http://www.nikkei.com/article/DGXLZO82959960Y5A200C1NN1000/ 日本企業が海外で稼いだお金を国内に戻すペースが加速している。
海外子会社からの配当金として2014年に国内に還流した金額は11月分までで過去最高となり、
通年では初めての4兆円台が見えてきた。
海外事業の堅調さに加え、円安で外貨を円に戻して手持ち資金を確保する企業が目立つ。
還流マネーが設備投資や賃上げにどれだけ回るかが、日本経済の底上げのカギを握りそうだ。
国際収支統計によると、日本企業は14年1〜11月に海外で5兆8278億円の投資収益を上げ、
このうち約65%にあたる3兆8153億円を国内に戻した。
還流額は前年同期に比べ16%多く、過去最高だった13年の通年実績をすでに上回った。
13年12月は約2700億円を戻しており、14年通年では4兆円台にのる公算が大きい。
財務省によると国内還流が最も多いのは自動車産業。
月間で少なくとも数百億円は国内に戻すことが多いという。
三菱自動車は14年4月に主力生産拠点のタイの連結子会社から、配当金として366億円を受け取った。
14年後半に1ドル=120円まで円安が進んだのも大きい。
「これ以上は円安が進みにくいとみた企業がお金を国内に移した可能性がある」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)。
現地法人が外貨で得た利益を円安のときに日本国内に戻せば円建ての稼ぎが膨らみ、より多くの手持ち資金を確保できる。
国内事業の収益減を補う狙いも大きい。
日本たばこ産業(JT)は15年12月期にも海外子会社のJTインターナショナルから配当を受け取る見通し。
国内のたばこ市場が縮小するなか、配当性向を5割以上に上げる目標を継続的に達成するには
海外の収益還元が不可欠になっている。
今後は海外の稼ぎが国内の投資にどれだけ回るかが焦点だ。
日本に送るお金が増えているのは
「企業が生産拠点などを国内に戻そうとしている前触れ」(みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミスト)との見方もある。
14年3月末時点で約328兆円に上る日本企業の内部留保を上積みするだけでは、経済の好循環にはつながらない。
一部の進出国については収益還流のブレーキになりうる要素もある。
政府・与党が15年度から、配当に課税しない国の子会社から受け取る配当に日本で課税する方針を決めたためだ。
オーストラリアやブラジルからの配当が対象となる。
日本では両国に資源権益を持つエネルギー会社や商社が多い。
「石油会社が海外で稼いだ収益をガス事業などに充てる流れに影響が出る可能性がある」
(SMBC日興証券の塩田英俊シニアアナリスト)という。
グラフ:海外収益のうち国内に還流した割合は6割を超える見込み
http://www.nikkei.com/content/pic/20150208/96958A9E889DEAE0EBE7EBEBE4E2E2EAE2E0E0E2E3E79C9CE3E2E2E2-DSXMZO8295997008022015NN1001-PB1-4.jpg