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「君のお父さんの趣味なのか?」
僕はようやく大体のことが飲み込めてきていた。
「あ、お気付きになられましたか」
「ここまで来ればね」
「元々はお爺様が作ったものなんだそうです」
「昔の人が考えることはよくわからんな。それでこれ、どうするんだ?」
「九州さん、やってみますか?」
「む……」
きらたまは挑発的に笑う。
よろしい、受けて立とう。
間近で見ると狸の顔は気色悪いほどリアルに再現されていて、
本物の狸を魔術で石化させたのではないかと思われた。
仕掛けがあるとするならば……と、僕は狸がかぶっている笠を両手で掴んで捻ってみる。
すると笠は驚くほどすんなりと動き、180℃回転したところでガチッと小気味のいい音を
立てて止まった。
しかしそれだけで何の変化もない。
地面が揺れたり狸が真っ二つに割れたりすることもなく、
僕と狸は目と目で通じあうばかりだった。