私は胸にリンゴが入ります
その上からシャツをきてもリンゴがわからないくらいスッポリ
どこに肺があるのか自分でも想像できません
小さい頃から気にしてました
体の関係が絡む年齢になってからは恋愛にとても臆病になりました
変わりたかった このままじゃダメだと
自分できっかけを作らないと一生このままだと思いました
大学のテニスサークルに所属していた私が2年になったとき
後輩として入ってきた女の子
際立って可愛いわけでもなかったが 常に笑顔で元気な子でした
スマッシュの練習中 誰かが手を滑らせて飛ばしたラケットが彼女の脛に命中した事がありました
血も出てるし 歩けないほど痛いくせに 「大丈夫大丈夫!気にしないで!」 と笑顔で振舞う
そんな 優しくて強い彼女に恋をしました
彼女と仲良くなりたくて夢中でした
あんなに頑張ったのは人生で初めてかもしれません
お互い映画が好きという共通点もあり
1ヶ月後には 2人きりで遊ぶ位仲良くなりました
彼女ではなく 仲のいい後輩
でも本当に幸せでした
よく晩御飯を一緒に食べるようになりました
キスすらしたことない私はもちろん 彼女も恋愛経験が豊富というではなく
おしゃれな店はお互い気が引けたため
気が利いていないかも知れませんが いつも近所のファミレスでした
彼女は車を持っていなかったので 私が家まで迎えに行き
一緒にファミレスにいって ご飯を食べ
2・3時間ほど ジュースを飲みながら色んなことを話して
彼女を家まで送り 私は車も降りずにそのまま帰る
いつもこのパターンでした
他愛ないかも知れませんが 私にとってなによりも大切な時間でした
これはただの私の性格でしょうが なかなかそれ以上の関係に踏み切れずにいました
ある日 いつものように食事をして彼女を送った時
彼女は車から降りようとしませんでした
その日のファミレスでの話題にでた 私が持っているロミオとジュリエットのDVD
夜の11時に 迷惑じゃなかったら一緒に見たい という彼女
さすがに恋愛ベタの私も 事を悟り 女性から言わせた自分を強く恥じました
彼女を乗せたまま私の家に向かう車
うつむいたまま何も話さない彼女
永い沈黙の後 家に辿り着きました
彼女がうちに一人で来るのは初めてでした しかもこんな時間に
嬉しさより緊張感でいっぱいでした
様子を見る限り彼女もそうでした
たまたまその日掃除したばかりの部屋に 二人で入り
ソファー代わりのベッドに彼女を座らせ DVDを流しました
飲み物を用意する私
経験が無く ただでさえどうしていいかわからない中
頭をよぎるのは自分の 普通ではない胸の事でした
彼女はこれを見てどう思うんだろう と
ここまで来ておきながら やはり何もせずにDVDだけ観て帰そうか
なんとか服を脱がずに事を終えれないか
電気を真っ暗にしたままならなんとかなるんじゃないか など
色んな思考が駆け巡りました
机代わりのコタツに2つ目のコップを置いた時 ふと彼女と目が合いました
湿りを帯びた長いまつげに覆われた この清純で 物言いたげに憂いを含んだ瞳は
どうして一目見ただけで 私の用心深い心の底まで突き通したのだろうか
間近で見る他人の目の力とはすごい物ですね 昔読んだ文学の一説を思い出しました
夢中で彼女を抱きしめていました
胸がつくことも忘れて ひたすら抱きしめていました
決して男らしいとは言えない体格の私でも すっぽり腕の中に入るほど小さな彼女がさらに愛おしくなりました
互いにくっついていた頬をずらして
唇を合わせました 初めての私は舌をどうこう なんてわからず
お互い何度も何度も唇を合わせました
心の中は彼女への愛おしさでいっぱいになりました
この子ならきっと 受け入れてくれる
恋人として踏み出すなら隠すべきじゃない
なにより隠し通せるものではない
性的な興奮状態も手伝い
意を決して シャツを脱ぎました
信じていたのは 歩けないほどの痛みの中でさえ他人を気遣う あの時の彼女の笑顔
コンプレックスをさらけ出した私の目に映ったのは
言葉を失い 固まって 私の胸を見つめる彼女の顔でした
自分がどういう反応を相手に求めていたかは覚えていません
何も物言わず 固まっている彼女を見て不安になりました
肩に手を当てると 驚いたように顔をあげ 私の目を一瞬だけ見て すぐに視線を自分の膝元へと落としました
一時的に動揺してるだけだと思いたかった
なんとなく彼女が離れていく気がして
言葉も見つからず 肩を抱き寄せてもう一度キスしてみました
拒まれませんでした
が さっきとは明らかに違いました
視線を落としたまま 一方的に受けただけ
思い切って
やっぱり気持ち悪い よね? と尋ねると
違います と首を振ってくれたのですが
目からは涙がこぼれていました
泣いてるの?
ちょっとビックリしただけです ごめんなさい・・・
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
同じ言葉を何度も言いながら泣きじゃくる彼女にそれ以上何も出来ませんでした
その時は不思議と 悲しいという感情はわかなかったです
電気も消さず部屋を出て彼女を送り
やや放心のまま一人で部屋に戻ると
ロミオとジュリエットが流れていました
ベッドに腰掛けた瞬間何かが外れました
涙が溢れてきました
ついさっき彼女が涙を流していた場所で 今度は私が泣きじゃくりました
外が明るくなるまで泣きました
どれだけ涙を流しても尽きませんでした
もう1年半も前の話です
あれからお互い気まずくなり 二人ともサークルはやめました
たまにキャンパスで見かける事がありますが
目が合うとお互い無理して にこっと微笑み合ってる痛々しい有様です
相談などの形で誰かに言われてたらどうしようと危惧した事もあったのですが
その心配は無用でした
私の胸を見て驚くのは もちろん彼女だけじゃありません
小中学校のプール・身体測定など 避けて通れないところで何人にも見られ
その度に横目で見られてきました
しかしその中でも彼女が見せた反応は 期待とは裏腹に一番大きいものでした
今考えると無理もありません
今までにこれを見てきた人達は 直接関係のない人間ですから
男友達といえど私の胸に触れる事はありませんし 裸で会う必要もありません
でも恋人となると違います
ましてや逃げ場のない 1対1の状況で突然
人が抱えている大きなコンプレックスをぶつけられたのだから
無理もないと今は思っています