芥川賞受賞までの日々・おめでとう! おれ 【3】

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297魔物の森

「ぼく」にできた最初のともだちは架空のものだった。何人いたのか「俺」にはわからない。
スーパーマーケットの6階のゲームコーナ、そこにぼくはいた。といっても基本的に百円以上は使わない。
デモムービーに合わせて十字スティックを動かして自己満足を得るだけである。
おそらくこの行為自体は誰でも一回はやった幼児期の遊びのひとつであるはずだ。
コインを使って実際にやることもあった。今の今まで何をどうやっても同じ動きしかしなかったモンスターたち、
それがぼくとおなじ動きしかしない。ぼくがなにもしないと動かない。相手を殺すことができる
こいつを自殺させることもできる……。そのあと家に帰るのである。
まだ見ぬなにかをつれていって。
298魔物の森:2005/05/20(金) 15:51:22 ID:???
ぼくが小学校から帰ってきた「ただいま」その声は静かに消えた。
両親がまだ帰ってきていないのだ。家は二階建てで、ぼくの部屋は二階にあった。
だから当然ランドセルを置きに二階へ上がらなければならない。
が、その日のぼくは何かが怖かった。特に理由はない。暗闇が苦手な人がいるのと同じ理由だ。
ひょっとしたら今まで見たことのない、わからないなにかがこの世にはあって、それが自分を襲う
のではないか、おそらく暗闇が苦手な人にはそういう考えがあって、目でとらえるよりも心でとらえる闇が
それを想像のはたらく限りその人に見せてしまうのではないだろうか。とにかく
何かが怖かった。階段に近づきたくなかった。その時だれかがぼくにそっとささやいた
 ――おいで――
階段にはだれかが先に立っていたのだ。そいつはふわりと二階に上がってしまった。
すぐに後を追ったがそいつは消えてしまっていた。
299魔物の森:2005/05/20(金) 16:04:58 ID:???
そいつはこの前やったアーケードゲームのモンスターだった。
 ある日の夕方、小学校から帰って部屋でじっとしていたときの話。
そこにいた少年は一人でだれかと会話をしていた。
「今日は何をしようね。○○○○(モンスターの名前)」
話し相手のだれかは話し手の少年にとって都合のいい返事をしているらしい。
これを毎日何回も繰り返していた少年であったが、だんだんそういう遊びよりも
ファミコン系の遊びを実際にやるほうが好きになってきたらしい。
彼が一人でスーパーファミコンをしている時である。部屋の片隅に何かが突っ立って少年を
物怖じしたような目で見ているのに気づいた。少年はこう考えた。
(何だ、お前らか、後で相手してやるからどっか行ってくれ)
その日から少年は何かが見えなくなってしまった。
 彼らが「いない」とは思っていなかった「実在する」とも思っていなかった
300魔物の森:2005/05/20(金) 16:43:36 ID:???
「ぼくの想像はいつか次元の壁を超えて現実の世界に乗り越えてくるのではないか」
そう思っていた。
あの時ぼくの指が彼らに魂を吹き込んでしまったのかもしれない、まさかと思いつつ
ひょっとしたらと少し考えてみる。ぼくはゲームコーナーのモンスターの「立体的イメージ」
という名の仮の肉体を造りそれに「自分の人格の一部」という魂の種を植え込んでしまったのではないか。
じゃあ彼らは死んだのか、待て、「ぼく」に見えるだけで今の「俺」は
見えてないだけのことかもしれない。彼らは「ぼく」を友人として知っているが「俺」のことは何も知らないから姿をみせないのかもしれない。
じゃあ「俺」は誰だ、俺は俺か、それとも「ぼく」という誰かに作られたモンスターの一匹でしかないのか、役立たずは捨てられる
人造人間(アンドロイド)か。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感は嘘で今入っている情報も全て「ぼく」が
見せている想像かもしれないと考えたことがある。だとすると「俺」が新でも「ぼく」は死なずに生き続けるが
「ぼく」が死ぬと「俺」やモンスターたちは一匹残らず死に絶え、世界に終焉の日が突然やって来るわけである。
今まで信じていたものが全て偽りだとしたら、面白いのかもしれない。
301TNS「クラッシャー」:2005/05/20(金) 16:48:11 ID:???
終わった…。
おそまつさまでした