スイスフラン相場の上限防衛を目指すスイス国立銀行(中央銀行、SNB)が、ユーロの主要な買い主体として
浮上している。ただ、ユーロの下落ペースを踏まえると、そうしたユーロ買いがどの程度続くのか、疑問を口にする向きが多い。
他の主要中銀の外貨準備におけるユーロの比率は、この数カ月で低下しており、SNBのユーロ買いはこうした
趨勢に逆行している。国際通貨基金(IMF)のデータによると、世界の主要中銀の外貨準備では実際、
2014年第3・四半期にユーロの比率が10年余りで最も低い水準に低下した。
1ユーロ=1.20フランに設定しているスイスフランの上限を守るため、SNBは2年ぶりに為替介入を再開。
12月の買い入れ規模は推計200億ユーロで、外貨準備は過去最高水準となった。
ジェフリーズの為替戦略責任者、ジョナサン・ウェッブ氏は「スイスフランが一段高とならないよう、短期的には大半の
ユーロを外貨準備として保持するが、一定期間が過ぎれば、SNBはユーロを売り、その比率を低減させるだろう」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)が昨年6月、中銀預金金利をマイナスに引き下げて以降、 各国中銀の
外貨準備責任者からのユーロ買いは入りづらくなっている。ユーロの対ドル相場EUR=は過去6カ月で13%以上下げ、
先週には9年ぶり安値の1.1754ドルを付けた。
資本流出や通貨安に見舞われ、ロシアやナイジェリアなどではこの数カ月、外貨準備が減少。
米連邦準備理事会(FRB)による2015年の利上げ開始観測でドルの上昇が加速した昨年7月以降、
世界の主要中銀の外貨準備も過去最高水準から縮小しているが、スイスの外貨準備は逆に拡大した。
<英ポンド、カナダドルに恩恵も>
SNBは外貨準備の45%近くをユーロで保有。この比率は2011年の57%から徐々に低下している。
約30%が米ドル、7%が英ポンドGBP=、9%が日本円JPY=、4%がカナダドルCAD=だ。
BNPパリバ(ロンドン)の通貨アナリスト、マイケル・スネイド氏は、ポンドやカナダドルなどは、韓国ウォンKRW=や
シンガポールドルSGD=といった比較的流動性の低い通貨とともに、SNBが外貨準備のユーロ持ち高を分散させる
場合に恩恵を受ける可能性があると指摘した。
12月末時点で、スイスは4951億0400万スイスフラン(4900億ドル)相当の外貨を保有。11月時点では
4626億6900万スイスフランだった。12月はユーロ危機が深刻化した2012年半ば以来の急増となった。
ロシアルーブルの急落でスイスフランへの逃避買いが集中したことを受け、SNBが先月介入を実施したことが
外貨準備高に反映されている。SNBは12月、中銀預金金利をマイナスに引き下げることも発表した。
ただ、スイスフランが対ユーロの上限に肉薄した水準で推移する中、SNBは介入を続ける見通し。月内にECBが
本格的量的緩和策の導入を決め、ユーロが一段安となれば、追加措置の実施観測が強まるとみられる。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略責任者、マーク・チャンドラー氏は、他の長期投資家がユーロの
エクスポージャーを縮小させる中、ユーロの主要な買い主体はSNBだけだろうと指摘した。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KN0GL20150114