局、効果なく、せめて心の安定を求め宗教に助けを求めますが、
失望するだけでした。
友人から勧められた米国の成功哲学者 スウェット・マーデンの
「いかにして希望を達成するか」なる本を読み感動します。
@人は自分でも分からない位の偉大な力を秘めている。
Aその力を引き出すには積極思考をすることである。
137 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:27:18 ID:JSefJHKK
そして病身に鞭打って米国に渡り、マーデンに会います。
マーデンは何をしにきやがった、という顔で三郎を迎えた。
「どうすれば、このような素晴らしい心を持てるのでしょうか?」
「私の本を10回読んだそうだが暗記できるまで千回でも読め。」
「そうしたいのですが、私の命はそれまで持つかどうか・・」
「真理を得られずとも、真理に近づきて死す汝は幸いなり!」
"空腹でぼた餅を食えなくとも、ぼた餅を見つけ、食べようとしたとたん
死んだひとは、見ずに終わった人より幸せである。"
天風師は後年こう皮肉っています。
自身で治療しようとコロンビア大学に入り医学博士になります。
また、心の安定を求め米国、英国、仏国、独国と医学者、哲学者を
訪ねます。
最後のドイツで世界一の生物学者であり哲学者の、ハンス・ドリュースに会います。
「あなたの求めていることは人類の永遠のテーマである。
どちらが先に発見しても偉大な業績となるでしょう。
お互い研究しましょう。」
世界一だから教えを請いにいったのが、あれっ!という結果になり、
最期は日本で終えようと帰国の途に立ちます。
138 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:28:57 ID:JSefJHKK
途中、船がエジプトで停泊し、レストランでネパールのヨーガの大哲人カリアッパ師と
運命の出会いをします。
「こちらにいらっしゃい。」
少しのたわいもない会話のあと、
「あなたは右の肺に大きな病いを持ってますね?」
「解りますか?」
「イエス、インスピレーション!あなたはそのまま帰国すると
自分の墓穴を掘ることになる。」
「私は医者ですから、それは分かってます。
やることは全てやったのです。」
「あなたは全てというが、1つだけやってないことがある。
それに気づけば命を自分で見捨てずに済む。
どうだろう。私についてこないか?」
「サーテンリー!(かしこまりました)」
修行中での師弟の会話です。
「お前は世界一の幸福者だ。」
「肺病持ちでいつ死ぬか分からない私がですか?」
「馬鹿者!病があったからこそ、ここに来れたのだろう。
愚か者のお前が少しずつ心が洗われ目覚めていくのを
考えたら、お前ほど幸せな人間はいないだろう。
不運・病いは、お前を悟らせようとする天の慈悲だ。お前にはこの道[yoga]しかない。
他に見つけようとするからそんな情ない目に合うのだ」
139 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:30:03 ID:JSefJHKK
そしてネパールで約3年の修行をし、日本で最初のヨーガのマハーグルとなります。
後年、天風師はこう語ります。
「積極思考とは強情はって"俺は積極的だ"と無理に思いこむことじゃあない。
"本当の自分とは大宇宙霊の分霊である"ことを体得して出てくる心である。」
積極思考を説く思想哲学も大事ですが、それ以上にどうすれば、
積極思考を持てるかを説く実践哲学(天風会の行法)が私にとっては重要です。
行法の中にはマーデンと同じような積極暗示も、
含まれていますが、天風行法の真髄はクンバハカという呼吸法です。
これにより宇宙霊と自己とのパイプを創るための行を、行うのだそうです。
140 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:32:54 ID:JSefJHKK
中村天風・3分間伝記番外編(救いとは)
明治の話である。中村三郎青年(後の中村天風)が30歳で結核を発病し当時細菌に関する最高権威といわれた北里柴三郎博士の治療を受けるが好転せず。
活路を海外に求めアメリカ・英国・仏蘭西・独逸と行脚する。肉体を医学、病によって弱りきった心を哲学、によって解決出来ないか?と高名な医学者、哲学者と訊ねるが得るものはなかった。
そして5年間、もう身体も限界を向かえどうせ死ぬなら故郷でと帰路に向かう。
途中で船がエジプトで停泊し、英国王室からの招待の帰路であったヨガの聖者カリアッパ師と邂逅する。
「お前は右の肺に大きな病をかかえている。そのまま故郷に帰るのは墓穴を掘りにいくようなものだ。お前は気付いてないことがある。教えてやるからわしの国について来い」
全て見通されている。三郎は即座に答えた。
「サーテンリー」
141 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:33:46 ID:JSefJHKK
そしてヒマラヤ・カンチェンジュンガ山麓でヨガの修行に精進していた。
三郎は「天の声」を聞く術に熟達していった。
三郎は、山から聞こえる蝉や鳥の声を相変わらず聞こえるが、心はそれを聞こうと思わず聞くまいとも思わず、心が心を思わず、肺病に病んだ肉体を思うでもなし、完全に自由の一時を得ていた。
そしてそれは実に爽快な味わいを心の中に残す。
この禅定をヨガでは「天の声」と表現する。天の声とは声なき声、静寂の境地である。
1日の修行が済み、カリアッパ師は微笑みながら三郎に語りはじめた。
「どうやら出来たようだな。考えてみなさい。お前が"天の声"を聞いているときは辛いことも苦しいこともなかっただろう。
悩みを持った人間でもなければ病をもった人間でもない。たとえ肉体は病んでいても"生命"のほうは病のない時を過してる。」
「・・・・」
「それが分かったら、できるだけ心に"天の声"を聞かせてやりことだ。そこには煩悶も病もないのだからな」
三郎はうなずいた。そして
「すると病が治るわけですねえ」 と、つい口をすべらせた。
「治る治らないなどと考える必要はない。第一それを考えたら心はもう、もとにもどってしまいではないか」
ああ、そうか・・と三郎は思った。
142 :
病弱名無しさん:2006/02/12(日) 10:34:21 ID:JSefJHKK
「そうした生き方が、本当の人の行き方だからそうしなさい、と言ってるだけだ。それよりほかにお前の生きる"道"はない。なのに、ほかに道を求めるから、そんな惨めなめに遭うのだ」
三郎の頬には涙が流れていった。
「お前の病も肉体だけにして心に迷惑をかけるな。そうするためにはおりにふれ時にふれ心に"天の声"を聞かせよ。そここそ本当に安らぎがある世界だからな」
三郎の涙はとめどもなく流れた。ああ、自分は救われたのだ、と。